多店舗展開のリテールベーカリー - ブランスリー電子版


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特集/2016年3月号

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多店舗展開のリテールベーカリー




多店舗展開でブランドの価値を効果的に伝えていく - メゾンカイザー高輪本店
「メゾンカイザー」を運営するブーランジェリーエリックカイザージャポンの木村周一郎社長(左)と、ブーランジェリーエリックカイザージャポンの取締役で木村周一郎社長のビジネスパートナーのエリック・カイザー氏(右)
メゾンカイザー高輪本店店内の様子
メゾンカイザー高輪本店外観
質問に答え商品の説明を行っている高輪本店のスタッフ
ハード系普及の流れとともに成長

 「多店舗展開という道を選択したのは当社の企業理念の一つである『パンのある幸せな食卓を共有する場を提供していく』という目的を実現するためです」とベーカリーチェーン「メゾンカイザー」を運営するブーランジェリーエリックカイザージャポンMD本部の木村寛マネージャーは話す。
 「メゾンカイザー」は、フランスの食文化に基づいた伝統的なパンを日本で提供する場として2000年に同社社長である木村周一郎氏が創業、一号店となる本店を翌年2001年に東京・高輪に出店した。それから約15年、「メゾンカイザー」は日本国内に直営店24店舗を含む30店舗を展開するチェーンベーカリーにまで成長している。
 同社の自社製天然酵母「ルヴァンリキッド」を用いてフランスの伝統的な製法により作られたハード系などのパンは、日本人向けにアレンジしていない本場フランスのパンとして提供されながらも、多様化する日本人の食文化の中でファン層を獲得。日本のパン業界やパン職人らにも様々な形で影響を与えてきた。また、ここ15年の間に日本にハード系のパンが普及していく流れとも「メゾンカイザー」の成長は連動することとなった。
 「高輪店オープン時と比べると、日本のパン業界も大きく変動したと思います」(木村寛マネージャー)
 オープンした2001年当初はあんパンやメロンパンなどが人気アイテムの上位を占めていた。同店ではハード系のパンの試食販売を徹底。
 「試食販売はお客様と会話をするためのツールと考えていますが、スープと合わせたり、オリーブオイルをつけたりといった普段の食シーンでの取り入れ方を提案し続けました。メゾンカイザーは市場にあまり左右されることなくブランドの個性を貫くことを軸にしていますが、結果的にこうした努力が実り、ハード系の食事パンが徐々に日本人の食生活の中にも受け入れられていく流れの一つになったのではと感じています」(木村寛マネージャー)

多店舗展開を見据えての創業

 「メゾンカイザー」ではフランスで新進気鋭のパン職人であるエリック・カイザー氏が考案した自社製の液化天然酵母「ルヴァンリキッド」の製法を忠実に守り本場の味を再現。木村周一郎社長は、フランス留学時代に、カイザー氏がオーナーを務める仏・パリの「メゾンカイザー」で修行をした。木村社長はその腕前と経営センスを見込まれて帰国後にカイザー氏の在日パートナーとしてブーランジェリーエリックカイザージャポンを設立した。
 「ルヴァンリキッド」は自然界に存在する3000種以上の酵母菌を培養したものといい、200年以上前の伝統的な製法のように、自家製天然酵母の「ルヴァンリキッド」によってパン生地を低温長時間発酵する事で、複雑で奥行きのある味のパンを生み出すことができるという。この味を粘り強く試食販売で訴求することで一号店オープン時は1日わずか14本しか売れなかったバゲットなどのハード系のパンも徐々に売れるようになっていった。
 そしてその後2年の間に、銀座松屋店、伊勢丹新宿店、大丸福岡天神店と順次店舗を拡大。2004年にはカフェを併設した初店舗であるCOREDO日本橋店を出店した。
 「国内各地の100万政令都市への出店は当初から念頭にありました。『フランスの食文化に根ざしたパンのある食生活を紹介したい』『パンのある幸せな食卓を共有する場を提供したい』という企業理念をより大規模に実現することで、業界の活気を取り戻すことにも貢献できればと考えたのです」(木村寛マネージャー)。
 また、大量に使用する小麦粉やバターを生産者と共同開発するなど良い材料を安価に調達できる仕組みを作ったり、店舗での製造体制にも工夫を施したことも展開を後押ししたという。
 実は「メゾンカイザー」では直営店24店のうち約半分がデパートの食品街などに売場のみを出す形態だ。そこから車で30分以内に厨房のあるリテールの店舗が位置するよう分布させており、製造カ所を共有しデパートの売場には近場のリテール店舗が商品を届けるような仕組みになっている。そのため製造コストや設備の導入費を必要以上にかけず高品質な商品を届けることができる。



ハード系などのパンが豊富に並ぶ売場
「クロワッサン」(税込216円)は特別製法の発酵バター「MKファーメントバター」を使った逸品
ヴィエノワズリーも豊富に並ぶ売場
ハード系の看板商品「バゲットモンジュ」(税込303円)
全店で品質を統一するための努力

 「店舗が拡大していくと、各地で色々な方達に当社のパンに親しんで頂ける一方、品質の統一が大きな課題となってきます」(木村寛マネージャー)
 全店でブレなく品質が維持できるよう同社では毎月1回社内で各店(関東のみ)のシェフが集う「シェフミーテイング」と店長が集う「店長ミーティング」を行っている。その際には、各自「今日のバゲット」を持ち寄って比べ合うこともある。また各自がその日の朝に採取した「ルヴァンリキッド」を持ち寄り、臭いや粘度などの確認をすることもあるという。バゲットも吸水率で焼き上がりが違い天候や時間と合わせた微妙な調整が必要なため、こうした意識合わせを行うことが重要となってくる。
 しかし、一番の軸は、「お客様の声」(木村寛マネージャー)だという。
 「当店ではお客様との会話を非常に重視しています。『パンのある幸せな食卓』のため、会話を通じ、食べ方の提案をする一方で、買っていただいたパンに対する反響を聞くこともそれ以上に大切にしています」(木村寛マネージャー)

顧客満足につながる従業員の満足度

 また同社にとって今はちょうど転換期でもあるという。
 「今までの約15年はCS(顧客満足)のため『メゾンカイザー』というブランドの浸透に尽力してきましたが、これからはES(従業員満足)に重きを置き、当社社員のライフスタイルのあり方を考え、社内環境を改善していきます」(木村寛マネージャー)
 例えば新規出店も、今年の予定は1店舗のみだ。速度を少し落とすことで、従業員皆が居心地の良い会社作りを目指し、商品とサービスの品質向上につなげていくという。
 中でも同社は社員教育が重要と考え、新卒の採用と育成にも力を入れている。
 「色々な人の成長が見られるのが多店舗展開の醍醐味です。独立していく人を支援することもありますが、学卒後すぐ入社し、そのまま生え抜きでずっと会社と一緒に成長していける人材も増やしたいと思っています」(木村寛マネージャー)
 その場合、職人としてのスキルのほか、マネジメントなど組織で動くための頭を持つ必要も出てくるという。
 「企業としての成長を一緒に味わうことでやりがいを感じてもらえればと思っていますね」(木村寛マネージャー)

SHOP DATA
住所:〒108‐0074東京都港区高輪1‐4‐21
電話:03‐5420‐9683
営業時間:午前8時〜午後8時
定休日:無休
品揃え:40品目
スタッフ:製造6人、販売10人
店舗面積:売場15坪、厨房18坪
日商:平日30万円 土日55万円 



パンを通して、フランスの美学を発信していく - ポール神楽坂店
神楽坂のメインストリートにある「ポール神楽坂店」。ショーウインドーには、大型のパンが並ぶ
温かみのある白熱灯の明かりが灯るシャンデリアやモノトーンのタイルが施された床など、「ポール」のフランスの店舗を想像させるようなデザインに造りこまれている
製造、販売の両方をこなす臼井さんとスタッフ
彩り鮮やかでボリューム満点のサンドイッチが並ぶ様は迫力がある
店舗側面はガラス張りで、客がそれぞれ楽しんでいる様子が、外からも見て取れる
「エクレール・ショコラ」(税込432円)などケーキ類もフランスの店舗と同じレシピで作る
フランスと同じ味を楽しめる雰囲気

 東京・神楽坂を歩いていると、まるでフランスの街角のような雰囲気が漂う一角がある。レアールパスコベーカリーズ(東京・目黒区)が運営する、フランスの老舗ベーカリー「ポール」のフランチャイズ店「ポール神楽坂店」だ。
 温かみのある白熱灯の明かりが灯るシャンデリア、古木を使った天井、モノトーンのタイルが施された床など、アンティーク調の店内はどの部分も、「ポール」のフランスの店舗を想像させるようなデザインに造りこまれている。
 「パンを通じて、フランスの生活様式や美学なども発信していくこと、そして、気軽にくつろいで、皆様に楽しんでいただける場を提供することを、日本の『ポール』のコンセプトとしています」(レアールパスコベーカリーズPAUL事業部マーケティング部の林さん)
 店のインテリアだけでなく、ショッピングバッグや、カフェで使用する紙ナプキンのデザインの細部にまで、フランスの店舗と同じものであることにこだわっている。
 平日のランチタイム、カフェスペースは満席となり、売り場はパンを購入する人で埋まった。店舗側面はガラス張りで、客がそれぞれ楽しんでいる様子が、外からも見て取れる。人々が賑わう温かな雰囲気が、表の通りにも溢れ出てくるようだ。
 「こうした賑やかで温かな雰囲気は、お客様が楽しく過ごしてくださることでしか、つくることができないものです。『ポール』として、理想的な状態ですね。また、当店の客層は、小さなお子様連れから近隣で働く会社員、フランス人など海外のお客様まで幅広くいらっしゃいますので、スタッフには、高い接客力が求められます。お客様とスタッフが居心地の良いやりとりができることも、その場を良い雰囲気にしてくれます」(林さん)
 同店勤続3年の臼井さんは、「スタッフ同士の仲をよくすることも重要だ」と話す。臼井さんは、とても穏やかな性格で、同店のスタッフをまとめる役割を担っている。
 「仕事以外の話も、できるだけするようにすることで、互いに緊張感を和らげるようにしています。ただ、お客様から常に見られていることを意識しておくことは大事ですね」(臼井さん)

フランスと同じ味を守るための商品作り

 店内の入り口からすぐの所から奥へ、長いショーケースがある。
 その一番手前にあるのは、彩り鮮やかでボリューム満点のサンドイッチだ。
 20センチは超える長さのフランスパンに、ツナ、レタス、トマトなどをサンドした「アンシェン・トン」(税込561円)や、スモークハム、エメンタールチーズ、トマト、レタスなどをクロワッサンにサンドした「クロワッサン・ミックス」(税込496円)など、サンドイッチは11種類揃う。ずらりと揃う様は、圧倒される迫力がある。
 「サンドイッチの見た目は、売り場に華を添えてくれる存在で、彩りの良さと、ボリューム感は重要ですね。クロワッサンは最近、さらにサイズを大きくしたので、ショーケース全体の見た目の迫力が増していると思います」(林さん)
 ボリュームのある見た目とは裏腹に、作り方は、細かな部分に至るまでのこだわりがある。
 「年に2回ほど、フランスの『ポール』から日本のすべての店舗に視察が入り、商品やサービスすべてを細かく見て回ります。サンドイッチに関しては、具のトマトが新鮮で、カットしたてのものであるか、パンの重さやサイズはどうか、バターはパンの隅々まで塗られているか、など、細かいところまでチェックします。そうすることで、日本の店舗でも、フランスと同じおいしさを再現できるようにしています」(林さん)
 神楽坂店で一番人気の「クロワッサン」(税込216円)の生地は、フランスで成形冷凍した状態で日本に運ぶ。
 ショコラを2本クロワッサン生地に巻き込んだ「パン・ショコラ」(税込259円)も成形冷凍だ。
 「ガトー・ド・ブリュッセル・シュクレ」(税込237円)という名のベルギーワッフルは、フランスの店舗と同様に、ベルギーで製造したワッフルを輸入している。
 そのほか、ハード系のパンなどは、同店の店内で、フランスと同じ材料、同じレシピで、仕込み、焼き上げている。
 「フランスと同じおいしさを味わっていただくことを一番の目的として、アイテムごとに、生地の仕込み方法や管理方法を工夫しています」(林さん)
 新商品としての季節商品にも、品質を保つための工夫がある。チョコレートを使った季節商品のフェアで販売した「フルール・ショコラ」(税込270円)は、見た目はカップケーキのようだが、実は「パン・ショコラ」(税込259円)の焼成前の生地を、カットするなどして成形し直し、装い新たにした製品だ。
 「使う生地が、人気の定番商品のものであることは、お客様に受け入れやすい味に仕上がるという利点もあります」(林さん)

「パン・ショコラ」(税込259円)と同じ生地で作った「フルール・ショコラ」(税込270円)
神楽坂店で一番人気の「クロワッサン」(税込216円)と「パン・ショコラ」(税込259円)
日本は世界の中でも重要な存在

 現在「ポール」は世界各地、34カ国に約540店舗あり、そのうち22店舗が日本にある。
 「現在出店を強化しているエリアはアジアで、ドバイやシンガポールでの売り上げが非常に伸びています。日本は、『ポール』にとって、初めての海外進出となった国で、日本に出店して今年でちょうど25周年を迎えます。海外店としての数も、イギリスに次いで多く、世界の『ポール』をけん引するような、重要な存在となっています」(林さん)
 昨年発売となった、ジャガイモを練り込んだ塩パン「パン・サレ」(税込162円)は、塩パンブームの流れから、日本の「ポール」で独自に開発されたものだが、フランスで販売しても人気が出そうだという声があったという。
 「世界各国の『ポール』の中でも、日本は特に、丁寧な製造力、接客の良さ、季節催事に合わせた商品開発力などについて高い評価を得ています。国際化が進み、日本の長所が受け入れられて、世界共通のトレンドとなっていることを実感しています」(林さん)

SHOP DATA
住所:〒162‐0825 東京都新宿区神楽坂5‐1‐4神楽坂テラス1F
電話:03‐6280‐7723
営業時間:午前10時〜午後9時
定休日:不定休
品揃え:約100品目
スタッフ:製造4〜6人、販売4〜7人
店舗面積:厨房30坪、売場・カフェ30坪

原価計算女王
原価計算女王

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