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| 特集／2020年2月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| バウムクーヘン専門店
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| 紅茶と好相性のバウムクーへン。ふんわり、しっとりした食感 - 花水木高円寺店 | ||||||||||||||||
東京都杉並区、ＪＲ高円寺駅の北口を出て、商店街エリアを３分ほど歩くと、薄い緑の看板に大きく書かれた「手焼きバウムクーヘンとこだわりの紅茶」の文字が目に飛び込んでくる。「花水木高円寺店」だ。 入り口のすぐ左横に貼られている大きなバウムクーヘンの写真には「しっとり、ふわふわ、奇跡の食感」の文字が記されている。同店の最主力商品で写真に出ているプレーンのバウムクーヘン「極（kiwami）」（中サイズ・税込１５８０円）が持つ、極上の柔らかさを表現したキャッチフレーズだ。 またそのさらに左側の端の方には、ガラス張りの窓があり、工房内で専用オーブンを用いながらバウムクーヘンを作る作業風景が見える。芯棒に巻かれながらぐるぐる回転するバウムクーヘンの姿が通りがかりの人々の目に自然ととまるようになっている。 ここが店舗と工房が一体となったバウムクーヘン専門店であることがわかるつくりだ。 同店で７年ほど勤務する工房長の安西一人さん（37）は、もともとはケーキなどの洋菓子を製造するパティスリーの出身。縁あって同店で働くようになり、バウムクーヘン職人となった。木製の芯棒に生地をかけて焼くことを繰り返して仕上げていくバウムクーヘンの製造は手間と根気のいる作業だが、この仕事が自身にとても合っていると感じているという。 「バウムクーヘンはケーキのような王道を行く華やかな菓子ではないですが、何気ない存在感がありますね。全ての世代の人から好まれ長く安定した人気を保っている点がいいと思います」（安西さん） | ||||||||||||||||
同店の職人は朝起きるとまず、その日の気温や湿度を確認するという。 「『極』を作るために職人たちは、時には、芯棒から落ちてしまうこともあるほど柔らかい生地を、焼きの色合いや香りを確認しながら、常に神経を集中し、火加減を調整して丁寧に焼いていきます」（同社広報） また焼き始めると決して窯の前を離れず、通常よりも、じっくり時間をかけながら焼き重ねていく。常に細やかな調整が必要なその繊細な生地は通常のバウムクーヘンと比べると一層一層がかなり薄く、直径15センチのもので23層ほどもある。 もともとは紅茶専門店である本店を茨城県つくば市に構える同店は、茨城産の高品質な卵をたっぷり使用。活力ある若鶏の新鮮な生みたて卵を多めに使用することで、かなり水分量が多くしっとり感が強い独特の味わいを実現させている。 一方で、同店はドイツの伝統的な製法に近い形で作ったハードタイプの「匠（ｔａｋｕｍｉ）」（１山箱入り税込１５８０円）も対照的な商品として販売。こちらはバターが多めで卵が少なめのドイツ風の配合で、焼成時間も「極」に比べると約１・５倍と長めに焼くことで外はカリッと、中はもちもちとした食感に仕上げている。 その他にも、バウムクーヘンの穴の中に、カスタードやチーズを入れて焼き上げた「ふわとろカスタード」（ミニサイズ税込２００円）「ベイクドチーズバウム」（ミニサイズ税込２５０円）などの商品も展開。「ふわとろカスタード」は「極」の中にカスタードを、「ベイクドチーズバウム」は「匠」の中にクリームチーズを入れて焼き上げており、生菓子と融合させた商品としてテレビなどでも取り上げられ話題を呼んだ。 安西さんはこうした新商品の開発なども担当、「今後はさらに新しいアイデアを取り入れ見栄えもするような新商品も手がけていきたいですね」と意欲的な気持ちを語ってくれた。 | |||||||||||||||||||
| 紅茶専門店が新たな展開を図る | |||||||||||||
実は同店のもう一つの大きな特徴は、店内でバウムクーヘンと合わせて約70種類もの紅茶が販売されていることだ。そして紅茶と相性の良い菓子としてバウムクーヘンの喫食提案がすすめられている。 同店はもともと茨城県つくば市に本店をもつ紅茶専門店「花水木」の新たなブランドとして立ち上げたバウムクーヘン専門店で、２０１２年に「Ｓ・ＳＥＮＹＡ Ｓｈｕｔａｒｏ」の名でオープン。当初から「しっとり、ふわふわ、奇跡の食感」をスローガンに、日本人の味覚にも合う商品を目指し奮闘。その中で「極」のようなソフトタイプのバウムクーヘンが生み出されていったという。 ２０１５年に「花水木」と連携したブランド展開をより強く意識する形で「花水木」の「高円寺店」らしい「バウムクーヘン工房 ＨＡＮＡＭＩＺＵＫＩ」に名前を変えてリニューアル。２０１９年からは「手焼きバウムクーヘンとこだわりの紅茶 花水木」に名前を変えて再度リニューアルを行い、紅茶類の販売をさらに増やし、紅茶と合わせた提案を強化した。その結果、昨年１年間は前年比で売り上げが10％増えた。 さらに、今年中に高円寺店の工房のみを茨城県土浦市へ移転、高円寺店の空いたスペースは、イートインに改装する。。 「今までアンテナ的な役割も果たしてくれた工房が高円寺店からなくなるのは残念ですが、その分、紅茶文化の普及と、新しいバウムクーヘンの提案を強化していきたいですね」（同社広報） SHOP DATA 店名：手焼きバウムクーヘンとこだわりの紅茶 花水木高円寺店 住所：〒１６６−０００２ 東京都杉並区高円寺北２−10−５関ビル１階 電話：０３−５３２７−８５８０ 営業時間：午前１０時〜午後８時 定休日：なし 品揃え：バウムクーヘン13〜20シリーズ(季節によって変動)、紅茶約70種類(季節によって変動) スタッフ：製造常時２人、販売常時３人 店舗面積：売場6.2坪、厨房15.6坪 | |||||||||||||
| 日常生活の様々な場面でバウムクーヘンを提案する - アニバウム | ||||||||||||||||
東京・新宿区、東京メトロ東西線の早稲田駅から歩いて４〜５分ほどの早大通り沿いに店舗を構えるバウムクーヘン専門店「アニバウム」は、年間約５０００台ものウェディングケーキを製造するパティスリー「アニバーサリー」が２０１８年５月に兄弟店としてオープンした店だ。 隣合わせで佇む「アニバーサリー早稲田店」とは対照的に、シンプルで素朴な外観が特徴の「アニバウム」のキャッチフレーズは「街のパン屋さんのように気軽に立ち寄れる焼きたてバウムクーヘン専門店」。 結婚式の引き出物など一般的にはギフトとしてのイメージが強いバウムクーヘンだが、「引き出物などのギフトの枠を超えて、もっと気軽に日常の中でバウムクーヘンを食べて欲しい」（同社広報）という思いからオープンしたという。 同店の店長でパティシエの工藤大輔さん（26）は、北海道の製菓専門学校を卒業後に上京し、「アニバーサリー」へ入社、「アニバーサリー早稲田店」でパティシエとして洋菓子製造に勤しんできた。２０１８年５月に「アニバウム」がオープンしてからは、こちらに異動、以降はバウムクーヘンの製造に没頭する日々だ。 バウムクーヘンは焼成方法も特殊で、製造は体力的にも大変だが、工藤さんは精魂込めて取り組むうちにバウムクーヘンの世界の奥深さに引き込まれるようになっていったという。 ドイツから伝わり日本ではおよそ１００年もの歴史があるバウムクーヘンは、長く愛されながら定着している感があるが、工藤さんは「本当においしいもバウムクーヘン、毎日食べても飽きないようなバウムクーヘンを提供していきたいですね」と話す。 | ||||||||||||||||
取材当日、入り口から入ってすぐの店内真正面には、ガラス越しに、専用のオーブンから焼き上がって出されたばかりのバウムクーヘンの姿が見えた。６本ほどが棒に巻かれたまま芳ばしい香りを漂わせている。 一方、落ち着いた雰囲気の店内窓側の陳列台には常温で３週間ほど日持ちする「プレーン」（税別１５００円）、「いちご」（税別１８００円）、「パンプキン」（税別１８００円）などの商品が並べられていた。またレジ前には、当日焼き上げ、買った当日か翌日にすぐ食べることを想定した「焼きたてアニバウム」（税別１３００円）を販売。カジュアルなシーンで食べることを意識したものでコアなファンが多いという。 またカップに入れながら食べ歩きも可能な「ケーキバウム」のシリーズとして取材時は「クレームブリュレ」（税別４２０円）と「モンブラン」（４５０円）を販売。同シリーズはもともと２０１８年の夏に夏季向けの冷製商品として提案・発売されたもので、好評だったため通年商品として現在まで続いているものだ。 「当店のバウムクーヘンはウェディングケーキの世界で培った『ケーキ屋』特有の製造技術が生かされています」と工藤さんは話す。膨張剤やショートニングなどを一切使用していないが、バターや卵、牛乳、砂糖など素材の力を生かしふんわりしっとりと焼き上げている。卵黄や卵白は別々に泡立てることでケーキのようなふわっとした食感を実現した。 「ケーキバウム」シリーズは、そんな生菓子と焼き菓子の両方の技術とアイデアを生かして生み出された商品で、イメージとしては、ケーキのスポンジ生地の部分をバームクーヘンに替えたような作りだ。 さらにケーキのデコレーション技術を生かし、チョコレートとドライフルーツを用いてバウムクーヘンにコーティングした「ホワイトリースバウム」（税別２５００円）は、クリームが苦手な人も食べやすく、見た目も華やかな製品。「目で見てもおいしい、食べてもおいしいものを提供したい」（同社広報）のだという。見た目の簡素さから、ギフトの中では引き出物やお歳暮などの範疇にとどまりがちなバウムクーヘンだが、同社は華やかなデコレーションをすることで、誕生日など特別感がある日のギフトにすることもできると考えている。 | |||||||||||||||||||
| 様々な素材との組み合わせを提案 | |||||||||||||
「バウムクーヘンはフルーツとの相性も良いですし、素材同士のいろいろな組み合わせを楽しめるのが専門店ならではの楽しみだと思います」（工藤さん） 夏はパッションフルーツやオレンジと合わせた商品、冬はバレンタインの時期に合わせてチョコレートを外側の層の表面に塗った商品を出したりもする。さらに季節によっては抹茶生地のバウムクーヘンを出すこともあるが、生地の表面ではなく生地自体に味付けをした商品のため、配合を工夫しないと生地が硬くなりがちで、開発には少し手間がかかったという。 取材時はちょうど、20才くらいの男子大学生が、普段は群馬にいるという友人と共に訪れ、ケーキバウムを購入していた。 「この店は以前通りがかりに見かけて入ってからファンになりました。今日は普段会えない友人のためにケーキバウムをプレゼントしてあげようと思います」と男子大学生。普段はしギフトとしてでなくても、普段から何気なく食べるスイーツとして日常の中で購入することが多いという。 「『ケーキバウム』はカップに入れて売ることで野外パーティーでの喫食などカジュアルな食シーンへの提案も可能にしました。今後は色々な場面でバウムクーヘンの喫食提案を広げ、専門店としてさらに挑戦を重ねていきたいですね」（同社広報） SHOP DATA 店名：アニバウム 住所：〒１６２-００４１ 東京都新宿区早稲田鶴巻町５１９ 電話：０３−６２３３−８９５０ 営業時間：午前１０〜午後７時 定休日：月曜日 品揃え：７〜８品目 スタッフ：製造２人、販売１人 店舗面積：売場と厨房合わせて12坪 | |||||||||||||
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