従業員約40人の体制を維持する難しさに真摯に向き合う - ツオップ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2023年3月号

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従業員約40人の体制を維持する難しさに真摯に向き合う - ツオップ
店長の伊原靖友さん
「ツオップ」の外観。大きな窓がなく、中の様子が気になる造りだ
コロナ禍で飛沫感染対策をきっかけに設置したガラスのショーケース。陳列スペースも増えたという
個包装されたパンや焼き菓子などが並ぶ陳列棚
各棚にはライトが付いており、パンを一つひとつ照らし、魅力的に映し出す
代金の支払いを客自身が行う精算機を設置
コロナ禍をきっかけに店が大きく進化

 扉を開けると、ほの暗い店内に所狭しと並べられたパンがライトアップされ、まるで宝石のような輝きを放つ。ここは千葉県松戸市のベーカリー「ツオップ」の店内だ。
 2年前、新たにガラスのショーケースを設置。以前より一層パンが魅力的に目に映る。
 「飛沫感染対策としてパンを個包装しなくてはいけなくなりました。でも焼きたてで並べたいものは袋に入れられないのでショーケースを導入したんです」
 こう話すのは店長の伊原靖友さんの妻、りえさん。デザインはアンティーク風で、ガラスは強化ガラスを使用。各棚にパンを照らすためのライトを取り付けるなどしてこだわり尽くした、りえさんの特注だ。
 「コロナ禍で色々な制限が増えました。そんな中だからこそ、負けずに進化させたいという思いがありますね」(りえさん)
 8坪の売り場に並ぶパンや菓子は約300種類。その半分ほどがショーケースに並び、対面方式で選ぶ。「ドライカレーパン」(税込302円)や「明太フランス」(税込302円)など焼きたて重視の総菜パンや「フランボワーズ」(税込378円)、「マンゴーのブリオッシュ」(税込302円)など鮮やかな見た目のパンだ。
 ショーケース以外の棚に並ぶのは「小倉あんぱん 2個」(税込194円)や「チョココロネ」(税込237円)などの菓子パン、「フォルコンブロート 1/2」(税込432円)、「プレーンベーグル」(税込216円)など個包装された商品で、セルフ方式で選ぶ。
 会計のシステムも進化。代金の支払いを客自身が行う精算機を設置した。また、度重なる値上げに対応するため、レジでの打ち込み方法を変更した。
 「支払いをお客様が行う精算機は、支払いをお客様が済ませている間、販売員が袋詰めに専念できるメリットがあります。レジの打ち込みは、これまで価格だったのですが、商品名に変えました。種類が多いので商品名を探して打つのも大変なのですが、このところ毎月のように何かしら値上げしなくてはならない状況が続いていて、さすがに販売員が覚えきれないので」(りえさん)

人材確保は昔から続く大きな課題

 2000年に開業した同店。当初の人手は店長の伊原さんとりえさんら3人だった。
 4年後に同店2階にカフェをオープンし、従業員も徐々に増え、現在は35人の正社員がおり、パートを合わせると40人以上が働いている。20年近く大所帯を維持してきた伊原さんは人材確保についてこう語る。
 「人材確保の問題はずっとあります。人が集まらないとか、入っても定着しないとか。年々経営者側にとって雇用条件の厳しさが増していますが、週休二日で、年間110日の休みがあり、初任給は月額20万円というように、かなり待遇を改善しても応募者が増える訳ではないんです」(伊原さん)
 こうした状況はパン業界に限らず飲食業界全体で言えることであり、今の社会が抱える問題と密接につながっているという。
 「働くのが当たり前だった時代が終わって、今は働かない選択肢があったりして、いかに汗水垂らさず稼ぐかという考えが肯定されるようになってきていると思います。また、情報化社会では情報過多になりがちで、職探しでもそうです。それで得る情報というのは自分で検索したりして探す訳ですから、自分にとって好都合なものばかりです。だから抵抗なく職を変えたり、辞めることに罪悪感がなさそうだったり。当店では年に一度、書面で意思を確認していますが、それでも『やりたいことが見つかったので辞めます』なんて突然言われることがありますから」(伊原さん)
 正社員35人のうち勤続年数が最も長い人は15年で、約半数は3年以下。毎年5〜6人入社し、そのうち辞めずに残る人は半数ほどだという。
 「経験者を募っていますが、結果的にこれまで入社したのはほとんどが新卒で、入社後3年以内に辞めていくのが半数ほどです。職人として育てるのは専門学校ではなく店ですから、ようやく労働力になってきたと思ったタイミングで辞められるのは困りますよね。若手育成の問題は個人店レベルではなく、国として考えていかなければならないことだと思っています」(伊原さん)
 伊原さんは5年前から製造業務を退いており、勤続15年や10年以上の従業員ら3人を製造のリーダーに据え、任せるようにしている。
 「40歳位のときにいつまで続けるか決めていました。事業承継が課題ですが難しいのはやはり、後継者と自分は考え方が違うという点ですね」(伊原さん)



短いミキシングと長時間発酵で小麦の旨味を引き出すレスペクチュスパニス製法で作ったバゲット。伊原さんが作っている
「レスペクチュニスT−80カンパーニュ 1/2サイズ」(税込367円)
LINEグループで情報を共有する

 技術の継承は従業員同士で行っているが、時折伊原さんも厨房に入り、正確に作業が行われているか確認するようにしている。
 「どうしても少しずつ変わってきてしまう傾向があるので、確認するようにしています。また、一緒に作業することでそれぞれの仕事ぶりの評価をし、その評価を給料に反映しています」(伊原さん)
 様々な連絡は通信アプリのLINEで行うようになったという。製造や販売、パートなど部門別に約10のグループを作り、情報を共有できるようにしている。伊原さんが製造のリーダーから相談を受け回答したり注意したりするのも主にLINEで行っている。
 「受けたクレームやその解決方法なども、当事者以外の人が知っておくためにLINEに投稿しておきます。また、全員に共通の『ありがとう』のグループも作っていて、お客様に喜ばれたことがあれば、共有できるようにしています」(りえさん)
 りえさんはLINEでのやり取りも含めて、従業員に対して細やかな気遣いを欠かさない。
 「コミュニケーションは大事ですね。一人ひとりの表情や顔色を見て何かありそうだと思ったら、話をしてもらえるようにきっかけ作りをします」(りえさん)
 コミュニケーションの取り方は一人ひとりに合わせて変える。一緒に、食事に行ったり畑に収穫体験に行ったり、フィットネスに通ったこともあったという。
 「辞めてしまった人のことを思い返すと、あともう一歩コミュニケーションを取っておいたらよかったかなと思うことがあるんですよね」(りえさん)

SHOP DATA
店名:ツオップ
住所:〒270‐0021 千葉県松戸市小金原2−14−3
電話:047‐343‐3003
営業時間:午前7時〜午後5時
定休日:年中無休(夏と正月に休みあり)
品揃え:約300品目
スタッフ:製造常時9人、販売常時5人、カフェ常時4人、事務その他1人
店舗面積:売り場6坪、厨房15坪、作業場3坪、倉庫3坪
日商:平日約70万円、土曜、日曜、祝日約100万円



この記事の読みどころ

●シズル感重視のパンは、個包装せずに、新たに導入したショーケースで対面販売。
●若手育成の問題は、個人店のレベルではなく、国のレベルで考えていかなければならない。
●コミュニケーションの取り方は従業員一人ひとりの個性に合わせて変える。




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