よそ者ベーカリーが通りを変えた-ブーランジュリー べべ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2011年4月号

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よそ者ベーカリーが通りを変えた-ブーランジュリー べべ
鎌倉駅に近く、古都の風情が漂う極楽寺駅。駅前の通りを歩いてすぐのところに同店はある
外から店内の様子がよく見え、店内奥にある厨房の気配も感じるオープンなつくりの店構え
 昨年9月にオープンしたばかりのベベーカリー「ブーランジュリー べべ」の入り口のドアにはこんな貼り紙があった。
 「駐車場は使用できなくなりました」
 来店客用に借りていた駐車場が、宅地用に売り出されたのだ。しかし、意外にもこの事態を招いたのは同店の存在だ。
 「駐車場のオーナーには、『昔から変らない所だったんだけど、お店(同店)ができてから人通りが増えたんで、駐車場にしておくのはもったいなくなった』と言われました」と話すのは、同店のオーナーシェフ、安藤潤さん。
 平日の午後の取材中、店前を通る人のほとんどが、安藤さんに声をかけていく。車窓越しにも「あとで買いに行きますね」と言う人もおり、すっかり地元の人に馴染んでいる。オープンしてまだ半年も経っていないとは思えない様子だ。
 同店があるのはJR鎌倉駅から江ノ島電鉄で7分の、古都の風情漂う極楽寺駅から歩いてすぐの場所。地主など昔から住み続けている人が多く、挨拶回りのときには、「自分がよそ者であると強く感じた」と安藤さん。一度だけ受けたというクレームの際、「35年前から住んでいる客に対して」というフレーズがあった。
 しかし「よそ者」としてオープンした同店は、今では客の9割が地元客。そして通りの雰囲気をも変えた。半年足らずの間に、どんな仕掛けをしたのだろうか。



ここのパン屋は「大丈夫」
オーナーシェフの安藤潤さん(左)と、製造担当のスタッフ
あんぱんだけで4種類揃う。写真手前から時計回りに、有機のこしあんと餅を包んだ「極楽寺あんぱん」(150円)、桜あんと餅入りの「桜もちぱん」(150円)、「クリームパン」(130円)、子どもに人気の「キャラメルミルク」(130円)、有機の粒あん入りの「小倉あんぱん」(130円)、甘栗入りの「栗あんぱん」(130円)、パン職人仲間から高評価の「ブリオッシュ」(100円)
「ペイザン」(400円、ハーフは200円)。セミハードのかたさにして年配者でも食べやすくした「ペイザン」の食感はふんわり、もっちり
自家製酵母を使用したハード系で人気の「フィグ」(260円)、「ブルーベリー」(200円)、「ノア」(200円)。「クロワッサン」(160円)は内側の生地が弾力がある
袋詰めの間にレジ横にある厨房の中を見ることができる

 オープン前の挨拶回りの際、「昔からのパンが良い」「かたいのは嫌だ」「あんぱんやクリームパンが食べたい」との声が目立ち、年配の人が多く住むところだと感じたという。
 安藤さんは、「フランスパンも、チョココロネもどんなパンでも焼ける職人になりたい」と、レストランのベーカリーや大手製パンメーカーに勤務したり、学給パンを作るなど多様な経験を積んだ。ホテルのベーカリーでプロデュースを一任されたこともある。「いろいろ作ってきた中で、もちろん自分の作っていきたい理想というのもあります。でもそれは、『ここのパン屋は大丈夫』と思ってもらってからやっていこうと思っています」
 「年配のお客さんは、新しいものには手をつけず、ベーシックなものを好むだろうと思っていました。やはり予想通りでした。それに味だけでなく、見た目もです。『クリームパンはなぜグローブ形じゃないの?』と聞かれた位ですから」
 40〜50品目揃ううち、あんぱんだけで4種類を揃える。「単純に売れるんです」と安藤さん。「カレーパン」や「コロッケパン」、「メロンパン」も、やはり人気の品。「フィリングのカレーなどは、子どもから大人まで誰が食べてもおいしいと思える味付けにしています」
 ハード系のパンも並ぶが、かたさはセミハード。見た目はずっしりと重そうだが、クラストは軽く、クラムはふ
んわりとやわらかく仕上げている。
 「年配のお客さんは、ハード系やルヴァンの味が嫌いなのではなくて、それらのパンはかたい、というイメージを強く持っているんです。シチューに合うパンを聞かれたときに『ハード系だけど、かたくないんですよ』と『ペイザン』を勧めたら、それ以来すっかり気に入ってくれました」
 さらに、ハード系の先入観を払拭してもらうための工夫がある。もともと「カンパーニュ」として販売していたものを、認知度が低めの名前「ペイザン」にして興味をひきつけた。
 同店の商品は一見すると、客の期待に応えるようにして揃えられたものばかりだ。しかし、その一つひとつには、安藤さんのこうした仕掛けが施されている。その仕掛けによって、ベーシックなものしか買おうとしない客は、いつの間にか同店の個性に引き込まれていくのだ。
 安藤さんはハーブが好きで、いつか使ってみたいと話す。
 「でも、この前、年配のお客さんが『ハーブが苦手なのよね』と話していたんです。今はまだ難しいとしても、いつかは、当店が勧めるなら『食べてみようかな』と思ってもらえるくらいの信頼関係を築いていきたいです」



POPは必要ない
安藤シェフの妻、信代さんは販売担当。「この辺の方はよく話をしていってくれて、楽しいです」と話す
白と木目が基調となった店内に、パンがよく映える
厨房は売り場スペースの倍以上の広さ。売り場より床が高くなっており、作業中の手元が売り場からよく見える
仕込み中の生地には「おいしいペイザン」と書かれたラップがはられていた
 仕込み生地にかけられたラップは「おいしいペイザン」とマジックで書かれていた。半信半疑で「書くだけでおいしくなるんですか」と聞くと、「もちろんですよ」と、安藤さんもほかのスタッフも口をそろえた。
 「材料には特にこだわりはないんですけど、気持ちは込めるんです」
 こう話す一方で、有機のあんこを使ったり、カスタードの甘味はキビ砂糖を使った自家製だ。安心安全にこだわっているというより、おいしく食べてもらいたいと思った結果のようだ。
 商品横にあるPOPは極シンプル。材料や製法のこだわりというよりも、中に入っている具は何かということが一言書かれているだけだ。
 「POPの文字は、お客さんはほとんど読んでいないと思います。文字も小さくしているんです」。安藤さんは、実はPOPが好きじゃないという。「すっきりとした空間の中で、パンを見て、選んで欲しいんです」
 店内は、白と木目を貴重としたシンプルなインテリア。並べられたパンの存在感が、強く感じられる空間だ。3〜4人入ったらいっぱいになるほどのスペースの店内には、夕飯の話など日常会話が響く。こうした雰囲気の中では、商品についても気軽に話ができる。POPはもはや必要なさそうだ。



SHOP DATA

店名ブーランジュリー べべ
住所神奈川県鎌倉市極楽寺1‐4‐3
電話0467‐24‐8595
営業時間午前10時〜午後6時
定休日日曜、第2・4月曜日
品揃え40〜50品目
店舗面積厨房11坪、販売スペース4坪
スタッフ製造2人、販売1人
客数平均約100人
客単価平日700〜800円、土日祝日1000円



原価計算女王
原価計算女王

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