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特集/2014年4月号

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特集 ベーカリーのカフェ

ベーカリーのカフェは...

「パンについての質問に答える場」(パン オ フゥ、佐藤崇裕シェフ)
「有償のテイスティングコーナー」(ムッシュイワン、小倉孝樹シェフ)



ビストロカフェでフランスのパンの食シーンを体験してもらう
フランスのベーカリーを意識して作られた1階のベーカリーの売場
2階のビストロカフェはフランス本場のパンと食の文化を気軽に楽しめるよう厳選メニューを展開している
ランチセット(1000円)は、1階で売られているハード系の食事パンやブリオッシュなどが10種類ほど提供され、好きなだけ食べられる
昨年のフランス研修から帰国後発売した「パン ド カンパーニュ」(1グラム1・5円)
ハード系食事パンが並ぶ売場。2階でのランチを終えた後で購入する客もいるという
佐藤崇裕シェフ(27歳)。実家は祖父の代からの「昔ながらの日本のパン屋さん」という
姉妹店間で連携し仏食文化を発信
 都内のJR五反田駅から品川方面まで続くオフィス街の中の高層ビルの1階と2階にあるカフェベーカリー「パン オ フゥ」。同店は、五反田駅近くに先に開店していた姉妹店のビストロ「ボノミー」と店舗コンセプトを共有する形で、フランス系パン専門のベーカリーとして2010年12月に開店した。他に姉妹店として近くにワインバー「オ コントワール エシェゾー」もある。開店から3年以上たった今は「パン オ フゥ」のパンを「ボノミー」へ卸したり、姉妹店間でスタッフの異動も行なうなど、引き続き3店鋪が連携し共同コンセプトであるフランス食文化の発信に努めている。
 「パン オ フゥ」は1階が対面販売でフランス系のパンを販売するベーカリーで、2階がビストロカフェといった造り。開店時はベーカリー単独の形で2階はイートインスペースとなっていたが、広いスペースを有効利用するためまもなく2階はビストロカフェにすることとなった。同ビストロカフェが果たす役割は大きく、ここでこの店の責任者として奮闘する佐藤崇裕シェフ(27
歳)は、「お店の主役は勿論ベーカリーです。ただビストロカフェで提供する料理とパンを介し伝えられることはたくさんあります」と話す。

パン食べ放題のランチを提供
 同店2階のビストロカフェはフランス本場のパンと食の文化を気軽に楽しめるよう厳選メニューを展開している。人気のランチセット(1000円)は、「ポーチドエッグブルゴーニュ風」などの料理に、飲み物とグリーンサラダ、さらにおかわり自由で食べ放題のパンをつけたもので、パンは、1階で売られているハード系の食事パンやブリオッシュなどが10種類ほど提供され、好きなだけ食べられる。「ポーチドエッグ」はオーナーがフランスへ行った際に食し、食事パンとの相性の良さに惚れ込んで採用した。全体的にランチメニューの種類自体はそれほど多くないものの、神奈川県伊勢原市産の「寿雀卵(じゅじゃくらん)」を使用するなど食材選びにはこだわりがあるほか、プレート料理はチーズやハムの盛り合わせなどパンに合う素材として選び抜かれたものを採用。手頃な値段でパンと相性の良いメニューを提供することで、フランス系食事パンの食べ方が自然な形で伝わるようにした。
 「カフェはランチを中心にビジネス街で働く方達の来店がやはり多いですね。ただそういったお客様はもともとパンをテイクアウトする目的ではないので、フランス系のパンに対する知識があるわけではありません」(佐藤シェフ)。そこで、ランチでは、はじめにカンパーニュやノアレザン、ルヴァンなど、見た目だけでは味がわかりにくいハード系の食事パンを中心に10種類ほどをカゴに入れて出す。「ホールスタッフがおかわりのパンを入れたカゴを持って席を巡る中で、客のパンについての質問に答えていく」(佐藤シェフ)という仕組み。質問を通じパンにも興味を持ってもらえれば帰りに1階で買ってもらえることもある。
 「ランチのお客様のほか、夕方頃、会社帰りに買っていく方もいますね」(佐藤シェフ)。1階での対面販売は、フランスのベーカリーを意識した売場だが、入口から突き当たりの一番奥に看板商品のバゲット「トラディション」(290円)を置く。3種類のフランス産小麦粉を使った商品で、伝統製法を守り、一晩かけゆっくり発酵させることで旨味を引き出している。そのほか、カンパーニュやルヴァン、セーグルなどのハードパン、「パンドゥミ」などの各種食事パンも揃う。2階でのランチを終えた後であれば、各パンがどんな食シーンで、どんな食材に合わせると食べやすいのかイメージしやすい。入口近くのショーケースには様々な菓子パンも並べられているが、一般的な日本のベーカリーにあるようなものではなく、クロワッサンやブリオッシュなどのヴィエノワズリーだ。「こだわりとして、商品そのものの提供だけではなく、商品を通じてのフランスの文化や食習慣の情報発信を目指しています」(佐藤シェフ)。

伝統の味を伝授された若きシェフ
 現在同店の責任者である佐藤シェフは、好奇心旺盛な若さ溢れるパン職人だ。以前はフランス滞在経験のある前任のシェフが店舗運営を行なっていたが、同シェフが昨年独立して店を離れたのを機に佐藤シェフがパンの味を引き継いだ。
 実家が祖父の代からの「昔ながらの日本のパン屋さん」という佐藤シェフ。18歳でその実家の「佐藤ベーカリー」でアルバイトを始め、他のベーカリーでも働いた。「パン オ フゥ」に入社してからは、前任のシェフよりフランスのパン文化とパンの味を徹底的に伝授され、パン職人としてのキャリアを着実に築き上げてきた。
 今は前任者から教わった味を守りながらも、フランス風のテイストをいかに日本人にとって食べやすく提供していくかということまで広げて考えている。もともと実家の日本的なベーカリーを見て育った佐藤さんは、そこで培った感性も活かしたいと考えている。
 「パン オ フゥ」で一番の看板商品である「トラディション」に、菜の花やグリエールチーズを入れリュスティックのようにした商品を開発。カンパーニュやノアレザンは昨年のフランス研修から帰国後、配合をなるべく現地のものに近づた。塩と水をフランス産のものに変えた新商品「パン ド カンパーニュ」(1グラム1・5円)も発売したが、この商品も「日本人にとっても食べやすい味であるということを確信した上で商品化した」(佐藤シェフ)という。フランス文化の良さを伝える事を目的としていても、高い敷居の上では集客は厳しい。手頃な値段と入りやすい味わいから徐々に楽しさを知ってもらえればという考えだ。

ベーカリーとカフェのハーモニー
 佐藤シェフは昨年9月に、現地の食文化を視察する研修で生まれて初めてフランスへ行った。そこで大きな衝撃を受けたという。フランスの店は、毎日焼く食事パンの数が桁外れに多い。朝450本もバゲットを焼いているのに店主は「今日のバゲットは少なくて」と言っていたり、どのお店も食事パンのほかヴィエノワズリーから惣菜パンやケーキ、焼菓子、惣菜まで幅広く取り揃えていた。「今後も定期的に向こうに行きたいという気持ちは常に持っています」(佐藤シェフ)。同店はランチでの食べ放題のコストがそれなりにかかっているということもあって、カフェ併設による客単価の向上はそれほど数値的には出てきていないという。ただしコストはかかっても、今後もカフェでの食べ放題は続けていくつもりだそうだ。「売上も大切なのですがフランス食文化の魅力を発信することに意義を感じています。今後もベーカリーとビストロカフェの両輪で、お店の特色を伝えていくためにも必要です」と佐藤シェフは語る。
 ガラス張りで囲まれている設計のため2階のカフェからは所々に木々が植えられ眺めの良い庭の様子がよく見える。パンは勿論だが、椅子や机、オブジェなど全てフランス風テイストで雰囲気づくりを大切にしている。2階のカフェは1階のベーカリーと、上下で心地よいハーモニーを奏でている。

パン オ フー
住所:〒141−0022 
東京都品川区東五反田3−20−14高輪パークタワービル1F、2F
電話:03−5420−5404
営業時間:ベーカリーは午前7時30分〜午後7時30分(日曜は午前9時〜午後6時)、カフェは、午前11時〜午後4時(ラストオーダー午後3時)
定休日:月曜、第3日曜
品揃え:約50〜60品目
スタッフ:ベーカリーは製造3人、販売2人、カフェは調理場2人、ホール2人
店舗面積:ベーカリーが厨房と売り場(イートイン12席)で約21坪、カフェは厨房と客席(30席)で約24坪



気に入ったパンをその場で食べ、その味わいを楽しんでもらう空間 - ムッシュイワン
イートインスペースのテーブルと椅子には、荷物を置くためのバスケットの用意が。広々とした席で、寛いでパンを食べることができる
緑の多い景色を眺めながら、ゆっくりとパンを楽しめる空間
入店し、導線の通りに店内を回遊すると、奥にイートインスペースが見える
小倉シェフおすすめのナポリピッツァ「マルゲリータ」(560円)と、コーラ(320円)のセット
ピザ専用の焼き窯。ピザは500度Cの高温で焼き上げるため専用窯が必要になる。ツジ・キカイ製
オーナーシェフの小倉孝樹さん
有償のテイスティングコーナー
 東京・立川市にあるハード系主体の人気ベーカリー「ムッシュイワン」。ホテルベーカリーを源流とする高級志向の同店は、店内の20席の客席を「イートイン」と自称するものの、そのクオリティーは趣向性を重んじるカフェと呼ぶにふさわしい。テーブルセットを、内装と調和する暗めの色味で揃え、ベーカリーコーナーの奥にある客席も引き続きムッシュイワンのゆとりある雰囲気を楽しめるつくりになっている。空間を感じる客席は広々とした配置になっており、荷物の置けるバスケットも用意されている。イートインは最低限のスペース内で手早く食事を終える場所としてつくられていることが多いが、ムッシュイワンのイートインの雰囲気は、それとは一線を画している。
 同店オーナーシェフの小倉孝樹さんは、この場を「有償のテイスティングコーナー」と見立てている。このコンセプトは開業当時から続くものだ。
 「リラックスしたり、長時間過ごしたりする場としてのカフェではなく、店内の気に入ったパンをその場で食べ、味わいを楽しんでもらう空間です。リベイクを味わってもらうこともできますし、こういったコーナーを用意することで、パンの食べ方の提案もしやすいんです」と小倉さん。

ドリンク類もこだわりの品が揃う
 同店のイートインで提供される紅茶やコーヒーもまた、一定の水準をクリアしたこだわりの品だ。ポットで提供されるダージリンティー(480円)には、お茶の温度を保ち、見た目もかわいらしいティーポットカバーが添えてある。レギュラーコーヒー(ホット、アイスとも350円、朝11時までは200円)は厳選されたウィンナコーヒーを提供している。
「コーヒーもイタリアンコーヒーを使ってみようかなどと、常に良いものを探していますし、茶葉も専門店から購入しています。パンとの相性を考えて、パンと共に提供するメニューを企画しているのです。なので、スープやサラダも含めて、選りすぐりのメニューの中から好きなものを選んで味わって頂く、フードコート形式といった方が適切かもしれません」(小倉さん)
 土日はハード系の試食も行っている。タプナードやオリーブオイル、リエットなどの塗り物を用意し、客に勧める。
 「実はイートインコーナーの客入りは、販売スタッフのスキルに掛かっています。いわゆるソフト系のパンは見た目で味わいの想像がつきますが、当店の主軸であるハード系のパンは見た目で味わいの想像ができません。だからハード系を売るにはサービスのスキルが問われます。試食もお客様への提案の意味合いのほかに、販売スタッフのサービスを向上させる目的もあるんです。また、販売スキルが上がるほど、イートインの利用者が増えるものです」(小倉さん)

本格的なナポリピッツアも
 そんな中、同店でブラッシュアップが進められているのがナポリピッツァだ。現在メニューは3種。「マリナーラ」(380円)、「マルゲリータ」(560円)、「気まぐれピッツァ」(560円)。導入してから1年3カ月、平日土日共に1日約30食売れている。ナポリピッツァについて小倉さんは「ピザというと一般的に宅配ピザのイメージが強いと思います。肉厚な生地にたっぷりの具材がのっていて、大きなサイズをカットして複数の人でシェアして食べるピザですね。それに対して、ナポリピッツァは、トマトソースのベースにモッツァレラチーズとバジルといったシンプルなものですし、小さな1枚をシェアせずに1人で食べきるものです。当店のものはコルチオーネ(ピザの周囲の盛り上がった部分)がしっかり膨らんだ本格派のナポリピッツァです。ピッツァのイメージが刷新されると思います」と思い入れを語る。
 価格は500円前後のワンコインをイメージ。宅配ピザと比較して手軽な印象の、手に取りやすいメニューとなっている。また、同店ではナポリピッツァの専用の焼き窯を導入している。注文を受けると、1日熟成させた生地を500度Cの高温で90秒かけて焼成し、焼きたてを提供する。「値ごろ感で手に取ってもらえれば、宅配ピザと比較してシンプルなナポリピッツァの食感の良さと味わいで好きになってもらえるようです。オリーブオイルを使っていますが、食べ応えはあっても胃もたれすることはないので、リピートする方が増えています」と小倉さん。リピーターからはテイクアウトの希望も出るが、焼きたてが最もおいしいことから、小倉さんはイートインで食べることを勧めている。 「少し冷めた程度ならおいしく食べられますが、時間を置いてからご自宅で召し上がる方には、レンジで数十秒のリベイクを勧めています。もちもち感の腰が強くなりますから」と小倉さんはいう。

ナポリピッツアとコーラの組み合わせ
 ナポリピッツァは、コーラとの相性が抜群だという。小倉さんはナポリピッツァの食べ方の工夫の一環として、ドリンクメニューを研究し、瓶のコーラ(320円)に巡り合った。「ディスペンサーで提供するタイプや缶のタイプよりも、瓶のコーラが味もよくて視覚的にもいいんです。専用のコーラグラスと一緒にお出しします。いい雰囲気になるでしょう」(小倉さん) 夏場はビールや発泡酒とも好相性。もっちりしたコルチオーネの食感とトマトソースの酸味、バジルの清涼感を、炭酸の甘いコーラで味わう組み合わせは絶品だという。 現在、瓶のコーラを卸すルートは多くはないという。小倉さんはこれと思った製品の調達に妥協をせず、1品1品、理想のメニュー実現のために努力している。

独自性を高めていく意欲の現れ
 そこまで手を掛けるのは、ムッシュイワンの独自性を高めて行くという意欲が強いからだ。イートインコーナーも、リラックスしてもらうことに主眼を置いた無料コーヒーサービスなどで客を迎えるのではなく、有償で価値のある味わいを楽しんでもらい、パンのおいしさを知ってもらう空間として機能させている。
 イートインコーナーの利益面については「ランチタイムはピッツァやバゲット盛り合せが出て売上に繋がっています。バゲット盛り合せは当店のラインナップ紹介と試食の役割も兼ねています。しかし、それ以外の時間は主役のテイクアウトコーナーを引き立てるための脇役でいいんです」と小倉さんは話す。
 同店のイートインは先払い式の
セミセルフサービス。水やコーヒー用ミルク、シュガーなどはセルフコーナーから客が自分で持って行く仕組みだ。リベイクなどの注文の場合は、スタッフが配膳や片付けを行う。販売担当者だけでなく、製造担当者も、手の空いた時には積極的にイートインでのサービスも行う。「お客様とコミュニケーションを取って、お話しすることで、スタッフも気づきがあり、スキルアップします。イートインサービスはその絶好の機会ですね」(小倉さん)

ムッシュイワン
住所:〒190-0001
東京都立川市若葉町1−7−1
電話:042−538−7233
営業時間:午前9時〜午後8時
定休日:なし
品揃え:パン80品目、菓子20品目
スタッフ:製造5〜8人、販売2〜5人
店舗面積:売場20坪、厨房25坪
日商:平日20万円、土日40万円




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