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特集/2019年9月号 |
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店の想いを客にどう伝えるか(続編)
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メルマガで新たな企画にも挑戦
新しく始めたいと考えているサービスもある。 「フードロスゼロの取り組みとして、会員限定の特別価格で販売できたらと思っています。毎日ではなく、大雨で客足が止まってしまったときなど、急な対応が必要なとき、メルマガのレスポンスの良さが活かせるのではないかと思っています」(津金さん) メルマガに期待を寄せる津金さんだが、実は「実際どうなるかわからない」という思いも持ち合わせている。 「約30年以上の経験を重ねてきて、反対にその経験値が通用しないと思うことも、たくさんあります。不安がありながらも、メルマガに本腰を入れてみようと思ったのは、そういう考えからです。何でも決めつけるのはよくないと言い聞かせていま す」(津金さん) 「雑穀や全粒粉を使ったものはないか」と聞かれることが多い割に、実際の売れ行きはよくない。だから注力せずにやってきた。だが最近、亜麻仁やキヌアなどの6種の穀物を入れた「六穀」(税抜160円)や、ライ麦、亜麻仁、大豆などを練り込んだ「コーンミックス」(税抜130円)などを新発売し、雑穀入りハード系アイテムの充実を図った。 「問い合わせがあるものをを作らない訳にいかないというだけでなく、昔と今とで状況は変わっているのだからという考えで、展開することにしました。例え昔は売れなかった商品でも、今なら売れるということがあるかもしれません」(津金さん) SHOP DATA 店名:プチ・アンジュ国立 住所:〒186‐0003 東京都国立市富士見台2‐45‐9 モナーク国立1F 電話:042‐505‐4104 営業時間:営業時間 午前9時(土日祝は午前7時)〜午後7時 定休日:木曜 品揃え:約100品目 スタッフ:製造常時7〜8人、販売常時3〜4人 店舗面積:売り場16坪、厨房30坪 日商:平日約45万円、土日約70万円 |

パン食文化の楽しさを伝える - クーロンヌとりで | |||||||||||||||||||
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ヘビーユーザーから支持される店
「当店の位置する近隣地域の人口そのものは減少傾向にあります。ただ、売上を伸ばす上ではそこは大きな問題ではないと考えています」と、茨城県南部を中心にベーカリー9店舗、ピッツェリアとペンションを1店舗ずつ経営するクーロンヌジャポンの田島浩太社長は、本店である茨城県取手市のベーカリー「クーロンヌとりで」についてこう話す。 「私達は、ヘビーユーザーをいかに取り込んでいくかという事を大切に考えています。支持してくれる人達を大切にし、その人達の期待に応える事の方を重視しています」(田島社長) 同社は今年5月にはJR土浦駅直結でカフェを併設した新店舗「クーロンヌPLAYatre TSUCHIURA」をオープン。現在、ベーカリーでもこうしたカフェ業態での店舗展開には力を入れ続けているという。店内において心地よい空間を提供し、最適なタイミングで主食としてパンを食べる経験をしてもらうことで、パン食文化の楽しみを知ってもらいたいと考えているからだ。また、買い物そのものを楽しんでもらう事も重要視している。 「伝統的な製法で作った定番商品を毎日、頻繁に焼いて提供する事で、それぞれの商品を目当てに通ってくれる常連のヘビーユーザーの方の要望に応えられるようにしたいですね。その上で店内で最適なサービスも体感してもらいたいと考えているのです」(田島社長)。 お叱りウェブの顧客の声は宝物 クーロンヌジャポンではHP上に「お叱りウェブ」というクレームを受け付ける窓口を設置している。 「ここに集まった声は、店側の指導や対応が行き届かなかった点を、お客様のほうから知らせてくれるものです」(田島社長) 例えば以前、店の後ろの奥の方にあるゴミ箱の匂いが気になるというクレームがあった。 「言われてみて気がつき、すぐ対応することができました。だからクレームに対しては常に感謝の気持ちで向き合うようにしています」(田島社長) またクレームではなく励ましや賞賛の声が届くこともある。内容は主に従業員の親切に対する率直な声だ。 「例えば、『ベビーカーで入った時、親切に対応してトレイに商品をとってくれました』などという声です。商品も大切ですが、こうしたちょっとした親切の積み重ねがヘビーユーザーの獲得にもつながっていきます」(田島社長) |

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スタバに学ぶ接客スキルの高さ
クーロンヌジャポンではあらゆる問題が実際に起きる前に解決する事を目指し、勉強会を週一回開催している。勉強会は各支店の店長向けと、中堅・新入社員向けのものに分かれ、基本的には技術的な事よりも仕事に向かう姿勢を中心に各自日々の業務の見直しを行っているという。 「例えば今は、接客スキルが極めて高いものの好例としてスターバックスの店員の対応を例にあげて話す事が多くなっています。彼らの店での対応は『スタバ』というブランドを成立した中で、お客様へ特別な時間と空間を提供したいという完璧な接客マニュアルの中で行われているのでしょう。私はこれをパン屋の世界でも取り込めるようにしていくべきだと考えているのです」(田島社長) クーロンヌという作られたブランドの中でパンを中心とした最高の食と空間を提供していくためには、クーロンヌでしか提供できない商品と従業員からのおもてなしである接客対応が必要だという。 「スタバと対照的なのはコンビニですね。こちらは便利さや商品の手軽さなどを売りものにし、価格もそれほど高くはありません」と田島社長。さらに「昨今の原料高や従業員の労働環境の問題なども考えると、ベーカリーはコンビニのような便利さや安さを売りにするわけにはいきません。パンの値段はある程度の価格をしっかりつけなくてはなりません。ただその分、商品も接客もその店にしかない特別なものを提供する必要があるのです」。 「親切が先で商いが後」が基本方針 田島社長はさらに「スタバの例をあげるとまず従業員一人一人が主体性を持って生き生きと働いているというのがあります。お店のイメージというのをすごく大切にしていますね。当店の場合は、マニュアルは基本的には設定していないのですが、クーロンヌらしさを出していくために『親切が先で商いが後』という事をものすごく重視しています。高校生をアルバイトで採用する事もありますが、たとえ人生経験は短くても、日常で誰かに普通に親切にした経験はあるはずです。店の接客ではその辺りを思い出して対応できるようにといった指導をしています」。 例えば客から「おすすめの商品は何か」と聞かれた場合の対応として、まず、一番の人気商品を伝える事は多い。ただ、より親切であれば、「ちなみに私はこの商品が好きです」といった風に話を付け加える事で会話が続き、接客のレベルが上がるのだという。 |
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理想的なリーダーは毅然として穏やか
「ただしこうした接客のスキルは従業員同士の関係が良好であってこそ生み出されるものだと私は思っています」と田島社長は話す。 同社は1994年に個人商店として創業し、25年が経つが、最初のうちは従業員の入れ替わりが激しく、なかなか人が定着しない状態が続いていたという。 「だいぶ悩みましたが、変化を求めて模索しているうち、自分の中で理想的なリーダーの姿を思い描く事で、自分もその理想のリーダー像に近づけるという事に気がつきました。その理想の姿とは、常に穏やかで毅然としている事です。経営者としてのコミュニケーション能力を上げるための学習教材を導入するなどして、理論的に学びこの姿に少しでも近づけるよう努力しました」(田島社長) 理想的なリーダーの姿を思い描き続けた結果、ちょっとずつ状況は良くなっていた。今でも週に一回の勉強会を欠かさないのは、こうした努力によって得る事ができたものを持続させる目的もある。 「以前は感情的になりイライラしがちだった事も冷静な対処ができるようになりました。人を育てるという事について落ち着いて、理論的に策を練る事ができるようになりましたね」 田島社長は、店長としての素質は何かという事については「人を生かして輝かせる力」があるかどうかと考えているという。 自分一人が頑張りすぎるのではなく、人を育てることで各自が役割を発揮できるようにし、店舗運営をうまく回せるようにすることが重要だという。 ただ、それがうまくできない店長もいる。決して仕事ができないわけではなく、能力もあるが、個人的な悩みを抱えてうまく力を発揮できない場合もある。だから、週一回の勉強会や店単位の枠を超えた食事会などを通じて、店長の悩みは何らかの問題が起きる前に常に把握しておきたいことだという。 「各店舗の現場でのパートさん達も含めた従業員の指導は店長に任せている状態ですが、その分、店長が抱えてしまう悩みに対しては常に敏感に察知してあげないといけません」と田島社長。 さらに「客の全ての要望に応えるためには、商品から接客、従業員育成、ブランディングまで全てにおいての質を高める事が必要ですが、そのためにはスタッフ各自が活躍できる場をつくり育てていく事が大切です。その結果、店舗数が拡大していくのは良い事だと思っています。今後も出来る限り、お客様にとって居心地良い店づくりに励んでいきたいですね」。 SHOP DATA 店名:クーロンヌとりで 住所:〒302-0034 茨城県取手市戸頭2丁目12番13号 電話:0297‐78‐6321 営業時間:午前6時30分〜午後7時 定休日:水曜、第2木曜(祝祭日は営業) 品揃え:100品目 スタッフ:製造常時4人(繁忙時は5〜6人)、販売常時3人(繁忙時は5人) 店舗面積:売場11坪、厨房20坪、テラス28席 日商:平日36万円 土日60万円 月商:1000万円 |
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