優れた役者も優れた演出家がいなければ輝かない - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話 - ブランスリー電子版


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連載/2019年2月号

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優れた役者も優れた演出家がいなければ輝かない - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話
 今回のお店拝見でとりあげた「ジュウニブンベーカリー」の「風船パン」が印象に残った。吸水量が120%という多加水の生地を、ところどころに、有塩バターのかたまりを散りばめながら成形して焼き上げた、バンズのような形をしたパンだという。それを、もともとはハンバーガー用の包み紙で包装して販売していて、断トツの一番人気商品になっているそうだ。
 ベーカリーの品揃えの中に圧倒的な存在感のある主役となる看板商品があると有利になる。ベーカリーの売り場を、ドラマを放映するスクリーンと考えれば、主役が魅力的であればあるほど、そのドラマを観る視聴者は多くなるだろう。主役の存在感が圧倒的であればあるほど、彼は視聴者を魅了し、さらに多くの視聴者を集めるに違いない。
 一方、準主役とも言うべき「ジュウニブン食パン」の役割も見逃せない。「風船パン」と同じ120%加水の生地を使った食パンで、主役をはる「風船パン」をしっかりと支え、自らも大きな存在感を視聴者にアピールする頼もしい存在だ。
 ドラマの演出家としては、次に、名脇役たちをキャスティングしなくてはならない。「ジュウニブンあんぱん」「ゴルゴンゾーラと自家製ベーコンのプチカンパーニュ」「ミルクフランス」などが、それぞれ自分の役割を充分に理解し、アピールすべき顧客層の人たちに、しっかりとメッセージを伝える。これで視聴率40%は狙えるだろう。
 各シーンで登場する大勢のエキストラたちも、下積みながらも、全員才能のある役者の卵たちだ。脚本がしっかりしていれば、エキストラの役者たちも、それぞれ、いい味を出すし、何人かは、名脇役、準主役、そしてあわよくば、主役まで這い上がって来るかもしれない。
 そのほか、照明器具や陳列台、ポップ、買い物袋などの大道具、小道具についても、様々な工夫が施されていて、ドラマの雰囲気をおおいに盛り上げている。
 そして、このドラマは、視聴者を感動させ、その評判が、さらなる評判を呼び、果てしない好循環へと突き進んでいくのだ。
 前回のこのコラムで、店を繁盛させるには、ブランディングが重要であることについて書いたが、「ジュウニブンベーカリー」のショッププロデュースは、まさにその好例のように思えた。
 商売は、まずは販売する商品がなければ何も始まらない。そして販売する商品の品質が悪ければ、売れない。だから、消費者にとって魅力のある高品質の商品を開発しようとみんな必死になる。
 しかし、そうやって他のどこにも負けないと思えるいい商品が開発できたとしても、それだけでは、まだゴールまでの折り返し地点までもたどり着いていない。100点満点のテストで言えば、商品開発への配点は、多分40点ぐらいだ。これ以上あり得ないぐらいのいい商品が開発できたとしてもだ。
 残りの60点は、売り場の演出や販売スタッフの接客作法、顧客に対する商品の印象付けなどの作業にかかっている。その作業に、全体の6割程度の労力を割かない限り、顧客の、店に対する信頼は勝ち取れないだろう。品質は、信頼があって初めて正当に評価されるのだ。
 どんなにいい役者も、優れた演出家がいなければ、輝かないのと同じだ。 (RO)







原価計算女王
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