自らの強み・特徴を最大限に生かす、コンビニのパン戦略 - ブランスリー電子版


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ここにもパンの現場/2011年8月号

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自らの強み・特徴を最大限に生かす、コンビニのパン戦略
セブン−イレブン内のパン売り場。専用工場で焼かれた各種のオリジナルパンが並ぶ
 コンビニのパンの種類が増え、おいしくなった――最近、そんな声をよく聞くようになった。実際、かつてに比べ各コンビニではPBパンのバリエーションが増え、パンメーカー顔負けのおいしさを誇る商品が少なくない。いまや定番となりつつあるコンビニパンの戦略とは?



専用工場で「安心・安全」な商品作りを実現
 JFA(社団法人日本フランチャイズチェーン協会)の統計によると、2011年5月度の全国のコンビニエンス・ストア(以下、コンビニ)の売上は、前年同月比5・7%増の6567億円(既存店ベース)。東日本大震災や大雨、台風など自然災害・天候不順のマイナス要因があったにもかかわらず、7カ月連続のプラスとなった。
 「パン類の売上が急激に伸びているというわけではありませんが、かといって大きく落ち込むこともありません。堅調に推移している、主力商品のひとつです」と語るのは、セブン‐イレブンを展開するセブン&アイ・ホールディングス広報センターの伊藤真由美氏だ。
 セブン‐イレブンといえば、いわずと知れたコンビニの最大手である。  堅調な売れ行きでいまやコンビニの定番商品ともなったPB(プライベートブランド)パンについても、先駆けてさまざまな取り組みを行ってきた。実際、「オリジナル食パン」(2005年)、「オリジナル食事パン(フランスパン、クロワッサンなど)」(2006年)など、業界初として先陣を切って商品化したオリジナルパンは数多い。そもそも、「焼きたて直送便」として作りたての新鮮なオリジナルパンを店頭に並べ始めたのが1993年のこと。ブランド変更によって「焼きたて直送便」の名称は使わなくなったが、現在でも午前と午後の1日2回、焼きたてのオリジナルパンを全国に配送するシステムは変わらない。およそ30のアイテムから、各店舗が客層や立地条件など自らの特徴を考慮し、売れ筋と思われる商品を注文する仕組みだ。 セブン‐イレブンでは、パンに限らずPBという言葉は使わず、オリジナル商品と呼んでいる。「PBというと、どうしても『安かろう悪かろう』というイメージがつきまとってしまいます。パンは、食事にもおやつにもなり、またお客様の年齢層も幅広く、実に身近な食品といえます。だからこそ私どもでは、『安心・安全』をコンセプトに、毎日の食卓を飾るおいしいパンを提供していきたい、と考えています」(伊藤氏)
 セブン‐イレブンでは、2006年からオリジナルパンのトランス脂肪酸の削減に取り組んできた。さらに今年5月、オリジナルパンを全面リニューアルし、トランス脂肪酸のさらなる削減を促進した。
 こうしたきめの細かい取り組みを可能にしているのが、専用工場の存在だ。セブン‐イレブンが協力関係を結ぶ食品メーカーのおよそ9割は専用工場として稼動している。この比率はコンビニ業界では群を抜く高さ。開発・製造から流通に至るまで、言ってみればセブン‐イレブンのためだけに動けるのは、大きな強みだ。

カスタードも入った「ツインクリームドーナツ」
根強い人気の「いちごジャム&マーガリン」。トランス脂肪酸は100gあたりわずか0.15gに低減されている
「ショコラファッション」
性に人気のホイップクリームたっぷりの「ふんわりホイップケーキ」


メーカー系の強みを生かす店内ベーカリー
店内にある「デイリーホット」の厨房でパンを焼く
「デイリーホット」のパンの売り場。街のベーカリーのようだ
デイリーヤマザキの店舗
 一方、究極の「焼きたて」パンで勝負するのが、デイリーヤマザキである。同コンビニは製パン最大手の山崎製パンが母体。デイリーヤマザキでは、街のパン屋さんさながらに、店内にパンを焼く厨房を置く「デイリーホット」というシステムを展開している。パン類をはじめ、弁当やおにぎりなどを店内で調理する「デイリーホット」がスタートしたのは、2000年12月のこと。現在、全国1630店舗のうちおよそ半数の800店ほどでデイリーホットが導入されている。
 「流通系のコンビニが多い中、当社は珍しいメーカー系のコンビニです。その特徴を生かそうと取り組んだのが、デイリーホットです。焼きたて、作り立てに対するお客様のご要望は依然強いものがあります。当社にはそれにお応えできるノウハウがあります」(デイリーヤマザキ総務法務部広報担当・須田将勝氏)。用意されているアイテム数は数十にのぼる。その中から、やはり各店舗が自店の特性に合わせ毎日20〜30品のパンを焼いて店頭に並べる。こうしたフランチャイズチェーンにおける現場製造で常に課題となるのが、クオリティー水準の確保だ。
 「たしかに、それは究極のテーマといえるでしょう。当社では、冷凍生地を用いて、アルバイトさんなどでも一定水準が保てるように工夫しています」(須田氏)。冷凍生地は、一般の生地と比べ製造工程が少なくてすむ反面、生地自体の味わいが物足りないというパン通も少なくないが、そこは最大手製パン会社がバックボーン。生地のクオリティーは国内最高との自負があるのだろう。中でも、「メロンパン」は、デイリーホットの目玉商品のひとつ。100点満点のメロンパンを目指して毎年リニューアルを重ね、現在は「7代目メロンパン」が焼かれている。
 デイリーヤマザキでは、ヤマザキ製パンの工場から納入される「セントラル」と呼ばれる通常のパン類も販売されているが、デイリーホットと売り場は別。「セントラルでは、薄くて持ち運びやすく、それでいてモチモチっとした食感が好評の『ランチパック・シリーズ』が売れ筋です。こうした商品は、通勤や仕事の途中に買ってカバンに入れ、お昼やちょっとお腹が空いたときに食べるというのが消費シーンで、焼きたてのパンを食べようという『デイリーホット』とはシーンが違います。当社では、メーカー系の特徴を生かして、さまざまな消費シーンに対応していきたいと考えています」(デイリーヤマザキ商品本部デイリー食品MD中村玲二氏)



売れ筋はクリームたっぷり「甘食男子」が増加中
発売3日で60万個を売り上げた「安道名津」。セブン‐イレブンとTBS系ドラマ「JIN」のコラボ商品
 ところで、コンビニではどんなパンが売れているのだろう。コンビニ客の男女比率はセブン‐イレブンで65対35、デイリーヤマザキで「それ以上」(須田氏)と男性が圧倒的に多いのだが、意外にも売れ筋は「大甘」のパンだ。「ホイップクリームたっぷりのパンが男性に圧倒的支持がある」と伊藤氏が言えば、中村氏も「ホイップクリーム、カスタード、チョコののったコテっとした素材のパンが人気が高い」という。草食男子ならぬ「甘食男子」が増えているというわけだ。
 もうひとつ、コンビの戦略で欠かせないキーワードが「コラボ」である。「どことコラボレーションし、どんなものを作るか」は、販売戦略の重要な柱だ。セブン‐イレブンがTBS系ドラマ「JIN」とコラボした期間限定オリジナルパン「安道名津(アンドーナツ)」は、発売3日で60万個を売り上げる驚異的な実績を記録した。
 個人経営のベーカリーでは、こうしたメディアや大企業とのコラボレーションは難しいだろう。しかし、地域に目を向ければ、協力し合える産業やサービスが見つかるかもしれない。客層や立地条件といったマーケティング面を含め、自らの特徴・個性をいま一度見つめ直してみるのも決して無駄な作業ではないはずだ。(K)



原価計算女王
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