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お店拝見/2014年8月号

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材料を厳選し、自分の手でパンを作る - 365日
オーナーシェフの杉窪章匡さん
「365日」の外観。小田急線・代々木八幡駅徒歩1分の好立地
食のセレクトショップ。職人が選んだ信頼の食材
 「1つ1つの積み重ねが、365日を充実させる」「365日の食の積み重ねが、人の心と体をつくる」といった考えを持つベーカリー「365日(さんびゃくろくじゅうごにち)」。2013年12月、東京・代々木八幡に開店したこの店は、パンのみならず、オリーブオイルや塩、果物、紅茶、さらには食器やカトラリーも販売している「食のセレクトショップ」だ。
 このコンセプトに辿り着いた理由についてオーナーシェフの杉窪章匡さんはこう語った。
 「修業の過程で、ガストロノミーを追求した時期がありました。そこで食材の大切さをよく学んだんです。例えば有機野菜と言われるものでも、生産者によって味が全く違います。良い食材を追い求めながら多くの生産者と知り合い、良い品をつくる生産者から食材を購入することで、いいものだけを置いてあるお店をつくりたいと考えました」
 食品に限らず、店の品は全て杉窪さんのセレクトだ。
 同店はオープン以来、想定を超える人気を博しており、時折小雨の降る取材当日の夕方にも客入りはひっきりなし。6席あるイートインコーナーも満席だ。
 杉窪さんは元々パティシエとして職人の道を歩み、24歳でホテルのシェフパティシエに就任、27歳で渡仏し、1つ星、2つ星のレストランで修業を積む。帰国後、更にパティスリーやブーランジェリーでシェフを務め、2013年に独立。
 同年9月に名古屋のベーカリー「テーラ・テール」、10月に福岡のベーカリー「ブルージャム」などをプロデュースした経歴の持ち主でもある。
 洋菓子を皮きりに様々な食の修業を積んだプロフェッショナルであり、東京・青山のベーカリー、デュヌラルテでは、6年半で年商を4倍にした腕利きの経営者でもある。
 独立後にベーカリーを選択した理由は「すべての食材を厳選し、手作りでやっていける魅力がある」こと。同店は具材のハムやベーコンも自家製だ。
 杉窪さんは生産者との関わりの中で、「東京には生産者の思いを伝える店が必要」と実感し、「365日」を開業した。「消費者の1人としても、いいものを買える場所があったらいいと思う」「生産者の思いを伝えるお店にしたい」「職人にとって、いい材料で手作りできるお店があれば」といった思いが込められている。



「カレーぱん」(税込み240円)。ブランド豚と7種類のハーブ、スパイスで作ったカレーと、レンズ豆のペーストを使用
「クロワッサン」(税込み210円)。カルピスの発酵バターを折り込み、上品な香りが特徴
「カヌレ」(税込み160円)。ブルボンバニラとカルバドスの良い香りがする。小ぶりだが、しっとりとした食感と甘み
「ソンプルサン」(税込み240円)。北海道産小麦粉を使用。吸水率100%でずっしり重みがあり、もっちりとした、食べ応えのある食感。同店オリジナルの人気商品
料理をする感覚でパンを作る
 修業時代の杉窪さんがパティシエを選択した理由に「単価が安く、食べ歩きしやすいので、独学しやすい」という点があった。20歳の時に転職した神戸のパティスリーも、毎週関西中のお店を食べ歩いて見つけた「唯一の抜群においしいお店」。人気店で、職人に対する要求水準も高く、その中で生き残っていくため、杉窪さんは一切の遊びをやめ、多忙極まる仕事の合間を惜しみ書籍での1日3時間の自主勉強と食べ歩きを続けた。
 その研究スタイルは、今も続いている。象徴的なのは「初めて焼き鳥を食べたのは7年前位です」という一言。
 つまり、それまで本業と関係のある菓子、パン、料理だけを軒並み食べ尽くしていたということ。
 そんな杉窪さんがベーカリーでパンを作った経験は、デュヌラルテ初代シェフの元で修業した一年間のみ。ベーカリーのみならず、多数の食と理論を身に付けて独立している。そのため、パティスリー時代から、料理人のつくる洋菓子に興味があったという杉窪さん。料理する感覚での菓子作りを経て、料理をするようにパンをつくるようになったという。
 その作り方は、まず粉の味を見ることから始まる。そして配合を考える。あんぱんやクロワッサンといった定番のメニューでも、同店では小麦粉を軸にゼロからレシピを考案している。
 それについて杉窪さんは「一般的なレシピなら、失敗しないでパンがつくれるでしょう。でも、おいしく作ろうとするとオリジナルの配合になるんです」と話す。



販売ケースの向かいには食器や塩、野菜、オリーブオイルなどの厳選良品が並ぶ
6席のイートインコーナー。コの字型のカウンターの左右が販売ケースとイートインになっていて、真ん中で店員が接客する
料理用具も揃っている。専門雑貨店並のお洒落な品々
マニュアルに頼らない職人の育成
 更に、同店の特徴は、製造でいわゆる発酵時間やミキシング時間のマニュアルを使っていないこと。それについて、「パン職人の仕事は、状況把握、判断、実行、の三部構成だから」と話す。職人が感性を磨けば、生地の状態がいまどうなのか感じ取れるようになる。それが状況の把握。そして、その生地をどのようにどうするかの判断、そして実行。タイマーとマニュアルを用意すれば、職人は状況把握と判断で失敗するリスクを減らすことができる。しかし、実行するだけの職人になってはいいものはつくれないと考え、杉窪さんはタイマーとマニュアルを使用せず、スタッフを育成している。「当店のスタッフに食パンの発酵時間を聞いても答えられないと思います。決まっていないのです。職人の状況把握と判断で作っていますから」。
 同店の職人は、この方法で、半年で1人前になっているという。
 「365日」を杉窪さんは「東京で一番厳しい店」とスタッフ採用面接で語るという。しかし、同店のオープニングスタッフは、現在1人も辞めていない。皆、求人広告などで募って集まった人材だ。
 「入社時にスタッフが持っているモチベーションを店が維持してあげられれば、厳しい職場でも人は辞めない。そう考えています」(杉窪さん)
 杉窪さんの出身であるデュヌラルテは、折込み生地が有名であることから、「365日」の看板製品を「クロワッサン」と見る向きがある。一方で、その評判の高さから、「あんぱん」と考える人もいる。杉窪さんは「全て力作です」と語る。製品はそれぞれ小ぶりで、女性でも一度の食事に複数個のパンを楽しめる量。「パンひとつでお腹一杯にしたい人はあまりいないでしょう」と、杉窪さんはいう。
 今後の夢は、「生産者と繋がり、彼らにいい素材をより多く作ってもらい、日本をいい食材で一杯にする」こと。さらに「それらの素材を加工して食品をつくれる職人を増やすこと」。杉窪社長は、自らを「職人」と考えているが、「経営者でもなければだめですし、両方のバランスを取ることが大事です。できればそれぞれを突き詰めて、更にバランスを取りたいですね」。

店名:365日
住所:〒151-0063
東京都渋谷区富ヶ谷1-6-12
電話:03−6804−7357
営業時間:午前9時〜午後7時
定休日:年中無休
品揃え:パン約50品目、菓子約10品目
スタッフ:販売8人、製造8人
店舗面積:厨房10坪、売場10坪
日商:平日30万、土日祝40万




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