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| お店拝見／2024年7月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 地域住民が頼れる店として成長していく - バニヤンツリーベーカリー | |||||||||||||||||||
神奈川県の横浜駅から相鉄線で６駅先の上星川駅から２〜３分歩くと見えてくる、コンクリート打ちっぱなしの４階建てのビル。上星川商店街の通りの角地に立つ同ビル１階に「バニヤンツリーベーカリー」はある。 「当店の始まりは、上星川商店街にパン屋さんがあったら嬉しいという、住民アンケートの結果なんです」 こう話すのは、店主の山内誠さん。アンケートは、住民らによる地域おこしの一環で、同商店街を盛り上げる策を探るために行われた。 山内さんは東京製菓学校を卒業後、市内の菓子店でパティシエとして勤めていたが、同菓子店のパン部門に移ると「やってみると楽しいし、パン生地の感触が気持ちよくて」（山内さん）、パン職人に転向。２０１６年、大手ベーカリーに転職し数カ月経った頃、上星川でベーカリーの開業希望者を募集していることを知り応募した。山内さんが開業者に決定すると、同ビルが着工。その間１年ほどの準備期間を経て、２０１８年４月に開業となった。 ４月に６周年を迎え、周年祭を行い、割引セールや金券プレゼントなどのイベントを行った。周年祭は今回が初めてだ。 「イベント自体はかなりやってきたのですが、ほとんどが商店街全体でやるものに参加する形でしたので、周年祭などの当店単独のイベントは、最近になってからですね。当店の使命かつコンセプトは『まちづくりするパン屋』なので、まずは商店街を盛り上げることを第一に考えています。商店街の集客増が実現すれば、おのずと当店も繁盛するという図式ですね」（山内さん） 自販機の設置や移動販売などで販路を拡大 山内さんは同店の製造のほとんどを一人でこなす傍ら、商店街振興を中心とした地域の活動にも取り組んでいる。その中で、同店のパンの販路拡大を進めている。 約２年前、隣の和田町駅近くの空き店舗内にパンの自販機を設置した。同店のパンを３つほど袋詰めし、５００円のワンコインで販売。約１年前には最寄り駅構内にも自販機を設置し、クロワッサンをラスクに加工した「抹茶チョコラスク」（税込５００円）などの販売を始めた。 「隣駅の自販機は、地元の方が空き店舗の使用を勧めてくださったのがきっけです。当店から少し離れた場所にあるという点で、お客様の新規開拓のきっかけになる効果が期待できます。自販機の周りに当店のチラシなども貼れますしね。パンは当店の閉店後に持って行って入れますので、夜間が主な販売時間になりますね。当店のロスパンなので、お得感のある価格設定にしています。」（山内さん） 自販機以外には不定期で、キッチンカーによる移動販売を３〜４年前から行っている。 「移動販売は、ほかに弁当やドリンクなどのキッチンカー７台と一緒に行っています。商店街のイベント時だけでなく、駅から遠く買い物に不便な場所にある団地の近くなどでも行っています」（山内さん） パンの宅配代行サービスの利用も行っており、一日数件利用者がいる。 「毎月一定の売り上げがあり、買い物に出られない様々な事情のある方がいることを実感しています。今後さらに需要は高まると思っています。利用者は当店に来店されたことのない方が圧倒的に多いですね」（山内さん） | |||||||||||||||||||
現在販売している商品の種類は40〜50。パン以外に、元パティシエの山内さんならではの「おいしいプリン」（税込３２０円）や「エッグタルト」（税込み３５０円）、「抹茶チョコラスク」なども定番人気だ。 パンの一番人気は全粒粉入りの生地でバターを包み焼き上げた「塩パン」（税込２３０円）。続いて２位と３位も、「塩パン」に具をサンドした商品で、２位は地元の魚卵工房の明太子とチーズをサンドした「明太チーズ塩パン」（税込３３０円）、３位はあんとバターをサンドした「あんバター塩パン」（税込３００円）だ。 「『塩パン』が自分でも好きだったので、一番人気にしたいと思っていました」（山内さん） 北海道産バターを使用し、小麦粉を独自にブレンドしてサクサクとした歯切れの良さにこだわった「クロワッサン」（税込２６０円）も、山内さんの自信作だ。 「クロワッサン」よりも折り込むバター量を多く、折り込み回数を増やすことで、よりサクサクに、リッチな味に仕上げた「極みクロワッサン」（税込３５０円）や、「クロワッサン」で作る「クロックムッシュクロワッサン」（税込３６０円）など、クロワッサンの派生商品も作っている。 「クロワッサン」の生地で作るミニクロワッサンを使用したラスクは、ミニクロワッサンにメロンパンのクッキー生地をのせた「メロクロワッサン」（税込５００円）や「抹茶チョコラスク」など４種類揃える。 アイテム数は開業から増える一方だったが数カ月前、10種類ほど減らしたという。 「売り場が煩雑に見え、そのことによって当店の特徴や各商品の魅力が埋もれてしまうようになったからです。当店らしい商品が並ぶようにアイテム数を絞り込むことによって、各商品が際立つようにしたいと思いました。そして各商品のそれぞれのストーリーを、お客様にもっと伝えられるようにしていくべきだと考えたんです」（山内さん） アイテム数を減らした後、売り上げは上がった。 「各商品のファンの方を思うと減らすことに不安はありましたが、結果的になくしても意外と平気なことがわかりました。でも、なくした商品に対して復活のリクエストはいただきます。塩パンを使用した『さばサンド』（税込４７０円）はそれで復活させました。塩パンと具の相性が良かったみたいで、お客様から高評価をいただいたことは嬉しかったですね」（山内さん） 商品開発は地域の学校やスポーツチームなどとコラボして行うことも多く、その都度地域住民に話題を提供してきた。 「パンはどこでも買えるものなので、当店はパンを買うだけでなく、地元の情報発信の場としても頼りにしてもらえるようになりたいですね」（山内さん） SHOP DATA 店名：バニヤンツリーベーカリー 住所：〒２４０−００４２ 神奈川県横浜市保土ヶ谷区上星川３−２−２４ １Ｆ 電話：０４５‐４５９−５７９１ 営業時間：午前10時〜午後６時30分 定休日：日曜、月曜 品揃え：約４０品目 スタッフ：製造常時１〜３人、販売常時１人 店舗面積：売り場約５坪、厨房約10坪 日商：平日６〜７万円、土日祝日約10万円 | |||||||||||||||||||
| この記事の読みどころ | |||||||
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●商店街が行ったアンケートでの「パン屋さんがあったら嬉しい」という声を受けて誕生したベーカリー。
●最寄り駅構内にパンの自販機を設置するなどして、拡販に努める。 ●パンの移動販売や宅配も行い、買い物に出られない人達の需要に応える。 ●バターの折り込み回数を変えた２種類のクロワッサンを販売。 |
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