カリスマシェフが「熱々凍結」を徹底解説 - 改革〜熱々凍結パン〜(ツジ・キカイ) - ブランスリー電子版


記事の閲覧(最新号)
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
講習会/2024年6月号

ブランスリー電子版は、購読者の方々以外は、見出しと本文の一部しか見られませんが、この記事は特別に全文を公開しています。


カリスマシェフが「熱々凍結」を徹底解説 - 改革〜熱々凍結パン〜(ツジ・キカイ)
前日に「熱々凍結」をしてセミナー開始前に解凍したパンについて説明する谷口講師
講師を務めたブーランジェリー・フリアンドの谷口佳典オーナーシェフ
 ツジ・キカイ(山根証社長)は3月27日、大阪市北区の同社堂島ラボで「改革〜熱々凍結パン〜」と題したセミナーを開催した。講師は、兵庫県西宮市のブーランジェリー・フリアンド、谷口佳典オーナーシェフが務めた。パンを熱いまま急速凍結する「熱々凍結」を導入して、ベーカリーオペレーションの様々な場面で、パンの品質を堅持しながら、生産効率の向上を図る具体的な方法を提案した。提案内容の多くは、谷口オーナーシェフが、自分の店で実践しているものだ。谷口オーナーシェフは、2021年にフランスで開かれた「第8回モンディアル・デュ・パン国際コンクール」に、日本代表選手として出場し、優勝の栄誉に輝いている。

(掲載している製品写真はすべて「熱々凍結」をして冷凍保存後、自然解凍したものです。)



パンが劣化する状況をいかに回避するかがポイントに
粒あんパン(左)とフリアンドのカレーパン(右)
カヌレ・ド・ボルドー(左)と五穀ブレッドのあんバター(右)
ショコラ・オランジェ(左)とパン・ドゥビネット(右)
マスカルポーネクリームデニッシュ(左)とフリアンドのクリームパン(右)
 谷口講師の話 私の店では、パンは焼き上がったらすぐに買っていってもらえるので、パンを冷凍するということはなかったのですが、パンの通販事業を始めることになり、焼き上げたパンを冷凍して発送することになりました。やるからにはきっちり美味しいものを食べて頂きたいので、いろいろ試行錯誤した結果、パンが劣化する温度帯をなるべく速く通り抜けられるように、「ツインパティー」で「熱々凍結」(熱いまま急速凍結)することにして、今に至っています。
 パンはそもそもどういう食品かというと、小麦粉の中のたんぱく質を使ってグルテンを作り、グルテンでできた膜の中に発酵によるガスをためて出来た生地を焼成することで、ふんわりとした食感を得る食品です。
 パンは焼き上がった瞬間から劣化が始まります。パンの中のグルテンが水分を抱き込める度合いが低下して離水し、それが蒸発することによって水分が減っていってしまうのです。しかし、パンを冷凍しておくことで、焼き上がった状態に留めておくことができます。
 ただ、緩慢冷凍だと、「最大氷結晶生成帯」と呼ばれる氷結晶が粗大化しやすいマイナス1度Cからマイナス5度Cの温度帯を抜けるのに時間がかかってしまいます。「熱々凍結」の場合はこの温度帯を素早く抜けるので、パンの組織を破壊する原因となる氷結晶の粗大化を防ぐことができます。
 一方で、澱粉の老化についても注意しなくてはなりません。これについては、ご飯を想像して頂くとわかりやすいと思います。ご飯を冷蔵庫に入れておくとパサパサになります。何故かというとアルファー化した澱粉がべーター化するためです。パンについても同じです。澱粉のべーター化が激しく進む温度帯は、0度Cから10度Cぐらいです。ですから、この温度帯もなるべく速く通過させなければなりません。
 私はパン職人でベーカリーを営んでいるので、お客さんに満足してもらえる美味しいものを作るのは当然なのですが、さらに美味しいものをいかに効率よく作るかということもずっと考えています。焼き上がったパンだけではなく、パンの生地を冷凍する場合も「最大氷結晶生成帯」のことを常々考えていて、焼成後のパンに悪影響が及ぶのを防ぐようにしています。
 日本の場合は、パンを購入してすぐに食べることは少なく、購入した次の日に食べることが多いと思います。クロワッサンの折り方にしても、コンクールで作るのであれば、焼き上がってから3時間以内に審査員に食べてもらえるので、12層に折り込みますが、お店で出す場合は16層に折り込みます。クロワッサンは1層の厚みが大きいほど、バターの香りはするのですが、老化のスピードが早くなるからです。



サンドイッチ用の食パンとコッペパンは前日に「熱々凍結」
マルゲリータ(左)とクロワッサン・ホットサンド(右)
黒ゴマとチョコのフランス(左)とマスカルポーネマロン(右)
 谷口講師の話 今日は、朝のオープン時に店にこれだけ揃っていたらいいと思える20アイテムを選定して、それらをすべて「熱々凍結」で急速凍結した上で自然解凍して陳列しています。(写真参照)
 私の店ではサンドイッチ用の食パンとコッペパンはすべて「熱々凍結」をしています。焼き上がったらすぐに急速凍結して、その日の仕事が終わって帰るときに冷凍庫から出して、次の日の朝まで自然解凍します。「熱々凍結」をすることで、パンの食感が損なわれなくなり、スライスもしやすくなります。
 ヴィエノワズリー類も「熱々凍結」をします。ヴィエノワズリー類は、ホイロ時間が長く、ホイロがずっと占領されてしまうのが悩みでしたが、それがなくなり、工場全体の生産効率が上がりました。ヴィエノワズリー類が「熱々凍結」と相性がいいのは、油脂がパンの組織の中で固化し、パンの組織が劣化するのを防ぐからだと思われます。
 デニッシュは、前日に焼いて急速凍結し、当日に解凍して少しリベイクしてからシロップを打って店に出しています。
 クロワッサンは、成形後に冷凍して次に日に解凍して焼成すると浮きが悪くなるので、前日に焼成して「熱々凍結」をして、次の日に解凍して少しリベイクして店に出しています。



今では当たり前の製法も、誕生当時は邪道だと言われた
ショーソン・オ・ポム(左)とブリオッシュナンテール(右)
 谷口講師の話 パンの冷凍の話をすると、邪道だとか、セオリーからずれているとかよく言われますが、例えばポーリッシュ法や、老麺法も、最初は邪道だと言われました。「熱々凍結」も同じだと思います。ストレート法でバゲットを作ると6時間かかるのが、ポーリッシュ法なら4時間で作れ、老麺法を使うと3時間半で作れるというように、今では当たり前になっているパンの製法の多くは、生産効率を高めるという目的から生まれてきました。

人材確保、労働環境改善、人件費削減に大きく貢献する
アルザス風ホットドッグ(左)とブレッサンヌ(右)
 谷口講師の話 「熱々凍結」を導入することによって、計画生産が可能となり、午前4時出勤だったものが、午前6時出勤でも店が回るようになります。
 これが昨今の人の問題やスタッフの働き方の問題に深く関わってきます。人材確保、労働環境の改善、人件費削減に大きく貢献するものと思われます。働きやすい環境を作ることで優秀な人材が集まりやすくなります。パン屋は朝が早いというイメージがあり、それだけできつい仕事だと思われてしまう傾向がありますが、「熱々凍結」の導入で労働環境を改善していくことで、人材確保も容易になります。人件費の削減についても、例えば3回に分けて仕込んでいた生地が、1回で済むようになれば、手間が減るので労務費が目に見えて下がっていきます。

アルザス風ホットドッグ
アルザス風ホットドッグ
ベシャメルソースをのせて、さらにグリュイエールチーズをのせる
ツジ・キカイのブラストチラー「ツインパティ」。「熱々凍結」を実際に行う機械だ
【材料】
オリーブオイル 適量
ザワークラウト 適量
粗挽きウインナー(長さ約18センチ) 1本
ベシャメルソース 適量
グリュイエールチーズ 適量
▼コッペパン 1個

【作り方】
❶「熱々凍結」したコッペパンを冷凍庫から出して室温で30分ほど解凍する
❷(1)を背割りにする
❸背割りにした面にオリーブオイルを塗る
❹(3)にザワークラウトを挟む
❺(4)に粗挽きウインナーを挟む
❻(5)にベシャメルソースをのせて、さらにグリュイエールチーズをのせる
❼(6)をリベイクする(150度Cで最初にスチームを2回入れて5分後に再び2回注入する)
❽リベイクしたらオリーブオイルを塗って、粉末パセリを振る

▼コッペパン
【配合%】
エコード(強力粉) 50
スパーキング(超強力粉) 50
上白糖
インスタントイースト(赤)
63
ショートニング 15
ルヴァンリキッド 10

【工程】
ミキシング M15分(油脂投入)M10分
捏ね上げ温度 27度C
フロアタイム 20分(パンチ)20分
分割 50グラム(分割後4度Cでオーバーナイト)
ホイロ 32度C75%(時間は適宜)
焼成 150度C15分(風速2=高速、火力F=10段階の10、スチーム最初に2回、5分後に2回、10分後に2回、ダンパーは閉める、ツジ・キカイのコンベクションオーブン、ベイキープロ使用、焼成後すぐに急速凍結する)

原価計算女王
原価計算女王
パン業界の常識を疑うことから生まれた「熱々凍結」
挨拶するツジ・キカイの山根証社長
 山根社長の話 人生の中で、一番大事にしているのは、感動です。26歳の時に初めてフランスに行ってパンを食べたときに、感動しました。ワインや料理と共に食べるパンのすばらしさに感動しました。今はパン、菓子、ナポリピッツァに関わる仕事をしていますが、日々感動を大事にしながら仕事をしています。そして、いつも意識していることは常識を疑うことです。本日提案する「熱々凍結」も、パンは冷凍するものではないというパン業界の常識を疑った結果生まれた、焼きたての美味しさを封じ込める新しい製法です。

「熱々凍結」を店のオペレーションにどう組み込むか
司会進行役を務めたツジ・キカイの尾代卓弥大阪支店長
 尾代大阪支店長の話 「『熱々凍結』の製法をお店でどうやって使ったらいいかがわからない」という声をよく頂きます。今日は谷口シェフと相談して、谷口シェフのお店で「熱々凍結」を実際に利用して実践していることを紹介して頂き、さらに「熱々凍結」でこういうこともできるのではないかというアイデアを出して頂きたいと思っています。話を聞くだけのセミナーではなく、皆さんに参加して頂くセミナーにしたいと思います。


ブランスリー電子版は、購読者の方々以外は、見出しと本文の一部しか見られませんが、この記事は特別に全文を公開しています。

今月の公開記事

  1. カリスマシェフが「熱々凍結」を徹底解説 - 改革〜熱々凍結パン〜(ツジ・キカイ)
  2. 消費者にとっての商品価値はこれまで十分に考えてきたので、これからは生産者にとっての商品価値についてもっと考えよう! - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(84)
  3. 熟成の旨味を活かしたパンの数々を紹介 - 2024年星天会冬季講習会(星天会)
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ

読んでほしい記事

  1. コロナ禍を経て辿り着いた会話を楽しむ対面販売 - hnn
  2. 消費者はパン屋選びにSNSをどう使っているか? - 消費者アンケート
  3. ベーカリーの販促はSNSで決まり
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら