小規模パン屋の売り場演出 - ブランスリー電子版


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特集/2019年4月号

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小規模パン屋の売り場演出


小さな売り場でつくり上げた雰囲気を大切にする - ル・ミトロン 神大寺本店
アンティークの八角形のテーブルを陳列台として使用している
「ル・ミトロン 神大寺本店」の外観
オーナーシェフの大場知幸さん
約100種類のパンと菓子が並ぶ店内
外からも見える小窓には小鳥がとまっている小さな盆栽が飾られている
アンティーク家具を用いた売り場づくり

 5坪の売り場で、八角形の大理石の天板が付いたテーブルを、陳列台として使用しているベーカリーがある。神奈川県横浜市の「ル・ミトロン 神大寺本店」だ。
 セルフサービス方式なので、客が動けるスペースがなくてはならないし、アイテム数も、100種類ほどあるので、かなりの陳列場所を確保しなくてはならない。そんななか、同テーブルを陳列台として起用しているのだ。
 同店のオーナーシェフ、大場知幸さんは、「使いやすさで考えると、ベーカリー用に作られたものの方が断然いいのですが、雰囲気を優先して、あえてベーカリー用ではない、アンティーク家具の店などで手に入れたものを使っています」と話す。
 店内全体の雰囲気は、アンティーク調となっている。同テーブルのほかには、3段や2段ある木製のオープンラックや、大人の背丈ほどある、本棚として使われていたような金属製のラックなどがある。金属製のラックには、さびに見えるような塗装を施した。選んできた家具をそのまま使わず、さらにひと手間をかけることによって、店内の雰囲気に統一感を持たせている。
 大場さんは2013年に同店を開業。一昨年は新子安店を、昨年は横浜ランドマークプラザ店を、いずれも市内にオープンさせた。これら2つの販売店も、本店である同店と同じ雰囲気になるよう、アンティーク調の家具を使った内装にした。
 「出店場所が商業施設内だと、什器の材質などに制限があることもありますが、本店のときと同じ施工会社に、同じ雰囲気になるよう、お願いしました。新子安店のパンの陳列台も、ベーカリー用のものではなく、インドで切符台として使用されていた木製の台を手直しして使っていて、独自性のある雰囲気を出しています。お客様に、『こういう雰囲気がル・ミトロンだよね』と言ってもらいたいですね」(大場さん)

店内の装飾は専門家に外注する

 本店の店内は、年に4回ほど、季節ごとに装飾を変えている。装飾する主な場所は、天井に近い場所の壁面にある飾り棚と、店の外からも見える、30センチ四方の小窓だ。
 「販売スタッフなどに任せる手もあるのですが、当店は最初から、装飾を専門とする方に外注しています。私がイメージして、その通りにしてもらうのではなく、自由につくり上げてもらっています。自分のセンスがどうかはわからないですし、専門の方が客観的に見ることで、当店の商品であるパンと、店内の雰囲気を調和させてくれるような装飾ができると思っています」(大場さん)
 取材した3月、小窓には、小鳥がとまっている小さな盆栽が飾ってあった。壁面の飾り棚では、薄暗い店内に映えるように、イルミネーションが施されていた。
 「装飾のテイストは年々変わってきています。最初は、季節感重視でしたが、最近はむしろ、季節感は全面に出さず、さりげなく感じていただけるような装飾になっています。また、今はかなりシンプルになってきていますが、派手にやっていたときもありました。派手にやっていたときは、お客様から話しかけてくれたり、良い悪いは別にしても、かなり反応がありました。開業して6年やってきていますが、似たような装飾はほとんどなく、お客様の反応を楽しみながら、重視するものを変えるなどし、色々試すようにやってきています」(大場さん)



金属製のラックは、さびに見えるような塗装を施し、アンティーク調にしている
店内の什器は、アンティーク調で統一されている
年季の入った天板に並ぶ総菜系のパン
店が成長しても独自の雰囲気を守る

 販売店の分も合わせた商品の製造は、本店の厨房を含め、3カ所で行っている。焼き菓子とサンドイッチ専用の部屋が、本店の厨房と同じ建物内にあり、本店から約50メートル離れた別の建物には、昨年新たに設けた23坪の工場がある。建物の1階に位置する同工場の2階には、2015年にオープンした、パンとスープを提供するカフェ「ル・ミトロン カフェ」がある。
 大場さんは本店を開業した6年前、夫婦が主体となって営業するベーカリーを想定していた。そのため、物件探しでは、5坪の売り場と8坪の厨房が造れるこの場所がちょうどいいとして決めた。
 「夫婦二人で、食べていけたらいいという考えで始めました。しかし、達成までかなりかかると思っていた、日商の目標額が、わずか2週間で達成できてしまい、当初抱いていたイメージとは違う形に成長していきました。しかし、店の成長に伴い、効率を重視する目的でビジネスモデルを変更してしまったら、全く別の店になってしまいますので、本店の小さな売り場と、その中でつくり上げてきた雰囲気を維持するため、足りなくなった製造能力は、別の場所に工場を設けるなどして、カバーするようにしてきました。カフェも、本店の売り場に作るのはスペース的に不可能だったので、別の建物に設けました」(大場さん)
 カフェの店内も、アンティーク調でまとめられており、そのまま本店の売り場に併設されていても何の違和感もないくらい、雰囲気に統一感がある。また、カフェメニューとして、自家製スープを提供しているが、本店で購入したパンを持ち込んで、食べることもできる本店のイートインのような機能も持っている。
 売り場が小さいことに関して、大場さんは、経営者側の都合だという意識を強く持っている。
 「お客様にとって、小さい売り場は、デメリットの方が大きいと思っています。狭くて動きづらく、レジも一台しか置けないので、会計時に待たされることも多くなってしまうからです。これに対して、経営者側としては、固定費の家賃が抑えられるという大きなメリットがあります。ボリュームをつけたり、具を多くしたり、価格をできるだけ抑えたり、などという商品づくりやサービスのやり方は、固定費を安く抑えられている分を、還元しなければという、当然の思いから行っています」(大場さん)

SHOP DATA
店名:ル・ミトロン 神大寺本店
住所:〒221‐0801 神奈川県神奈川区神大寺4-1-2
電話:045‐413‐1430
営業時間:午前7時〜午後5時
定休日:なし
品揃え:100品目
スタッフ:製造常時7〜8人、販売常時2〜3人
店舗面積:売り場5坪、厨房8坪、別棟厨房23坪、焼き菓子とサンドイッチの厨房13坪
日商:平日25万円、土曜、日曜40万円



楽しく買い物ができる空間づくりを深く追求する - ブーランジェリーオンニ
スポットライトが当てられた「こしあんぱん」(税込90円)や「和栗あんぱん」(税込90円)などのあんぱん
京急上大岡駅から徒歩9分の場所にある「ブーランジェリー オンニ」の外観
ブーランジェリーオンニの店主、近賀健太郎さん
飾ってある花などを楽しみに来店

 「花は週替わりなので、毎週楽しみにしてくださるお客様もいらっしゃいます」
 こう話すのは、神奈川県横浜市のブーランジェリーオンニの店主、近賀健太郎さん。
 店内の窓辺には、春の訪れを感じさせる桃の花が活けてある。担当しているのは、近賀さんの妻の希さん。花はレジカウンターとレジ奥にも活けてある。花だけでなく、壁に作り付けの飾り棚に置かれた洋書や絵皿、小物なども、希さんが選んだもので、季節ごとに入れ替えるなどし、雰囲気を変えている。
 「お客様にとって、パン以外のものは、プラスアルファの部分だと思います。ですが、花や本、雑貨など、すべてを含めて当店だと思っています。作るだけではだめで、お客様が楽しく気持ちよく、買い物できるような空間づくりを、接客も含めてできなければいけないと思っています」(近賀さん)
 希さんが花を用意するなど店内の内装を整えるのは、同店の定休日である日曜日を利用している。
 「店の内装に関しては、妻が趣味として自主的にやってくれていて、私も全幅の信頼を寄せています。飾っている雑貨などは、アンティークや手作りのものなど、一点ものがほとんどなので、気に入ったものがあれば、取り合えず手に入れてもらって、使い方は後から考えるようにお願いしています」(近賀さん)
 雑貨収集は、開業する前から行っていたという。時間をかけて集めてきただけあって、飾り棚などの目立つ場所から、袋止めを入れる容器といった細部に至るところまで、巷であまり見ることのない雑貨が用いられている。支払い時に使用する会計トレーも、同店の名が刻印された、オリジナルの木製のもの。紙幣を抑えるための、ペーパーウェイトは、家の形をした小さな瀬戸物だ。
 「お子さんが、このペーパーウェイトに気付いたら、『これ何』って聞くと思うんです。小物一つが、会話の糸口にもなってくれますし、お客様がそれらを見ることによって、少しでも楽しい気持ちになっていただけたら嬉しいです。反対に、自分が客の立場でレストランなどに行って、材料が入っていた段ボールが無造作に置いてあるのを、たまたま目にしてしまったとき、これって嫌だなと思ったことがあります。こうした経験もあるので、お客様がどこをご覧になってもいいように、意識して気を付けるようにしています」(近賀さん)



左は「うぐいすあんぱん」(税込90円)、右は「藻塩あんぱん」(税込90円)
オリジナルの会計トレーと瀬戸物のペーパーウェイト
週替わりの花として桃の花が活けてある
壁面の棚に並ぶ食パンにもスポットライトを当てて目立たせている
「くるみのプチバゲットサンド」(税込320円)などのバゲットサンドは、磁器製の皿にのせると映える
パンの特徴を際立たせる照明

 陳列台は、入り口からレジカウンターに続くように、L字型に配置されている。小さな売り場だが、客がパンを選びながら前進しやすい動線となっている。
 入り口の扉からすぐのところに、トングとトレーが置いてある。セルフサービスでパンを取れるようになっているが、陳列台の奥にスタッフがいるので、大型のものや、長さのあるハード系などは、レジの会計の際に注文しやすさを感じる造りとなっている。
 トングとトレーの隣には、「こしあんぱん」(税込90円)や「和栗あんぱん」(税込90円)などの直径が5センチほどで小ぶりのあんぱんが6種類並ぶ。
 「最初に選んでもらえる位置には、やはり、皆さんが慣れ親しんでいるアイテムであるあんぱんがいいと思って並べています。特に年配の方が結構いらしてくださるので、あんぱんがたくさん揃っていたら、喜んでもらえるかと思っています。ハード系より、あんぱんの方が、見たときにホッとするというか、肩肘はらずにすむような、そういう効果があると思います」(近賀さん)
 店内の壁面や梁には、ダークな色調の木が使われており、照明も全体的に薄暗く設定されている。そのため、それぞれのアイテムはスポットライトで明るく照らし、見やすいようにしている。あんぱんも、スポットライトで照らし、小ぶりでも種類の判別がしやすいような配慮がされている。
 「店内全体を明るくすると、すべてのパンが、白っぽくなってしまうことで、やわらかい食感のものに見えてしまうのではないかと思いました。そのため、ダークな色調で全体をまとめて、ハード系はしっかり、ソフト系はやわらかく、という違いをはっきり感じられる見た目に演出したいと思いました。ですが、暗くて見にくくなってしまっては困りますので、それぞれのアイテムはスポットライトで照らすようにして、買い物してもらいやすいようにしています」(近賀さん)
 食パンは、L字の陳列台ではなく、その奥の壁面に取り付けてある棚に並ぶが、そこにもスポットライトを当てている。
 「食パンだけ離れた場所に置いてあるので、スポットライトが当たっていないと、目に入りにくいと思います。また、初来店のお客様は特に、予約品を保管するために置いているのだと勘違いされてしまうかも知れません。ライトを当てて目立たせることによって、お客様の選択肢に入れてもらえるのだと思っています」(近賀さん)
 陳列台に並ぶパンは、磁器製の皿やホーロー製のバット、木製のボードなどにのっている。
 「ぎっしり並べているので、アイテムによってのせる器を変えることでそれぞれを目立たせるようにしています。どの器に何をのせるかは、販売員の慣れた方に今はほぼお任せしています」(近賀さん)
 「くるみのプチバゲットサンド」(税込320円)などのバゲットサンドは、そのまま陳列すると、埋もれて目立たなくなってしまいがちだが、磁器製の皿にのせると、売れ行きが良くなるという。
 器だけでなく、希さんがカリグラフィーという技法で手書きしているプライスカードも、各アイテムを目立たせるのに欠かせないという。
 「新商品のプライスカードは、その場で簡単に書いてしまうことがありますが、後日カリグラフィーで書いてもらったものに替えると、やはり売れ行きがよくなります」(近賀さん)

SHOP DATA
店名:ブーランジェリーオンニ
住所:〒233−0002 神奈川県横浜市港南区上大岡西3-10-1
電話:045‐367‐8501
定休日:日曜
品揃え:90品目
スタッフ:製造常時2〜3人、販売常時3人
店舗面積:厨房約9坪、売り場(イートインスペース含む)約6坪
日商:平日20万円、土曜40万円

丁寧に均一に作られたパンはシンプルな売場に映える - いのいちベーカリー
「いのいちベーカリー」の売場の様子。対面販売形式を採用し、こじんまりとまとまっている
京王井の頭線・三鷹台駅の改札を出て大通り沿いを歩いて1分もしない場所にある「いのいちベーカリー」
店長の神田恵一郎さん
レジに向かって、あんぱんやメロンパンなどのソフトな菓子パンが一列ずつ並ぶ木製のショーケースがある
木製のショーケースの上に置かれた平台やカゴの中には惣菜パンやハード系の食事パンがある
人気高騰エリアにあるベーカリー

 若者が住みたい街として人気の高い東京・吉祥寺から井の頭公園を抜けると、周囲に閑静な住宅街が広がる中、京王井の頭線・三鷹台駅がある。賑やかな場所ではないが、数軒の商店が大通り沿いに続く駅前の町並みは美しく、井の頭公園近くで緑豊かな場所でもあるため、近年人気が高騰している土地だ。
 そんな三鷹台駅の改札を出て大通り沿いを歩くと1分もしないうちに真ん丸いオレンジ色の看板に「ino1 Bakery」と白抜きで描かれた文字が目に飛び込んでくる。地名である「井の頭一丁目」からとった名前の「いのいちベーカリー」だ。窓越しにほんの少し見える売場の様子と香ばしいパンの香りに惹きつけられ、淡い色の木の引き戸を開けて中に入ると、僅か2坪ながら、こじんまりとまとまった売り場が目に入ってくる。
 同店は老舗ベーカリーであるドンクで9年間修業した神田恵一郎さんが、同様にドンクで修業した妻の仁美さんとともに2011年5月にオープンしたベーカリーだ。以降約8年間、地域の人々に愛され続けている。
 東京・赤羽出身の神田さんはドンク時代に勤務先の店舗に近かった事からこの近辺の地に住み始めたという。
 「郊外の方など、もっと家賃が安い地域もあったと思うのですが、自宅に近く馴染んだ場所であるこの近辺を離れる事は考えられませんでした(神田さん)。
 そのため色々物件を見て、計7坪という必要最小限の広さの小規模の店舗にする事で、開業と店舗運営の費用を抑える事にした。

定番中心の品揃えが常連の心をつかむ

 「売場は小さいですが、お客様が迷わないようにエリア分けはしっかりしています。商品が綺麗に陳列されている状態になっているよう、まめに並べ替えていますね」(神田さん)
 売場は定番を中心に約40品の商品が並び、対面販売形式を採用。 レジに向かって、あんぱんやメロンパンなどのソフトな菓子パンが一列ずつ並ぶ木製のショーケースがあり、その上に置かれた平台やカゴの中には惣菜パンやハード系の食事パン、そしてその後ろにレジが設置されている。レジ側と逆の背面の壁にはロールパンや人気の食パンが置かれた棚も設置。棚の一番下は子供が待合中遊べるおもちゃが置かれ、上の段は可愛らしい雑貨の飾りつけが施されている。
 商品は定番を中心にシンプルに作られたものが多く、季節商品などはあまり出さない。毎日食べて飽きないようなパンを厳選して売場に出していく事で、常連を中心とした客の心をつかみ安定した売り上げを保ってきた。
 神田さんは一緒に働く妻の仁美さんとともに老舗ベーカリーであるドンクへ20歳で入社し、パン製造の仕事に従事した後、独立して同店を構えたのは29歳の時だ。独立の理由は「パン製造の現場の仕事にできる限り長く携わっていたかったから」(神田さん)だ。現在、同店では、製造は神田さんと仁美さんが中心に行う。販売は主にパートスタッフが行うが、売場自体は神田さん達夫婦が考えて作っている。

原価計算女王
原価計算女王
レジ側と逆の背面の壁にはロールパンや人気の食パンが置かれた棚も設置。棚の一番下は子供が待合中遊べるおもちゃがある
可愛らしい雑貨の飾りつけも印象的だ
「クリームパン」(税込150円)
「あんぱん」(税込140円)
人気の「食パン」(一斤税込280円、半斤税込140円)、豆乳仕込みで、しっとりもちもちしている
壁に貼ってある「食パン」についての説明
シンプルな売場のシンプルなパン

 実は同店では基本的には売るためのマーケティングはしない。神田さんも接客中、商品については聞かれたら答えるが、自分から進んで伝えるというような、いわゆるPR活動はしない。たまにSNSで商品の内容を発信するくらいだ。
 「その代わり売場のパンはなるべくわかりやすいように陳列します。そのため一つのパンに多くの種類のフレーバーを入れて複雑化するといった事はなるべくしないようにしています」(神田さん)
 シンプルにわかりやすいパンを作り上げ、売場もそれを反映させてシンプルにわかりやすくする。売場が芝居のステージだとすると主役のパンを盛り立てる感じにしなくてはならないというのが神田さんの考えだ。
 2坪という最小限の広さしかないこの売場の中には、地域住民を喜ばせるものがコンパクトにまとめて作り上げられている。
 神田さんは、パン製造の際に、なるべく焼成後の作業はしないという。限られた労力で効率良く良いものを作る事を考えると、必要な作業ではないと考えたからだ。そうするとインスタ映えするような派手な見た目のパンはあまり作れないが、その分、毎日同じ商品を1品1品丁寧に作って、形を均一にする事を重要視している。
 「流行を追うのではなく、自分が作れるものを、心を込めて、地道に根気良く作っているという感じです」(神田さん)
 商品の種類を増やすよりも生地を改良するなどして、良いものをさらに良いものにしていく事に興味があるのだ。
 「自分にとって、パン生地から離れる生活は考えられない。とにかく作る事が好きなので、売場を派手に飾り付けるといった事はできませんが、お客様には、地道に丁寧に作ったパンを丁寧に並べている様子を見て、当店のパンを買いたいと思って頂ければと思います」(神田さん)

SHOP DATA
店名:いのいちベーカリー
住所:〒181−0001 東京都三鷹市井の頭1-30-22青山店舗1階
電話:0422‐24‐7197
営業時間:午前11時〜午後6時頃
定休日:日曜、月曜、祝日
品揃え:約40品目
スタッフ:製造常時2人(朝のみ3人)、販売常時1人
店舗面積:売場2坪、厨房5坪
日商:平日8万円 土曜9〜10万円

小さな空間で生まれたパンが自分の夢を叶えてくれた - リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー
千葉県船橋市の京成船橋駅から旧市街地の通り沿い付近を歩くと、ベーカリー「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」がある
店長の古宮義和さん
売場の様子。2坪でスペースが小さいので必然的に対面販売形式を採用
右側にサンドイッチやプリンなどを置ける冷蔵のショーケースがある
レジに向かって売場の左側に常温でパンを陳列するショーケースがある
売場の左側には厨房へ続く入り口があるため、一人で売場と厨房を行き来しながらも、売場の隅から隅まで目が届きやすい
用地買収から外れた7坪の土地

 千葉県船橋市の京成船橋駅から「本町通り」と呼ばれる旧市街地の通り沿い付近を歩くと、小さな無人神社がある公園の敷地に入り組んだような形で建つベーカリー「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」がある。
 明るい印象の薄い黄色の壁に濃い緑色の屋根と看板、薄茶色の小さな木製の扉が印象的だ。通りに向かって設置された小さな窓からは、店内の様子が外からぼんやりと見える。童話の中から出てきたような可愛らしい建物だ。
 同店は、約7坪の敷地に建つ2階建てで、1階部分に2坪の売場をもつ。その奥の4坪の空間と2階の一部に厨房、2階の残りの空間は倉庫が占めるつくりだ。
 実はここはもともと「生粋の船橋っ子」である店長の古宮義和さんが生まれ育った実家があった場所だ。以前はもっと広い土地だったが、市の区画整理で土地の一部が用地買収され、この7坪の土地のみが残されたという。

対面販売形式、少量多品種の売場

 限られた土地を利用して設計した店舗だが、店名の「リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー」には「小さなパン屋」と「小さなパンを焼くパン屋」の2つの意味をこめているという。商品のパンは、小さくて可愛らしい店舗にぴったりな、小さめだが可愛らしい形に味を濃縮させたものを揃えた。
 レイアウトは売場が2坪と小さいので必然的に対面販売形式を採用。
 「対面販売だとお客様との距離が近くなるため会話を大事にできるのが良かったですね」(古宮さん)
 レジに向かって売場の左側に常温でパンを陳列するショーケース、右側にサンドイッチやプリンなどを置ける冷蔵のショーケースを設置。ショーケースの上には人気の食パン「ゴーブレット」(税抜290円)やロールパン、ハード系の食事パン、一押しの季節商品などを並べた。
 さらにレジに向かって左横の壁には格子状に仕切られた縦長の棚を設置し、ラスクやクッキーなどの菓子類、船橋の名産品やジャム、パン粉など、パン以外のちょっとした品を陳列。加えてピンポイントで可愛らしい雑貨や絵葉書などのディスプレイを設置。通りに向かって外が見える窓の下には、子供が退屈しないよう気軽に遊べるアンパンマンなどのフィギュアも置いている。
 全体的にコンパクトにまとめた売場だが、売場の左側には厨房へ続く入り口があるため、一人で売場と厨房を行き来しながらも、売場の隅から隅まで目が届きやすい。
 「昼間の販売はパートスタッフの方にお願いしていますが、自分も製造の仕事をしながら売場の把握がしやすいですね。小規模店の売場は自分の目が届きやすいので、人任せではなく、自分が全て責任持って管理できるようにしています。自分の思い通りにしやすいのが醍醐味だと思います」(古宮さん)
 陳列スペースが限られているので、同店では基本的に、少量多品種の販売がモットーだ。そうすると夕方頃に残っている商品が日によって大きく変わるので、来店客との話のネタにもなるという。
 商品が不足しやすい分、いつも同じ商品を買えるわけではないが、様々な商品が季節に合わせて流動的に現れていく様を楽しんでもらいたいとも考えている。
 「真ん中寄りが一番目につくので季節のものや新しいものを入れています。お客様がストレスなく選べるよう並び方には気をつけています」(古宮さん)
 商品を並べる際には大きいものや高さのあるものを後ろに置くなどのほか、違う形や色のものを交互に置くなど、パンのデザインが似たようなものが続かないようにして、売場にメリハリとバランスが出てくるようにもしている。

陳列できるスペースが限られているので、同店では、少量多品種の販売がモットー
ショーケースの上には人気の食パン「ゴーブレット」(税抜290円)やロールパン、ハード系の食事パン、一押しの季節商品などを並べた
レジに向かって左横の壁には格子状に仕切られた縦長の棚を設置し、ラスクやクッキーなどの菓子類、船橋の名産品やジャム、パン粉など、パン以外のちょっとした品を陳列
通りに面した窓の枠のスペースには、子供が退屈しないように、気軽に遊べるアンパンマンなどのフィギュアを置いている
接客も含めて売場を演出する

 また、新作など、客におすすめして積極的に売りたい商品がある場合、ちょっと目立つ皿にのせての陳列や、1〜2行でまとめるポップの短いフレーズを工夫するなどといった事を行う。
 一方で、古宮さんは「一番の売場演出は接客ですね。新作の細かい説明などは接客の中でうまく話すようにしています。大きい売場のように、企画されたコーナー作りなどはできないですが、伝達ゲームではなく、自分で直接説明できる点は魅力です」という。
 古宮さんは、接客も含めて売場の演出といって良いのではと考えている。 
 「お客様が商品について『これは何ですか』と話しかけてくれたらチャンスと考えています。売場の様子だけでは伝えられない商品に関する情報をお客様に伝えられると同時に、一方で、お客様を通じてパンの感想などの情報を得ることもできます」(古宮さん)
 販売スタッフが話していた内容を後で聞いたりする事もある。貴重な情報源だという。
 「たまたま残った7坪の土地から始まった店ですが、結果的に良かったと思いますし、夢を叶えることができたと思います」(古宮さん)

SHOP DATA
店名:リトル・ブレッズ・トゥ・ゴー
住所:〒273−0005千葉県船橋市本町1−21−16
電話:047‐437‐8733
営業時間:午前9時〜午後7時
定休日:火曜、第3月曜
品揃え:約70品目
スタッフ:製造1人、販売1〜2人
店舗面積:売場2坪、厨房(1階)4坪、厨房(2階)4坪
月商:100万円


2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

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