パンの賞味期限を自由に調整できるブラストチラーはパン業界の救世主!? - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(86) - ブランスリー電子版


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連載/2024年8月号

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パンの賞味期限を自由に調整できるブラストチラーはパン業界の救世主!? - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(86)
 先日取材したある製パン講習会で、講師の方が、自分の店のオペレーションについて、ブラストチラーが役立っていると話していました。具体的には、パンが焼き上がってからすぐにブラストチラーに入れて、急速に冷やしてから陳列棚に並べると、焼き上がってそのまま陳列棚に並べる場合と比べて、品質の劣化が明らかに遅いというのです。
 その講師は、ブラストチラーを導入してからは、パンを購入した客がそのパンをいつ食べるかを意識するようになったと話していました。彼が職人的な感性で導き出したこの現象のメカニズムは、焼成後すぐにブラストチラーに入れて急速に冷やすことによって、パンの中の水分が封じ込められ、時間が経過してもパンの水分が失われる度合いが少なくなることによって、パンの鮮度が長く保たれるというものでした。
 そしてさらに、ブラストチラーに入れておく時間を変えることで、パンの中の水分が封じ込められる度合いが調整でき、パンの劣化するスピードも調整できるというのです。このことは、パンの賞味期限を長くしたり短くしたりできることを意味します。
 その講師によると、パンの種類によって、焼成後ブラストチラーに入れるか入れないかを決め、入れるパンについては、冷やすだけにとどめるか、パンが凍結する直前まで冷やすか、完全に凍結させてしまうかを、パンの種類によって決めているそうです。バゲットやクロワッサンは、同講師の感性では、ある程度乾いていた方がいいということで、ブラストチラーには入れないそうです。
 私は、この講師が言っていることは基本的には間違っていないと思います。パン職人は、パン作りに関しては、長い期間、情熱を持って取り組んでいて、その道のエキスパートであるからです。パン職人が捉えたパン作りの中で実際に起こる現象は、絶対的な事実であり、それがなぜ起こるかのメカニズムの説明も、実際に起こる現象が矛盾なく説明できている限りにおいて正しいと思います。
 ただ、メカニズムの説明の前提条件が不完全だったり、誤っていたりする場合もあるかも知れません。しかし、パン職人が捉えた現実は絶対であるとするならば、新たに設定された前提条件で、ロジックを再構築すればいいだけの話です。
 私が、セミナーの講師を務めたこのパン職人の話が普遍的な現象だと考えるもう一つの理由は、ある大阪のリテールベーカリーのオーナーシェフが、公の場で、ほぼ同じ趣旨の話を、自分の店の実際のオペレーションでの経験をもとに話していたからです。そのオーナーシェフは、 焼き上がり後すぐにブラストチラーに入れた食パンと入れていない食パンを、彼の知り合い10人に配って、ある程度時間が経った時点で食べ比べをしてもらったそうです。すると、10人中10人がブラストチラーに入れた食パンの方がおいしいと言ったのだそうです。
 また、フランスパンを焼き上がり後すぐにブラストチラーに入れてから店に出すようにしたら、ほどなくして1日に売れる本数が倍になったと言います。
 私の推察ではありますが、日本各地でぽつりぽつりと同じようなケースが発生しているのではないでしょうか。
 それにしても今や、パンの通販で、焼き上がりのパンを急速凍結させて発送したり、大手のリテールチェーンが、パンを冷凍ショーケースに入れて販売したりと、一昔前だったら考えられないようなことが次から次へと起こっています。
 考えてみれば、リテールベーカリーの業界は、師匠のもとで修業をしている間は、師匠の価値観の範囲内で働かなくてはなりませんが、一旦独立してしまえば、元師匠の価値観に縛られることはないので、イノベーションが起こりやす業界なのかも知れません。こうした恵まれた環境にいることに、私たちは感謝し、新たな価値を生み出すことに邁進しなければなりません。(RO)









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