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| お店拝見／2020年2月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 焼きたてを食べる経験を提供したい - てるパン | |||||||||||||||||||
千葉県市川市の東京メトロ東西線妙典駅から徒歩６分、大型スーパーなどが入る商業施設に近い立地のベーカリー「てるパン」。２０１８年２月にオーナーシェフの首藤輝夫さんが開業した。 店前にあるウッドデッキのテラス席と店内にあるカウンター席は、「焼きたてを食べてもらいたい」という首藤さんの思いから設置。焼きたてのパンをより楽しめるよう、自家製スープとホットコーヒーも用意している。自家製スープは冷製でも温めてもどちらでもおいしい「コーンたっぷりのクリームスープ」（税抜２００円）で、冷蔵ケースのサンドイッチ横にカップに入った状態で並ぶ。希望があれば温めて提供する。ホットコーヒーは１杯税抜１００円だが、おかわり１杯を無料提供している。 「多いのは、店内でまずパンと一緒に１杯飲んで、退店するときに２杯目をおかわりして飲みながら帰られるというパターンで、そのようなお客様は大抵同じ時間に来店されます。嬉しいですね。当店が、お客様の毎日のルーティーンの一部になっているという実感が持てるからです」（首藤さん） 約２年前の開業当時、製造は首藤さん一人だったが、現在は常時２人体制となり、品揃えが充実してきた。当初は40種類だったが、現在は65種類のパンと菓子を並べる。また、品揃えの充実を図るだけでなく、各商品の改良も行ってきた。 大幅な改良を行ったのは、しらす入りフィリングを使用した商品と、カレーパンの二つ。これらは改良を行った結果、現在同店のベスト５に入る人気商品となるまでに成長した。 しらす入りフィリングのパンは、そのフィリング自体も変え、パンの形も変えた。 「使っていた既製品のフィリングが販売終了となり、自家製フィリングでやってみることにしたんです。どうせ手間をかけるならおいしく作りたいと想い、お客様にどうしたらこのフィリングのおいしさが伝えられるのかを考えながら改良しました」（首藤さん） 当初は、パンに切り込みを入れ、その切り込みにフィリングを絞った形にしていたが、現在販売している「釜揚げしらす＆クリームチーズ」（税抜２３０円）は、フィリングを包んだ丸形だ。さらに表面はダッチブレッド風にして食感にアクセントを付けた。 カレーパンは当初、フィリングのカレーを野菜多めのスパイシーな味にしていたが、ほぼ辛さを感じない、マイルドな味わいのものへと大幅に変えた。 「『辛いから食べられないでしょ』という、売り場にいた親子連れの会話を聞いて、子どもにとっては、食べられないほどの辛さなんだということに気付きました。子どもにも『おいしい』と食べてもらいたいけれど、辛くないカレーはつまらない。考えた末、バターチキンカレーに辿り着きました。自分にとっては未知のカレーだったので、様々なカレー店に食べに行って味比べをし、どんなバターチキンカレーがいいか研究しました」（首藤さん） こうして誕生した、バターチキンカレーを包み、油で揚げた「バターチキンカレーパン」（税抜１６０円）は、乳の甘さが引き立つ辛くないカレーパンとなり、一気に人気商品となった。 | |||||||||||||||||||
また、「バターチキンカレーパン」にしたことによって原価が下がり、しいては揚げたての並ぶ頻度を上げられた。 「牛肉から鶏肉への変更でかなり原価を下げることができ、売価を40円も下げることができました。安い方が、お客様の手にとってもらいやすいし、そうすると回転率がよくなって、揚げる頻度も上がりますから、より揚げたてをお客様に食べてもらうことができます。回転率は倍以上になりました」（首藤さん） 首藤さんは、揚げたて、焼きたて、作りたての「３たて」を最も重視しており、時間帯別に売れる商品を集中して焼き上げたり、一度に多く焼かずに少数ずつ分けて焼くようにしている。 例えばランチ時に集中して焼きたてを並べる商品は、「フレッシュトマトとモッツァレラ」（税抜２００円）や「明太フランス」（税抜２００円）などの総菜パン。ジャガイモを練り込んだフォカッチャ生地と、ソフトフランス生地の２種類の生地をメインに展開している。フォカッチャ生地は満足感のある食べ応えに、ソフトフランス生地は具が引き立つ味わいに、それぞれ特徴を持たせて作り分けている。 首藤さんが「３たて」を重視することとなったのは、調理の専門学校を出て菓子職人を目指すべく就職活動をしていたときに出合った「ピーターパン」（千葉県船橋市）のパンがきっかけで、さらにその出合いがパン職人になることを決意させたという。 「菓子店を目指していたのですが、縁があって『ピーターパン』にも面接に行かせてもらいました。帰りに買ったパンのほとんどが焼きたてで、パンってこんなにおいしいんだって思いました。そもそも職業を決めるに当たって根底にあった考えが、ものづくりをして人を喜ばせたいということでしたので、これはパンしかないと思ったんです。ですからパンを売るというより、焼きたてを食べるという経験を提供していきたいと思っています」（首藤さん） 同店の一番人気商品は、卵黄の黄色味を活かしたクッキー生地と豊かなバターの香りが特徴の「太陽のメロンパン」（税抜１４０円）。首藤さんは、「ピーターパン」での修行時代から、メロンパンの魅力を消費者と製造者の両側の立場から見出し、開業前からメロンパンを看板商品にしようと決めていた。 「老若男女の誰もが、手ごろなおやつ感覚で食べられます。手ごろなので、メロンパン一個だけ買うという人はなかなかいなくて、食パンやランチの次いでに買ってもらいやすいアイテムでもあると思います。作りやすさの上でも文句なしなので、いろんな意味でいいアイテムだと思います」（首藤さん） 同店は子ども連れの客が多い。店内がベビーカーで埋まってしまうようなときもあるという。 「自分が子どものときパンが嫌いだったのは、焼きたてを食べたことがなかったから。子どもたちに、もっと焼きたてを食べてもらえるように頑張っていきたいです」（首藤さん） SHOP DATA 店名：てるパン 住所：〒２７２‐０１１１ 千葉県市川市妙典９‐２６ 電話：０４７‐７１２‐７５７７ 営業時間：午前１０時〜午後６時 定休日：月曜、火曜 品揃え：６５品目 スタッフ：製造常時１〜２人、販売常時１〜２人 店舗面積店名：売り場約１２坪、厨房約１５坪 日商：平日約１２万円、土日約２０万円 | |||||||||||||||||||
| この記事の読みどころ
●店が顧客のルーティーンの一部になっているという実感が持てるのが嬉しい。
●子供にも辛くないカレーパンに作り変えたら、売上が伸びた。 ●パンのアイテムごとに、その売れる時間帯に焼きたてを出す。 ●店の名刺代わりにもなる絶対的な看板商品を作る。 ※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
