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| 特集/2022年3月号 |
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| 原材料の高騰について
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| 原材料高騰には売上を伸ばして対応 - すぎうらベーカリー杉浦忍社長 | |||||||||||||||||||
減価償却費がポイント ──米粉をおよそ85%使用したシフォンケーキやパンを主力商品とし、国産小麦の「はるゆたか」を使用した商品群にも力を入れている御社ですが、今回の外麦高騰の影響はどの程度まで受けていらっしゃいますでしょうか。 杉浦 外麦は商品ごとにみた使用比率は少ないものの、全体の商品のうち6割くらいの商品は多少なりとも使用しています。米粉シリーズも約85%は米粉ですが残り15%は主に外麦をミックスしたグルテンですから影響は受けます。また米粉も国産小麦ももともとが外麦を大きく上回った価格ですし、油脂類全体や物流費などあらゆるものの価格が上昇していますから、その影響は大きいですね。 ただ当社の場合、2年前に一度従業員の給与を上げる目的で値上げしているのと、9月決算なのですが、第1四半期10〜12月は過去最高売上を記録し、原価上昇分は売り上げの増加分で吸収できたため値上げの必要はありませんでした。今後の値上げについては、まだすべての原材料の値上げが出揃っていない状況なので、出揃った時点で、春先以降に3〜8%の幅で値上げを実施すると取引先銀行には伝えてあります。 ──内容量を変更したリニューアルによる実質値上げなどは予定されていますでしょうか。 杉浦 既存商品の内容量変更はするべきではないと思いますし、当社の場合は北海道内のイオン全店舗へ卸しているので、容量変更などは簡単にできない事情もあります。しかし価格変更には応じて頂けますので特段問題はないと考えています。 ──今回の原材料高騰については総じてどう感じていらっしゃいますでしょうか。 杉浦 まず弊社の場合、自店向けの商品、量販店向けの商品、百貨店やネット通販向けの商品というように、各チャネルで価格帯と内容量を変えて商品展開をしているのですが、原材料を卸す問屋側の苦労もわかるので値上げ自体は否定するわけではありません。ただし、原材料が高騰したからといって値上げを実施すれば良い、人件費を削減すれば良いなどと短絡的に考えるのは違うと思います。 原材料高騰の問題において、本当に大切なのは上げ幅よりも自分の会社の状況を把握することです。製造業においては「売上」「原価」「人件費」「減価償却費」の4つのバランスを取る事が大切だと言われますが、中でも「減価償却費」が大切だと考えています。「投資のキャッシュフローは、将来の営業のキャッシュフローを決める」と言いますが、設備や店舗への投資額によって、その投資を回収できる売上が決まり、売上が決まることによって、その売上を達成するためのスタッフの数およびそれに基づいた人件費も決まり、その人件費が決まる事で原価をどのように設定するかが決まるのです。 そのため投資を回収できるだけの売上がない限り、値上げしようが経費を節減しようが全く意味がないと考えています。また回収できるだけの売上があったとしても、それに見合う人件費や原価を設定しないことには始まりません。 従業員の質を高める機械化 ──機械化は大きな投資ですが、会社にとってやはり必要な事でしょうか。 杉浦 機械化は人手不足であるかどうかに関係なく絶対に必要だと私は考えています。この5年間で、毎年1000万円単位で、会社として設備投資し、「お米のシフォンケーキ」もほぼ一連の工程で機械による自動化を実現しました。それにより量産化と効率アップが実現し、労務削減によるスタッフの負担軽減にもつながりました。 手作りの部分で残すべきところは残す必要がありますが、機械化できるところはしたほうが、品質も維持できるので良いと思います。 ──原材料が高騰し、機械化により減価償却費も残る中で、人件費はどの程度まで維持していかれるのでしょうか 杉浦 当社で言えば、社員、パート関係なく、全員に対して昇給を実施しております。これは絶対に必要だと思いますし、今後も変えるつもりもありません。昇給額の多い少ないは問題ではありません。 社員において年収200万円台は、新卒者しかおりません。可能な限り、労働に対して高い報酬を出せるように経営していかなければなりませんし、そのためには、継続的な設備投資も必要となるのは言うまでもありません。補足ではありますが、全店舗の製造・販売の社員において、昨年1年間で月間の時間外勤務を30時間以上超えた者は誰一人おりません。年間で平均したら、一人当たり月間12時間前後の時間外勤務です。 有休も消化してもらいますし、この1月も3日間ずつ取得しています。 ただ休みも給与も多い代わりに、どのポジションに入っても、そつなく出来るように全員に日頃からトレーニングをしてもらっています。 今は、将来、いつか独立して自分の店を持ちたいという若者はほとんどいない印象ですので、ずっと勤め上げる中で成長し目標を持てるよう、会社としてそれぞれのキャリアデザインを描いてあげないと業界としてはこの先はないと思います。 単価と利益率が高い製品で勝負する 規模拡大で変わる労働環境 ──貴店は1996年の創業当時は、家族経営的な小規模ベーカリーでしたが、2006年に杉浦さんが3代目として社長に就任されると同時に株式会社化されたとのことですが、それ以降の変遷についてお聞かせください 杉浦 パン職人だった父がガレージを改装した場所で創業した当初は、家族経営的な小さな店でした。しばらくして父が亡くなり、母が継ぎましたが苦しい時期が続きました。そのため私は東京で会社員生活を送っていたのですが、家族から頼まれ地元・美唄へUターンし3代目として店を継ぐことになりました。 そこから猛勉強と修行を始めたのですが、2008年に美唄市から規格外の米を活用するための施策として、米粉を使ったパン作りの依頼があり、以降米粉を使用したパンやスイーツ作りに力を入れるようになりました。中でも「お米のシフォンケーキ」は年間約80万個を販売する看板商品へ成長し、現在会社の売り上げの4割ほどを占めています。 同商品は単価と利益率が高い上、賞味期限の長さによるロスの削減と機械化による労務削減の両方を実現した高付加価値商品でもあります。 また先代の時から力を入れていた北海道産小麦の「はるゆたか」を使用したパンや焼き菓子の他に、米粉パンも主力商品として強化していくことで売上を伸ばしてきました。 ──株式会社化し規模も拡大していく中で、大企業のように第3者の視点も入った管理しやすい組織にし、週休二日制の導入など労働環境の見直しにも早くから取り組んできたと聞いています。 杉浦 当社では人事専門の中間管理職を採用することで、適正な人材の採用と育成ができるようにしています。銀行にも家族的な経営はもう行わないと伝えているし、人件費はしっかり出すことは企業の成長にとって必要不可欠です。 ──原材料高騰を乗り切る秘訣は何だと考えますか。 杉浦 今回の原材料高騰は家族的経営のベーカリーにとって大変悩ましい問題です。リテールベーカリーは商品の質を下げたら絶対に生き残れません。ただ既存商品での値上げが厳しいようであれば、利益率の高い新商品を開発し売上を増やす事で高騰分を吸収するのができればベストだと思います。 また、外販にも力を入れるなど、販売チャネルを増やす事も売上を増やすことにつながります。当社もこれまでずっと過去最高売上を更新してきていますが、「お米のシフォンケーキ」の伸長とともに、美唄の本店のほかに、札幌の円山に支店も出し、店頭での直販のほか量販店、ネット通販、催事出店と拡大してきたから、今では億単位の年商が取れるようになりました。 ベーカリーは設備費にお金がかかりますので、粗利は70%位ないといけないという事をよく言います。原材料高騰の問題に関しては経費削減だけでは対応しきれませんし、結局のところ売上を伸ばさないと銀行もお金を貸してくれません。何年もかけて実現した夢をお金の問題で潰してしまうのは本当に残念だと思います。 すぎうらベーカリー本店 住所:〒072‐0009 北海道美唄市字美唄1192‐5 電話:0126‐64‐2089 営業時間:午前9時〜午後6時 定休日:不定休 品揃え:約70品目 店舗面積:売場33坪、製造スペース122坪(パンの製造スペースとシフォンケーキの製造工場を含む) | |||||||||||||||||||


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