ロスパン対策 - ブランスリー電子版


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特集/2025年2月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


ロスパン対策




ロスパン販売でパンの販売チャネルを広げていく - BonDanish
オーナーで店長の櫻井准紀さん
東京・町田市のメロンパン 専門店「BonDanish(ボンデニッシュ)」
BonDanishから届いたロスパンのセット
「プレーンメロンパン」(税込210円)
「アールグレイ(紅茶)メロンパン」(税込230円)
「チョコチップメロンパン」(税込210円)
メロンパン専門店のロスパン

 東京・町田市のメロンパン専門店「BonDanish(ボンデニッシュ)」は、今から約3年前の2022年1月からロスパンの通信販売プラットフォーム「rebake」に参加。売れ残ったメロンパンや菓子パンを冷凍したセット商品や、店頭のメロンパンを二度焼きして作った常温のメロンパンラスクのセット商品などを販売し、好評を博している。冷凍パンのセットとラスクのセットを合わせて、月平均60〜70セットが売れるという。
 「当店では店頭で大体11〜13種類のメロンパンを揃えるようにしていますが、もともと売り切りスタイルで店を運営し、パンも一定の量以上は作らないようにしていたため、必然的にロス率は低く2%にも満たない程でした」(店長の櫻井准紀さん)
 ロス率が低い同店だが、季節限定のフレーバーのメロンパンを作りすぎてしまうことや、パイやデニッシュのロスが出ることはあった。
 櫻井さんはパンを廃棄する事に強い抵抗感があったという。
 ただその一方で、ある程度作る量を増やすことで新しい需要を取り込みたいと言う思いもあった。結果的にロスパンの販売という道を考えるようになったという。

通常のギフト商品とロスパンを販売

 「実は当店はもともと大手通販プラットフォームである『楽天』にも出店しており、そこでロスパンではなく、主に通常のギフト商品で『メロンパンラスク』や『冷凍メロンパン』を販売していました」(櫻井さん)
 「楽天」では特にメロンパンラスクの反響が大きく出店直後からかなり人気を集め、売り上げを伸ばしていた。現在でも同店の通販での売り上げの大半は「楽天」での売り上げが占めている。
 「楽天」ではメロンパンを製造後すぐに冷凍したりラスクにしたりしたもののセットでギフト用途を意識したものが中心だが、「rebake」では店頭で売れ残ったメロンパンを冷凍したりラスクにしたりしたものや、店頭に出したラスクで売れ残ったものなどが中心だ。
 しかし「rebake」でも、通常のパンの通販部門があり、そこでロスパンでないメロンパンやラスクなどを集めたセットも一部販売している。
 「『rebake』に参加するようになったのは、ロスパンを廃棄せずになんとかしたいという気持ちもあったのですが、逆に販売チャネルが広がって当店の事を広く知ってもらえるようになるのではないかという思いもありましたね」(櫻井さん)
 ロスパンにも一定の需要はあるが、「焼きたて」のパンが好きだという消費者からの声も根強いと櫻井さんは感じている。
 「通常のギフト商品の販売も引き続き力をいれていきたいと思います。ただ一方で、消費者のロスパンに対する理解も進み意識も変化してきており、結果的にロスパンを購入される方も増えてきているのかなと思います」(櫻井さん)
 またコロナ禍を経て、冷凍パンをはじめ食品を冷凍してストックする事自体が浸透してきた事も影響しているのではと感じている。
 同店では、来店客やオンライン通販の利用者に対し、正しい解凍方法やリベイクの手順を丁寧に説明することを心掛けている。また、冷凍パンセットを配送する際には、メロンパン、パイ、デニッシュなどの種類によって焼き直しに適した時間が異なるため、「美味しい焼き直し方」を解説した冊子を同封している。

客からの反響が励ましになる

 2016年に神奈川県川崎市でオープンした「BonDanish」は、通りに面した大きな窓ごしに対面式でメロンパンやメロンパンラスクを販売する店で、実店舗での販売はテイクアウトのみ。店舗の左側には冷凍パンの自販機が設置されている。
 もともと櫻井さんの母が始めた店だったが2019年に東京・町田市へ移転したのを機に櫻井さんが店を事業承継した。ずっと家族経営で店を切り盛りしているという。
 店頭では、「プレーンメロンパン」(税込210円)のほか、「マスクメロンパン」(税込210円)や「いちごメロンパン」(税込240円)、「アールグレイ(紅茶)メロンパン」(税込230円)、「チョコチップメロンパン」(税込210円)、「ティラミスメロンパン」(税込240円)などを販売。そのほか季節ごとに変わるフレバーの商品など11〜13種類ものメロンパンを販売。
 以前は余ったメロンパンはラスクにして店頭で販売する事が多かったが、「rebake」に参加してからはメロンパンで余ったものは他の菓子パンと合わせて冷凍便のロスパンセットにする事が多くなった。
 「rebake」に参加するようになった事で、これまでとは違った形で反響の声を聞く事ができるようになったと感じている。
 「『rebake』では販売後に丁寧な反響の声を頂く事が多いですね。梱包などの発送準備も、それほど負担ではないし、会員さんからの温かいコメントにはいつも励まされます。以前、店の近くに住んでいていつも買ってくれた人が、引越し先でも『rebake』を通じてパンを買ってくれて、久しぶりに食べたけれどおいしかったという声を頂いた時は本当に嬉しかったですね」(櫻井さん)



ロスパン対策で閉店間際のパンの品揃えが充実した
「BonDanish」が「rebake」で販売するメロンパンラスクの常温セット
店頭では「プレーンメロンパン」(税込210円)のほか、「マスクメロンパン」(税込210円)や「いちごメロンパン」などを販売
地域や社会とのつながりを考える

 櫻井さんは、「rebake」でのロスパンの販売は、全国各地のパン好きの人とつながり、店の事を知ってもらえるというメリットがあるので、継続するモチベーションが保たれると感じている。
 「ロスパンの販売は、同業者で興味を持つ人がいたらすすめたいですね。ただその一方で、ずっと家族経営で、長くこの町で店を続けていくために地域とのつながりを深めたいという思いもあります。だからロスパンの一部は定期的に地域のどこかへ寄付しても良いのではと思っています」(櫻井さん)
 「rebake」の運営会社であるクアッガもロスパンの売り上げの一部を自然環境の保全活動をする団体などに寄付しているが、櫻井さんも、生まれ育った地域の隣町であるここ町田市には愛着がある。そのため持続可能な形で、何か街の環境を良くするために貢献したいという気持ちがあるという。
 またパンのロスだけではなく、フードロス問題全体の解決に繋がるように、資源の無駄使いをやめ、不要なものを買いすぎないようにしたいと考えている。
 「少人数で運営しているため、たまたま毎日作る試作品の種類を2種類までと決めていたのですが、結果的に、試作品を作りすぎて食べきれずに、ロスになることもないので良かったと思います」(櫻井さん)
 桜井さんは、店で販売する商品については、「rebake」に出店するようになってからは思い切って多めに作る事も増えてきた。ロスになっても無駄にせずに済む方法が確保できたのが大きいという。
 「当店は売り切りスタイルで運営してきたため、早めに売り切れてしまった商品があったりすると、お客様から『あらあのパンはもうないのね』と言われる事もあり、申し訳ないと思っていました。閉店に近い時間でも、種類豊富なメロンパンのラインナップを楽しんでもらいながら最低限の利益は出せるよう、ロスパンの販売は引き続き継続していきたいですね」(櫻井さん)

SHOP DATA
店名:BonDanish
住所:〒194‐0036 東京都町田市木曽東1‐36‐10 リエビル102
電話:042‐850‐8172
営業時間:午前10時〜午後6時
定休日:月曜
品揃え:メロンパン約19品目、メロンパンラスク約15品目、その他のパン約16品目
スタッフ:製造常時2人、販売常時2人
店舗面積:約10坪



ロスパン対策でより多くの人に自分のパンを届けたい - Hearty Bakery
「Hearty Bakery」が参加しているロスパン販売サイト「rebake」の「定期お楽しみ便」のイメージ写真
オーナーで店長の田中麗子さん
千葉県松戸市の小規模ベーカリー「Hearty Bakery」
朝5時から前日のロスパンを販売する早朝の「お楽しみセット」を告知するインスタ上の投稿
一番人気の「角食パン」(税込280円)
ラインアップを広げた商品展開も目立つ売り場
ロスパンは翌日早朝にセット販売

 千葉県松戸市の小規模ベーカリー「Hearty Bakery」では、売れ残ったロスパンを500円のセット商品にし、翌日オープン前の朝5時から10時までに販売する取り組みを定期的に行っている。元が700〜800円くらいのセットなので約3割引きでの販売となる。
 「私が準備で朝4時前から店に来ているので、通りから見える告知ボードやのぼり旗を見て声を掛けてくる人がいたら売るという感じです。夜明け前のまだ外が薄暗い頃なので、犬の散歩やジョギングなどでたまたま通りかかって買っていく人もいると思います」と店長の田中麗子さんは話す。
 告知ボードには大きく「(朝の)5時よりお楽しみセット販売中」と書かれている。
 ただ早朝にこうした形でロスパンの販売をしていることは大々的な宣伝はしていない。店の開店時間は朝10時なので、知っている人のみ買いに来るという感じだ。来るのはたまたま通りがかった人のほか、一応インスタのみで静かに告知はしているので、それを見て買いに来る人、口コミでたまたま知った人などが占める。
 田中さんは朝10時から夕方7時までの営業時間内には、販売数量が圧倒的に多い「角食パン」以外は、基本的に値引きはしないと決めている。売れ残ったらオープン前の早朝に販売する。
 それでも残ったものがあればすぐアルミのバットに入れてマイナス20度で凍らせる。廃棄はしない。そしてロスパンの通販プラットフォーム「rebake(リベイク)」に連絡し、配送できる個数を伝える。そして、翌日の午後2時から4時の間に来る配送担当者に梱包したパンを引き取ってもらう。

初年度に「rebake」に登録

 「利益の問題もありますが、それ以上に、自分が手間をかけて心を込めて作ったパンを捨てるのは心が痛みます。捨てるのだけは避けたいという気持ちが強いですね」
 田中さんは、自身がロスパン対策に積極的な理由についてこう話す。
 田中さんは2021年の秋からロスパン販売のプラットフォーム「rebake」に登録。同プラットフォームは、全国のベーカリーで売れ残ったロスパンを販売する通信販売の仕組みで、現在全国の1500店以上のベーカリーが登録している。また、買い手である会員も17万人以上登録しているという。
 「Hearty Bakery」の田中さんは2021年の3月に店をオープンしたが、その半年後ぐらいに「rebake」に登録した。
 「オープンしてから迎える初めての夏で、やはり気候の関係で売り上げも減り、ロスパンにも悩むようになりました」(田中さん)
 勿論、他のベーカリーと同様に、ロスパンが生じないようその日の天候を見ながら作る量や種類を調整はしていた。しかし、予測できない天候の変化や予想外の出来事など様々な事情で売れる量は変わっていく。ロスパンとチャンスロスの両方に悩まされるようになっていた。
 田中さんは病院や診療所に管理栄養士として30年余り勤めた後、同店をオープンした。ロスパンのみならずフードロスの問題に以前から興味が強かったのは、長く食に関わる仕事をしてきた事もある。
 「皆の健康の一助となるような体に優しいパンを作りたいという気持ちでパン屋になりました。だから常にロスが出ないよう作る種類を最低限に絞るという選択もあるのですが、お客様の要望を聞いて色々なパンを作りたいという気持ちも強かったんです」(田中さん)

体に優しいパンを届けたい

 「Hearty Bakery」では、食品研究家で医学博士の吉村裕之氏が提唱する、栄養バランスを整えるために食事に取り入れたい7つの食材の頭文字から成る標語「まごわやさしい」に習って、「ま」が表す豆類、「ご」の胡麻類、「わ」のわかめ、「や」の野菜類、「さ」のさかな、「し」のしいたけ(きのこ類)、「い」の芋類の7種類の素材を取り入れたパンを積極的に製造販売している。
 田中さんの管理栄養士としての知識を生かし、パンを買いに来た人の健康寿命を延ばすため、接客をしながら気軽に健康相談なども受けてきた。そうした中で、5色の豆、黒胡麻、ひじき、ライ麦を加えた田中さん一押しの看板商品「まごわ豆パン」(税込140円)、ツナのDHAとEPAを多く取り入れマヨネーズとチーズの旨みを合わせた「ツナコーンパン」(税込210円)、野菜をたっぷり入れた「ビーフ焼きカレーパン」(税込200円)など栄養バランスを考えたパンを開発し提供している。
 またペット用の牛乳を使用し、塩や砂糖、ベーキングパウダーなどを使わない、ペット(主に犬)向けの刺激の少ないパン「わんこぱん」(3個セット、税込500円)もペット連れの常連客の要望を聞いた上で開発した。
 田中さんが好きなあんパン系の商品展開も目立つ。「黒ごまあんぱん」(税込180円)は、「健康維持、老化防止に」という言葉がポップに記されていた。
 またそのほかにも一番人気の「角食パン」(税込280円)や「ライ麦食パン」(税込320円)など食パンの人気も高く、一人で製造と販売を行う体制ながら40品目以上の商品を製造し販売している。
 「以前はもっと作る量を制限していたのですが、『rebake』のサービスに登録したことで、ある程度ロスを気にせず色々なパンが出せるようになりました。一人で店を運営しながらできることの範囲を広げられるようになったのは良かったです」(田中さん)



ロスパンを全国の会員に届けることで商圏が広がった
ツナのDHAとEPAを多く取り入れマヨネーズとチーズの旨みを合わせた「ツナコーンパン」(税込210円)
店内厨房の様子。ここでロスパンセットの梱包も行っている
ペット向けに開発した「わんこぱん」(税込3個セットで500円)。常連客の要望から生まれた
店内に掲示されていた「まごわやさしい」について説明した手書きの案内
雨の日に焼き菓子をプレゼントする「雨の日サービス」の告知
「定期お楽しみ便」で注文が増える

 もともとパンの廃棄を好まなかった田中さんは、ロスパンを、自分の友人や、副業で栄養士として働いていた病院のスタッフに配っていた。その間、以前通っていた製パンの専門学校の講師にロスパンについて相談したところ、「rebake」のサービスを紹介された。
 ただ、全国のベーカリーを多く扱う「rebake」 のプラットフォームの中では、知名度が高いベーカリーの陰に隠れてしまって、思うように注文件数を伸ばせなかった。
 そこで、「rebake」の事務局が毎月選定するベーカリーのパンを、定期的に会員に届けるサブスクリプションサービスの「定期お楽しみ便」で、ロスパンを発送するベーカリーのリストに加えてもらうことにした。
 「定期お楽しみ便」は、ロスパンを定期購入するユーザーに対し、その都度のタイミングでロスパンが発生したベーカリーを「rebake」事務局が選び、選ばれたベーカリーは、自店のロスパンのセットを「rebake」が指定した会員に発送するという仕組みだ。ベーカリー側からするとユーザーと出会う機会が増えるというメリットがある。
 田中さんはこれにより、ロスパンの発送件数を増やすことができたという。

ロスパンで広がる新たな世界

 「『rebake』に参加すると遠方のユーザーも含め、様々な方へパンを送ることがでます。パンを気に入ってくれた方からお礼の手紙をもらったこともありました。とても嬉しかったですね」(田中さん)
 同店は「rebake」が主催するロスパンのマルシェに参加する事もある。地域の朝市でロスパンの販売はしていたが、「rebake」で全国の会員にロスパンを届けることで、活動範囲が広がり色々な人に店の事を知ってもらえるようになったという。
 もちろん、「rebake」で注文がありロスパンセットを送る際には、梱包などもしなければならず、それなりに手間がかかる。
 冷凍耐性が高い厚めのビニール袋にパンを一つずつ入れて梱包し、中には、各パンの栄養成分を書いた一覧表、パンを解凍しリベイクする方法、店のプロフィール、購入してくれたユーザーへのメッセージなどを書いたリフレットも入れるなど、それなりに準備があるからだ。
 それでも「rebake」でのロスパンの販売は続けていきたいと田中さんは考えている。
 「食品ロスをなくし、皆で社会を良くしたいという気持ちや色々な人にパンを食べてもらいたいという思いもありますが、心情的にどうしても捨てたくないという強い思いもあります」
 田中さんはパンを丁寧に作り、丁寧に販売している。
 「糖質が多いと言われがちなパンですが、今後も『まごわやさしい』の標語に従って、体に優しい素材を積極的に取り入れたパンを開発し販売していきたいですね。そのためにも色々な人に当店のパンを食べてもらい、当店のことを知ってほしいですね」(田中さん)

SHOP DATA
店名:Hearty Bakery
住所:〒270‐2218 松戸市五香西2‐15‐26
電話:047‐710‐7496
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:月曜、火曜、水曜
品揃え:約40品目
スタッフ:製造常時1人、販売常時1人
店舗面積:厨房6坪、売り場6坪

限り有る資源を有効活用したい

 「rebake」の運営会社、クアッガ代表の斉藤優也さんの話 パン作りをされている方は皆さん、すさまじいパンへの愛を持っています。ロスパンの販売は「目の前の方にベストなパンを売りたい」という気持ちと、「パンを捨てたくない」「パンを美味しく食べてほしい」という願いの集合体です。特に、コロナ禍以降はお客様が戻ってこなかったり、原材料の高騰で作れるパンが変わってきたり、ベーカリー全体でも大きな変化が起きています。
 そんな中で、目の前のお客様に求められるラインナップを揃え、また手に取りやすい価格にするには、ロスパンを二次流通することでロスのコストを下げることが、一つの手段として店舗で定着し始めていると思います。また、数年前と比較して消費者の意識も変わり、「SDGs」という言葉が非常に身近になり、「ロスを減らすために再販する」というような行為が、環境のために必要な行為だと消費者に広く受け入れられ始めていると感じます。今後も、限り有る資源を有効活用し、持続可能な社会にしていくため、またパン職人の働き甲斐を増進する意味でも、ロスを減らす活動というのは、パン業界のみならずすべての業界で進んでいくのだろうと考えています。

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