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| 連載／2020年11月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 日本の製パン技術を次世代へ繋ぐには！ - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(41) | |||||||
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独立して自分の店を持つ夢を抱きながら、日々パン作りの修業に励む若い製パン技術者は数多い。彼らは、自分が身に付けたいと望む製パン法を実践するベーカリーに、製造スタッフとして就職し、そこでその製パン法を一から覚えながら仕事をしていく。彼を雇用する側はオーナーシェフであることが多く、そのオーナーシェフは、自分の製パン法を実践してくれる自分以外の製パン技術者の育成に力を注ぐことが、自分の店の発展に直結すると考えている。雇用する側とされる側との間には、「これは一種の職業訓練のようなもので、一定期間働いて技術を一通り身に付けたら、独立して自分の店を持つべく巣立っていく」ということが、明示的なまたは暗黙の了解事項になっていることが多い。
こうしたことが根底にあるため、法律で定められた労働環境を整えるということが時としてないがしろにされてきたとも言われているが、様々な形で日本に根付いた製パン技術を次世代へ繋いでいくという意味では、日本のリテールベーカリー業界のこうした製パン技術者の働き方は、良好に機能してきたと言えるだろう。しかも、優秀な製パン技術を持ったオーナーシェフほど、多くの製パン技術者が集まり、人手不足とは無縁の状態を維持して、更なる発展を遂げていくので、自然淘汰の原理が働き、より優れた製パン技術が次世代に継承されていくことになるので、この意味でも好ましいと言えるだろう。 しかし、こうして修業を積んだ製パン技術者たちが、いざ独立しようという段階になると、様々なハードルが立ちはだかる。その中でもすべてのことに関わる最も大きな問題は、資金の問題だ。リテールベーカリーの場合は、初期投資額がかなり高く、２０００万、３０００万は軽くかかってしまう。せっかく身に付けた技術も、それを実践する自分の店が持てなくては宝の持ち腐れだ。日本に根付いた製パン技術を次世代へ継承していくという観点からは、好ましくない。 一方で、日本では今、年間およそ２００軒のリテールベーカリーが廃業しているという。そしてその中には、一定の売上を維持し、健全な経営を続けているにもかかわらず、オーナーが高齢で後継者がいないために廃業せざるを得ないというケースも少なくないという。 後継者問題は、リテールベーカリー業界を今後も輝かせていくためには、解決しなければならない大きな課題のひとつだ。リテールベーカリーは、企業の規模としては、小規模である場合が多く、法人格を持たずに、個人事業として営まれているケースも多い。この場合、オーナーシェフの子供が店を継ぐのが一つの理想形なのかも知れないが、それがかなわない場合は、そのオーナーシェフの代で店をたたむか、子供以外の誰かに店を引き継いでもらうことになる。子供に継がせるにしても、子供以外の誰かに継がせるにしても、事業承継には、かなりの労力が必要だ。繁盛店であればあるほど、様々な問題が絡んでくる。こうしたことが原因となって、廃業する店が増えていくことも、日本の製パン技術を次世代へ繋ぐという意味では、好ましくない。 日本のリテールベーカリー業界の活気を維持するためには、優れた製パン技術者の数と、そうした製パン技術者が持つ技術をいかんなく発揮できる場所の数を増やしていかなくてはならないし、少なくても今の数を維持していかなくてはならないだろう。 最近では、リテールベーカリーが抱えるこうした課題を解決するためのサービスを提供する企業や団体が増えているようだ。店舗譲渡希望のオーナーシェフと、独立希望の若手製パン技術者をカップリングするサービスを行うある団体の世話人が「日本には今、９０００軒のリテールベーカリーがあり、それらのオーナーシェフ９０００人は生活のかかった商品開発要員であり、その数が減ってしまうと、パン業界全体としての商品開発力が廃れていってしまいます」と言っていたのが心に深く刻まれた。 （ＲＯ） |
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