神戸を代表するベーカリー。看板商品はドイツ式煉瓦窯で焼く食パン - フロイン堂(兵庫県神戸市) - ブランスリー電子版

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レポート/2025年8月号

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神戸を代表するベーカリー。看板商品はドイツ式煉瓦窯で焼く食パン - フロイン堂(兵庫県神戸市)
右から、3代目隆さん、2代目善之さん、隆さんの妻、篤子さん、4代目陸人さん
「フロイン堂」正面の店構え。厨房は地下に設置されている
店は阪急岡本駅からすぐの場所に。レトロ感漂う一軒家が「フロイン堂」
30キロの小麦粉に水を加えると、相当な重さ。この生地を混ぜ、捏ねるのは、目下4代目陸人さんの仕事
捏ね上がった生地を手に取る4代目の陸人さん
分割、丸めの作業は2〜3人で行う。近頃は、働き始めて丸3年になる陸人さんに丸め作業を任せている
神戸と大阪の間に広がる高級住宅街「阪神間」。その一角、阪急岡本駅近くにある老舗ベーカリー「フロイン堂」は、昭和7年創業の歴史を刻みながら、今も変わらぬ手仕事でパンを焼き続けている。地下の工房では、92歳の2代目を中心に3世代が力を合わせ、昔ながらの手捏ねとドイツ製の煉瓦窯で食パンやハード系パンを焼き上げる。その味を求め、親子孫3代で通う常連客も多い。同店は神戸を代表するベーカリーだ。

創業当時と変わらないノスタルジックな店構え
 神戸の中でも、ベーカリー激戦区と言われている「阪神間」と呼ばれる神戸と大阪の間にある高級住宅街エリア。この地域にある阪急岡本駅の南改札から歩いて1分足らずの場所に「フロイン堂」がある。石畳の通りに面した店はノスタルジックな佇まいが、郷愁を誘う雰囲気。このエリアには大学も3校あり、店前の通りは朝夕多くの学生たちが通るほか、阪急岡本駅とJR摂津本山駅の距離が徒歩5分と近いことから、通勤する人が乗り換えに利用する街でもあり、人通りが多いエリアとなっている。
 店に入ってすぐのガラス張りの棚に並ぶのは、開店の9時にはまだビスケットのみ。朝の10時すぎくらいから、「あんドーナツ」(税込220円)、「カレーパン」(税込250円)などのフライ物やライ麦パン(1本税込720円、ハーフ税込360円)、フロッケンセザム(1本税込1080円、ハーフ税込540円)、「田舎パン」(大サイズ税込800円、小サイズ税込390円)などが順次並び始める。
 パンの焼き上がりと並行して、朝の9時から、スタッフが忙しく受けているのが電話での予約。客が目指すのは、やはり看板商品の「食パン」(1本税込960円)で、繁忙期には予約受付開始から30分ほどで、予約がいっぱいになる。食パンの焼き上がりは、午後1時半前後。焼きたてを目指すお客さんが訪れ、店がいちばん賑わう時間帯となる。
 そんな「フロイン堂」の創業は1932年(昭和7年)。現在の店主、竹内善之さんの父親(初代店主)が開業した。初代店主の従姉妹に当たるヨネさんが、三宮にあるドイツパン店「フロインドリーブ」を営んでいたハリー・フロインドリーブさんと結婚。そのご縁で初代がハリーさんに弟子入りしドイツパンの作り方を学び、1932(昭和7年)に「フロインドリーブ2号店」を岡本に構えたのがはじまりだ。それが原型となり、戦後に「フロイン堂」という店名に改称して再スタートした。

三世代で守る伝統の味と、手捏ね、煉瓦窯のこだわり

 昭和、平成を超え令和7年の現在は、2代目の善之さん(92歳)、3代目の息子、隆さんと妻の篤子さんに加え、隆さんの息子で4代目の陸人さんの3世代で店を切り盛り。客もまた、親子孫と3世代が通う常連も多い。
 店の地下にある厨房には、作業台と「舟」と呼んでいる大きなこね桶や、昔ながらの発酵室、そして創業以来、ずっと稼働しているドイツスタイルの煉瓦窯が鎮座。朝7時、その窯に火を入れて煉瓦を温め、生地を手捏ねするところから「フロイン堂」の1日が始まる。
 大人1人が寝転んで入れそうなほどの大きな捏ね桶に、30キロの小麦粉、水などの材料を入れたら、全身の力を使いながら混ぜ、捏ねる作業が始まる。この作業を担当しているのは、24歳、若いパワーみなぎる陸人さん。機械に頼ることなく生地を捏ねることは、創業当時から変わらず行っているこだわり。「『たなごころ』というのですが、捏ねるときに手の平に感じる生地の感触でパンの食感、味わいを作っているんです」と、陸人さんの様子を見守りながら話す善之さん。季節、天気に左右される気温や湿度で変わる生地の状態を手で感じ取り、水分量の調整、粉の配合などを変えていく。
 「感覚でパンを焼く、それが楽しいんですよ」と善之さん。
 混ぜること約1時間、粉と水が合わさって生地は大きな塊となり、じんわりと発酵を始めていく。1回に仕込む食パン生地は約70本分。
 一次発酵が終わった生地を作業台に移したら、3人が分担して分割、丸め作業を行う。そして午後12時30分頃、ホイロでの最終発酵が終わった生地を煉瓦窯の中へ。ドイツスタイルの一層式煉瓦窯は、かつては薪をくべて煉瓦を温め、その蓄熱でパンを焼いていたのだが、薪が手に入りにくくなったという事情や、環境への配慮もあって、現在はガス火で煉瓦を温めている。「遠赤外線効果で中までじんわりと火が通るんですよ」と善之さんが話すように、約40分かけて、じんわり火を通す食パンはしっかりと窯伸びし、クラストはパリッと香ばしく、クラムはしっとりとしたテクスチャーとなる。
 「歯切れがよくサクッとした軽い食感が好きなんです」「毎日食べても飽きることのない味わいです」などと評価する常連客が多いのもうなずける。
 焼き上がった食パンは、長さ35センチで3つ山の1本(税込960円)で販売するほか、1本のハーフカット(税込480円)、1本の3分の1サイズ(税込320円)にカットして販売している。





開業当初から使い続けている食パン型は、特注品だ
最終発酵をとった食パン生地を窯の中へ投入
煉瓦窯の中で焼き上がった食パン
「今日もよい食パンが焼けました」と竹内善之さん
ライ麦粉100%使用の本格的なライ麦パン
黒ごまをぶした「フロッケンセザム」(1本税込1080円、ハーフ税込540円)
隆さん考案のハード系のパンの数々も人気

 看板商品である食パンの他に、パン好きに人気を博しているのがハード系のパンだ。パン職人がアイデアを出し合って切磋琢磨する集まりに参加した際、「『フロイン堂』の煉瓦窯は、ハード系のパンを焼くのに向いているのでは?」という言葉をもらった隆さんが一念発起。
 「わたしが店を手伝うようになった頃はパンのラインナップも少なくて、食パン以外のパンも焼いてみようと、ハード系のパンを作り始めました」(隆さん)
 同時に天然酵母にも興味を持ち始めた隆さんが、レーズン種、サワー種などを使って天然酵母パンの製造を開発。「カンパーニュ」(税込1200円)や「バゲット」(税込500円)は、食パン同様に、外側のクラストの香ばしさ、内側のクラムのしっとり感が特徴的だ。
 また、今でこそ、スタンダードになりつつある「ライ麦パン」は、ライ麦粉100%で作っている。
 「販売し始めた20年前はなかなか認知されず、苦労しました。『クリームチーズやはちみつと合わせてどうぞ』などと食べ方の提案を書いたポップを出してみたり、口頭で食べ方を伝えているうちに、じわじわと認知されていきましたね」(隆さん)
 現在は、このライ麦パンだけを目指してやってくる外国人客や「ライ麦100%のパンを探していたんです」と喜ぶ客も多数。
 「『メニューに使いたくて』『コースの一品にしたいので』と買ってくださるカフェや天ぷら屋さんもいて、ライ麦パンの可能性を感じました」(隆さん)
 ライ麦パンから派生した「フロッケンセザム」(1本税込1080円)は、ライ麦生地にラム酒に漬け込んだレーズンとくるみを合わせ、まわりに黒ゴマをまぶして焼成したアレンジパン。
 「酸味の強いライ麦パンを少し食べやすくしたいと考えました」(隆さん)
 窯の余熱を利用して焼く、ビスケット、バターケーキといったスイーツ類もまた人気商品。すべての商品は、戦災も震災もくぐりぬけてきた強運の煉瓦窯が生み出す唯一無二の味だ。

SHOP DATA
店名:フロイン堂
住所:〒658-0072兵庫県神戸市東灘区岡本1丁目11-23
電話:078-411-6686
営業時間:午前9時〜午後6時
定休日:日曜、祝日、第1、第3、第5水曜
品揃え:パン約12品目、菓子約2品目
スタッフ:製造常時2〜3人、販売常時1〜2人
店舗面積:売り場約10坪、厨房約10坪
日商:平日約10万円、土曜約13万円



「バゲット」(税込500円)と「カンパーニュ」(税込1200円)
「ビスケット」(5枚入り税込480円)も人気商品
「バターケーキ」は大(税込980円)、小(税込670円)の2種
「あんドーナツ」(税込220円)。太白ごま油で揚げている
「カレーパン」(税込250円)。食パン生地を使用
数種の小麦粉、細挽きのライ麦粉を配合し、天然酵母で発酵を取る「田舎パン」



大きな木の作業台で親子孫3代で作業をしていく
焼き上がった食パンを1階の店に運んでいく



原価計算女王
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