人気に火が付き、売り切り型の営業に変更 - エレファントベーカリー - ブランスリー電子版


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お店拝見/2021年10月号

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人気に火が付き、売り切り型の営業に変更 - エレファントベーカリー
店主の田中康一さんと妻の奈穂子さん
「エレファントベーカリー」の外観
窓からの自然光が爽やかな店内。立体的ではなく平面的な陳列をすることで、高齢者もパンが取りやすいようになっている
低温長時間発酵の生地にホワイトチョコチップを練りこんだ「ブラン」
右から2番目が、チョコチップ入りの「ショコラ」(税込194円)
「クランベリークリームチーズ」(税込み210円)
これからも一人で作り続けたい

 「本日のパン完売いたしました」
 広島市の中心部から10キロほど離れた場所にある「エレファントベーカリー」のSNSには、こうした文言が連日のように投稿される。投稿される時刻は、ほとんどの日が午後1時から2時頃。開店するのは朝10時なので、わずか3〜4時間で完売してしまうという人気ぶりだ。
 製造は、店主の田中康一さんがほぼ一人で行っている。5坪の売り場に並ぶのは、50種類弱のパンやマフィン。 パンの人気上位は、ホワイトチョコチップ入りの「ブラン」(税込220円)、チョコチップ入りの「ショコラ」(税込194円)、「クランベリークリームチーズ」(税込226円)など。これらは、ルヴァンとわずかな量のイーストを使用し、低温長時間発酵をとった生地で作る。もちもちした食感で味わい深い生地に、それぞれの具がたっぷり練り込まれているのが特徴だ。
 販売は妻の奈穂子さんとほかのスタッフ合わせて3人体制をとり、レジ打ちや袋詰めなどを手分けして行う。それでも、開店から完売するまでの間、客は途切れることなく訪れるため、「ずっとレジ打ちをしていて目が回りそうになるほど」(奈穂子さん)の忙しさだ。
 SNSの更新は奈穂子さんが担当。「気温が35度以上になるような猛暑の日もお越しいただくので、商品の有無をできるだけ早くお伝えしたいと思っています。お客様からの要望もありましたし、役立てていただいているのだと思います」(奈穂子さん)
 開業したのは2016年10月。開業告知のチラシ配布は町内だけという狭い範囲だったにも関わらず、好調な滑り出しだった。さらに約3カ月後、イベントに出店したり、地元の新聞などのメディアに出たりすると、町外からの客も増え、人気に火が付いた。それから、昼過ぎになるとほぼ売り切れてしまうという現在の状態になった。
 完売すると、販売スタッフが今度は厨房に移り、翌日に売る商品のための作業を始める。マフィンの生地を型に入れたり、「クロックムッシュ」(税込313円)などの調理パンの下準備を行ったりだ。
 田中さんは、この昼過ぎの間が唯一の休息時間となる。午後8時には厨房へやってきてパンの仕込みを始め、それから翌日の昼まで働き通しとなるからだ。こうしたタイムスケジュールをとっているのは、田中さん自身が選択した結果だという。
 「夜に集中して作ることが好きですね。それと、こだわりが強いのか、自分の作るものは自己完結させたいという思いが強いので、一人で作りたいんです。妻も丸めなどの作業はできるので手伝おうとしてくれますが、断ってしまいます。製造量も増え続けていますが、まだいけるという余裕があります。仕事を選択するときに、自己分析をしたり色々と考えたりした結果の今なので、当初思い描いていた持続可能なイメージが、確信に変わってきていると実感しています。ただ、子どもが大きくなってきたら、家族の時間を作りたいので、夜型は変えていかないといけないかなと考えています」(田中さん)

自分自身が持続可能と思う職を選択

 田中さんは30歳のときにパン業界に入った。DJを志望し音楽の専門学校を卒業した後のことだ。
 「卒業した当時、気持ちはかなり追い詰められていました。このままDJを目指すのは難しいと諦め、まず仕事を見つけなければということになりました。それで仕事探しのために自分で条件を出したんです。体を動かして働けること、ものづくりができること、などです。昔、レストランが併設されているライブハウスでアルバイトをしていたときに、レストランのシェフから、『パンはパン屋さんで買うものだよ』と、パンをもらったことがあります。それまでは、コンビニのパンを当たり前に食べていたので、時間をかけて手作りされたそのパンによって、パンの印象が変わりましたね。そのときの記憶から、パンを作る仕事が正に条件に合致しているのではないかと思い、パン職人になろうと決めたんです」(田中さん)
 専門学校のときから故郷の広島を離れ、東京で生活していた田中さんは、都内のベーカリーを食べ歩き、おいしいと思った「メゾンカイザー」で働くことを志願。入社して3カ月後に社員になり約5年働いた。その間に同じ広島県出身で大手製パン会社に勤務していた奈穂子さんと結婚。結婚を機に、独立開業の予定を立て、その予定通りに広島に戻って同店の開業となった。店舗の場所は、当時妊娠していた奈穂子さんの実家に近いことを第一条件として決めた。
 「妻はパン屋の店長や衛生管理業務の経験もあるので、開業時から心強い存在です。コロナ禍での販売の仕方も、レジにアクリル板を設置したり、マスクの着用をお願いしたりなどということを、先手を打って行ってくることができました」(田中さん)



クリームを上にのせて焼き上げる「クリームパン」(税込183円)
マフィンは毎日5種類並ぶ。季節によってフレーバーが変わる
マフィンはパンを食べた後に食べられるボリューム

 一番人気の「ブラン」など、15〜20種類のパンは、「メゾンカイザー」とほぼ同じ製法と材料で作っている。
 「勤務していたときと違うのは、誰がやってもぶれないレシピでなくていいということです。自分だけが分かる微妙な調整ができますね。また、低温長時間発酵にかける時間は、10〜17時間までいろいろと試してみたのですが、短い時間でも満足のいくものができるようになったので、今は10〜12時間にしています」(田中さん)
 最近発売して好評なのは「クリームパン」(税込183円)。クリームは、パンで包まずパン生地の上にのせて焼き上げる形だ。
 「包餡が苦手だからという理由で作ってこなかったんです。しかし、もうなくなってしまったんですが、ほかのベーカリーでこの形を見て、これなら作れるということで始めました。クリームがとろっとしているのが特徴です」(田中さん)
 パンだけでなくマフィンも人気で、「プレーンマフィン」(税込162円)や「チョコバナナマフィン」(税込205円)、季節限定の「アナナスココマフィン」(税込216円)など、毎日5種類ほど出している。マフィンのフレーバーは、奈穂子さんが担当。
 「マフィンは、四季折々の果物や野菜を使って季節感を演出しています。ボリュームは、パンを食べてちょっと物足りないと思ったときに、追加で食べるのにちょうどいいようにしています。季節を感じながら、味わっていただけたら嬉しいですね」(奈穂子さん)

SHOP DATA
店名:エレファントベーカリー
住所:〒736-0083 広島県広島市安芸区矢野東5-7-2
電話:082‐888‐6092
営業時間:午前10時〜午後7時(売切れ次第終了)
定休日:日曜、月曜
品揃え:約50品目
スタッフ:製造常時1人、販売常時3人
店舗面積:売り場約5坪、厨房約9坪



この記事の読みどころ

●自分の性格を考えて、持続可能と判断したスタイルが、午後8時から翌朝にかけて一人でパンを作ること。
●店舗は、妻の奈穂子さんの実家に近い物件に決めた。
●クリームをトッピングして焼いたクリームパンが人気商品に。
●パンの製法を標準化する必要がないところを強みに変えた。





原価計算女王
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