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特集/2020年5月号

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新型コロナウイルスとの闘い


店としての真価が問われている中で闘っていきたい - クーロンヌとりで
茨城県取手市のベーカリー「クーロンヌとりで」の外観
「クーロンヌとりで」の田島浩太社長
予防策を徹底し、入場制限も

 茨城県を中心に複数のベーカリーを展開するクーロンヌジャポンは、新型コロナウイルスへの対応策を自社HPやフェイスブックで広く公表している。
 4月3日の発表では、しばらくの間、営業時間の短縮を実施し、本店である「クーロンヌとりで」をはじめほとんどの店舗で午後5時を閉店時刻とした。夜間の外出自粛を促す流れに従った格好だ。
 また、営業時の対策としては、従業員は全員マスクを着用し、出社時の体調チェックも強化。少しでも熱があれば業務を控えるよう促している。
 さらに、店内もしくは店頭の手で触れやすい部分の定期的なアルコール除菌も実施。試食もしばらく休むことにし、「気になる商品がございましたら試食をお切りしますので遠慮なくお声かけください」と周知するだけにとどめた。
 さらに混雑時には、店内への入場制限も実施している。ピーク時でも店内に4、5人の列ができる位に留めるようにし、残りは外で並んでもらうようにした。
 「密度が高い閉ざされた空間になることだけは避けなければなりません。換気にも気をつけなければなりませんね」(田島浩太社長)
 売り場の商品に関してはなるべく個別包装するようにしているが、フランスパンなどは風味が損なわれるためそれができない。
 セルフサービスのため不安もあり、客に対しても、入り口での手指の消毒やマスクの着用をできるだけして入店してもらうよう注意喚起をしている。客から直接意見を聞く目的でHP上に設置している「お叱りウェブ」ではこれまで2件ほど、全ての商品を個別包装することを求める声があった。
 マスクや消毒液の在庫に関しては、業務用の備品を発注している卸業者から定期的に仕入れているほか、個人的に買い抑えたものが本社にまだ残っているので、しばらくは不足しないのではとみている。
 従業員の行動管理に関しても気を配っているが、2月頃からフランスへ旅行に行き、3月に入ってから帰国したパート従業員がいたので帰国日から20日間位自宅待機で休んでもらった。
 売上自体は、駅ビル内の店舗は減少しているが、路面店は好調で伸びている。休校措置で巣ごもり需要が大きく伸びたためではないかとみている。
 「それにしても、こうした状況だからこそ店としての真価が問われていくような気がします」(田島社長)
 これまで地域で培ってきた客との信頼関係の強さが試されているとも言えるが、こうした逆境の中でも引き続き店を支持してもらうためにできる事をしていかなくてはならないと田島社長は考えている。
 また社内的には、大勢集まっての会議は中止となったが、「ZOOM」アプリを使用してテレビ会議や研修を行うようになり、逆に生産的になった側面もあるという。
 「今回の事は社会的には、多くの犠牲者が出て苦しく悲しい出来事ですが、それでも今までにない経験をする事でベーカリーとしては成長しているので、なんとか乗り越える力をつけていきたいですね」(田島社長)。



時間短縮営業と併行し、消毒などの基本事項を徹底 - メゾンカイザー
メゾンカイザーの木村周一郎社長(左)と取締役のエリック・カイザー氏(右)
メゾンカイザー 高輪本店の外観
特注の小麦粉「メゾンカイザートラディショナル」を使用した「バゲットモンジュ」
木を基調にした店内
ウイルスに負けないブランド力

 フランスの食文化に根ざしたハード系のパンを中心に国内に約30店舗を展開、約3割の店舗にイートインやレストランなどの飲食スペースを設置する「メゾンカイザー」は、政府や自治体の外出自粛要請を受け、一部店舗を休業もしくは営業時間を短縮するなどの措置を取っている。
 営業中の店舗も2月下旬頃から、従業員は全員、出勤時の体温計測を課し、マスクを着用させるなどの対策を実施。海外渡航歴のある従業員は現時点ではいないが、いた場合は2週間自宅待機及び検温を行い、出勤を判断する措置をとるという。
 また売り場では、トング、トレーの徹底消毒、トレーの表面を下にして店頭へ設置する等の衛生管理も強化した。
 客に対しても、売り場に手指消毒液を設置して使用を促すなど、可能な限りウイルスから防御できる売り場作りを行っている。
 さらに商品はショーケースの店舗を除き、全商品を個別包装、試食も2月下旬からとりやめた。
 マスクや消毒液の在庫は、消毒液は通常通り定期的に納品してもらえる状態にしているので問題はないが、マスクは6月頃までの在庫となっており再度調達が必要だという。
 また2月、3月は多くの外食産業が落ち込む一方で、ベーカリーは休校措置による巣ごもり需要で伸びたという声もあるが、同店も売り上げに関しては、路面店は10〜15%増と増加傾向。
 「路面店に関しては、食パンや大きめのハード系商品を含む食事パンをご購入されるお客様が増えた事が売り上げ増に貢献しました」(同社)
 ただし百貨店等の商業施設内の店舗は昨年対比で4割減だった。
 今後の見通しとしては、「メゾンカイザー」のブランド力を守る姿勢をさらに強化しながら、外出自粛要請による休業や時間短縮営業に対応する形で、冷凍パンのECサイト販売に着手。冷凍パンのリベイクで再現できるメゾンカイザーブランドのパンの魅力を発信していく。
 実はECサイト販売に関しては以前から話が出ていたが、今回の事でより話が具体化。様々なノウハウを投入し、実現に向け準備を進めていく方針だ。



マスクをつけても笑顔で接客。できることは助け合いたい - リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー
「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」オーナーシェフの古宮義和さん
千葉県船橋市のベーカリー「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」の外観
できることをしていく

 「とりあえずマスクをしていると表情がわかりづらいので、いつも以上に大きな声で話しかけるようにしています」と千葉県船橋市のベーカリー「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」の店長でオーナーシェフの古宮義和さんは話す。
 同店は7坪という限られた敷地面積の中に建てられた地域密着の小規模店だ。
 ショーケース内に並べた商品を販売する対面式の売り場は、個別包装をしていなくても商品に客が直接触れる事はないため衛生環境は良いが、2坪ほどの限られたスペースのため、一度に入る客の数は多くても2、3人。そのためコロナウイルスのニュースが駆け巡るようになってからは、売り場の横にある小窓を開けっ放しにしてなるべく換気を良くするようにしている。また入り口のドアノブなど皆が共通して触れるような部分は消毒を徹底する事で対応。そして古宮さんや販売のパート従業員は当然マスクをしている。マスクの在庫はたまたま買い置きしていたものがあったので、まだあと1カ月分位はある。そのほか、実はマスクは意外にも常連客や知り合いから親切でもらうこともあるから助かっているという。
 店内のポスターでは「マスクの下は笑顔です」というキャッチフレーズを周知。
 もともと様々な人との繋がりを大切にする古宮さんは同店に来る出入りの業者ともよく話をするという。大変なのはどこも同じで中にはとても暗い顔をしている人もいるが「まずは話を聞く事が大切ですね。その上で自分達に何ができるか考えていきます」と古宮さんは話す。 
 例えば仕入先の業務用乳業メーカーは学校給食や商業施設などへ牛乳やジュースなどの飲料を卸していたため落ち込みは深刻だった。
 そのため50リットルほど買い取って、スタッフ皆で分け合って消化した。
 「過去の自分の事を振り返っても他人事ではないから、普段お世話になっている分、何かしてあげたいと思うんです」(古宮さん)
 外食産業で卸先の飲食店とは、仕入先のエビチリを販売強化して多めに注文するなどコラボレーションを強化。卸先の飲食店の商品を店頭で販売したり、新たにランチ営業を始める店はチラシを店頭に置くなどといった協力も行ってきた。

不安はあるが、助け合いたい

 古宮さん自身の店である同店の売り上げは休校措置がとられる前後の2月からずっと好調で伸びているという。ただ勿論、万が一感染者が出れば一時的に店の営業を休止せざるをえないし、店のパンの一部を卸している保育園も感染者が出れば休園になり、その分の卸販売を止めなくてはならないといった事も起きる。
 いつ何があるかわからない不安がある一方で、それでも店の経営は死活問題だからやめるわけにはいかない。
 「厳しい壁にぶち当たっていますが、それでもこんな時だからこそ助け合える者同士は助け合っていきたいと考えていますね」(古宮さん)



セルフサービスでの売り場で衛生的な環境を徹底 - プチ・アンジュ
「プチ・アンジュ国立」店長の津金一城さん
東京・国立市のベーカリー「プチ・アンジュ国立」の外観
個包装で販売、入場制限も強化

 東京・国立市のベーカリー「プチ・アンジュ国立」は、コロナウイルスのニュースが流れ始めた2月頃から、予防のための対策を強化するようになった。
 まず、スタッフは全員がマスクと手袋を着用。体調管理の確認にも注意し、熱や風邪のような症状がある場合は出勤を控えてもらう。
 さらにセルフサービスを中心とし、試食も多数行っていたため、売り場の衛生管理については最も考え直す必要があったが、結局、店内の商品は全て冷めたものから個包装で袋に入れて販売するようにした。焼きたての商品はしばらく包装できないため、売り場に出す事ができない状況だ。
 また、以前は毎日十数種類位出していた試食に関しては、多くの人が触れる機会を作ってしまう可能性もあるため今すべて撤廃している。
 どうしても試食を希望する客には、個別で対応しており、スタッフがその場で切り分けたものを直接渡して試食してもらっている。
 そのほか、客に使用をすすめる手指のアルコール消毒液は、以前から店の入り口に設置していたが、中身を詰め替えなくてはならない頻度が明らかに多くなってきている。以前は2日に1回だったが、今は1日に頻回補充している。
 また、満員時の半数ぐらいの来客数で入場制限をかけており、レジや商品を選ぶ際に並ぶ時は、なるべく他の人と1メートルほど間隔を空ける事を店頭でも掲示して注意喚起。こうした情報はメールマガジンやツイッター、インスタグラムなどでも「お願い」として出している。ピーク時に店内が混み合うと危険なので、なるべく換気は良くし密閉した空間にならないよう厳重に注意している。

テラス席は撤去、営業時間は短縮

 そのほか、同店にはテラスでのイートイン席があり、2月以降もしばらくは開店前の朝と営業時間中の頻回消毒を行う事で対応してきたが、緊急事態宣言などを受け現在はもう撤去している。
 テラス席の利用者の数自体は大きく減ってはいなかったが、それでも感染のリスクを考えると店の敷地内で飲食のスペースを作ることは避けたかった。喫食だけではなく、身体の不自由な人が店内にいる連れの人を待っている際に座るなどの利用もあったが、飲食禁止の休憩スペースとして開放することは難しかったため撤去に至ったという。
 一方4月は感染者が増加する流れの中での緊急事態宣言を受け、営業時間を変更、閉店時間が通常より一時間早い午後6時となった。
 こうして状況が刻々と変化する中でも幸い客数や売上に関しては2月以降も大きな落ち込みはないという。
 「ベーカリーは外食産業のような大きな打撃はなかったとはいえますが、それでも、長期的に不況が訪れればどうなるかわからないという不安はありますね。今後は安全で衛生的な環境で商品を提供するために何が必要か、その都度考えて判断していきます」(店長の津金一城さん)

コロナ対策を含めた健康管理に役立てて欲しい - フスボン・ショップ
「フスボン」代表の川谷洋史さん
ふすまパンの専門店「フスボン」代官山本店の外観
栄養療法の面からできること

 「色々な情報が錯綜していますが、絶対に正しいことはないという前提で、自分の中で大切だと思うことを実践していく必要があります。当店としては、栄養療法の面からできることをしたいと考えていますね」
 「フスボン」こと低糖質のふすま粉を使用したふすまパンをブランド展開して販売する「フスボン・ショップ」の代表、川谷洋史さんはこう話す。
 同店はリアル店舗である代官山本店を東京・渋谷区の代官山駅近くに抱えるが、売上の大半は冷凍した商品を販売するネットショップからのものだ。
 リアル店舗はあくまでアンテナショップ的な位置づけにあるが、店舗を通じて一人でも多くの人に、ふすまパンや糖質制限の事について、知ってもらいたいとも感じている。商品は冷凍し個別包装しているネットショップでの商品をそのまま陳列。対面販売の店舗のため、セルフサービスに比べると衛生面での問題は少ないと感じている。試食も目的買いの客が多いためもともと行っていない。
 それでも勿論、大体常時1人で接客をしている販売スタッフは常にマスクを装着、売り場のテーブルも頻繁に消毒するようになった。また換気もよくするため冬の終わりの寒い日でもドアは開放するようにしていた。今後は入り口に消毒液を設置して来店客に手指の消毒を促しても良いのではとも考えている。
 一方、コロナ関連のニュースで騒ぎが大きくなり始めた2月以降から、同店のネットショップでの売上は昨年同月対比で2割増のレベルで推移するようになったという。
 コロナで重症化しやすい病として糖尿病があげられている事が、注目が集まった理由とも考えられるが、正確なところはわからない。それより単純にコロナ対策で外出する人が減り、通販の商品が売れるようになったともとれる。もしくは定期的に情報発信しているメールマガジンやラインでの会員がここにきて増えてきた影響も考えられる。
 「(外出自粛で)スポーツジムへ行けなくなってしまった事により、運動ではなく栄養制限を選んだダイエットをする人が増えてきた可能性もありますね」と川谷さんは話す。
 「普段から健康について考えておく必要があるのかなと思います。接触感染を減らしたり、専門の医療体制を充実させるなどの対処も勿論大切ですが、一人一人が免疫力を高めていく事も、ウイルスを収束させていくためには必要で、バランスが大切だと思います」(川谷さん)

注目を集める通信販売

 外出制限や休校措置の延長など接触感染を避けるための対策が強化される中、ネット販売を主流としたビジネスが注目されるが、川谷さんは、「ただし個別包装の場合は表示が厳しくなりますし、リピーターがつくまでは名簿がない中で迷走しなくてはならないなど、ネット販売でも勿論大変なことはあります。安易に手を出すのではなく、目標を持ってよく考えた上で開始する事をおすすめしたいです」と語ってくれた。

皆に元気になってもらえるようなパンを焼き続ける - 吟遊詩人
「吟遊詩人」店長の清澤稔さん
ベーカリー「吟遊詩人」の外観
外出自粛で客単価は増加

 東京・杉並区、JR荻窪駅前に広がる商店街の中にあるベーカリー「吟遊詩人」は、今年1月頃から売上が大きく伸びてきたという。新型コロナウイルスの国内感染が騒がれ始めた2月に入ると、売上は昨年対比で3割増、3月も2割増だった。
 理由の一つとして考えられるのは、PAYPAYによるQRコード決済を開始した事だ。実は1月の来店客の15〜20%はPAYPAYでの決済だった。またすぐ近くにあった人気ドーナツ店が突然閉店した事も多少は客の流れを変える一因になったと、同店のオーナーで店長の清澤稔さんはみている。
 ただし、大きな理由としては、やはり新型コロナウイルスによる社会・経済環境の変化、学校の休校措置などによるものが大きいのではという。
 実際、まとめ買いする客が増え、客単価が大きく伸びた。特に食パンを購入する客が増えている。
 「外出自粛により、自宅でも手間がかからず簡単に用意できる食パンのアレンジメニューが人気を博している事が背景にあるかもしれません」(清澤さん)

前向きな気持ちになって欲しい

 実は同店は4月7日に緊急事態宣言が発令されてからも、午前8時〜売り切れまでの通常通りの営業時間を継続。従業員のマスク着用と手洗いやうがいの徹底、頻繁で細部にわたるアルコール消毒、適度な換気など、衛生管理をさらに強化することで事態に対応している。
 もともとショーケース内に陳列した商品を販売する対面式の売り場で、商品を選ぶ際に客が購入前の商品を手に触れてしまう事もないので、比較的衛生環境を良好に保ちやすいという事もある。それでも油断することなく最大の注意を払った上で、あえて営業を行っているが、それには理由があるという。
 「大変な状況ですが、それでもこういう時だからこそおいしいものを食べて元気になって欲しいし、希望を持てる前向きな気持ちになるよう、食欲を起こさせるパンを作る事に使命みたいなものを感じています」と清澤さんは話す。
 マスクは箱で買っていたものがある程度残っている状態だが、常連客が好意で持ってきてくれることもあるという。ドラッグストアやコンビニへ在庫を積んだトラックが搬入される際にうまく居合わせて洗えるタイプのマスクを購入したこともあった。
 またアルコール消毒液もたまたま騒ぎが起きる前に10リットル缶を2缶買い入れていたので当分は大丈夫とみている。ただマスクは逐次新しいものを手に入れられるよう注意している。
 「一人の客につき1分ほどの接客で終わるベーカリーとちがい、ランチメニューなどを提供する外食の飲食店は本当に苦しく大変だと聞きます。また今後の事を考えれば全ての個人商店にとって本当に苦しい時代です。そんな中で皆には元気になってもらうためにおいしいパンをできる限り作ることが、自分の立場でできる最大限のことですかね」(清澤さん)


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