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特集/2019年8月号

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店の想いを客にどう伝えるか


スタッフが会話に困らない仕組み - トーホーベーカリー
約100種類もの商品が並ぶ割に、すっきりと見える店内。色の統一感と清潔感が感じられるのが印象的だ
オーナーシェフの松井成和さん
トーホーベーカリーの外観。テラス席と駐車場が店前にある
父の日に合わせて、「自家製サクサクカレーパン」を通常価格の50円引きの税込139円で販売
自然な会話のきっかけはフェア開催

 「スタッフ出身ご当地パン祭り」と題したフェアを開催したのは、東京・三鷹市の「トーホーベーカリー」。製造担当の社員らが、それぞれの出身地に因んだパンを開発し、販売するというものだ。
 製造担当の社員は8人おり、そのうち東京都出身の4人は一組となって東京に因んだパンを開発、残りの4人は、それぞれ自分の出身地に因んだパンを開発し、5都県の5商品が並んだ。栃木県の「足利のソースカツ丼パン」(税抜200円)や、静岡県の「もやし入り!! 浜松餃子パン」(税抜180円)、東京・銀座発祥と言われているクリームあんみつをイメージした「クリームあんみつパン」(税抜230円)などで、開発した社員らのユニークなアイデアが感じられる品々だ。
 オーナーシェフの松井成和さんは、「昨年11月が初めてで、好評だったので、今回2回目を開催しました。お客様とコミュニケーションを図る上でも、非常に役立っています」と話す。
 「開発した社員のなかには、4月に入ったばかりで、お客様との会話に慣れていない新人もいます。たまたまご自分の出身地のパンが並んでいたというお客様は、近くでパンの補充をしていたスタッフに『懐かしい』と言って話しかけてくれました。だまっていられなかったという感じだったと思います。こうして自然な形で会話ができるのは、慣れないスタッフにとって、ありがたいことです」(松井さん)



「スタッフ出身ご当地パン祭り」のフェアの商品が並ぶコーナー性別を問わず好評
東京・銀座発祥と言われているクリームあんみつをイメージした「クリームあんみつパン」(税抜230円)。冷やしてもおいしい
ご飯の部分をパンにして、ソースカツ丼ならぬソースカツパンに仕上げた「足利のソースカツ丼パン」(税抜200円)
「足利のソースカツ丼パン」の断面。
見た目も餃子のような「もやし入り!! 浜松餃子パン」(税抜180円)。パンはもちもちで、底部分にもやしとチーズが付いている
「もやし入り!! 浜松餃子パン」の断面
クレームは対応次第で店の宝になる

 同店はほぼ毎月のように、こうしたフェアやイベントを企画して行っている。
 好評のため、毎年の恒例となっている夏休みの子ども向けイベントは、スタンプラリーだ。購入時にレジで押すスタンプが、5個または10個貯まれば景品のパンがもらえるという内容だが、ルールがいくつかある。
 まず、スタンプがもらえるのは、1日1回と決まっているので、例え1日に2回来て購入しても2回目以降は押さない。次に、子ども向けなので、子どもが一緒でなければスタンプは押さない。また、景品は、スタンプが貯まった当日にもらうことはできず、受け取る日を予約する必要がある。
 スタンプラリー以外にも、毎年恒例となっているイベントはある。開催後のミーティングで出た意見を、翌年に活かす。その繰り返しだという。
 「恒例のものは毎年進化していきます。それと同時にルールも増えていきます。ルールは、イベントを滞りなく行うためのものではあるのですが、その数が多いと、かえってお客様に負担となってしまうこともあります。そのときスタッフが適切に対応できないと、クレームを受けることにもなってしまいます」(松井さん)
 クレームが出た場合は、即座に客のもとへ詫びにいく。
 「お詫びに伺うと、お客様は反対に、恐縮されたり、当店に対して好意的な内容の話をしてくださったりします。こうして思わぬ展開で話が盛り上がると、今度は店側からの話もさせていただくことができます。お客様と店と、互いに思いを伝えることは、普段の営業では、なかなかできることではありません。対応の仕方によって、結果的にクレームを宝に変えることができるということを、実感する瞬間ですね」(松井さん)



フェイスブックで告知した父の日フェア
質問を受けたときの答え方を考えておく

 6月16日の父の日は、焼き菓子の詰め合わせギフトの販売のほか、「自家製サクサクカレーパン」を通常価格の50円引きの税込139円で販売した。
 同商品を起用した理由は、男性客に一番人気があるアイテムだからだが、50円値引き後の価格、「139」という数字にも意味を持たせた。
 「季節の行事に合わせたフェアなどをやるときには、必ず関連付けるようにしています。お客様から『なんで139円なの』と質問されたとき、『139は、いつもサンキューの語呂合わせで、お父さんに感謝の気持ちを込めています』と、答えられるようにしているんです。もしその数字に意味がなかったら、答えに困ってしまうのではないかと思うからです」(松井さん)
 企画の時点で、客とスタッフの会話まで予測しているのだ。松井さんは、スタッフの接客について、自分自身の経験を活かす。反対に自分が客の立場で他店を利用し、実際に感じたことから、どう対応したら客が満足するかを考えている。
 「質問したときに、そっけなかったり、気持ちが入っていないと思うような答えが返ってくると、がっかりします。当店のスタッフには、お客様からおすすめを訊かれたときの返答として『全てです』ではいけないと言っています。とは言え、店の売れ筋、各自の好きなもの、どれを言っていいか決められないかもしれません。それで困るスタッフには、『次来てくれるときは、ほかのスタッフに訊くかもしれないし、そのお客様が来るのは今日だけではないのだから』などという話をしています」(松井さん)
 同店はフェア商品として、毎月平均して3〜5品の新商品を販売する。新商品は、試食して味を確認したり、材料や特徴を知っておくことを、スタッフ全員が行うようにしている。
 「新商品についてお客様からどんな味か質問されたら、まずは自分が食べて感じたことを言えるようになってもらいたいと思い、試食を欠かさずさせています。それでも味の表現が難しいと思ったときのために、見本のコメントを用意していて、お客様から見えにくい場所にメモしています」(松井さん)
 スタッフの中には、週2回だけの勤務のパートもいる。新商品などの情報の共有はデジタルとアナログの両方を活用している。
 「フェイスブックとインスタグラムでは、お客様に向けてフェアや新商品などの情報を発信しているので、スタッフにはどちらもフォローしてもらうようにしています。スタッフ間の連絡事項については、ラインを使っています。ラインのグループを作成したので、それで一斉に伝えるようにしています。アナログの手段は、連絡ノートです。出勤したとき、必ず目を通すようにしてもらっています」(松井さん)
 客に対する情報発信も、様々な方法で行っている。例えば、フェアの告知はSNS、入り口前の看板、店内のPOPと3段構えだ。
 「見る順番はSNS、看板、POPの順になると思いますが、それぞれ間が空くことで、印象に残りやすい効果があると思います。また最初にSNSを見た方は、来店するまでにわくわく感も楽しんでいただけるのではないかと思っています」(松井さん)

店名:トーホーベーカリー
住所:〒181‐0013 東京都三鷹市下連雀1‐9‐19
電話:0422‐43‐6311
営業時間:午前7時〜午後7時
定休日:日曜、第3月曜、祝日
品揃え:約100品目
スタッフ:製造13人、販売7人
店舗面積:厨房25坪、売り場14坪
日商:平日75万円、土曜日120万円




ほんのちょっとの贅沢を提供 - ピーターパン石窯パン工房店
「ピーターパン石窯パン工房店」の店内。客がじっくり楽しみながらパンの品定めをする傍らで、スタッフがてきぱきと動く姿が印象的だ
ピーターパンの大橋珠生社長
千葉県内に9店舗のベーカリーを展開するピーターパンの旗艦店で、同県船橋市にある「ピーターパン石窯パン工房店」の外観
外からもわかるように設置された大きな石窯も「ピーターパン石窯パン工房店」のトレードマークだ
船橋駅構内と連結した船橋シャポービル内の「小麦市場 シャポー船橋店」の様子
「元気印のメロンパン」(税込140円)
エキナカ進出で新たな挑戦

 千葉県内に9店舗のベーカリーを展開するピーターパン(本社・千葉県船橋市海神)は、同県船橋市にある「ピーターパン石窯パン工房店」など郊外型店舗を中心に事業を拡大し、現在の年商は9店舗計で23億円を超える。
 同社の経営の原点は、顧客重視のホスピタリティーにあり、地元・船橋を中心に地域住民から根強く支持され、郊外型ベーカリーの成功事例としても注目を集めてきた。
 5年前の2014年からはエキナカ店舗の出店という新たな試みにも着手。事業コンセプトである「ちょっと贅沢、ちょっとおしゃれな食文化提供業」をそれまでの郊外型路面店から、駅の改札内外の店舗まで広げる形で実践し続けている。
 エキナカへの初出店は、2014年にオープンしたJR船橋駅改札内の対面販売の小規模店舗「ピーターパンJr.シャポー船橋店」。オープン当時は人が行き交う混雑した構内で、改札を出る少し手前に設置された小さな店舗の前に、ずらりと並ぶ長い列の様子が注目を集めた。
 「出店の準備はお話を頂いた1〜2年前から着々と行っていましたが、これまでの事業コンセプトをエキナカ店でも同様に伝えていくにはどうすればいいか、社内では随分と議論しましたね」と同社の大橋珠生社長は話す。
 結局、エキナカでは、看板商品である「元気印のメロンパン」の販売に注力する店舗を出すことにした。その理由について大橋社長は「船橋駅はJRの快速が停車し、乗降者数が多く改札構内は通勤時を中心にいつも大変混雑しています。大きな店舗を出店できるほどの広さはなく、また店舗自体は小さくても、周囲に客の列ができることで、駅の乗降者であるJRのお客様へ迷惑をかけるわけにはいきませんでした」と話す。
 そこで路面店とは違う限られたスペースの店の中でできることを模索。
 「当時ちょうど、2012年に頂いた千葉県元気印企業大賞を記念して開発した『元気印のメロンパン』(税込140円)の人気が高まってきていた時だったので、メロンパンの専門店に近いような形を目指しました。工房はなくてもコンベクションオーブンを1台搬入し狭い店舗ですが、少しでも焼きたてを提供できるようにしています」(大橋社長)
 同社はその後、2016年11月に、JR千葉駅構内の改札内に「ペリエ千葉エキナカ店」を出店、2018年2月には船橋駅構内と連結した船橋シャポービル内で駅の改札外に「小麦市場 シャポー船橋店」を出店。そして今年2019年3月にはJR本八幡駅構内で改札を出たすぐ右側に対面販売の「ピーターパンJr.シャポー本八幡店」を出店。そのうち「ペリエ千葉エキナカ店」は、今では路面店も含めた9店舗の中では最も売上高が高くなるまで成長したという。
 客層の傾向としては、路面店では土日の売上が圧倒的に多いが、エキナカでは土日と平日の売上の差がなく安定して売れるため計画生産しやすい。それでもエキナカでは「元気印のメロンパン」「塩バターロール」(税込140円)、「コクうまカレーパン」(税込172円、駅ナカでは税込180円)を不動の3商品として重点的に販売。「本八幡店」は対面販売だがコンベクションオーブンとフライヤーを入れ、「カレーパン」も揚げたてで販売できるようにした。
 またエキナカならではの需要としては「ちょっとした遠方に遊びに行く際のお持たせ品や仕事帰りのおみやげなど『手土産文化』を発掘できた」(大橋社長)という。また新たな「ちょっと贅沢」の提供につながったようだ。

2014年にオープンしたJR船橋駅改札内の対面販売の小規模店舗「ピーターパンJr.シャポー船橋店」
JR千葉駅構内の改札内店舗「ペリエ千葉エキナカ店」
JR本八幡駅構内で改札を出たすぐ右側にある対面販売の店舗「ピーターパンJr.シャポー本八幡店」
ピーターパン石窯パン工房店のレジの様子
人気の「コクうまカレーパン」(税込172円、駅ナカでは税込180円)
「塩バターロール」も人気(税込140円)
お客様の声を聞いてすぐに反映させる

 大橋社長は2016年に、現在会長である創業者で実父の横手和彦氏の跡をつぐ形で同社社長に就任。先代社長同様、ホスピタリティーを重視した経営戦略を実践し、従業員に対しては経営理念の周知を進めている。
 「当店のファンになってくれる方を大切にしています」と同社長は話す。そのため店頭での接客や季節に応じたイベントなどのほか、メールマガジン会員への定期的な情報発信などで、普段から情報の相互交流をしていく事を重視している。また最近は、自社のツイッターを2月から開始するなどSNSでの情報発信も強化。
 「今の社会ではユーザー同士が、情報を共有しながら、必要な情報を集める傾向にあります。当社ではこれまでメール会員への情報発信や特典の提供に力を入れてきましたが、これからはツイッターやフェイスブック、インスタグラムなども合わせて、多方面からの情報発信も強化していきたいと思います」(大橋社長)
 一方で、ここ数年、路面店では、60〜70代の熟年夫婦など年配者層の客も増えてきているという。そのため全世代へ対応可能なアナログでのコミュニケーションツールとしては、原点である「お客様ハガキ」を重視している。
 「お客様ハガキ」は毎日3通ほど届くが、大橋社長が全て目を通し、クレーム(同社では「サンキューコール」と呼ぶ)などで気になるものは直ちに書面を撮影、販売企画スタッフ全員が目を通し、各店長へ一斉送信した上で、社内会議にかける。
 以前、「お客様ハガキ」で、「コッペパンの販売をするスタッフが無表情で怖かった」というクレームがあったときは、全社的に会議し、笑顔での接客を強化していくきっかけとなった。
 「焼きたての商品が出てきた際に、列に並ぶお客様が持つトレーに同じ商品がのっていたら、そのお客様に近寄って声かけとアイコンタクトをし、さりげなくパンを取り替えます。こうした他のベーカリーでも行われているような事でも、行動は同じでも、その根底にあるお客様へのホスピタリティーマインドは当社独自の強いものを持ち続けたいと考えています。皆で経営理念の共有をしていく事ができるよう、従業員一人一人へ面談して話し合うなど、お互いを知る事を強化しています」(大橋社長)
 同社では「人財」教育なしでは、現場でのホスピタリティーの向上もありえないと考えているのだ。

製造スタッフ自らが、笑顔で品出しを行えば、客の注目度もアップ
店内は、常に客が絶えず、活気に溢れている
テラス席では無料コーヒーを飲みながらパンを食べる客の姿が見られる
「お客様ハガキ」は店頭で配布している
木曜日は勉強会を開き、客にもその様子を伝える

 ピーターパンは現在「永続100年100店舗」企業の実現目標を掲げている。
 黎明期において同社は、郊外の路面店の特性を生かした形で数々の試みに挑戦し、客の心を惹きつけ、大きな成長を遂げてきた。しかし今は、利益を上げるだけでなく、従業員が楽しく働きながら、地域社会にも貢献できるような企業を目指している。そしてそれが永続100年企業に繋がる事であると強く考えている。
 同社の事業コンセプトは、パンという比較的低価格の商品の販売を通じ、ほんのちょっとの贅沢を味わってもらいたいという想いを込めたものだった。
 同社の信条である「焼きたて、揚げたて、作りたて」の実現や、テラス席でパンを食べながら飲める無料コーヒーの提供などは、現在は業界内で広く行われるようになってきたが、同社が先駆けて行ってきたことだという。
 商品開発にも積極的に取り組み、入社1年目の社員も商品開発に参加できる。新商品の企画開発を全社的に強化した結果、現在では100種類以上の商品を販売している。
 同社は、エキナカ店以外は、毎週木曜日を定休日としている。実は木曜日は全社的に経営に関する勉強会に取り組んでいるからだ。また毎年5回くらいは全店舗の社員が一堂に会し、想いを共有しお互いを知る機会を設定しているという。
 さらに、こうした事は社内報を店頭にも置いている事から客側にも伝わっている。 「木曜に休まなければならない理由を理解した上で熱狂的なファンでいてくれる方もいます。今後もこうしたファンの方を含めてお客様を大切にしつつ、当社の想いを伝えていければと考えています」(大橋社長)

SHOP DATA
店名:ピーターパン石窯パン工房店
住所:〒273‐0021千葉県船橋市海神3‐24‐14
電話:047‐410‐1021
営業時間:午前7時〜午後8時
定休日:木曜
品揃え:約100品目
スタッフ:平日製造常時13人、販売常時5人、土日製造常時19人、販売常時8人
店舗面積:厨房46坪、売場20坪、テラス約25席
日商:平日80万円、土日160万円



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