「きょうの料理」出演後に届いたあんパンの疑問に答えます - 竹谷先生!教えてください(6) - ブランスリー電子版

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連載/2025年7月号

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「きょうの料理」出演後に届いたあんパンの疑問に答えます - 竹谷先生!教えてください(6)
 この企画を担当して頂いている竹谷先生が、5月21、22、26の各日、NHKの「きょうの料理」に出演し、「手仕込みのあんパン」の実演を行いました。今回は、その内容について、番組後、全国の視聴者から竹谷先生に直接届いた質問に竹谷先生が答えた内容を掲載します。
     ◇
 質問 いつも強力粉で菓子パンを作っています。今回、中力粉60%も使っているのはなぜですか?
 竹谷 パン作りにはいくつかの原則が有ります。
  その最も基本的なものに、①力の強い粉(強力粉)は、強い力で早いスピードで生地を練る②力の弱い粉(薄力粉)は、弱い力で遅いスピードで生地を練る③中位の力の粉(中力粉)は、中位の力で中位のスピードで生地を練る、というものが有ります。
 我々パン屋はミキサーで生地作りをしますから、タンパク質の多い強力粉を使いボリュームを追求し、サク味を出したい時に中力粉を加えて、好みの食感を追求します。従って、菓子パンには20〜30%の中力粉を加えるのが一般的です。今回のように人の手で生地を捏ねるということは、弱い力で遅いスピードということになります。そのような理由から今回は強力粉に中力粉60%を混ぜてタンパク量を少なくしています。おおよそ、タンパク量を10・5〜11%に設定いたしました。
 質問 お店には強力粉と薄力粉しか有りません。中力粉を薄力粉に置き代えてもいいですか?
 竹谷 たんぱく質量を合わせるということでは問題ありませんが、中力粉を使う方が菓子パンはサクミと同時にシットリした食感になります。
 パン屋さんではあまり中力粉を使いませんが、菓子パン生地、クロワッサン生地、ペストリー生地のタンパク質量調整に薄力粉を使っている方は、中力粉に切り替えることをお勧めします。加えて、湯種製法を導入されている方は、湯種に使う小麦粉は強力粉ではなく国内産
中力粉が最適です。それを裏付ける実験データが日本パン技術研究所から発表になっています。
 質問 なぜ、食塩とバターは最初から入れないのですか?
 竹谷 食塩にはグルテンを強くする作用と同時に、グルテンをつながりにくくする作用が有ります。そのつながりにくくする作用を避ける為にある程度、グルテンがつながった後に食塩を加える後塩法を採用することで、ミキシング時間を短縮することが出来ます。それと同時に、後から加えることで少量の塩で塩味を強く出すことが出来ます。
 バターについては、最初から加えるとパンがサククはなりますが、吸水が落ち、ミキシングに時間がかかります。
 質問 気温30度Cの中で作れば発酵室の用意はいらないでしょうか?
 竹谷 もちろん、室温が30度Cあれば発酵室も、お湯の袋も、お湯を入れた発泡スチロールの箱も要りません。ただ、生地表面の乾燥は避けたいので、風の当たらない容器の中に入れるのがベストです。
 質問 焼き上がったら、パンののった天板を一度軽く台の上に落とし、焼きチジミを防ぐ、とありますが、どういうことでしょうか?
 竹谷 小学校か、中学校でボイル・シャルルの法則というのを習ったと思います。そのシャルルの法則というのは、圧力一定の下では絶対温度と体積は比例するというものでした。つまり、「V1/T1=V2/T2(Vは体積、Tは絶対温度)」です。オーブンの中の生地中の気体の温度が摂氏100度であれば絶対温度は「273+100」度になります。これに対して、摂氏27度の部屋に出したパン中の気体の絶対温度は「273+27」度に下がります。その時のオーブンの中での体積V1を100として、室温での気体の体積V2を計算すると、約80・43となり、20%ほど体積が小さくなります。ケービング、腰折れという現象はこの20%の体積の減少に由来します。この焼きちじみは焼成後できるだけ速やかにパンに衝撃を与え、気泡膜に亀裂を作ることで、100度Cと27度Cの気体を入れ替えることで防ぐことが出来ます。
 質問 塗卵はどのように調整していますか?
 竹谷 生卵をそのまま使う方も多いと思いますが、私は全卵100%に水50%を加えて作っています。全卵のみだと焼き色が濃すぎて厚化粧になってしまいます。焼き色は好みですが私は水50%が好きです。その他に牛乳で薄める方もいますし、和菓子では全卵に卵黄を加えてさらに濃い焼き色にする製品もあります。使う直前に塗卵を作るときは、気泡が艶の邪魔をしますので、食塩を加えて消泡します。





この企画は、リテールベーカリーの活性化のための活動を行うアルバネット(竹谷氏が主宰)が行っているオンラインセミナーで、竹谷氏が受講者らからの質問に答えた内容をお伝えするものです。同時に読者の皆様からの質問にもお答えしますので、普段のお仕事の中で疑問に思っていることがありましたら是非ご質問ください。

竹谷光司 1948年北海道生まれ。北海道大学卒業後、山崎製パンに入社。1974年に日清製粉に入社。1986年、ベーカリーフォーラムを設立し、日本のベーカリー発展に貢献。著書の「新しい製パン基礎知識」は、パン職人のバイブルとされる。2010年に「美味しいパンの研究工房・つむぎ」を開店。





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