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特集/2021年3月号

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コロナ禍一年、パン屋経営、どう変わった?


環境が激変しても前進していく事が大切と実感 - ブーランジェリー コロン
北海道札幌市のベーカリー「ブーランジェリー コロン」本店の外観
人気ナンバー1の「道産とうきびのリュスティック」(税別240円)。リュスティックの多加水生地に北海道産とうきびを入れて焼き上げている
「ブーランジェリー コロン」本店の店内の様子
グランシェフの志賀勝栄氏
インスタグラムで告知されたテイクアウト商品販売開始のお知らせ
充実した在宅時間の提案

 北海道は、昨年のコロナ禍において、一月末の比較的早い段階から感染者を確認し、その後、道内各地で感染者増が進んだ事から、2月28日には独自の緊急事態宣言を発表。
 当時、鈴木直道知事が「この週末は外出を控えてください」と決死のメッセージを道民へ送った事は記憶に新しい。
 その後、全国的に緊急事態宣言が広がる中で、北海道も同様の措置を行い、感染者増の動きは鎮静化したかのように思われたが、昨年10月末頃から再び第3波と称される感染者増が見られるようになる。
 観光需要が高く、海外からの渡航者や本土からの旅行者が多い北海道にとって、今回のコロナ禍で受けた経済的打撃は決して軽くはないが、道内のベーカリー関係者にとってもそれは例外ではなかったようだ。
 北海道札幌市内に、本店を含む3店舗のベーカリーを展開する「ブーランジェリー コロン」も、昨年2月頃からのコロナ禍第1波発生により、大きな変化を経験する事となった。
 同店は道内に数あるベーカリーの中でも、ひと際強い北海道愛を感じさせる店だ。3店舗のベーカリーのほか姉妹店としてワインや食事を提供するレストラン「ブラッスリー コロン ウィズ ル・クルーゼ」も運営。低温長時間発酵で知られる志賀勝栄氏をグランシェフに迎え、開店以来、北海道産小麦100%のパン作りを行ってきたほか、北海道産の数々の食材の紹介も広く手がけてきた。その結果、道内のみならず、本土からの観光客も含めて根強い人気を獲得してきている。
 しかし、今回のコロナ禍で観光客が激減、「北海道産」を前面に出した販促からは大きな方向転換を迫られる事となった。
 同店の販売促進グループのリーダーを務める島森萌さんは当時を「入店している百貨店、商業施設自体が休業するという初めての事態を経験することになり、路面店である本店だけが営業を続けている期間もありました」と振り返る。
 そこで同店が行ったのが、これまでの北海道産であることに付加価値をおいた情報発信に加え、日常の食卓へ主眼をおいた提案を積極的に行うことだった。
 「地元客をメインにお迎えし北海道産が当たり前になる中で、ベーカリーとして何ができるか考えた時に、皆様が『おうち』でも豊かな食生活を送るためのお手伝いをしたい、ということも重視する方向になっていきました」(島森さん)
 「おうち食」を意識した施策として、かねてから予定していたウェブショップでのパンセットの販売を、かなり前倒しにして、昨年3月から開始した。人気ナンバー1の「道産とうきびのリュスティック」(税別240円)など定番商品を詰め合わせた「coron定番パンセット」(税別1819円)のほか、『季節のおすすめパンセット』(税別2688円)などの提供を開始した。
 さらに、テイクアウトの特別メニューも開始、レストラン「ブラッスリー コロン」のメインシェフである塚田宏幸氏特製「チキンキーマカレー」(税別800円)などをベーカリーでも販売するなど、新たな試みにチャレンジした。



「ブーランジェリー コロン」のウェブショップのトップ画面
ウェブショップで人気の「coron定番パンセット」(税別1819円)
本店で販売されている「パテ・ド・カンパーニュ」(税別800円)
インスタグラム上の告知で、昨年9月からウェブショップで開始した「coronパン定期便」(送料、クール代込で税別1万5000円)の第2弾の受注開始のお知らせ。3カ月間、毎月1回、毎回異なるパンに加え、旬の食材のポタージュやパンのおともをセットにして届けてくれる
「coronパン定期便」の1回に届くパンセットの例
少ない言葉で気持ちを伝える

 「外出を控えるお客様がなるべく1カ所で用事を済ますことができるよう、パンだけではなく、合わせて食べられるチーズやワインなどの食材の販売にも力を入れましたね」(島森さん)
 実は同店は、パンコーディネーターやパンシェルジュマスターなどの資格を持つ専門販売員が、パンの種類や食べ方、料理との相性などを教えてくれる店としても知られている。
 ただし今回のコロナ禍で、試食販売はもちろん、通常の接客も制限されるようになってしまった。
 「長く会話して説明すること自体が難しくなってしまいましたね。そこで商品を説明するポップを充実させるなど工夫しました。通常のポップに『人気ナンバー1』や『チーズに合う』『ワインに合います』といった一言を加えたチップを取り付けて、よりおいしく召し上がっていただく提案を一層強化しました」(島森さん)
 また同店はコロナ対策で店頭の全ての商品を個別包装していたが、包装できない焼きたての商品は「お声がけしてくだされば個別にご用意します」といった案内をさりげなく行うことで、以前のように焼きたての商品を買ってもらうことができるようにした。
 「限られた会話の中でも、常にお客様を気遣う姿勢を皆で意識し取り組みました。こんな時だからこそおいしいものを食べて欲しいし、来てくれた人には心地よい気持ちで買い物をして帰って欲しかったからです」(島森さん)
 例えばレジ前の列に並んでもらう時は「距離をあけて並んでください」といった命令口調で言うのではなく、「距離を取りやすいよう床にマークを付けましたので、こちらへお並びください」と提案する感じで、少ない言葉でも感謝の気持ちが伝わるよう、言い方を常に考えた接客を行ったという。



本店で販売されている「豚肉のリエット」(税別480円)。シンプルなパンと合わせやすい商品としてインスタグラムでも紹介されている
インスタグラムで告知されたデリバリーメニュー販売開始のお知らせ
メインシェフの高崎真哉氏。数々のヒット商品を考案
インスタグラムで告知された1月の新商品「米麹のカンパーニュ」(税別1200円)。米粉と米麹の優しい甘味と小麦粉の力強い風味を楽しめる食事パンだ
先行きが見えない不安の中で

 同店を運営するのは、芸能プロダクションの「クリエイティブオフィスキュー」。映画「しあわせのパン」(2012年公開)、「ぶどうのなみだ」(2014年公開)、「そらのレストラン」(2019年公開)をはじめ、数々の魅力あるコンテンツを北海道から発信している同社は、北海道の食の魅力をもっと伝えたいと飲食事業を立ち上げ、2012年に「ブーランジェリー コロン」を札幌市内にオープンした。
 以来、道産小麦を使用し、その他の食材もなるべく北海道産のものを使用した商品を提供している。
 またグランシェフとして、道産小麦を使用した低温熟成発酵技術の開拓者でもある「シニフィアン シニフィエ」の志賀勝栄シェフを招き、志賀シェフのもとで、小麦の旨味を引き出すパンの製法を習得した高崎真哉氏をメインシェフとして迎えた。高崎シェフは生産者との対話を大切にしたパンづくりを行う中で数々のヒット商品を考案していった。
 ただしコロナ禍に突入してからは北海道全体を覆う自粛ムードが続いている。
 「毎年恒例の百貨店の年始福袋も今年はほとんどが予約のみの販売だったため、例年とは違う来客の流れを経験することになりました」(島森さん)
 それでも先が見えない不安の中で島森さんは考えることがあるという。
 「この1年のコロナ禍を通じて考えさせられたのは『お客様が来ていただけることが当たり前じゃない』ということです。だからお客様に対しては、限られたコミュニケーションの機会の中で、より一層丁寧に接するようになりました」(島森さん)
 またたとえ状況は厳しくても「決して歩みを止めない」ということの大切さも同時に実感しているのだという。
 そのため春に向けた新商品開発にも余念がない。1月には新たに米粉と米麹の優しい甘味と小麦粉の力強い風味を楽しめる食事パンで「米麹のカンパーニュ」(税別1200円)を発売。道産大納言、りんご、桜パウダーを合わせた春季限定シュトレン「SAKURAテリーヌ」も3月上旬より展開する。さらに1月20日からは「Wolt(ウォルト)」のデリバリーサービスも開始し軽食セットなどを届けている。
 またコロナ禍を経験し、ウェブショップの利用が増えている。
 「全国各地からの受注があり、ウェブショップのご利用も定着した実感があります」(島森さん)
 道外の客には、北海道にいなくても少しでも北海道に行ったような気分が味わえる商品を出せればと考えているという。
 さらにシュトレンやクグロフは自家需要も高まってきているので通年でリリースして力を入れていきたいという。
 「良いものを作る手は止めません。商品開発の手は止めません。日々の経験を胸に、前進していくしかないですね」(島森さん)

SHOP DATA
店名:ブーランジェリー コロン本店
住所:〒060‐0032 北海道札幌市中央区北2条東3‐2‐4 prod.23‐1階
電話:011‐221‐5566
営業時間:午前9時〜午後6時30分
定休日:不定休 年末年始
品揃え:約60品目



安全・安心だけではなく楽しさも届けられる食を提案 - シロクマベーカリー
北海道札幌市のベーカリー「シロクマベーカリー」外観
北海道札幌市のベーカリー「シロクマベーカリー」店内の様子
充実させた商品ポップで「ライ麦パンリンゴ・レーズン」(税込320円)の美容・健康効果を説明
「シロクマベーカリー」が販売する北海道オーガニック小麦パンシリーズ
コロナ禍で雰囲気が変わる

 北海道札幌市で「シロクマベーカリー」の本店と支店の計3店舗を運営するシロクマ北海食品の荒川伸夫社長は、昨年のコロナ禍を機に店内の雰囲気が微妙に変わっていく様を経験したという。
 「今はだいぶ変わってきていますが、まだ道内で最初の感染者が確認された昨年の2月頃は、コロナ感染症に関する正確な正しい情報が不足していて混乱しているようなところがありました。みんな必要以上に恐怖を抱くあまり緊張し、店の従業員同士の人間関係もギスギスするようになってしまいましたね」と当時を振り返る。
 それまでは従業員の皆が、愛すべき「シロクマベーカリー」のパンのために、気持ちを一つに働いていたが、コロナ禍を機に変わってしまった人もいたという。
 「商業施設ですから、従業員の誰かが外で陽性患者の濃厚接触者になった場合は本人が陰性かどうかわかるまでの2、3日間は店を閉めなくてはなりません。陽性だった場合は2週間です。それを恐れて皆ピリピリしていました」(荒川社長)
 中には同僚の結婚相手の職場が医療機関である事を理由に仕事を辞めた従業員もいたという。
 さらに店内では来店客に対してはもちろん、従業員同士であっても必要最低限の会話しかできない状況が続き、苦しい日々だったという。
 「ただお客様に対しては、言葉は少なくてもそれで冷たさを感じさせるような接客をするわけにはいきませんから、苦肉の策ですが、商品の前に設置している商品ポップの内容に手を加えて充実させるなどして、なんとかコミュニケーションを取ろうとしました」(荒川社長)
 それでも4月下旬から6月中旬位までは、緊急事態宣言もあって、一時的な休業や営業時間の短縮などをせざるを得ない状況が続いた。

「古式原糖クリームパン」(税込220円)を紹介するツイッターの投稿
北海道の放送局との企画商品を紹介するツイッターの投稿
「シロクマベーカリー」を運営するシロクマ北海食品の荒川伸夫社長
「しろくまお月見バーガー」(税込380円)
徐々に活力を取り戻す

 シロクマ北海食品は、もともと函館で1947年に創業しスーパーなどの小売店へ「シロクマパン」の名でパンの卸売販売を行ってきた食品企業だ。1970年代に本社を札幌へ移転し、1990年代に入ってからは、北海道産の小麦によるパン作りに力を入れるようになった。
 1997年には「シロクマベーカリー」の前身である「れもんベーカリー」を札幌市豊平区にオープン。北海道産小麦を100%使用したパンを作り、さらに有機認証されている小麦を100%使用したパンの製造と販売もいち早く実現させた。
 さらに天然酵母技術を取り入れたパン作りや、ライ麦や大麦を原料にしたパン作りも開始。ライ麦のパンは道内にある特定の生産農家と協働した上で作り、天然酵母のパンと並んで今でも同店での人気商品となっている。
 また北海道産の小麦に対する理解を得るために行った様々な活動の中で繋がった道内各地の農家から、パンに入れる果物や野菜などを直接仕入れ、地産地消を実践している。
 2015年からは「シロクマベーカリー」へ名称を変更し本店の場所も、同じ札幌市の白石区本郷通りへ移転。その後も引き続き道民らに親しまれ、愛され続けてきた。
 しかし、昨年はかなり厳しい状況が続いたという。
 「昨年はコロナ禍の影響のほか、一昨年施行された消費税増税やアベノミクスの減退などの厳しい消費者環境もあって、駅ナカ店だけでなく本店である路面店の方の売り上げも伸び悩む状態が続いていました」(荒川社長)
 それでも「れもんベーカリー」の頃からずっと北海道民に愛され続けてきた「シロクマベーカリー」のファンからの支持は根強く健在だった。
 長期間の人気商品である天然酵母の食パンやライ麦パンシリーズを強化し、さらに、種類豊富なサンドイッチや惣菜パンも充実させた。また、それ以外にも昨年は北海道の放送局とタイアップしたユニークな企画商品や、古式原糖など付加価値のある素材を使った商品、シロクマの形をした目玉焼きを入れたバーガーなど、様々な商品を新たに発売した。
 「もともと北海道産小麦100%のオーガニックパンを製造しているということを大きな特徴としていたこともあって、安全・安心なパンというイメージが当店には強くありました。しかしそれだけではなく、コロナ禍の苦しい状況だからこそ、家での生活にちょっとでも楽しみを見つけられるように、食べる楽しみを提供できるパン作りも強化したいという考えを持つように変わっていきました」(荒川社長)
 大手航空会社の機内食に採用されるなどして注目を集めていた看板商品のオーガニックパンは、コロナ禍で航空産業がダメージを受けたりして、売り上げが減少したが、一定の需要は引き続き残っているため、止めることはないという。今後は楽しさやおいしさを追求した北海道産小麦のパン作りとの両輪で、できることを進めていく考えだ。

「ライ麦パン(プレーン)」(ハーフカット税込160円)をはじめとしたライ麦パンが並ぶ売り場
人気のライ麦パンシリーズの4種類の商品を説明するポップ
天然酵母生地を使った「天然酵母生地のビーフシチューピザ」」(税込300円)
前身となった「れもんベーカリー」
焼きたてを届けるサービス

 「今は一時的に止めている通信販売の再開も考えていますが、その前に、実は今年に入ってからは、専門の業者に委託する形でデリバリー商品も開始しました。より食卓を意識した形でパンを届けていきたいと考えています」(荒川社長)
 中でも導入したいデリバリーメニューとしては、ピザに注目しているという。既に店頭の商品で同店の強みである天然酵母生地を使用したピザを販売しているが、ピザもピザ屋ではなくパン屋によるものという観点で見ると、また興味深く差別化できるのではないかと考えている。
 「焼きたての温かいピザを届けるというイメージと、焼きたてのパンを届けるというイメージがリンクして相乗効果を起こせないかと思っています。テイクアウトしたものをリベイクして食べてもらうというベーカリー特有のセルフサービス的な考えを一新し、温かいランチメニューを直接届けることに価値を置いたサービスを提供することで、新たな需要を取り込めないかと思っています」(荒川社長)
 もともと北海道自体は地域柄、コープをはじめとした宅配サービスの需要が高いこともあり、すでに多くの飲食業者が自社製品のサービス提供にデリバリーを取り入れている。
 「オペレーションの問題を解決することが前提なので、どの程度実現できるかはまだわかりませんが、色々と試してみることで何とか士気を高め、このコロナ禍を乗り越えていきたいですね」(荒川社長)

SHOP DATA
店名:シロクマベーカリー南郷13丁目本店
住所:〒003-0024北海道札幌市白石区
本郷通13丁目南5-20
電話:011-598-0151
営業時間:午前8時30分〜午後6時30分
定休日:火曜
品揃え:約100品目
スタッフ:製造常時3人、販売常時2、3人
店舗面積:全体で35坪(イートイン含む)、イートイン15席(現在は休止中)


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