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| 特集/2023年6月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
目次
| ベーカリーカフェを徹底取材
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| 焙煎工場とベーカリー工房が一つになったカフェ - B²(ビースクエアード) | |||||||||||||||||||
[目次に戻る] 一見、無機質で雑多だがクールさも感じさせる「インダストリアルスタイル」(工業製品のデザインを活かし、無骨でヴィンテージ感のあるイメージで作られる空間のスタイル)を意識した空間に、焙煎されたばかりのコーヒー豆の匂いと、焼きたてパンの芳ばしい香りが混ざり合う。奥には巨大な焙煎機「LORING A15」。入り口近くには、7種類の生地をベースに生み出された50種類以上のパンが陳列され、胸に「B²」のロゴマークをつけたバリスタ達がコーヒーを抽出。焙煎機よりもっと奥のガラス越しの空間ではベーカーたちがパンを焼いている姿が見える。 南半球、ニュージーランド発祥の新たなカフェトレンドを導入した新インダストリアルカフェ「B²(ビースクエアード)」は3年前の2020年3月に東京・清澄白河の地でオープンした。 「カフェの国として知られるニュージーランドですが、向こうではベーカリーとコーヒーの焙煎工場が一緒になったようなカフェが普通にたくさんあり、店の利用客は、パン職人や焙煎士が同じ空間で動いている姿をオープンに見る事ができます。こうした南半球ならではのカフェの姿を日本でも再現したいと弊社社長が考えオープンしたのが当店です」と運営会社のBREAD & BEANの広報担当であると同時に同店でバリスタも務める小池裕貴さんは話す。 「B²(ビースクエアード)」は、海外居住歴が長いという丸山真貴子社長が南半球オセアニアにある数多くのカフェを訪れた際に受けたインスピレーションをもとに生み出された。 「コーヒーもその場で大きな機械を使って焙煎した本格的なものを出している一方で、パンやスイーツも熟練の職人がしっかり作ったものを出している。専門的なものが雑多に集まったこうしたベーカリーロースタリーカフェを日本で先駆けて作ってきたのが弊社だと、そこは自負していますね」(小池さん) 社名「BREAD & BEAN」は「ブレッド(BREAD)とコーヒー豆(BEAN)のマリアージュを目指したい」という想いからの命名。さらに「BREAD & BEAN」の頭文字2つの「B」を「2乗」して生まれたのが、「B²」(ビースクエアード)という店名なのだという。 各分野のスペシャリストが集結 [目次に戻る] 同店は3年前のオープン以来、カフェの街である清澄白河でも注目を集め、日々行列の絶えない店となっている。また現在は本店である同店だけではなく、東陽町店、南麻布店、吉祥寺店などの支店も次々と出店しネットワークを拡大。カフェ業界の新たなムーブメントを作り上げた。 しかし同店は単純にトレンドとして注目を集めているだけではない。 同店にはパン職人、焙煎士、バリスタの3種類のスペシャリストがいるが、そのほか店の内外装を設計した建築家、ブランドのロゴデザインを生んだグラフィックデザイナーなど、各方面からのスペシャリストも集結。あたかもコーヒーとパンが合わさって格別な味わいとなるように、彼らの情熱や才能が見事に融合することで店の個性は開花したのだという。 取材中、ちょうど新たなコーヒーの生豆が届いたとのことで、奥の焙煎機「LORING A15」周辺では積み上げられたコーヒー豆の袋を眺めながら、何やら確認作業を行なっている焙煎士の女性スタッフの姿が見えた。落ち着いた頃に、コーヒー豆を焙煎し抽出を行う一連の過程を見せてもらった。 同女性スタッフに、ニュージーランドから輸入された大型焙煎機で、日本には3台しかないという「LORING A15」について尋ねると、「熱風を窯全体に循環させる事で一粒一粒を均等に加熱し、雑味を出さず、フレーバーを最大限に出す事ができる素晴らしい機械です。ただこれをうまく使いこなして豆を焙煎できるかどうかは、専門家である焙煎士の腕もありますから気が抜けません」と答えてくれた。 実は同店で使用される豆は産地や生産者、精製方法や品種などがわかるスペシャルティコーヒーだという。 コーヒー豆は、シーズン毎のニュークロップ入港時期に合わせてサンプルを取り寄せ、時には同じ国のものでも5〜10種類の異なる銘柄から厳選している。 その中でも農園などの生産者や品種によって単一に銘柄を分けたシングルオリジンコーヒーを同店コーヒーメニューでは数多く使用。 「パンやスイーツとのマリアージュを考慮し、またはお客様の好みに合わせて柔軟にご提案できるよう、浅煎りから深煎り、さらにそれぞれシングルオリジン、ブレンドまで幅広くご用意しています」(小池さん) エスプレッソにスチームミルクを加えたオセアニア発カフェドリンクの「フラットホワイト」や水出しで低温抽出した芳醇な味わいを楽しめる「コールドブリュー」などは根強い人気があるという。 | |||||||||||||||||||

| ニュージーランド発祥のカフェの様式を日本で展開 | |||||||||||||||||||
[目次に戻る] 同店のベーカリーでは、チーフベーカーである村上浩通(ひろゆき)氏が考案した50種類以上のパンを展開。多国籍国家であるニュージーランドのベーカリーをイメージし、7つの生地をベースに進化させたセイボリー系の惣菜パンやサンドイッチ、スイーツ系の菓子パンのほか、パンドミやクロワッサン、ブリオッシュなどのリッチなパン、バゲットやコンプレ、シリアルなどのハード系の食事パンまでを揃えた。 売り場では素材を大胆に大きく使ったものが目を引いた。北海道の地で2年間熟成させ旨みを引き出したジャガイモをデュラム生地で丸ごと包み込んだ「熟成キタアカリ」(税込324円)、加水率の高いパンドミ生地をベースにしたクロックムッシュにこれでもかというくらいにトウモロコシの粒をのせた「トウモロコシのクロックムッシュ」(税込410円)などの大胆さは海外からのインスピレーションも感じる。 生地は小麦の風味を損なわないよう100%フルーツ酵母を使用し、小麦粉は北海道十勝のキタノカオリなどのブランド小麦を使用。収穫したばかりの新麦を使う運動「新麦コレクション」にも毎年参加し、顔が見える生産者とのつながりも重視している。 取材中は厨房を出てすぐの巨大焙煎機の袂に当たる場所に、焼き上がったばかりの「デュラム」が丸ごと1本置かれている姿が目についた。ふんわりして甘さも感じるカンパーニュとして、店頭では主に4分の1カットとして販売し、惣菜系やサンドイッチ用としても多く使われている。同店ではナッツやドライフルーツを練りこんだ「シリアル」や全粒粉の高加水カンパーニュ「コンプレ」なども食事系のパンとして人気が高く、これらもサンドイッチ用として使用している。 例えば「タラサンド」(税込928円)などのサンドイッチや「牛すじ煮込み焼きカレーパン」(税込356円)などには「デュラム」が用いられ、「あんバター」(税込270円)には「コンプレ」、「タルティーヌ(ウインナー・赤キャベツ)」(税込462円)には「シリアル」が使用されている。使用されているパンの違いも楽しみながら、サンドイッチと様々なコーヒーとのマリアージュを楽しめるのは同店ならではの醍醐味だ。 またスイーツ系ではニュージーランドやニューヨークのカフェでお馴染みのキャロットケーキやスコーンも人気で、コーヒーのほか、ティーやチャイなどと組み合わせて楽しまれている。 チーフベーカーである村上氏はニュージーランドのベーカリーでの経験はないが、ベーカーとしての20年以上の経験を持ち、2017年からはニュージランドスタイルのコーヒーチェーン「Mojo Coffee」のベーカリー立ち上げに従事している。 「センスや深い味わいを感じられるパン作りも大切ですが、よりお客様に寄り添ったパン作りをする事も大切にしています。定番の商品も多いのですが、季節に合わせた商品を出す事にも今は力を入れていますね」(小池さん) この春はイースターに合わせて「ホットクロスバン」(税込270円)も発売。ドライフルーツとスパイスを加えた生地に十字架模様を描いているのが特徴だ。 ドリンクはこれから夏に向けコールドブリューが増える。テイクアウトでコーヒー豆を買う客も多いので、水出しのコールドブリューが家庭で作れるよう豆をパッキングした商品も出している。また、コーヒーの抽出機やコーヒーに関する様々なグッズも販売している。 b>SHOP DATA 住所:〒135‐0033 東京都江東区深川1丁目9‐10 小西ビル 電話番号:03‐6240‐3006 営業時間:午前9時〜午後6時 定休日:なし(年末年始除く) 品揃え:約50品目 店舗面積:33坪(席数20席) | |||||||||||||||||||

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| 地元常連客に支えられて23年間続いた地元密着の店 - ラ・ベルコリーヌ | |||||||||||||||||||
[目次に戻る] 横浜市にあるベーカリーカフェ「ラ・ベルコリーヌ」は、東急田園都市線のたまプラーザ駅北口を出て3分ほど歩いた場所にある。今年4月で創業23周年を迎えた。入り口にある濃い緑色の庇(ひさし)の上に「BOULANGERIE(ブーランジェリー)」の大きな文字が彫られ、店の前の通りに向かって座る形で設置されたテラス席、ヨーロッパのアンティーク家具を思わせる濃い木目調でまとめられた壁などが、通りを歩く人たちの目に何気なく入ってくる。流行の最先端をいくお洒落感や新しさとは違う、この街に長く存在する事で培った落ち着いた風情が、さりげなく心地よい空間を生み出している。 オーナーシェフの澤田利明さんは「フランス・パリの日常的な風景でよく見られるようなカフェをイメージした作りです。店の商品もそうですが、敷居を高く上げすぎす、この街の人たちに日常的に利用して落ち着いた時間を過ごしてほしいと考え、店作りをしてきました」と話す。 澤田さんは同店の前身である「パンペルデュ」に1997年に入社して以来、26年間この地でパンを作り続けてきた。 「パン屋である事は自分にとって生活の一部。理由があるわけではなく、それが自然な姿なんです。だから大変でも大変だとは思わないようにして、今まで続いてきた感じですかね」(澤田さん) この街で26年働く間、街や人も変化し、常連客もちょっとずつ入れ替わるなどしてきた。ただし澤田さんの実感として、この店自体は大きくは変わっていないという。 「前身の店の影響もありフランスのカフェをイメージした店という雰囲気は大切にしていますが、そのほかどんな店にしていきたいとか、特に意識しているような事はありません。お客様との信頼関係がまず第一ですから、おいしいパンを作って笑顔でお迎えするだけですね」(澤田さん) 手探りの「ベーカリーカフェ」 [目次に戻る] パン売場も含めて約15坪の広めのスペースに、30席ほどのイートインが広がる「ラ・ベルコリーヌ」を澤田さんが同店の前身である「パンペルデュ」のオーナーから引き継いだのは2000年4月のことだった。 澤田さんはその3年前に「パンペルデュ」に入社、以来チーフシェフとして仕事をこなし、1999年には酷評家として知られるフランスの作家で料理評論家のフランソワ・シモン氏が澤田さんの作ったクロワッサンを食べて「東日本でクロワッサンが一番おいしい店」と評する記事を日本の雑誌に掲載した。 翌年「パンペルデュ」のオーナーから頼まれる形で澤田さんは店を引き継ぎ独立、「ラ・ベルコリーヌ」として新店をオープンさせた。 ただ、高校卒業と同時に「ポンパドウル」に入社し、それ以降10年以上「ルノートル」や「トロアグロ」などで職人畑を進んできた澤田さんにとって、カフェの運営は未知の領域だった。 「カフェに関しては手探りでのスタートでしたね。もともと『パンペルデュ』にカフェもあったから店舗面積が広く、『ラ・ベルコリーヌ』でもカフェをやらないわけにはいきませんでした。自信があったわけではないけれど、腹を括って、どうせだったらしっかりやろうと思って勉強しましたね。思い切って当時は立派なコーヒーマシンも入れて、ドリンクメニューも広げて、コーヒーの講習会などにも行きました」(澤田さん) パンに合うコーヒー豆を選ぶのにも苦労した。 「嗜好品だから、どの豆が良いかは好みで分かれるけれど、パンと相性が良いものは限られると思うんです。沢山試飲して決めましたね」(澤田さん) 普段のピーク時は澤田さんがパン作りで忙しいため、パン以外のカフェメニューの提供や接客業務はパートスタッフを信頼してある程度任せることにした。 「接客の目安は痒いところに手が届くくらいのサービスで程々にという感じです。お話好きなパートさんも多いのですが、繁忙時は一人のお客様に対して長く話し込むと回らなくなってしまうので、メリハリはつけるようにしました。それでも皆が色々な仕事を協力し合ってやってくれたし、長く勤めてくれた人もいたので、だいぶ助けられましたね」(澤田さん) カフェメニューはドリンクを30種類近くまで広げたが、コーヒーや紅茶類だけでなく、「グラスワイン」(税込489円)や「ビール」(税込506円)などのアルコール類、「トマトジュース」(税込357円)なども含むジュース類のほか、コーヒーフロートやバニラアイスなども揃えた。 ランチや軽食需要のあるセットメニューも一時期は力を入れて、チーズプレートやピザセット、スープセット、フレンチトーストセットなどを出していた時期もあった。 ただ今は、ドリンク付きの「バタートーストセット」(税込539円)以外のセットは提供していない。 「結局は店で売っているパンを食べてほしいんです。そのためのベーカリーカフェなので、セットメニューはあまり凝らないことにしたんです」(澤田さん) サンドイッチや惣菜パンなどランチ需要が高い商品もある。でもカフェ需要を意識しているわけではないという。 「お好みで店のパンを選んで頂き、イートインを利用される方はできればドリンクを一緒に頼んで頂ければと思っています」(澤田さん) セットメニューを減らした事でカフェの売り上げに影響が出たりはしなかった。コロナ禍でカフェは平日の客数が若干落ちたが、常連客との信頼関係があったので、なんとか乗り越えられたと感じている。 | |||||||||||||||||||
| さりげなく提供する至福のパンの味が支持される | |||||||||||||||||||
[目次に戻る] カフェを併設したベーカリーカフェを運営するのは、労力や家賃など運営上の負担を考えると厳しいという。ベーカリー業界全体の傾向を見るとコロナ禍を機にカフェやイートインを廃止したり縮小した店も多かった。 「人手がかかり費用もかかる割には、客単価は大きくは変わらないし、加えて回転も良くならないので、コロナ禍になる前からカフェは何度もやめようと思ったことがあります」という澤田さんだが、一方で、「カフェがあると、焼きたて、作りたてのものをその場で食べてもらえるし、お客様の滞在時間が長くなる分、話もしやすい」とも考えた。 「カフェがないとお客様のことなんて何もわからなくなってしまいそうで、やっぱり寂しいと感じます。だから結局カフェがあって良かったのかなと思います」(澤田さん) 同店のカフェ席を見回すと、パリの街並みを描いた風景画が壁に何枚か飾られている。20年来の常連客が描き定期的に提供してくれているもので、店内には、その風景画を掲載した画集もあった。またそのほかパリの街を細かく記した地図や、常連客が同店をイメージして描いてくれたという絵皿なども飾られていた。客の中には外国人と思われる人の姿も多く、静かな音楽が流れる中、異国情緒溢れた空間に居心地の良さを感じてしまう。 カフェを維持していけるのは、パン職人としての志が高い澤田さんが作るパンの品質の高さに支えられているからと言える側面もある。 実は同店で修行を重ね独立を果たした人はこれまで5人いるが「地元で繁盛店を開くなど、全員が成功してくれているので、それだけは自慢ですね」と澤田さんは話す。自分の職人としてのDNAが彼らを通じ遺せればと考えているという。 澤田さんのより良いパン作りを追求する気持ちは、一番人気商品でパンとパイの両方の要素を共生させた「クロワッサン」(税込221円、店内消費の場合は税込225円)をはじめ、製法によって違う3種類を揃えたバゲット、加水率の高い生地に山葡萄を潰さないように練り込んだ「レザン」(税込550円、店内消費税込561円)などにあらわれている。ワインとの相性を考えた商品も多く、精巧な技術力を感じさせる。 また巧みに生地の旨みを引き出したハード系は高齢客からの需要が高く、バゲットは近隣のレストラン数店舗にも卸している。そこで食べた事がきっかけで同店を訪れる人も多いという。店内には100円前後のプチサイズ商品で「プチフランス」(税込81円、店内消費税込82円)や「プチセーグル」(税込102円、店内消費税込104円)などもあった。カフェで食べるのにちょうど良い大きさだが、カフェ需要を特に意識したものではないという。 「ハード系の商品は大きさや形で皮と中身の比率が変わり、味わいも変わるので、そこを楽しんでほしいんです」(澤田さん) 様々なパンがある事を知ってもらい、そこから好きなものを選んでもらいたいそうだ。 SHOP DATA 住所:〒225−0002神奈川県横浜市青葉区美しが丘1‐9‐1 電話番号:045−901−4142 営業時間:午前10時〜午後6時(カフェはラストオーダー午後5時30分) 定休日:毎週火曜、第1、3水曜(祝日の場合変更あり) 品揃え:50品目 店舗面積:厨房15坪、売り場(テラス以外のカフェ含む)15坪、30席(テラス含む) スタッフ:製造常時2人、販売常時1〜2人 日商:平日12万円、土曜日曜17万円 | |||||||||||||||||||
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