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特集/2013年10月号

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食パン専門店が面白い

日頃食べている食パンの魅力を再発見してほしい - セントル ザ・ベーカリー
東京メトロ・銀座一丁目駅が最寄の「セントル ザ・ベーカリー」。写真右側が食パンのテイクアウト専用売り場、写真左側がサンドイッチなどが食べられるカフェスペースとなっている
ベーカリーシェフの奈良晴之さん。食パン専門の同店で勤務する以前は、東京・渋谷区の姉妹店「ヴィロン」でフランスパンを、東京・千代田区の姉妹店「みんなのぱんや」でコッペパンなど昔ながらのパンを作ってきた
カフェスペースには、客が自由に使える様々なポップアップ式のトースターが20台用意されている
客の目の前でトーストにとろけたラクレットチーズをたっぷりとトッピングする
カフェスペースには、サンドイッチを作る様子が見渡せるオープンキッチンを設置
「こんなにおいしい」と思ってもらえる食パン
 東京・中央区の東京メトロ・銀座一丁目駅からすぐの場所にある「セントル ザ・ベーカリー」は、6月にオープンしたばかりの食パン専門店だ。
 食パンは、「角食パン」「プルマン」「イギリスパン」の3種類のみ。なかでも、北海道小麦を100%使用した「角食パン」は、1本840円という高価にも関わらず、1日に300本ほど売れる人気だ。
 同店の開業を5年ほど前から計画していたというのは、バゲットで有名な「ヴィロン」や、昔ながらのパンを提供する「みんなのぱんや」などのベーカリーを経営する、ル・スティルの西川隆博社長。
 「『こんなに食パンっておいしいんだ』と、日頃食べているものの魅力を再発見してもらいたいと思っています。今、スーパーなどの小売店では、78円で買えるPBの食パンも出てきています。それらと比べれば、1本840円というと高く感じますが、おいしいものを作ろうとすれば、これだけの価格になるのは当然のことです。我々の業界として、消費者に『食パンってそんなもの』と思われていてはいけないと思っています。また、食パンは主食ですから、もらって困るものではありませんので、土産としての需要も十分期待できると思っています」(西川社長)
 店内にある厨房で焼き上げた食パンは、テイクアウトのほか、カフェで楽しむことができる。北欧製の照明や椅子、テーブルなどが備え付けられたカフェは、白、淡い緑と、木目調が基調の明るい空間だ。食パンを食べるイメージの朝の爽やかな空気感が漂う。
 このメインのカフェスペースをさらに奥に進むと、もう一つのカフェスペースがある。こちらは対照的に、落ち着いた色調でまとめられ、書斎のような空間だ。壁に沿うように設置された本棚には、パンに関する貴重な書物がたくさん置かれている。
 「パン好きの方に集まってもらって、パンに関する話をして楽しんでもらえる場になればと思っています」(西川社長)
 カフェで提供する、食パンを使ったメニューは、「食パン2種盛り ジャムセット」(1260円)や「食パン2種盛り バター食べ比べセット」(1050円)など、食パンをシンプルな形で味わうメニューのほか、「フレンチトースト」(1050円)や「クロックムッシュ」(1365円)など、グリル調理したものもある。
 サンドイッチは14種類で、定番のメニューがずらりと揃う。「たまごサンドイッチ」(945円)や「ハムサンドイッチ」(1470円)、「BLTサンドイッチ」(1260円)など、メニュー名から容易に内容が想像できるものばかりだ。
 「食パンのおいしさを伝えることが目的なので、普段食べるような一般的なメニューにしています。こうした分かりやすさがないと、伝わらないと思っているからです」(西川社長)
 サンドイッチは、それぞれ使用するパンが決まっている。「たまごサンドイッチ」や「ハムサンドイッチ」などは温めないので、トーストせずそのまま食べるのが向く「角食パン」を使用。「とんかつサンドイッチ」(1890円)などは、軽く焼いた歯切れの良い「プルマン」を使用。「BLTサンドイッチ」などは、トーストしてさっくりとした食感が楽しめる山型の「イギリスパン」を使用する。
 さらに、サンドする具材の調理にもこだわりがある。例えば、「たまごサンドイッチ」の卵は固ゆでで、細かく潰したものと粗く潰したものを、一定の割合でミックスする。あえるマヨネーズは自家製で、隠し味にサワークリームとハーブを入れる。「ハムサンドイッチ」は、2・5ミリ厚にスライスしたロースハムを3枚重ねる。ハムは、薄くした方が香りがたつが、厚みのある方が味がよくわかるし、食べ応えがある。こうした特徴があることから、薄切りを重ね使いしているのだ。
 「メニューは定番のものですが、いつも食べているサンドイッチとは違う、家庭では再現が難しい味にするために、細かなところまでこだわっています」(西川社長)



「たまごサンドイッチ」(945円)は角食パンを使用。卵は固ゆでで、粗めに潰したものと細かく潰したものをミックスしている
同店のスペシャリテとして開発した「ビフカツサンドイッチ」(6300円)は、A4ランクの黒毛和牛を150グラムも使用したヒレカツを、「プルマン」でサンド
「ハムサンドイッチ」(1470円)は角食パンにロースハムとレタスをサンド。ロースハムはスライスの厚さにこだわり、3枚重ねて使うことにもこだわっている
「イギリスパン」は北米産小麦の粉を使用。カリカリ感とサクサク感が特徴。薄くスライスしてカリカリにトーストすることを勧めている
1番人気の「角食パン」は、北海道産小麦粉「ゆめちから」を使用。しっとり感ともっちり感が強いのが特徴
食パンの食べ方を提案していく場所
 3種類の食パンは、液種と湯種を使って作る。
 「今の時代に合わせて新しく開発した味や製法ではありません。逆に、長年愛され続けているど真ん中の味を追求しています」(西川社長)
 ベーカリーシェフを務めるのは奈良晴之さん。奈良さんはこれまで、姉妹店の「ヴィロン」と「みんなのぱんや」に勤務してきた。フランスパンから昔ながらのパンまで幅広く作ってきた。
 「湯種には、しっとりして、もちもちした食感を出す作用があり、液種には、香りをよくしたり、ふんわり感を出したりする作用があります。当店の食パンは、ハイブリッド式に2つの種のそれぞれの利点が生きています。種の状態を見ながら、そして売れ行きを見ながら、朝から夕方まで焼成を行っていますが、3種類の食パンを毎日、同じ状態に仕上げるのは、難しいですね。食パンだけに絞って、本当のおいしさを追求して作っていくことは、やりがいのある仕事だと思います」(奈良さん)
 オープンしてまだ間もないが、リピーターがついてきたという。
 「『ヴィロン』でバゲットを焼いていたときからですが、パンに合う料理を実際に作れるように日々練習しています。食べ方まで提案できて、初めてお客様にパンを提供できるものだと思っているからです。食パン専門の当店は、食パンの食べ方を提案する場所でもあります。日本人のパン食の大半は、食パンが占めています。お客様ともっとコミュニケーションをとって、逆にどのような食べ方をされているのか、知っていきたいと思っています」(奈良さん)
 日本有数の観光地でもある銀座に佇む同店。日本独自の食文化である食パンの情報発信基地としての役割が、今後期待される。

セントル ザ・ベーカリー/b>
住所:東京都中央区銀座1‐2‐1 東京高速道路紺屋ビル1F
電話:03‐3562‐1016
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:なし
b>品揃え:
食パン3品目、カフェメニューはサンドイッチ14品目など
スタッフ:パン製造4人、パン販売2人、カフェ調理4人、カフェホール4人
店舗面積:厨房13坪(ベーカリー)、13坪(カフェ)、売り場3坪(ベーカリー)、42坪56席(カフェ)
月商:2400万円



「食パンだけでこんなに種類があるの?」 - 食パン工房fluffy
JR辻堂駅西口から徒歩3分の「食パン工房fluffy」
店主の佐藤博さんと妻の貴子さん
午前10時のオープン前の店内。食パンは、オープン時には、熱がとれてスライスできるよう、9時頃までに焼き上げる。下段には「粒あんぱん」(150円)などが並ぶ
あんぱんは、季節限定の「夏みかんあんぱん」(170円)もあり、4種揃う
食パン専門店としての役割が定着してきた
 神奈川県茅ケ崎市の「食パン工房fluffy(フラフィー)」は、2011年12月に開業した食パン専門店だ。
 開業当初は、「食パンしかないんですね」とがっかりされることも少なくなかったが、最近は「こんなにあるの? 選ぶのが大変ね」と、驚かれることの方が増えてきたという。店主の佐藤博さんは、客のこうした反応の変化についてこう話す。
 「食パン専門店というのはやはり珍しいので、開業当初はそうとは思わず来店される方が多かったのでしょうね。今では口コミなどで、事前に専門店だと知った上で来店される方が多いようです。そのため、『食パンだけでこんなに種類があるの?』という意味で驚かれるんだと思います」
 店内に入ると、ガラスのショーケースが1台あり、その上段には、一番人気の「プレミアム食パン」(330円)や「グラハム食パン」(350円)など、ベーシックなタイプの食パンが5〜6種類並ぶ。中段には、「いちじく・くるみパン」(630円、ハーフ315円)など、食パン生地にドライフルーツなどの具材を練り込み、少し小さめの食型に入れて焼き上げたタイプのパンが9種類と、「ブルーベリーデニッシュ風」(550円、ハーフ275円)などのデニッシュタイプの食パンが3種類並ぶ。一変して下段は、「粒あんぱん」(150円)など4種類のあんぱんと、「スコーン」(150円)が並んでいる。このほか、ガラスのショーケースの向かいにある棚に、ジャムや缶詰、「天然酵母のビスコッティ」(270円)などがある。同店の品揃えはこれですべてだ。
 食パンがずらりと並ぶ中、一際目立つ存在となっているあんぱんだが、店舗の以前の借主が、長年地域に愛されていた自家製あんのおいしい和菓子店だったことを受け、作ることにしたという。定番の「粒あんぱん」などのほか、白あんに柑橘系果実の日向夏を合わせて酸味の効いたあんを包んだ「夏みかんあんぱん」(170円)など、季節商品も揃う。佐藤さんは「食パンを買いに来るときのちょっとした楽しみになってくれれば良いと思っています」と話すが、あんぱんだけをまとめ買いしていく客もいるほど、人気が定着してきている。
 取材時は強い雨が降っていたが、午前10時に開店すると、主婦らが途切れなく食パンを求めにきていた。
「当店のお客様のほとんどが、リピーターで、皆さんそれぞれ、お好みの食パンが決まっているようです。『売り切れないうちに』とおっしゃり、開店間もなく買いに来られる方も多いですね。それと、平日は、午後2〜3時頃や夕方にもピークがあります」(佐藤さん)
 特に夕方は、他のベーカリーの袋を下げて来る客も少なくないそうだ。おやつ用は他店で、主食となる食パンは同店で買うということだろう。また、バゲットやクロワッサンの有無を尋ねられることもあり、そんなとき佐藤さんは、近所のほかのベーカリーを紹介しているという。食パン専門店としての存在感が、地域にしっかりと根付いてきているようだ。



1番人気の「プレミアム食パン」(330円、右)と次に人気の「グラハム食パン」(350円、左)。食感はふわふわで、トーストするとクラストが薄くパリッとした食感に
ファンの多い「黒糖食パン」(390円)は、ほのかに甘味と黒糖の香りがする。ハチミツを付けて食べるのが気に入っている客もいるという
子どもに食べさせるために購入する母親が多いという、「わかめチーズパン」(2枚入り150円)と、「ごまちーずパン」(2枚入り150円)
「クランベリーパン」(580円、ハーフ290円)と「くるみとメープルパン」(590円、ハーフ295円)
「黒糖食パン」、「グラハム食パン」、「ごま食パン」の3種類が2切れずつ入った「食パン3種バラエティー」(350円)
お客様に裏切りのないパンを届けたい
 佐藤さんは会社員から転身し、パンのプロ養成学校に通った後、同店を開業した。会社員時代から、パンを食べることが好きで、数多くのベーカリーを回っていたという。
 「トッピングなどが豪華なパンは、見た目に華やかで、食べてもおいしいと思うのですが、次第に飽きがきてしまうんです。自分の気に入りの店でも、通い続けているうちに、そのようなパンは飽きていってしまうのですが、食パンだけは、ずっと飽きずに買い続けていたんです。そこで、自分で店をやるに当たって、食パンだけに的を絞ろう、どこにも負けない食パンを作ろう、と決めました」(佐藤さん)
 同店の食パンは、きめが細かくしっとりとしていて、ふわふわの食感だ。そして、イーストを一切使用せず、ホシノ天然酵母パン種を元種とした自家培養酵母種で発酵をとっている。甘さはほとんどないが、噛むほどに、ほのかにうま味が感じられ、何も付けずに食べても満足できる味だ。
 「食パンは、イーストを使わないと、ふわふわにはなり得ないと思っていました。でも、ホシノ天然酵母パン種には、いくつか種類があるのですが、それぞれの特徴を分析し、それらをブレンドし、使い方を工夫することによって、イーストなしでもふわふわの食感の食パンを作ることができました。また、ブレンドすることで、食感だけでなく、味や風味もより深みが増したと思います」(佐藤さん)
 同店の商品は、食パンだけでなく「スコーン」や「天然酵母のビスコッティ」まで、すべての商品について、同じ酵母で発酵をとって作っている。また、店内には、各商品ごとの主要材料の一覧表が掲示されていて、一目で何が使われているか確認できるようになっている。砂糖は三温糖か黒糖を使用し、塩は海塩を使用。油脂はバターを使い、ショートニングは使わないなどと、佐藤さんなりの材料へのこだわりが示されている。また、デニッシュタイプの食パンは、バターの配合を一般的な使用量の6割に抑えている。一般のデニッシュ食パンとは異なることを表現するために、「ブルーベリーデニッシュ風」と、商品名に「風」を付けた。ちぎったときに油分が手に付かず、食感はバウムクーヘンのようになる。
 こうしたこだわりには、「お客様に裏切りのないパンを届けたい」という佐藤さんの強い思いが込められている。
 「油脂や砂糖などで味付けをしたおいしさに比べ、小麦や酵母が生み出すうま味のおいしさは、伝わるまでに時間はかかると思います。でも、食パンは、体に負担をかけることなく毎日食べ続けていけるものでなければいけません。消費者として自分がパンを食べていたときに、どういうパンが好きなのか、必要なのかと考えた結果が、今の商品となっているんだと思います」(佐藤さん)

食パン工房fluffy
住所:神奈川県茅ケ崎市浜竹2丁目1‐5
電話:0467‐82‐8810
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:月曜、第2第4火曜
品揃え:パン約26品目、菓子約2品目
スタッフ:製造1人、販売1人
店舗面積:厨房約7坪、売り場約3坪


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