ベーカリーの業態は客数が多いのが醍醐味 - 石窯パン工房パラッソ [記事の閲覧ブランスリー電子版]

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お店拝見／2013年8月号

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ベーカリーの業態は客数が多いのが醍醐味 - 石窯パン工房パラッソ

１等級の小麦粉の１ＣＷ、発酵バター、本和香糖、ゲランドの塩などを使用した「エレガント食パン」（１斤３６０円）

牛肉と野菜がたっぷりと入った自家製のカレーフィリングを包んで揚げた「カレーパン」（１６０円）

「ふわトロクリームパン」（１３０円）は、近くリニューアルされる予定だ

　鹿児島市の住宅地にあるベーカリー「石窯パン工房パラッソ」は、注文住宅やガソリンスタンドなどの事業や、外食事業などを幅広く手掛ける地元の企業、ミスミ（岡恒憲社長）が２０１０年１２月に開業したベーカリーだ。ケンタッキーフライドチキンのフランチャジーとして、九州に４５店舗を展開するほか、イタリアンなどの独自のレストランも複数展開している。
　午前１１時頃、店長の池田洋一さんは、パンの仕上げに大忙しだった。作業をひと段落させると、池田さんはこう話した。
　「ベーカリーの場合は、ほかの外食業態と比較すると、客数が多いというのが醍醐味のひとつだと思いますね。お客様と接する機会が多くなるので、コミュニケーションが深まっていきます。ファストフードの業態のお客様は、店との触れ合い的なものは求めていない気がします。その点、ベーカリーのお客様は、店との触れ合いを求めている方の割合が高く、地域密着の度合いが高い業態ですので、すごく面白いですよ」
　客との交流を深めるために、イベントも頻繁に開いている。取材時は、七夕の企画として、客に短冊にメッセージを書いてもらって、店内に立てた竹の木に飾り、メッセージを描いてもらった客に抽選でパンをプレゼントするという企画を行っていた。その前は、子供に、父親の似顔絵を描いてきてもらい、店内に貼り出すという内容の父の日の企画を開催したという。
　「イベントを行うことが、お客様の来店促進になり、しいては客数増加につながっていくわけですからね」と池田さん。

厳しい競争の中で、看板商品が複数必要に

店長の池田洋一さん

オレンジ色の看板にクリーム色の外壁が印象的な「石窯パン工房パラッソ」の外観

　同ベーカリーがある地域は、同じような規模のベーカリーがほかにあったり、近くにコンビニが複数あったりと、競争が激しい商圏だという。
　池田さんは「競合店が数多くある中で客数を維持し、さらに増やしていくには、ライバル店を圧倒的に上回る看板商品がないとだめなんですね」と話す。
　同ベーカリーの一番の看板商品は「カレーパン」（１６０円）だ。牛肉と野菜がたっぷりと入った自家製のカレーフィリングを包んで揚げた製品で、１日平均１５０個ほど売れるという。揚げたてで購入してもらうために、１日３０回は揚げるようにしているという。
　しかし、厳しい競争が展開されている状況では、「ライバル店を圧倒的に上回る看板商品」が複数ないと厳しいという。
　池田さんは「看板商品は１品ではなく、３～４品はないと客数獲得の競争には勝ち残っていけません。特に『対コンビニ』という意味では、高級路線が重要だと思います」。
　そこで、高級路線として今年の２月に発売したのが、「エレガント食パン」（１斤３６０円）だ。
　カナダ産の１等級の小麦粉の１ＣＷ、発酵バター、本和香糖、ゲランドの塩など、厳選した材料を使用し、コンビニの高級食パンとの明らかな違いを出しているという。
　さらに、「ふわトロクリームパン」（１３０円）をバージョンアップしようと計画している。牛乳、たまご、バニラビーンズなどを最高級のものにして、原価率を５０％まで高めて、売価は１５０円を考えているという。
　「現在は売価１３０円で、原価はもっと低いので、同じ個数売れたとしたら、利益は減ります。それでもあえてバージョンアップするのは、競合店との差別化が、どうしても必要だからです。鹿児島には、数年前に、セブン‐イレブンが進出し、店舗数を増やしています。当店の近くにも最近２軒のコンビニができましたが、やはり売上の１０パーセントは持っていかれています。コンビニのパンもおいしいので、うかうかしていると負けてしまうんですね。コンビニのクリーパンとは明らかに違うということを、お客様にわかってもらわなくてはならないんです」と池田さんはいう。

「明太フランス」もバージョンアップ

強化商品として２カ月前にバージョンアップを行った「明太フランス」（２２０円）

　「明太フランス」（２２０円）は、強化商品として２カ月前にバージョンアップを行った商品だ。「『明太フランス』というと、福岡で人気のある商品なのですが、鹿児島では、おっかなびっくりで手を出してくれない人が多く、意外と食べたことがない人が多いんです。でも、一回食べてもらえれば、それも焼きたてを食べてもらえれば、ファンになってくれる人は多いんですね。馴染みのないものは、やはり最初は中々売れないんです」と池田さん。
　同商品は、フィリングの量を１・５倍に増やし、パンのボリューム感を出したという。
　提供の仕方も、焼きたてが出せるような工夫がされている。同商品用にフランスパンのフィセルを、１日４時間おきぐらいに３回焼いてキープしておき、あとは売れ行きをみながら、順次カットを入れて明太フィリングを塗って、再度３～４分焼いて出す、という方法だ。
　「たまたま、明太フランスが切れているときでも、お客様から『明太フランスがほしい』と言われれば、５分待っていただければ焼きたてが出せるんですね」と池田さんはいう。

労働生産性の向上に力を注ぐ

店内は広く、ゆったりとした空間だ。奥には、３２席のカフェスペースがある

中央の平台には、１番人気の「カレーパン」や、その他の人気商品が並ぶ

　同ベーカリーは、運営会社が様々な外食の業態を手掛けるだけあって、生産性の向上にも力を入れている。
　池田さんは「ベーカリーはほかの外食の業態に比べて生産性が低いので、それを少しでも向上させるために試行錯誤を繰り返しています。生産性を上げるための基本的なことは、職人のスキルを上げることです。例えば成形にしても１時間に８０個こなす人と、１００個こなす人がいたら、会社としては１２０個を求めていくしかありません。１時間に１２０個成形できるようになったら、今度は１３０個を目指すしかないんです。その上で、各職人が、仕込み、麺台、焼成などの製パンの各パートをすべてこなせるように育てることが重要です。職人が仕込みしかできないとか、窯しかできないということになると、シフトを組むのも大変になってきますからね」。

SHOP DATA
店名：石窯パン工房パラッソ
住所：鹿児島県鹿児島市伊敷台５丁目２３‐１
電話：０９９‐２１８‐３３３９
営業時間：午前７時～午後７時
定休日：なし
品揃え：約１１０品目
製造１０人、販売５人
スタッフ：厨房２５坪、売り場２５坪（カフェスペースを含む）
日商：平均３０万円

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