記事の閲覧
| <<戻る | 写真をクリックすると拡大写真が見られます。 |
| 特集/2023年3月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 人手は足りていますか?
|


|
パン屋であることに誇りを持ってほしい
山本さんは18才の時に新宿中村屋に入社しパン部門に配属され、10年間修行。その後小規模のリテールベーカリーで店長を経験するなどした後、1999年に独立し、「パンステージプロローグ」をオープンした。 「わざわざ来てもらう店」をコンセプトに周囲を畑に囲まれた場所にあえて出店し、子供からお年寄りまであらゆる層の客の要望に応える種類豊富な商品展開を行い、ずっと右肩上がりの成長を実現してきた。現在は約300種類もの商品を展開し、1000組以上の客足がある土日の日商は130万円ほど。 また、最寄駅の「たまプラーザ」駅前に販売店の「パンステージ パサージュ」、東京・町田市に姉妹店の「パンステージ エピソード」を出店しており、繁盛店として着実な成長を続けてきた。 それは来店客の期待にあらゆる形で応えてきた努力の結果だ。特にオールスクラッチで製造するリテールベーカリーならではの価値を徹底的に出す事を考えてきた。 「今の時代は本店でもミキサーがない店や冷凍生地を焼成するだけの店も増えています。パン業界にいても、しっかりした製造技術は学ばず、出来合いのものをうまく売れるようにすれば良いという人もいます。ただそれではホールセールではないリテールベーカリーとしての価値が出せないんですよ」と山本さんはいう。 さらに「しっかりと修行したパン職人は、例えばその日の天候なども見ながら、この作業は今日どれくらいの時間で行えば良いか感じとるといった、長年の経験を重ねる中で育つ感覚のようなものを持っています。そういった人の手を介して極めたものだからこそ、その店でしか買えない『わざわざ買いに行きたくなる店』の商品ができるのです。だから若者にはパン屋であることに誇りを持ってほしいと思います。そのためには人間性を磨く必要があります。人間性を高めればパン作りの奥深さにも気づき、必死で取り組めるようになるし、誇りを持てば良いパンが作れるんです」。 山本さんは自分の視野を広げるために、よく業界外の人とも意識的に付き合うようにしているが、小学校に招聘講師として呼ばれ、パン職人としての自分の体験を話す事もある。 「パン職人という職業は子供達には身近でわかりやすいですからとても人気なんです。それで自分の話を聞いて感動した子が店に来てくれたり、お礼に手紙を送ってくれたりします。子供は純粋ですね。しかし成長した若者になると『修行』の仕事は敬遠するようになってしまうことが多いんですね。今の時代、情報に惑わされやすいですから、先のことを考えすぎて熱くなれなくなってしまうのかも知れませんね」(山本さん) 「修行」の仕事に人気がない時代ではあるが、それでも同店の成長の背景には、多くの従業員が修業する中で大きく成長してきたという事実がある。 山本さんは、「誰もが一律で適応し働けるような職場にする事は難しいかもしれませんが、本当にやる気のある子には技術的な事も含めどんどん教え、仕事も任せていきます」と話す。 「どんなに機械を入れたり製造の方法を効率化して変えたりしても、パン職人という仕事が厳しい修行が必要な仕事である事は変わりません。だからこそ頑張った人には返ってくるものがあって、やり遂げた先には大きな喜びがあるわけです。成功すれば本当に夢がある仕事だということは伝えていきたいですね」(山本さん) 最後に人材確保、定着のための3カ条をあげてもらった。 「価値観を共有できるかどうかを見て採用すること」「成り上がりたいという思いは大切だと伝えること」「パン屋であることに誇りを持つ大切さを知ってもらうこと」の3つだという。 「思い切って独立する事ができたら、今の時代は頑張れば一人勝ちできますよ。夢を見て欲しいですね」(山本さん) パンステージ プロローグ 住所:〒225‐0001 神奈川県横浜市青葉区美しが丘西1−3−10 電話番号:045‐902‐7879 営業時間:午前6時〜午後7時 定休日:なし 品揃え:約300品目 店舗面積:厨房約30坪、売り場約12坪 スタッフ:製造常時10人(平日)、18人(土日祝)、販売常時10人 日商:約60万円(平日)、約130万円(土日祝) |

| 余裕のある人員体制を整え、常に新しい事ができる余裕を確保する - サガミパン工房ブンブン | |||||||||||||||||||
神奈川県厚木市のベーカリー「サガミパン工房ブンブン」の地主将人社長は、新卒での人材採用が年々難しくなってきていると感じている。 神奈川県内などに直営店6店舗などを展開する同店は、新卒、中途ともに通年で募集をかけているが、採用できるのは専門学校の製パンコースを卒業した新卒者が多い。しかしその専門学校からの応募も最近は少なくなり、適性のある人材を集めるのが難しくなってきているという。 「少子化で学生の数自体が減ってきていることもあるのか、新卒の応募者は少なくなっていますし、応募者の中から当店の仕事とマッチしているかどうかを見て選考すると、2割位しか残りません。結局最近は新卒は毎年2〜3人の採用にとどまっているというのが現状です」(地主社長) これまで新卒は大卒も合わせて募集してきたが、長く定着するのは製パンコースの専門学校を出た者が多かった。新卒の社員はかつては1年に10人採用する事もあったが、近年は、新卒社員の採用は困難になっているという。 地主社長が非常勤講師を務める製菓製パンの専門学校では1学年80人のうち製パン希望は4人位しかいないという。全体の9割以上がパティシエとして洋菓子店への就職を希望している。同店も以前はケーキなどを販売する洋菓子の直営店を抱えていたが、その時代は比較的応募数が多かったという。 「洋菓子の希望者も年々減ってきてはいるのですが、特にパン屋を希望する学生のモチベーションが低くなってきている気がします。華やかなイメージのパティシエがテレビに出てくる洋菓子業界と違って、パン屋は地味なので、メディアへの発信力も弱くなってきているというのもあるかもしれません」(地主社長) 同店での新卒応募の試験内容は、面接のほか、筆記試験で総合的な知力、判断力、解決力を測る適性検査がある。これらの試験を通じて、社会人として店の環境に適応していけそうな人材かどうかを見ると、一定の水準に達している者は少なくなってきているのだという。 常に求人を行い、従業員は多めに確保 しかし、同店の場合、大きな人手不足に陥っているという事はないという。 「新規の採用者は少ないのですが、退職者も毎年それほど多いわけではありません」(地主社長) 同店の場合、新卒は入社すれば熱心に働き定着する人が多く、辞める場合は店を変わるか独立するかなので、辞めてパン業界を去る人は少ないという。 現在同店の従業員は直営店の6店全てで社員が40人、パート、アルバイトが150人。社員は全てが製造の担当だ。パート、アルバイトは販売が中心で製造はサンドイッチ製造などの製造補助ができる者が一部いるのみ。 各店舗の運営は基本的にそれぞれ店長に任せているが、離職を防ぐための対策としては特に変わった事を行っているわけではない。 ただ会社として週休2日や時間に応じた残業代の支払いなど最低限の待遇は保障している。 また従業員からの個別での相談には積極的にのるようにし、何が不満なのかといった事を早期に把握できるようにしている。 さらに人手が不足していてもしていなくても、求人は通年で出すようにしている。 よく利用するのが、パティシエ、ベーカリー、カフェ業界の求人を集めた「スイーツネットジョブ」という求人サイトだ。かなりの応募数があった10年位前に比べると、サイト自体の掲載企業数が増えた事もあって、同店への応募件数自体は減っているが、それでも月に2〜3件くらいは応募がある。中途は基本的に経験者でないと採用しにくいので面接まで進めるのは5〜6人応募があるうちの1人で、2カ月に1回位のペースで面接している。 実は最近は製造の社員よりも販売のパート、アルバイトを集める方が難しくなってきている。 「学生のアルバイトを割と多くとっていたのですが、パン屋は夕方7時以降のシフトがあまりないので、学校が終わった後に働ける時間が短いというのが条件としては良くないようです。交通の便が良い駅前の店舗であればそれほど問題ないのですが、郊外の店舗ですと、夕方のシフト希望者があまり集まらないので、結局営業時間を短縮する事になってしまったりした事もありました」(地主社長) | |||||||||||||||||||

「サガミパン工房ブンブン」は、2007年に厚木本店をオープン。その2年後に2号店を小田原市内に出店するなどして事業拡大を続け、一時期は洋菓子専門の店なども出店していたが、現在は直営のベーカリー6店の他、フランチャイズの店も展開している。 「もともと直営店は5店までと決めて拡大したのですが、それ以上の出店は新店舗ができる時に経営者の資質を持っている従業員に新会社を作ってもらい、その従業員が経営するフランチャイズ店として運営しています」(地主社長) 店舗展開にフランチャイズ店をとり入れた理由について、地主社長は「優れた従業員はいずれ独立していきますが、資金などの制約から、立地や店舗づくりに妥協せざるを得ないことも多く、そうなると成功する確率も下がります。それならば既存店をフランチャイズのオーナーとして経営してもらえれば、ウィンウィンの関係がずっと続きます。加えてフランチャイズフィーも収入として入ってきます」と説明する。 地主社長は、各店舗での店長の自主性をなるべく大切にしている。各店長は入社してからその熱心な働きぶりが認められた貴重な人材だ。 「各店の雰囲気は店長のモチベーションに左右される事が多いですね。それでも必要以上には干渉せず、彼らの力を信じて任せているという感じですね」(地主社長) 地主社長は、新商品の開発やその時期に応じた取り組みなど基本的な企画は自ら行い、現場の具体的なことは店長に任せて、何かあればカバーして助けるという方針だ。必要があればセントラル工場から必要な素材や商品を送ったりするといった事も柔軟にできるような体制を整えている。 採用業務も各店長が行っているが、地主社長はある程度余裕を持った数の人員を確保しておくように助言している。 「人手が不足しているから募集するのではないんです。最低限の人手はもともと確保した上で、さらに人を増やせばまた新しい事ができると考え、なるべく多めに人を入れるようにしています」(地主社長) 余裕のある人員確保のために最近一役買ってくれているのが5年前から採用し始めたベトナムからの技能実習生たちだ。現在40人いる社員のうち13人が技能実習生たちだが、そのおかげで常に最低限の人手が確保でき、余裕を持って新しい事ができるようになったという。 「それまでは社長である私自身が、人手不足をカバーするといった事も多かったのですが、それがなくなりました」(地主社長) ただ、年々若者の新規採用数が減少していく中で、地主社長は、人員確保のための根本的な対策を考えなくてはならないと痛感している。 「実は安定した製造体制が見込めるよう、現在のセントラル工場以外に新工場の建設を始めています。完成は5月の予定です。菓子類などのOEMでの受注も併せて行いながら、各店舗へ発送できる量も増やし、従業員の負担も減らしていきます」(地主社長) 最後に人材確保、定着のための3カ条を上げてもらった。 「ブランド力を上げること」「最低限の待遇を保障すること」「スタッフの相談に親身になってのること」だという。 「これまでの事を振り返ると、スタッフを育てようとしても育つものではないので、勝手に育つ雰囲気を作る事が大事ではないかと思います」(地主社長) サガミパン工房 ブンブン 本店 住所:〒243−0014神奈川県厚木市旭町1‐36‐1 電話番号:046‐205‐0518 営業時間:午前8時〜午後7時 定休日:火曜 品揃え:パン80品目、菓子20品目 店舗面積:売り場22坪、厨房24坪、イートイン14坪 スタッフ:製造常時7人、販売常時2〜4人 日商:平日55万円、金曜、土曜、日曜80万円 | |||||||||||||
| 人を雇うには歩み寄りが必要。ポイントはコミュニケーション - 河原治税理士事務所の河原治税理士の話 | |
|
店の営業規模を縮小するのも選択肢のひとつ
ベーカリー事業者からの様々な相談にのる中で、人手不足を嘆く声は多く聞きますが、そもそも少子化の要因を除いても、専門学校の中で製パンコースを希望する学生自体がここ数年でだいぶ減ってきました。またパン業界に就職するにしても、ホテルベーカリーや大手のチェーンベーカリーなど規模が大きく安定した福利厚生が見込めるところに人気が集まっています。親御さんの意向であることも多いようですが、若者の考え方の変化もあるかもしれません。 人手不足が解消できないリテールベーカリーの場合、店の営業規模を縮小することを選択する流れもお見受けするようになってきました。例えばオーナー夫婦だけで製造と販売をこなすスタイルに変える、週4日営業、週3日休みにする、または1日の営業時間を短くする、商品数を減らすなどです。規模縮小により人手が要らなくなれば、とりあえず利益は出るようになります。 人を雇うのであれば歩み寄りが必要です。情報化社会が進む事で若者は働く上での権利を早くから理解する事ができるようになりました。根性論ではなく人を育て安定した経営を行うには、雇う側もある程度時代に合わせ、従業員の方のモチベーションを上げていく方法を考えないといけません。 例えば残業代ですが、やはり法律に則った上で支払う必要があるわけですが、あるベーカリーはそこを見直して残業代を計算してみたら意外に支払える金額だったという事がありました。このケースの場合、残業代をきっかけに従業員から何が不満か聞き出せるようになり、職場の雰囲気が改善したのですが、そもそもお金の問題ではなく、従業員とコミュニケーションが取れていなかった事が根本的な問題としてあったようです。 忙しくてコミュニケーションをとる時間がないのかもしれないのですが、従業員の方と1対1で話せる時間を取ることも必要です。特に新卒で入社した若者が学生の頃に想像していた事とのギャップにつまずきやすいようです。またそれでやりがいを感じられない状態のまま激務が続いてプライベートが全くなくなっていくとなると、メンタル面では危険です。店側がコミュニケーションをとり、悩みを聞き出す事で、乗り越えていけるようにしてあげないといけません。 またそれとは別に福利厚生の環境を整えてあげる事も大切です。一例ですが、男女分かれて休憩室がある店は定着率が高かったという話もあります。やはり店を運営していく上で「人」の存在は大切ですから、研修の方法なども考えて、雇い主と従業員が歩み寄っていく必要があるでしょう。 加えて求人は常に出しておいた方が良いでしょう。方法としては友人や知人からの紹介や店の前の求人募集の貼り紙を見てきたという人を採用する方が、費用もかからず、お客様目線ではあるのですが店のことを知っている人が来てくれるので、続きやすいというのはあるかもしれません。 それで集まらなかったらメジャーな求人媒体などで募集する必要がありますが、他社の求人も溢れる中で限られた情報を載せるので差別化が難しいようです。そのため店のHPはしっかり作って情報発信する必要はあるかもしれません。 マーケティングとリクルートは似ていると思うのですが、働いているスタッフの様子や声をHPで発信する事で、働きたい店として差別化できるわけです。ただもちろんPRした通りの店に本当になっておく必要があるのですが。 私は税理士として、会計や税務の面から、さらには様々な数値分析などを通して、パン屋さんをサポートさせて頂いています。また、多くのパン屋さんを訪問してきた実績から、経営の仕方について他店の事例などもご紹介させて頂き、共感してもらえるものがあれば、コンサルタントとして一緒に取り組む事もあります。 ご夫婦だけの小さな店には、こだわりを追求できたり、休みを確保できたりと、その魅力は沢山ありますし、大きな店や多店舗展開の店には、チームで働く喜びや、より多くのお客様に自分達のパンを食べてもらえるやりがいもあります。「どんな店をつくりたいのか」という点をしっかりお聞きし、できる事を提案させて頂ければと思っています。 河原治税理士事務所は、ベーカリー専門の税理士集団として、その税務代行に豊富な実績を持つ。パン屋特有の様々な税務問題の解決に尽力し、ベーカリーの繁盛を税務面からサポートしている。問い合わせは電話06-6131-5600へ。 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


























