備えこそが発展の基礎 - パン工房コモスの秋葉光雄さん - ブランスリー電子版


ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
インタビュー/2017年11月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


備えこそが発展の基礎 - パン工房コモスの秋葉光雄さん
店主の秋葉光雄さん。物作り52年のベテラン職人
 東急目黒線・奥沢駅から徒歩約3分の場所に、今年で35周年を迎えたパン工房コモス(03−3727−9799)がある。店主の秋葉光雄さんは1949年(昭和24年)生まれで、製パン経験52年のベテラン職人だ。毎日180種類の商品を揃え、店を訪れる老若男女の要望に応えるため奮闘する。材料は国産にこだわり、手間暇かけて商品を作り出す。パンのみに捉われる時代ではないと、賄い飯から誕生した弁当や丼ものを顧客のために提供する。ベテランの心意気を見せる秋葉さんに話を聞いた。



街の台所と社交場を兼ねるコモスの外観
30年間売れ続ける「なめこフランス」
ラム酒でしっかりと下味をつけて焼き上げた「りんごドーム」
売り場を囲うように作られた棚に商品が溢れる
ころも状のコロッケ。購入して自宅で揚げる人も
街の台所の心意気

―――商品が豊富ですね。お昼のピークは過ぎたんですよね。
秋葉 はい。11時から午後1時までの昼のピークは過ぎました。最初のピークは開店後の朝7時30分を過ぎた頃です。3回目のピークが午後4時を過ぎた頃から始まります。
―――1日に3回ピークがあるんですか。常に商品が豊富にあるのはそのためですか。
秋葉 お客様のことを考えれば、より多くの商品が並んでいたほうがいいでしょう。
―――午後8時過ぎまでオープンしていますね。
秋葉 店は「街の台所」だという自負があります。近くにコンビニエンスストアが出来てから、コンビニに負けない物作りが必要だと考えてきました。大手メーカーはコンビニとコラボして商品を販売しています。今のパン屋はパンだけを作っていればよいという時代ではないと思います。
―――そういえば、おにぎりやお弁当が何種類もありますね。
秋葉 おにぎりに始まって、マーボー豆腐にマーボーナスとカレーライス。丼ものだと親子丼にかつ丼、それに生姜焼きもあります。全てワンコインの500円でおつりがくる値付けをしています。それと、大盛はサービスなんですよ。男性には大盛を注文する人が多いですね。
―――街の台所とのお話でしたが、大衆食堂のようにも思えます。
秋葉 そうですね。地域の皆さんに気軽に店に来てほしいのです。コモスに行けば何でも手に入ると思ってもらえるようにしたかったんです。

手を抜かない物作り

―――新鮮さも意識しているんですか。
秋葉 180種類を品揃えしていますが、その内50種類以上がサンドイッチです。各種の具材が必要ですが、私どもでは、具材の多くを手作りしています。朝3時からサンドイッチ用の具材を仕込みます。具材の材料は、野菜も肉も国内産を利用しています。これらを自店で加工します。もちろん、他の調理パンも同様です。例えば、マーボー豆腐は一から仕込みますし、生姜焼きも前日から仕込みます。ですから、他のパン屋さんと比べると香辛料の品数はかなり多いと思いますよ。物作りをする人は手を抜けないはずです。
―――値段も高くなりそうですね。
秋葉 そんなことはありません。サンドイッチは200円から300円台ですしね。特別高くはないです。毎日食べるものに高級なものは要らないと思っていますから。
―――国産の材料にこだわっているようですが。
秋葉 確かに使う小麦粉の80%は国産です。フランスパン用には「麦の路」という国産小麦粉をブレンドした粉、その他の商品には北海道産の「ゆめちから」を使っています。油脂はバターです。材料費の高騰もありますが、値上げはフォカッチャ類と2年前にあんパンを10円値上げしただけです。全体的には抑えています。
―――売り上げ的には。
秋葉 問題ありません。地域のお客様を大切にしてお付き合いしています。例えば、地域のお祭りでは用意した850個のおにぎりが売り切れましたし、運動会があれば500個のあんパンの注文が入ります。また、土日ともなると、食堂代わりに皆さんに使ってもらっています。パンの他弁当を目当てに来てくれます。中には、1日に朝昼晩と3回も食事用に求めてくれるお客様もいます。一人暮らしの高齢者の方は、店を台所代わりに利用しているようです。一人分のおかずを作るより、食費の無駄が省けるのでしょう。その際の購入品には、サンドイッチ、おにぎり、それに揚げ物が多いように思います。
―――揚げ物ですか。
秋葉 コロッケは人気ですよ。揚げたてはもちろんのこと、ころもを付けた状態の物を購入して自宅で揚げる人もいます。
―――何でもあるんですね。
秋葉 先ほども言いましたが、パンだけにこだわる時代ではないと思います。私はコモスという場所を社交場と捉えています。お子さんから高齢者の方までが、気楽に話しにこられる場所でありたいと思っています。皆さんと話していると、お客様のニーズが伝わってきます。今、7種類の食パンがありますが、その多くはお客様の要望から生まれたものです。砂糖の入っていない食パンもあります。話の具合で賄い食を土産としてお渡しすることもあります。



ころも状のコロッケ。購入して自宅で揚げる人も
おにぎりに使う梅干しも自家製。
パンの間にマーボー豆腐等弁当が並ぶ。店で一から料理して仕上げる
無駄にしない姿勢が大切

―――賄い食をお客さんへ渡すのは、プレゼントですか。
秋葉 私どもの姿勢は、「作ったものは無駄にしない」です。仮に今日機械の修理業者が修理に来れば、帰りには必ずパンでも弁当でも感謝の印として渡します。近所のお店の方にもお裾分けします。根底には、人を大切にしなければ商売の発展はないとの考えがあるからです。
―――人とのつながりを大切にするところから誕生した人気商品はありますか。
秋葉 定番の「なめこフランス」(税込200円)ですかね。
―――オープン時からですか。
秋葉 いや、1982年(昭和57年)に東急目蒲線・多摩川園駅(現東急多摩川線・多摩川駅)前に創業して5年ぐらい経ってからですね。注目され始めたのは1993年(平成5年)に奥沢に移転してからです。約30年前から販売しているヒット商品です。店頭に並んでいる数だけ全部買う人もいるくらいです。
―――他にもありますか。
秋葉 「りんごドーム」(税込230円)です。りんごを半分入れます。りんごやレーズンをラム酒にしっかりと漬け込んで下味をつけてから作っています。
―――手間暇かけますね。
秋葉 もちろん、手間は惜しみません。店にはお金は掛けませんが、材料には十分な費用を掛けます。

遊ばずに備えるのが商売

―――創業以来35年になるとのことですが、長く商売を続ける秘訣はありますか。
秋葉 パンは日常的に食べられるものですから、高級品にしてはいけないと思っています。そして、あきらめないことと、遊ばないことが大事ですね。
―――遊んではだめですか。
秋葉 若い人は5〜6年経営して、儲かり始めると遊びたい気持ちが勝って、高級品に手を出したりすることが多いように思います。調子のよい時にこそ売上金をプールしておくべきなのです。つまり、備えが大事なんです。これを怠ると商売を続けられません。商売人なら当たり前だと思うでしょうが、良い時にこそ備える心構えが大切なんです。




2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら

読んでほしい記事

  1. コロナ禍を経て辿り着いた会話を楽しむ対面販売 - hnn
  2. 消費者はパン屋選びにSNSをどう使っているか? - 消費者アンケート
  3. ベーカリーの販促はSNSで決まり