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| 特集/2013年4月号 |
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| パンの価格
低価格志向が定着した昨今、リテールベーカリーでは、「オンリーワン」の価値を、いかにして適正価格で販売できるようにするかが課題になっている。東京・渋谷の「ブランジュリー パティスリー ブラッスリー VIRON(ヴィロン)」の西川隆博社長は「リテールベーカリーが一丸となって、もっとパンの価値と価格を上げていきたい」と語る。東京・八王子市のベーカリー「Boule Beurre(ブール ブール)」では、原材料のたび重なる値上げに悩みながらも、常連客に味の面で納得してもらうことで、適正価格を維持している。埼玉県川口市のベーカリー「パン・ピジョン」は、「お得感」を演出ことで、価格維持に成功している。
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| 味の面で常連客を裏切らなければ、適正価格で販売できる ●Boule Beurre | ||||||||||
東京・八王子市のベーカリー「Boule Beurre(ブール ブール)」の看板商品はリュスティック生地にクルミをたっぷり練り込んだ「フリュイ」。同店は開業して7年が経つが、その間に「フリュイ」の価格は4回値上げした。4回目の値上げとなった昨年末、250円から20円値上げし、現在の価格である270円とした。開業時は、現在より40円安い230円だった。 クルミの高騰について、オーナーシェフの草野武さんはこう話す。 「粉や油脂以上に、ナッツ類の高騰が止まりません。特にクルミは、2年前と比べると1・5倍近くになりしました。そのクルミをたくさん使う『フリュイ』は、当店の最もよく出る商品ですから店全体としての利益にかなり影響してきます。ですので、原価の変動に合わせて、価格もその都度調整していく必要があります」 また、同店には「フリュイ」以外にも、クルミをふんだんに使った定番商品がある。フランスパン生地を使用した「くるみこしょう」(280円)のほか、ライ麦粉とサワー種で作る「いちじくブロート」(660円)や「ヌス・ブロート」(620円)などもそうで、どの製品も生地に対するクルミの配合率が高い。そのためクルミの高騰は、1製品あたりの原価にも、そして店全体の利益にも大きく影響してくる。 「利幅をきりつめていっても、やはり無理が出てきますから、今回も値上げせざるを得ないと思いました。ただ、20円の値上げ幅は大きいですし、270円という数字は、250円とは全然違って300円に近いイメージがあります。いつも買ってくださるお客様にも申し訳ないですし、商品価格を改定する1カ月前に店頭の張り紙とブログで告知をしました」(草野さん) 「フリュイ」は、草野さんにとって特に思い入れの強い製品だ。開業前に修業していたベーカリーで人気だった商品で、「フリュイ」のようなパンを作りたくて、修業先をそのベーカリーに決めたのだった。 「クルミを入れた、見た目の似たようなパンはあると思いますけど、食べてみると全然違うんですよね。結局は、お客様に、『おいしい』と満足していただかなければ意味がないと思っていますし、自分が納得した味のパンを作り続けていきたいですから」(草野さん) 常連客にとって納得のいく価格 材料だけで考えると、全アイテム平均して33%の原価率が、同店が健全な営業ができる数字だと、草野さんは決めている。「フリュイ」の原価率も約3割弱だ。 しかし、同店のパンは長時間発酵させてつくるものが多いので「材料だけでなく、生地を寝かせる『場所代』も意識しておかないといけないですね」と草野さんは言う。 同店のパンは総じて、「フリュイ」が代表するように、具だくさんで、長時間発酵させた生地の味わいが特徴となっている。常連客はそれを同店に求めてやってくる。度々のパンの値上げに対しても、理解を示してくれているという。 以前、ネット上で「パンの値段が高い」と言われたことがあるというが、「結局はお客様に『おいしい』と満足してもらえるものでないと意味がない」という草野さんのパンづくりの姿勢があるからこそ、常連客の期待を裏切らずに、適正価格で販売できるのだろう。 Boule Beurre 住所:東京都八王子市八日町10‐19 電話:042‐626‐8806 営業時間:午前11時〜午後7時 定休日:火曜、水曜、隔週月曜 品揃え:40品目 スタッフ:製造3〜4人、販売2〜3人 店舗面積:売り場2・2坪、厨房7坪 日商:14万円 | ||||||||||

| ボリューム感を大切にして、お得感を最大限に演出する ●パン・ピジョン | |||||||||||||
「この内容でこの価格では、よそでは出せないと思うところを狙っています」と、価格設定について話すのは、埼玉県川口市のベーカリー「パン・ピジョン」のオーナーシェフ、八村努さん。 1日400個以上売れる人気の「クリームパン」の価格は160円。中にはカスタードと、カスタードに生クリームを合わせたものの2種類のクリームがぎっしりと詰まっている。パンを割ったときの見た目、そして2種類のクリームが溶け合う味わいは、価格から想像する以上に充実していて、お得感がある商品だ。 「お客様からは、おいしい、安いだけでなく、そこにさらにお得感のあることが求められています。『得したな』と思えば、また来たくなってしまうという、その繰り返しが、お客様を維持していくのに必要だと思っています」(八村さん) 「三元豚のサンドイッチ」は、厚さ2センチを超えるブランド豚がサンドされ、女性なら2食分にもなりそうなボリュームだ。見た目、食べごたえともに満足感があり、ほかのバーガー類が200円前後なのに対し、600円という高価格でも支持されているのがわかる、お得感のある製品だ。 「実は原価計算はしないんですよ。原価と製造個数を考慮して、この製品でいくらとれるかと計画すると、大概外してしまうんです。おそらく計算することで、その製品のボリュームとかを細かく調整することになるので、製品自体に勢いがなくなってしまうんだと思います。ですので、計算は意識的にしないようにしているんです」(八村さん) 八村さんは開業前、ベーカリーで修業したほかに、ベーカリー専門の店舗プロデュース会社にも勤務した。その当時からずっと、評判のベーカリーを耳にすると出向いていって、人気商品を食べるということを常々行ってきた。 「おいしい、おいしくないというのは個人の主観なので、こんなパンが売れているんだという気持ちで食べていますね」(八村さん) 客観視して様々な要因を見直す 「クリームパン」に続く人気商品は、「コロッケパン」(170円)、「やきそばパン」(180円)、「あんぱん」(140円)。これらも「クリームパン」と同様に、価格から想像する以上に具がたっぷり詰まっていてお得感がある。 こうした価格設定を可能にするため、八村さんは、スタッフのシフトの割り振り方や、材料の仕入れ方に常に注意を払っている。 「1日を通して、スタッフの手が止まらないように、シフトと仕事の割り振りをしっかり管理することが大事ですね。他のベーカリーを見に行ったときは、商品だけでなくその辺のことも、オーナーに訊くようにしています。スタッフ1人ひとりの技術力を上げて、生産性を上げることを基本としていますが、パートさんには2〜3時間くらいの短時間でも入ってもらったり、人手の無駄を省くようにシフトを組むようにしています」(八村さん) 材料の仕入れ方については「特に、レタスなどの葉もの野菜の価格は時季によっては普段の3〜4倍にもなったりするので、一定した価格の水耕栽培のものを使うようにしています。また、イチゴは高価ですが、親しくしている八百屋さんから特別価格で分けてもらえるので助かっています」という。 原価に大きく響かない材料を選ぶことが、原価率を下げるだけでなく、店頭に並んだ時、ボリュームがあって見た目にもそそられる製品を作ることに繋がっているのだろう。 パン・ピジョン 住所:埼玉県川口市里1245‐1 電話:048‐287‐1050 営業時間:午前7時半〜午後7時 定休日:月曜、第2火曜 品揃え:70〜80品目 スタッフ:製造4人、販売3人 店舗面積:売り場約9坪、厨房約13坪 | |||||||||||||

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