ブーランジェリー セイジアサクラ/朝倉誠二


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お店拝見/2015年1月号

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定番のパンを圧倒的に差別化 - ブーランジェリー セイジアサクラ
赤一色の外観が、存在感を放つ「ブーランジェリー セイジアサクラ」
オーナーシェフの朝倉誠二さん(左から2番目)とスタッフ
一番人気の「チーズカレー」(税込329円)はレジ横に並ぶ
その中身は、ナスやジャガイモなど具材感のある具が入ったカレーとグリュイエールチーズで、それらを薄いフランスパン生地で包んで焼き上げる
3種類の自家製酵母を使い分ける

 東京・港区高輪の、古くから高級住宅街として知られる一角にある「ブーランジェリー セイジアサクラ」。扉3枚分ほどの小さな間口だが、赤一色の外観は、辺りから際立った存在感を放っている。
 店内は奥に長い造りになっており、売り場奥にレジ、そのすぐ先にドイツ製の窯が立ち、厨房へと続く。窯前の台には、次々に焼き上がったパンが置かれていき、レジで会計を済ます客の目を楽しませている。
 売り場は3坪だが、セルフサービスで商品を選ぶことができる。商品のプライスカードのほとんどに、「ぶどうの天然酵母」「ゆずの天然酵母」「アロマホップ天然酵母」のいずれかの文字が記載されている。使用している自家製酵母を伝えるもので、「ぶどうの天然酵母」はハード系に、「ゆずの天然酵母」は菓子パン系に、「アロマホップ天然酵母」は食パンやテーブルロールに、それぞれ使われている。さらに、自家製酵母に加え、乳酸菌由来の発酵液も配合している。発酵した材料を使用することで、味わいに奥深さをつけている。
 同ベーカリーは、バゲットやフォカッチャを使用したサンドイッチや焼き込み調理パンが充実している。
 入り口からすぐの陳列台に並ぶのは、「バジルチキンとドライトマトのフォカッチャサンド」(税込453円)と「カマンベールとハムのサンドイッチ」(税込512円)。
 サンドイッチ1つにしては高価に思えるが、長さ20センチ以上のパンにたっぷりサンドされた具を見れば、納得できる価格と言える。そのボリュームとおいしそうな見た目に、入店早々手が伸びそうだ。

看板商品も最初の半年は売れなかった

 一方、売り場奥のレジ横に広くスペースをとって並んでいるのは、一番人気の「チーズカレー」(税込329円)。フランスパン生地で、ナスやタマネギ、ニンジン、挽き肉などを使った具材感のあるカレーとグリュイエールチーズを、折り畳むように包み、揚げずに焼き上げたカレーパンだ。パン生地は薄く、焼き上げる前に表面にチーズを散らしているので、食感がパリッと軽く仕上がっている。カレーはピリッとした辛さがあり、それとグリュイエールチーズを合わせることでマイルドさやコクも加わっている。同製品も、カレーパン1つの価格としては高値だが、味わってみると納得の価格と言えるだろう。
 オーナーシェフの朝倉誠二さんは、「チーズカレー」の開発経緯について、「カレーパンはベーカリーにとって、絶対に売れる定番商品です。定番商品が売れる店は強いですよね。ですが、定番商品は定番なだけに差別化しにくいんです。そこをあえて圧倒的に差別化しようと開発したのが、『チーズカレー』なんです」と話す。
 同店は2008年に開業。翌年に「チーズカレー」が誕生した。
 「開業当初からずっと試行錯誤を続けて、ようやく完成しました。材料や製法など製造面だけでなく、販売における話題性の面でも、高い完成度を持った商品とすることを意識しました」(朝倉さん)
 こうして満を持して発売となった「チーズカレー」だったが、発売から半年は売れ行きがよくなかったという。しかし諦めることなく販売を続けた。
 「必ず売れるようになると信じていました。なぜなら、高い完成度を持った自信作だったからです。売れなかった半年は、芽が出る前の準備期間と思っていました。作り込んだ商品は、しばらくして爆発的に売れる商品になるものす」(朝倉さん)



上は「バジルチキンとドライトマトのフォカッチャサンド」(税込453円)、下は「カマンベールとハムのサンドイッチ」(税込512円)。どちらも20センチ近い長さでボリュームがある
左から、レーズン使用の「ぶどうの天然酵母」、徳島県産ゆず使用の「ゆずの天然酵母」、ホップ使用の「アロマホップ天然酵母」。約1週間で使い切る
奥に長い造りの店内。レジの後ろに窯があり、次々とパンが焼き上がる様子が見える
プライスカードには、「ゆずの天然酵母」など、使用している自家製酵母が記載されている
1つ300円以上に価格を設定した理由

 1番人気商品が300円を超える価格には、経営者としての立場からの思いがある。
 「よく売れる商品を、安価にして忙しく作るのではなく、単価を高くすることによって、労働生産性を上げようという考えがあります。スタッフにとって、働きやすい環境をつくるための一環です。とは言え、カレーパン1つが300円ですから、自信作ではあるものの、実際売れるかどうかの不安はありました。しかし当店は、高価格でも、それに見合った内容であれば、理解してくださるお客様がいる立地です。店を構成する要素すべてを考慮して、どのような商品作りをしていけばいいのかを、経営面から考えていくことが、常に課題となっています」(朝倉さん)
 開業当初、製造は朝倉さん1人、販売は朝倉さんの妹が担当していた。現在は従業員を雇い、製造4人、販売1人の体制に整った。そしてスタッフ1人につき、ひと月に7〜8日間の休みが取れるようにしている。
 「自分もこの業界に入ったとき、長時間労働で低賃金、という労働環境下でした。せっかく夢のあるいい仕事なのに、このままでは目指す人がどんどんいなくなってしまう、パン屋は変わっていかないといけない、と思いました。休みがあって、福利厚生があって、働いた分給料もしっかりもらえるという労働環境をつくりたい、こういう思いがずっとありました。ことに開業後、まず会社としてしっかりした経営を成り立たせること、それをずっと課題としてやってきました。自分の店が、自分も従業員として働きたいと思える会社でなければいけません。そうでなければ、家族経営でしかやっていけなくなってしまいます。材料の値上げなど、様々な問題があっても、それはどの店も同じ状況です。そこで生存していきたいという強い意志を持てば、厳しいときこそヒット商品を出すことができるかもしれません」(朝倉さん)
 同店は朝倉さんにとって、「パン屋は変わっていかないといけない」という思いを実行に移す場所なのだろう。

SHOP DATA
店名:ブーランジェリー セイジアサクラ
住所:〒108‐0074 東京都港区高輪2‐6‐20朝日高輪マンション104号
電話:03‐3446‐4619
営業時間:午前9時〜午後6時半(売り切れ次第終了)
定休日:木曜
品揃え:60品目
スタッフ:製造4人、販売1人
店舗面積:厨房10坪、売り場3坪





原価計算女王
原価計算女王

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