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| 特集/2020年10月号 |
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| 「パンの缶詰」で社会に恩返し。失敗を乗り越え成長 - パン・アキモト | |||||||||||||||||||
栃木県・那須塩原市に本社を置く「パン・アキモト」は、災害時のための備蓄用食品「パンの缶詰」を販売し、賞味期限が残り1年になったら回収、飢餓地域へ届ける「救缶鳥プロジェクト」の活動などで国内外を問わず広く注目を集めている。 「パンの缶詰」は、焼きたての柔らかい状態のパンを特殊な製法で缶に詰めて、長期保存を可能にした備蓄用食品。 開発を手がけた「パン・アキモト」は1947年に那須塩原で「秋元パン店」としてベーカリーを創業。現在はベーカリー運営の傍ら備蓄用商品「パンの缶詰」の製造と販売も行う、従業員60人ほどの、規模的には中小の地方企業だ。 現在の社長である秋元義彦氏は、創業者である父親の代から長く「町のパン屋」として店が多くの地域住民から愛され続けていく姿を見てきた。 「結局お客様に満足してもらわないと店は続きません。だから何らかの形で恩返しをしたいと考えるようになりました」(秋元社長) そんな思いを抱きながら実家だった「町のパン屋」に入社した秋元社長が、「パンの缶詰」の開発に踏み切ったきっかけは、1995年の阪神淡路大震災だったという。 「パン屋として何かできることはないだろうかと考え、焼きたてのパン2000食以上をトラックに積んで、被災地へ届けました」(秋元社長) 失敗の連続だったパンの缶詰 ところが被災地についた秋元社長達を待っていたのは、届けた焼きたてパンの3分の2は震災の混乱の中で、時間の経過とともに痛んでしまい、廃棄せざるを得ないという現実だった。 「愕然としましたが、この時、被災者の方から、お年寄りや歯が悪い人には硬い乾パンは食べにくいという声を聞く事もありました。災害時でも焼きたてのパンのように柔らかくしっとりとしたものが食べたいのだと実感しました。だから、焼きたてのような状態のまま長く保管できるパンが作れればとその時強く感じたのです」(秋元社長) そしてそこから柔らかいまま長期保存できる備蓄用のパンを開発するための試行錯誤の日々が始まったという。 「前代未聞の取り組みでしたが、パン屋としての使命と考えていましたね。必死でした。まずは真空パックか、冷凍保存かなどと仮説を立て何度も試行を重ねますが、なかなか思うようにはいきませんでした」(秋元社長) そんなある時、近所の食品加工所で缶詰の製造風景を目にする機会があった。そしてその瞬間、缶に入れるアイデアが閃いたのだという。 ただし製品化に至るまではさらに困難の連続だった。焼いたパンをそのまま缶に入れただけでは、カビが生えてしまう。 「色々試して、パン生地を缶に入れたまま焼成する事で同時に殺菌する事を思いついたのですが、そのままだとパンが缶にくっついてしまいました」 耐熱性があって、水に濡れても破れない紙はないかと必死で探した結果、海外で見事その条件にあった紙を見つけることができた。 「一年の間、失敗の連続でしたが、悔しい思いをバネにして取り組んだ結果、ようやく『パンの缶詰』が完成したのです」 | |||||||||||||||||||

秋元社長は震災の翌年の1996年に社長に就任。「パンの缶詰」の開発以降は、ベーカリー運営と平行しながら、メーカーとして「パンの缶詰」の製造と販売にも積極的に取り組み、現在(2020年9月決算)では同社の売り上げの65%が「パンの缶詰」シリーズによるものとなった。残りの35%は、同社が運営するベーカリー「石窯パン工房きらむぎ」などの売り上げによるものだという。 コロナ禍により、観光地のベーカリーである「きらむぎ」の売り上げは影響を受け減少したが、「パンの缶詰」シリーズは外出自粛で備蓄需要が増加した影響もあって伸び、全体では増加することになった。 開発当初すぐには売れなかった「パンの缶詰」だが、新潟中越地震で支援のために届けた缶詰を被災者が食べる姿などがテレビ放送された事をきっかけに、徐々に注目を集めるようになっていった。 2009年には宇宙食としてスペースシャトル「ディスカバリー号」にも積載。 同じ年に現在まで続く社会貢献活動である「救缶鳥プロジェクト」を始動させた。同プロジェクトは賞味期限が近づいてきた「パンの缶詰」を、1年間の賞味期限を残して回収し、食糧難を抱える発展途上国などの飢餓地域に届けるという活動だ。 またこのプロジェクトでは、国外のみならず、国内での地震や洪水による被災地などへも、「パンの缶詰」を支援物資として提供。 実は「救缶鳥プロジェクト」の缶詰には義援先の人々へ向けて メッセージを書きこむことができる。こうしたことから、「パンの缶詰」を大量に購入する事で防災教育を進める学校現場や、国際貢献のアピール活動に使う企業なども増えてきているという。 パンの缶詰は5番目の子供 秋元社長には4人の子供がいるが、「パンの缶詰」は5番目の子供と言って良いくらいの深い愛情があるという。「よく『5番目の子供が一番成長したね』なんて笑い話をする事もありますが、親としては後ろからそっと支援して世の中の役に立って欲しいようなそんな気持ちですね」(秋元社長) 今後については、実は「きらむぎ」などの同社が運営するベーカリーで発生したロスパンを地元の「子ども食堂」へ無償で卸す取り組みを始めたので、力を入れていきたいのだという。 「地域のNPOと連携し、顔が見える範囲でできるさりげないサービスなのが良いですね。会社の名前を包装用紙に入れたのですが、未来の社会人である子供達への宣伝にもなります」(秋元社長) また今は一旦終了しているが、コロナ禍の中で地元の基幹病院3カ所で働く医療従事者に向けて、焼きたてのパンを夜食として無償で届けるといった活動も行った。社会や地域に対し「パン屋としてできることは何か」と常に考えているのだという。 秋元社長はよく「先義後利(せんぎこうり)」という言葉を口にする。先に義理を優先することで後に利益が出るという意味の言葉だ。 「社会から認められるような活動ができる会社であれば、その時には利益が出なくても、回り回って返ってきます。ベーカリーとしてはお客様に喜んでもらえるパンを作りたいという思いは一貫して変わらないですね」(秋元社長) 今はコロナ禍により、多くの人々が元気をなくし、厳しい経済環境下にある地方・中小企業も多いと言われているが、「逆風の時こそできることがあると信じていますね。地元の名産を使った商品開発や丁寧な接客など、大手にはできないない地方や中小企業ができることがあるはずです」と秋元社長の言葉は力強い。 「自然の風向きは変えられませんが、自分の帆はコントロールできます。今は逆にチャンスではないでしょうか」(秋元社長) SHOP DATA 店名:石窯パン工房きらむぎ 住所:〒329‐3147栃木県那須塩原市東小屋字砂場368 電話:0287‐74‐2900 営業時間:午前8時〜午後6時30分 定休日:火曜(火曜が祝日の場合は翌営業日) 品揃え:約100品目 スタッフ:製造常時10人、販売常時8人 店舗面積:厨房25坪、売り場25坪、イートイン25坪 | |||||||||||||

| 北海道産小麦で有機のパンに注力。安心安全な食を - シロクマベーカリー | |||||||||||||
北海道札幌市で「シロクマベーカリー」を運営するシロクマ北海食品は、北海道産で、有機認証された小麦を100%使用したパンの製造を北海道でいちはやく実現。また、小麦の栽培から製粉に至るまでの工程を含めて有機認証されたオーガニックパンを提供するという全国的にも珍しい取り組みを行っている。 小麦のほか、北海道産の大麦やライ麦を使ったパンも作り、特定の生産農家と直接協働した上で原料小麦を仕入れる「畑からのパン作り」に定評がある。使用する小麦は北海道内の主に岩見沢や十勝などの地域にある生産農家で収穫。製粉作業は、札幌市に隣接した江別市内にある江別製粉で行っている。 いちはやく国産小麦に注目 実は同社は国産小麦を使ったパン作りの黎明期から、北海道産小麦を使ったパン作りに取り組んできた。 「90年代の初め頃ですが、我々が北海道産小麦を使ったパンを作り始めた当時は、まだ北海道産を含む国産小麦全体がパン作りには向かないと言われていました。実際、大量に生産されていた北海道産小麦のほとんどが、うどんに使われる中力粉用のものでしたね」と同社の荒川伸夫社長は振り返る。 パン作りに適した品種である強力粉用小麦は、湿度が高い日本では育ちにくく品質が安定しないため、量産化が難しいとされていた。さらに北海道産小麦は粘りが強く、その粉を捏ねたパン生地もベタつくため、技術的に均一なパンを作るのが難しいと言われていた。 1986年にはパン作りに適した品種「ハルユタカ」が北海道で誕生していたが、国産小麦に対する敷居の高さから、栽培する農家が少なく、流通量は少なかった。そのため荒川社長は、札幌市近郊の農家を次々と訪れ、「ハルユタカ」の栽培に取り組んでもらえるよう必死で懇願して歩いたという。当時は国産小麦を使用したパン作りに理解のある農家は希少だった。 そこで、小麦以外でも、苺などパンに入れる素材で北海道産のものを使うように促す活動を進めるなど、地産地消の取り組みを積極的に推進。 こうした努力が実り、少しずつ農家からの国産小麦に対する理解や賛同が得られるようになっていったという。 | |||||||||||||

シロクマ北海食品は、百貨店やスーパーなどへ、「シロクマパン」の名でパンの卸売販売も行ってきた地域密着型の食品企業だ。元々は、函館で1947年に創業し、70年代に拠点を札幌へ移している。 そして、ポストハーベストの問題が叫ばれるようになった90年代に入ってからは、地元の北海道産小麦によるパン作りに着手。 そして1997年には「シロクマベーカリー」の前身である「れもんベーカリー」を札幌市豊平区にオープン。北海道産小麦を100%使用した焼きたてパンの提供を目指した。そのため「ハルユタカ」のほか、数種類の北海道産小麦をブレンドし、それぞれの配合量のバランスに合わせて給水などを調節して、均一なパン作りを実現。2003年には新品種「キタノカオリ」が生まれ、給水性の高さからくるパンの独特の深い味わいなどが注目され、同社製品にもとり入れた。 2009年からは有機農法による小麦を使ったパンの製造を目指し、農家との協働で畑作りからの取り組みを開始。有機JAS認証を取得した2014年にようやく北海道産小麦100%のオーガニックパンを完成させた。 そして2015年9月には「れもんベーカリー」を現在の白石区本郷通りに移転し、店名も「シロクマベーカリー」に変更。北海道産小麦を100%使用し、オーガニックパンも製造・販売する店として、素材の良さを前面にアピールする形でリニューアルオープンした。 「シロクマベーカリー」は、現在、本店のほか、札幌市の商業施設、札幌エスタ内と北海道の地方百貨店、丸井今井内にあるサンドイッチ専門店の「シロクマベーカリー・スタンド」を展開している。 2017年と2018年は小麦が不作で、病気に弱い「キタノカオリ」の使用が一部商品でできなくなるなどしたが、そうした困難を乗り越えながら、現在は有機認証のパンは十勝産の「ハルキラリ」を主体に使用。 本店は、駅近くの古民家をリフォームして作った一軒家で、緑色の三角屋根が目印の素朴な雰囲気の建物だ。一歩足を踏み入れると工房と売り場から漂う北海道産小麦の芳ばしい香りに包まれる。 人気の商品は北海道産小麦を100%使用し、天然酵母を活かして長時間発酵させた「天然酵母食パン」(税別352円)や「酵母ロール」(税別56円)、北海道産小麦100%のパン生地に食物繊維豊富な全粒粉を加えた「全粒粉の食パン」(税別278円)など。天然酵母パンはわずかな砂糖と塩のほかは、ほとんどが水と小麦粉と酵母のみで製造し、油脂や卵、牛乳などは使用していないことから、アレルギーを持つ人からの引き合いも多い。 「北海道で採れたものは北海道内でおいしく消費したいですね。酵母を生かす発酵技術を常に追求しています」(荒川社長) 北海道産の材料で作る有機のパン 同社の大きな特徴として、北海道産小麦を100%使用し、加えて小麦の農法から製粉に至るまでの工程で有機認証を取得したオーガニックパンの製造と販売を行っているという点がある。 最近では国産小麦の市場も、大手製パンメーカーの参入などもあり、徐々に低価格化が進み競争が強いられつつある現状だが、国産小麦使用でさらに有機のものは希少な存在だ。 シロクマ北海食品は、有機JAS認証を取得した2014年に、北海道産小麦100%のオーガニックパンを完成させているが、当時はJALの機内食にも採用されるなど大きな注目を集めた。 荒川社長がオーガニックのパン作りに取り組んだ背景には、北海道産小麦100%のパンを作る事でポストハーベストの問題は解決させたが、生産者である農家が被る農薬などの問題は残っていた事がある。 「安心で安全な食を届けたいという当社の思いを実現させるためには必要でした。オーガニックのパンは生産が難しいため売価は高くても薄利になりがちですが、一部の消費者からは強い需要がある。事業としては厳しくても、安心で安全な食を届けたいという強い思いを持つ当社だからこそできる事と考えました」(荒川社長) 実は同社は2015年に「シロクマベーカリー」として店をリニューアルオープンした際に、卸売の「シロクマパン」と合わせる形でブランドを一本化している。 新ブランドの世界観構築に当たっては、ブランディングの専門家と協働し、余分な材料は極力使わず、素材の味わいを生かすという同社の想いを表すような自然で素朴なデザインを考案してもらった。 コロナ禍の現在はJALの機内食や駅ナカの店舗の売り上げが大幅に減少するなど厳しい事もあるが、「今後は広域での経済活動に頼れない状況が続くと考えると、地域で循環させていく動きがより必要になってくると思います。最終的には地域経済の自立や自給率アップに貢献できるよう、オーガニックのような小さな市場でも、できることをぶれず続けていきたいと考えています」と荒川社長は話す。 SHOP DATA 店名:シロクマベーカリー本店 住所:〒003-0024北海道札幌市白石区本郷通13丁目南5-20 電話番号:011-598-0151 営業時間:午前8時30分〜午後6時30分 定休日:火曜 品揃え:約100品目 スタッフ:製造常時3人、販売常時2〜3人 店舗面積:全体で35坪(イートインを含む)、イートイン15席(現在は休止中) | |||||||||||||||||||
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