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| レポート/2025年3月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 日本のパンを世界に発信するために - ブーランジェリー・ジャンゴの川本宗一郎シェフ | |
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川本シェフは、幼少期にブラジルやフランスなどで過ごした経験を持つ。成長してグラフィックデザイナーを志したこともあったが、身近にあったパンを作る仕事を選んだという。開業以来毎年、奈津子夫人と共に欧州などに視察に行き、またSNSを駆使してグローバルな視点でパン作りを行っている。世界に通用する日本のパンの立ち位置や、ベーカリー経営の魅力などについて話を聞いた。
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日本のパン屋は世界一クリエイティブ
SNSの発達により、世界が本当に身近になりました。今、注目しているのはインドネシアのドン・ベーカリー。仏パリと時差なく、ていねいな仕事で、高品質のヴィエノワズリーなどを提供しています。しかも今、続々と同国の各地に支店を出店。高技術を伝授し、維持するノウハウが確立されていることにも驚きです。世界中でパン屋は進化しており、今や本場の欧州に追い付け、追い越せの時代ではありません。 日本に関しては、さまざまな国際コンクールでも上位に食い込む技術力があり、材料もパンに合う国産小麦の開発が進められています。その結果、日本のパンは他国では手に入らないほどの品質を誇っています。日本も欧州のパンを目指すのではなく、次の段階に入っていると思います。 日本のパン職人たちがこれまでひとえに努力してきたのは、「日本人の口に合うパン」の開発だった思います。口どけがよくソフトで、またご飯のようにもちもちとした食感、深い味わいを引き出すこと。欧州のような伝統的製法ではなく、日本独自に発展した「湯種」、また高温でオートリーズをとって酵素の力を引き出す「湯ゲル」、また「麹」を発酵に使用することなどを考え出し、技術を進展させています。これはパン製法の伝統がないからこそ、ルールに縛られずに創意工夫ができたからなのかも知れません。世界中のどこよりもクリエイティビティーが高いのが日本のパン屋なのだと思います。 昨年夏にパリに視察旅行に行ったのですが、欧州が経済的にも疲弊している中で、パン屋さんも元気がないようでした。バゲットなどはもともと売価が低く設定されていて、値上げがしづらいことも理由にあるのでしょう。一方で元気な店の多くが、これまでなかった種類の菓子パンを提供しています。各店がそのような独自のパンに注力することは、とても日本的だと思いました。 世界に向けて高加水のパンを 例えば、一昨年来から流行が続いている日本生まれの「生ドーナツ」ですが、これまでにない食感が好評で、本家本元はニューヨークにも出店。世界に向けて販路を拡大しています。このような前例もあり、先述の湯種などの製法を凝らした日本独特の「高加水のパン」は、世界に向けて発信すべきです。あえて命名するとしたら「ZENブレッド」。ZENとは禅。修行することで仏に近づく「自力本願」の思想です。職人各々が修行僧のようにパンに向き合って開発してきた同製品のネーミングには最適であり、外国人にも刺さりやすいと思います。また高加水のパンは粘度が高くて機械耐性がないため、大手製パンで量産できないことも付加価値となります。 先述したようにSNSの発達により東京などの都市だけではなく、ローカルな地域のパン職人でも世界に向けて発信することが可能となっています。何かしらフックがはまってバズれば、世界中のパン好きがその店に注目する時代なのです。日本各地に私が注目している革新的なベーカリーがありますが、シェフは20〜30代です。まだまだ収れんされていない、混沌とした状況で、世界に向けて大爆発を起こす前夜のようですね。個人店が熱い時代となっています。日本のパン職人が、世界の最先端を走っていると考えたら、誇りをもって仕事に取り組めます。 ベーカリーには大きな魅力が満載 少子化が続く現在、飲食業界は人手不足に陥っています。今後10年〜20年、もっともっと深刻になっていくでしょう。このままではパン業界も縮小していくばかりです。そのような中で、ひとりでも多くの若者に向けてパン業界の良さをアピールし、参入者を増やしていく必要があります。裾野を広げなければ原材料の供給業者も減少し、誇ってきた技術も廃れてしまいます。 パン屋という職業の優位性として若者に向けて言いたいのは、「職人になるためのハードルは低く、独立して経営者となれば失敗するリスクが低い」ということです。職人になるには専門学校で学ぶ方法もありますが、パン屋さんに修業に入り、製造を一から習う道もあります。ここで数年、真摯に取り組めば、技術は身に付くでしょう。勉強が嫌いで食べることに興味がある人には特に向いています。材料、製法などを工夫していく工程は、ある種の作品製作のようで、仕事はアーティストに近い。自尊心も満たされ、自己実現もできるのです。 創業しやすく、夫婦二人でミニマムに始めることもでき、体力と気力をフル回転させれば、ある程度の安定した収入も得られます。なぜパン屋が失敗しづらいのかといえば、飲食全般の中で「水商売の度合い」が極めて低いからです。これは景気の良し悪し、世間の人気や嗜好に左右されにくいという意味。顧客は年齢、性別を問わず幅広く、生活の中のちょっとした贅沢という位置付けとなるのが個店のパン。非常に堅実な商売なのです。そして上手に拡大していけば大企業の勤め人よりも高収入を得ることも十分可能です。 |


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