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特集/2020年7月号

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ポストコロナへ向けて
5月12日にオープンした「ポンパドウル ららテラス武蔵小杉店」
「ポストコロナへ向けて」のテーマで3軒のベーカリーを取材した。新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本中のベーカリーが、感染防止策を徹底した上での営業を余儀なくされ、新たな作業が数多く発生している。マスク着用、検温、個別包装、消毒液設置など、これまでにはなかった事柄に気を配り、徹底する必要が生まれ、ベーカリーの従業員たちは、自らの感染リスクも負いながらの懸命の作業を続けている。しかし、そうしたひたむきな作業を続ける中で、これまでには見えなかった新たな可能性も芽生えつつある。



培ってきたものを大切にし、売り場の衛生管理を強化したい - デイジイ
デイジイの倉田博和社長
埼玉県川口市などで複数の店舗を展開するベーカリー「デイジイ」の本店
「デイジイ」本店のコロナ禍前の店内の様子
2018年2月6日にJR東京駅八重洲北口改札内にオープンした「デイジイ東京グランスタ店」のコロナ禍前の売り場の様子
JR大宮駅の改札内商業施設に昨年11月27日にオープンした「デイジイ エキュート大宮店」の店内。オープン前の試食会の様子
看板商品の「クロワッサンB.C」(税込237円)
売り場での感染防止対策

 埼玉県川口市などで複数の店舗を展開するベーカリー「デイジイ」(倉田博和社長)は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、セルフサービスの売り場で、可能な限り商品の個別包装をしたり、上にセロハンをかけたりして、衛生管理対策を行ってきた。
 包装すると結露や蒸気が出てしまう焼きたての商品に関しては四苦八苦したが、売場の棚にセロハンのカーテンをふんわりとかける形で飛沫を防止。
 「感染防止も勿論大切ですが、焼きたてを食べたいというお客様の期待にも応えないとチャンスロスが生じ、店の運営に支障をきたしてしまいます。セロハン越しにパンの姿を見せる事で何とか焼きたてのシズル感を残せる売り場にしました」(デイジイ本社の倉田尚子常務)
 ただし、こうした焼きたてや揚げたての商品に関しても、粗熱がとれてきた段階で個別包装を実施しているという。
 実は同社では運営する全ての店舗でセルフサービスの売り場を導入し、セルフサービスに適した広めの設計であえて作っている。そのため売り場での衛生管理対策には厳重な注意を施したという。
 消毒液の設置やドアノブなど客が手で触れる部分の定期的なアルコール消毒、スタッフ全員の体調管理、混雑時の入場制限といった基本的な対策に力を入れた。
 「セルフサービスは対面販売に比べると商品の無防備な露出が多い分、確かに衛生上のリスクはあります。ただ、人件費を抑え手頃な値段でお客様へ商品を提供できるといったメリットや、お客様によっては『自分で自由に動いて商品を選ぶことができるので気が楽』という方もいるので、しっかり続けていきたいです」(倉田常務)
 売り場そのものの基本的な形は変える気はない。
 「ただ、こうしたできる限りの衛生管理対策を行っても、実際どこまで効果があったのかという事までは見えないのが不安なところです」(倉田常務)

手探りで対応を模索

 さらに今後、非常事態宣言が解除され通常の生活に戻っていく中で、こうした衛生管理対策もどのタイミングでどこまで戻していくのか不透明な点は不安を感じるという。
 これまでも、もし感染者が出たら店舗を一時閉店するなどしなければならないと思う不安の中、手探りで自分達が考えた独自のガイドラインに沿って対応を図ってきた。
 「ただ仮に感染者が出て消毒の方法など保健所に指示を仰ぎたくても、混雑して電話が繋がらないような状況の中では、どうすれば良いのだろうという不安は常に抱えていました。幸い感染者は出ませんでしたが、今後も予防のための対策を続けていく中で、消毒もどの程度のものをいつまで続けていかなくてはならないのか、できれば国がある程度の基準を示してくれればと考えています」(倉田常務)

駅ナカの売上減は想定外

 緊急事態宣言後の同社の売上は、路面店では増加する一方、オフィス街やエキナカの店舗は激減した。レストランの店舗も1店保有しているが、自社店舗であり、卸業務も行っていたため、何とか運営を継続できる水準までには保つことができた。全体では路面店の割合の方が多かったことから前年並みから微増くらいになったが、人件費などの経費は同じようにかかるため利益的には減少したという。
 「たまたま色々な形態の店舗を展開していたため、全体の経営状態への影響は少なくて済みました。ただ公共交通機関が使えなくなるとは思いもよりませんでしたから、エキナカの売上激減は想定外でした。この先も何があるかわかりません」(倉田常務)
 今後については、レジ前のビニールカーテンを透明なパネルに変えることを考えている。ビニールカーテンの場合、防火対策上、問題がある側面もあるからだ。
 また、今まで売上のほんの一部でしかなかった通信販売が、ここにきて倍増するといった事も経験した。
 ただし顧客情報をみると、近所の住所の人からの注文も多かったため、将来的にはデリバリーの需要に対応出来たらと考えている。
 「これまでのお客様との間で信頼されて培ってきたものがあるので、基本的な販売体制を大きく変える事はないとは思いますが、感染予防も含めて今できる事を着実にしていく中で、新しいビジネスチャンスがあれば、ちょっとずつ伸ばしていきたいですね」(倉田常務)



売上が倍増した通信販売(オンラインショップ)のトップページ
SHOP DATA
店名:デイジイ本店
住所:〒332−0002埼玉県川口市弥平2‐9‐17
電話:048‐227‐6060
営業時間:午前8時〜午後7時(平常時)
定休日:なし
品揃え:パン160品目、菓子80品目
スタッフ:製造10人、販売4人
店舗面積:売り場50坪(イートイン18席あり)、厨房50坪、セントラル工場50坪
日商:平日70万円、土日祝120万円



できる限りの事を客との信頼関係の中で続けていく - ポンパドウル
「ポンパドウル元町本店」(横浜市)。1969年に第一号店としてオープン以来、創業のポリシーを守り続ける
5月12日にオープンした「ららテラス 武蔵小杉店」(神奈川県川崎市)
コロナ禍前の元町本店売り場の様子。同社創業時からずっと、フランスパンと並んで根強い人気があるデニッシュペストリー類の商品
「北海道フェア」で発売した「北海道ミルクブレッド」(税込540円、ハーフ税込270円)
「横濱元町 霧笛楼」とのコラボ商品「横濱煉瓦パン」(税込216円)
3月から需要が急激に高まった通信販売のページ
焼きたては申し出てもらう

 横浜・元町に本店を構え全国に70店以上を展開するリテールベーカリーチェーン「ポンパドウル」は、売場での衛生管理や従業員の体調チェックを中心とした新型コロナウイルス対策を可能な限りあらゆる形で行ってきた。
 特に全ての店舗をセルフサービスの売り場にしているため全商品で個別包装を徹底。
 包装は、テープ留めはしていない半透明なビニールの包材に入れる簡易なものだが、レジで客からの要望があればテープ留めをして渡すようにしている。
 また、蒸気が篭るため包装が難しい焼きたての商品に関しては、基本的に売り場には出さないようにした。焼きたての個別包装に関しては、各ベーカリーによって対応が分かれるが、「ポンパドウル」は全店舗で、焼き上がり後1時間経過し冷めてから包装するように統一している。
 ただし、焼きたてを求める根強い声にも応えるため、フランスパンに関しては「従業員へのお声がけ」のPOPをフランスパンの売場付近に取り付けて案内。焼きたてはバックヤードもしくは工房内にストックしており、客からの依頼があった時に取り出して包装し渡す事ができるようにした。
 「実はこの状況下でもお店を開けている事への感謝のご連絡をお客様より頂戴しました。そのため衛生管理を徹底した上で、できる限りの事をしたい考えです」(同社広報)

現物を用いない販促

 今回のコロナ禍により、売り場で焼きたての現物を置く事での客の五感に訴えるような販促はできなくなったが、今は五感の代わりになるものとして、より客と店との信頼関係を強化する事が必要と考えている。
 そのため、「ポンパドウル」全店では、今回のコロナ対策で一丸となってパンの個包装以外にも様々な事を徹底している。
 従業員に対しては、マスク着用、手洗い、うがい、検温、手のアルコール消毒などを徹底したほか、職場外での体温管理などの体調管理も指導した。店内の衛生管理に関してはそのほか、試食を禁止し、イートインも利用中止、客が利用するトングへのアルコール噴霧、トレーの拭き取り、レジへの飛沫飛散防止のアクリル板の設置などを実施し、ソーシャルディスタンスの案内掲示も行った。
 また従業員に対する休業時の給与補償も取り決め、本社スタッフに関しては在宅勤務を促し、全店で会議、研修を中止、また感染時の対応を想定したルールの策定も行った。
 従業員の間では事務業務でリモートワークが進み、ITを活用する場面が増えたという。
 「今後も、正確な情報収集に努め、他社等と情報共有しながら慎重な対策を取っていきます」(同社広報)

プラスの出来事もある

 こうした厳重なコロナ対策が奏功したかどうかは不明だが、「ポンパドウル」では現在も関係者含めて感染者は出ておらず、大きな問題は起きていない。営業時間は4月以降短縮していたが、6月になって徐々に戻すようになってきた。
 ただし全店舗での全体の売上は、エキナカや百貨店内の店舗が多い事もあって緊急事態宣言後の4、5月は減少。
 しかしその一方で、もともと行っていた通信販売が3月から急に需要が高まり、5月には約3倍の売上となるといった事もあった。
 店内においては焼きたてのシズル感が演出できず、以前のように自由な売場作りができないという不自由さはあるが、制限された環境の中でも、プラスの出来事はあるという。
 「個包装によりレジの回転数が上がり、商品によっては『個包装した方がおいしい』といわれるものもありました。今後も安全を保ちつつ最大限に喜んでもらえるような商品の提供と店舗作りに努めていきます」(同社広報)
 ただ接客などの基本的な店の販売方針は、これまでと大きく変える事はないという。引き続き衛生管理や従業員の対応を徹底していく事で「ポンパドウル」の味とブランドを守っていく。
 またHPやフェイスブック、インスタグラムなどを通じた新商品やフェアの紹介は変わらず続けており、売場でのフェアなどの企画も継続。
 6月1日からは「北海道フェア」を、ポンパドウル全店で予定通り開催。新商品として、コクのある北海道の牛乳を使ったクリームを巻き込んだ「北海道ミルクブレッド」(税込540円、ハーフ税込270円)を発売した。ふんわり、しっとりとした食感でミルクの香り豊かな商品となっており、その他にも北海道の素材を使ったおすすめの商品を順次発売していく予定だ。
 5月中は緊急事態宣言解除前の状況の中、仏蘭西(フランス)料亭「横濱元町 霧笛楼」とのコラボ商品「横濱煉瓦パン」も発売し好評だったという。

SHOP DATA
店名:ポンパドウル元町本店
住所:〒231‐0861神奈川県横浜市中区元町4‐171ポンパドウルビル1階
電話:045‐681‐3956
営業時間:午前9時〜午後8時(平常時)
定休日:不定休
品揃え:約120品目(平常時)
スタッフ:常時製造6人、常時販売4人
店舗面積:売り場約29坪

コロナ対策についての来店客への説明が大変だった - ブーランジュリー オーヴェルニュ
オーナーシェフの井上克哉さん
東京・葛飾区のベーカリー「ブーランジュリー オーヴェルニュ」
コロナ禍前の売り場の様子(2016年2月撮影)
姉妹店の「ラ・タヴォラ・ディ・オーヴェルニュ」
オーナーシェフの井上さんやスタッフらが様々なコンテストに出場した時の受賞作品も多数販売されている(2016年2月撮影)
インスタグラムに、店指定の並び方を図で示した張り紙の写真をアップ
十分な休日の取得を指導

 東京・葛飾区のベーカリー「ブーランジュリー オーヴェルニュ」は4月上旬に発令された新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言を受けて、姉妹店の「ラ・タヴォラ・ディ・オーヴェルニュ」とともに営業時間の短縮を開始。
 「ラ・タヴォラ・ディ・オーヴェルニュ」に関してはモーニングビュッフェの開催とカフェスペースの利用も中止。さらに「ブーランジュリー オーヴェルニュ」で6月に予定していた毎年恒例のセールも中止とした。
 両店では感染防止策として、店内の消毒作業、従業員のマスクの着用と、状況に応じての衛生手袋着用、レジ前の透明シート設置などを行っていたが、そのほか、従業員の体調管理に関しては特に力を入れて徹底したという。
 「それまでは平均して月7日くらいの休暇取得になることが多かったのですが、コロナの問題が生じてからは、感染のリスクを低減し十分に体を休める時間を作ってもらうためにも、必ず月8日以上休ませるようにしました」(オーナーシェフの井上克哉さん)
 幸いスタッフのほとんどは徒歩か自転車で通える範囲内に住んでおり、普段は電車などの公共交通機関を使用しないので、店外での感染リスクは低かった。ただし若年層が多かったので、休日中に都心の繁華街などに出ないように、なるべく外出しないようにと注意喚起は行った。
 また、セルフサービスの売り場の衛生管理に関しては、ハード系やデニッシュ系以外で焼きたての時期を過ぎたものは、個別包装を実施。さらに、トングやドアノブなど共有部分の消毒の徹底のほか、30分に1回のトングの交換と5分近くの換気、トレー台の近くへの消毒液の設置なども行った。
 ただ、こうした消毒作業は、多かれ少なかれ以前から行っていることなので、作業事態は負担ではなかったという。
 「それでも気持ちの面では、感染者が出たらどうなるのだろうと重く不安でしたね」(井上さん)

客に説明し理解を得る

 同店は様々な不安を抱えながら予防対策を行ってはいたが、一方で売上そのものは3月から前年比20%増で推移。学校が休校になった事などで、地域住民の台所としての必要性がさらに増したことがうかがえる。
 一方で、昼時の混雑時に三密を作らないよう来店客への説明に苦労するなどの出来事もあった。
 「十分なソーシャルディスタンスをとって並んでもらうと店内に人が入りきらなくなるので、列の後ろのほうの方は外に並んでもらうようにしていたのですが、外に列ができてしまうと、今度は近所からクレームを受けてしまったので、結局、入場制限をした上で店指定の並び方を図で示したものを、店の前やインスタグラムなどに掲示して、その通り並んでもらうようお願いすることになりました」(井上さん)
 こうした感染予防に伴う数々の対策も、同店を利用する地域住民への説明と理解があってこそ成立するのだと実感する出来事となった。
 現在同店のHPには、「オーヴェルニュのスタッフ一同は体調管理を徹底し、店内や厨房の消毒作業を行いながら、パンを作っております。従業員の安全を確保しながら、美味しいパンを安心してお客様にお届けするため、どうかご理解のほどよろしくお願いいたします。梅雨の時期で雨の日が続きますが、オーヴェルニュのパンを食べて元気を出しましょう」というメッセージを出している。

緊急事態宣言延長に伴う営業時間の短縮のお知らせ
SHOP DATA
店名:ブーランジュリー オーヴェルニュ
住所:〒124−0012 東京都葛飾区立石6‐5‐7
電話:03‐3691‐5102
営業時間:午前7時〜午後7時(平常時)
定休日:なし
品揃え:220品目
スタッフ:常時製造兼販売10人、パート4人
店舗面積:売り場4・5坪、厨房16・5坪、折り込み室7坪
月商:900万円


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