独立して一人で作るからこそ誕生した商品 - オールアバウトベーカリー - ブランスリー電子版


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お店拝見/2022年5月号

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独立して一人で作るからこそ誕生した商品 - オールアバウトベーカリー
店主の小野寺智徳さん
「オールアバウトベーカリー」の外観
「ミルクフランス」(税込220円)や「ピーナツフランス」(税込220円)などが並ぶショーケース
「パネトーネ」(税込1100円)
「パネトーネ」の断面。伊予間ピールとレーズンが入っている
生姜と温泉水を使用した「温泉ジンジャーブレッド」(税込400円)
働いていた店の譲渡を受け独立開業

 福島県のJRいわき駅から車で南西に20分弱、広大な総合公園近くの住宅街に「オールアバウトベーカリー」はある。同店が入居する建物は、隣にイタリア料理店のある二軒長屋だ。
 店主の小野寺智徳さんが開業したのは2017年。その約10年前からこの場所にはベーカリーが入居しており、小野寺さんは同ベーカリーの立ち上げ時から店長として働いていた。しかし、同ベーカリーの閉店が決定。このことが、自店を開業するきっかけとなった。
 「開業はそれまで考えていませんでした。でも声をかけてもらって、散々迷った末、譲渡を受けることを決意したんです。やはり地元の方を思って、ここでパンを作り続けていきたいという気持ちがあったからです」(小野寺さん)
 看板や内装などの改装工事を行い、小野寺さんが開業したのは、前の店が閉店してからわずか1カ月後だった。
 「割とすぐの再開でしたが、出足はよくなかったですね。一度閉店してしまえば、もうあそこにパン屋はないと思う人が意外なほど多いんだなと思いました。店名が変わった影響も大きかったのか、前のお客様がそのまま残ってくれる訳ではなかったですね。でも今思えば、前の店のやり方にとらわれずに自分のやり方を模索するためには、その方がよかったかなと思います。また、雇われていたときと最も違うのは、自分らしさを最大限に商品に反映できることですね」(小野寺さん)
 製造は小野寺さんが一人で行い、販売は妻の香里さんが担当。ほかに従業員はおらず、今後雇う予定もないという。前の店で店長をしていたときは、総勢10人のスタッフがいた。
 「スタッフを抱えていない分、自由にできる良さがありますね」(小野寺さん)
 店舗面積は約40坪と、二人で営むには大きめだ。スペースを活用すべく、コロナ前は売り場横にイートインスペースを設けていた。
 「大きな店舗ならではの高い家賃と、譲渡を受けるための資金調達のための負債があったので、少しでも売り上げにつながればと、開店時間を朝6時半にして、モーニングを提供していました。3年目くらいで軌道に乗り、負債も返済できました。コロナ後、6時半オープンは変えていませんが、店内飲食を中止したので、モーニングもできなくなりました。それでも、全体的な売り上げは上がってきています」(小野寺さん)
 朝の開店時には、前日のパンを1000円分以上詰め合わせ、税込500円で販売する「パンバック」と名付けた買い得商品を並べる。これが朝早く訪れる常連客にとって楽しみの一つになっている。
 「捨てたくないので、開業当初から行っています。また、サンドイッチは作っていないのですが、これは一人でできる仕事量を考えてのことと、ロスを出さないためです。売れ残ってしまったら『パンバック』にも入れられないアイテムですからね」(小野寺さん)



17種類の穀物入りの生地を使用した「シリアルクリームパン」(税込180円)は女性客に人気
「シリアルクリームパン」の断面
サワー種とルヴァン種を使用した「サワードゥブレッド」(税込280円)は、少しの酸味が感じられる
「サワードゥブレッド」の断面
広い店内。コロナ前は壁沿いのカウンターを利用したイートインが可能だった
様々な出会いを原動力に商品開発

 小野寺さんが一人で作るパンは一日約30〜40種類。都内の修行先で体得した無添加のパン生地作りを基本姿勢とし、老若男女問わず楽しんでもらえる品揃えを目指している。
 「周辺にあまりない、ハード系に特化することを考えた時期がありましたが、やっていくうちに、お客様はそれを求めている訳ではないと思うようになりましたね」(小野寺さん)
 開業して5年目だが、品揃えはあまり変化していないという。しかし、人との出会いから誕生した小野寺さんの店ならではと言える商品がいくつか加わった。
 「独立して面白いと思うことは、人との出会いです。その出会いをきかっけに商品を開発できるからです。例えば、イタリアンのシェフと知り合い、教えていただいた酒かすから、ソフトで食べやすいフランスパンを開発したり、イタリア人の大家さんに、『クリスマスにパネトーネを食べたい』と言われたことからパネトーネを作るようになったり。新商品を作るのって、日々の作業に追われてなかなかできないんです。でも、人と出会うことで、その人から原動力をもらえて、それで頑張れる部分があるのだと思います」(小野寺さん)
 「パネトーネ」(税込1100円)は、クリスマス時期よりも長く12月から4月まで並べるようにしている。リボンなどでラッピングをし、ギフト需要に対応している。
 「温泉ジンジャーブレッド」(税込400円)という変わり種の食パンも、地域の人々との出会いをきっかけに誕生。最寄り駅のJR湯本駅周辺の温泉街に湧き出る温泉水と生姜を使用しているのが特徴だ。生姜の使用は、温泉街にある「温泉神社」の「神社(ジンジャー)」との語呂合わせで決めた。また、「温泉ジンジャーブレッド」は、同神社で祈祷と奉納をするなどし、話題を集め、テレビ放送されたこともある。
 「生姜の風味はかなり効かせていますが、小さい子にも好評なのは意外でした。また、和風のおかずと合うかと思っていたら、お客様がフレンチトーストにしても絶品だったと教えてくれて、ちょっと驚きました。温泉水で仕込むと、水道水と比べ、食感がよりしっとりします。焼き上げる前の生地の段階でも違いがあり、みずみずしさを感じます」(小野寺さん)
 同店のパン生地に使う小麦粉は「ゆきちから」や「きぬあずま」といった県内産だ。卵や牛乳も県内産を使う。材料の県内産比率は開業当初より高くなってきているという。発酵種は主にルヴァン種とサワー種を使い、季節の果物から起こすこともある。
 「材料も、地元の飲食店のシェフたちとの交流から、県内産を使うように意識が変わっていきました。そして自分がパンを作ることで、地元の方に食材の魅力を知ってもらえる機会をつくることができているのではないかと思っています。コスト面でもメリットがあり、近場から運ぶので配送料が安く済み、最終的にパンの価格を抑えることにつながります」(小野寺さん)

SHOP DATA
店名:オールアバウトベーカリー
住所:〒972‐8301 福島県いわき市草木台1−10−16
電話:0246‐29‐0380
営業時間:午前6時30分〜午後5時
定休日:日曜、月曜
品揃え:約30〜40品目
スタッフ:製造常時1人、販売常時1人
店舗面積:売り場約20坪、厨房約20坪
日商:平日約5万円、土曜約9万円



この記事の読みどころ

●店長として働いていたベーカリーの事業譲渡を受けて、自分の店として開業した。
●人との出会いが、新商品開発の大きな原動力になる。
●「パネトーネ」は、クリスマス時期だけでなく12月から4月まで販売。リボンなどでラッピングを施し、ギフト需要にも対応。



原価計算女王
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