下町情緒の残る地域に溶け込んだ店 - ブーランジュリー オーヴェルニュ - ブランスリー電子版


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お店拝見/2023年4月号

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下町情緒の残る地域に溶け込んだ店 - ブーランジュリー オーヴェルニュ
オーナーシェフの井上克哉さん
「ブーランジュリー オーヴェルニュ」の外観。パリの街角にある建物のようだ
売り場の様子。中央の台と壁に沿ったL字型の棚に商品が並ぶ
「ショコラ」(税込192円)、「クルミのココット」(税込216円)、「ドライフルーツと木の実のタルト」など、様々パンが並ぶ2段の陳列棚
「粒あんぱん」(税込159円)や「メロンパン」(税込129円)など定番の菓子パンもずらりと並ぶ
感染症対策で入口の扉を一定時間空けて換気を行っていた
本格的なパンと親しみやすい雰囲気

 東京・葛飾区の京成立石駅の北口から徒歩10分ほど、下町情緒のある商店街を抜け、区役所や小・中学校を通り過ぎた角地にある「ブーランジュリー オーヴェルニュ」。外観はサーモンピンク色の外壁と黒い窓枠でフランス・パリの街角にあるような建物だ。ひさしに刻まれた2003年の年号は開業した年だ。同店は今年20周年を迎える。
 店内には、外観で受けた印象通りの「バゲット」(税込259円)や「ノア・レザン(小サイズ)」(税込159円)などのハード系や発酵バター使用の「クロワッサン」(税込169円)などもあれば、「粒あんぱん」(税込159円)や「メロンパン」(税込129円)、「チョココロネ」(税込149円)など定番の菓子パンもずらりと並ぶ。サンドイッチに使用されているパンはソフトなバンズや食パンなどがメインで口当たりがよく食べやすそうだ。バラエティーに富んだ約220種類の品揃えだ。そして値ごろ感があるものばかりで、100円台の商品も多く並ぶ。
 取材で訪れた平日昼前、老若男女で賑わう店内ではこんなやりとりがあった。
「80歳の方にプレゼントしたいんだけど、どんなパンがいいかしら」という客の質問に店員が「私も80歳なんです。歯が悪かったりしたらこちらのようなパンがやわらかくて食べやすいと思いますよ」と笑顔で答えた。
 答えたのはオーナーシェフの井上克哉さんの母で、主な業務は接客や商品の補充などだ。サンドイッチの補充に当たっているときは、「卵がこんなにたっぷりサンドされているのはよそにはないですよ」と言って、客の笑いを誘っていた。
 こうした親しみやすい雰囲気があるからこそ、地域に馴染んだ店として20年近くの間愛され続けてきたのだろう。オーナーシェフの井上さんをはじめ、同店のスタッフは国内外のパンのコンクールで活躍するほどの技術力の高さを持っている。しかしだからといって敷居の高さを感じることなく、日常食としてのパンを買いに来られる店となっている。

人手不足でも豊富な品揃えを維持

 開業時は井上さん一人で製造する規模を想定していたが、わずか数年で製造スタッフが10人ほどの店へと成長。現在は勤続約10年のチーフを筆頭に常時8人のスタッフが製造と販売を担っている。
 「人手不足ぎみで、仕事量から考えるともう一人位いるのが理想ですね。専門学校の生徒数が、近年目立って減少しているので、募集をかけてもなかなか集まりません。それでハローワークを通して2年前から全国の一般の高校にも募集をかけるようにしました。この春から勤務予定の人が一人決まっています」(井上さん)
 昨年10月、同店では初めて外国人の採用も行った。5年前に留学目的で来日したネパール人だ。
 「外国人の採用となると、今までは自分で現地まで行って面接したり雇用条件も別格にしなければならないイメージでしたけど、今回は紹介所の方から連絡が来たんです。少し状況が変わってきましたね。本人としっかり面接して、仕事に対する向き合い方をヒアリングした結果、ある程度仕事内容は限定した方がいいということが分かったので、今してもらっている仕事は、マフィンの製造や販売などです。コンビニでのバイト経験もあるようですし、言葉の問題も特にありません」(井上さん)
 パンの品揃えは以前は300ほどあったが、人手不足が続き、種類を少しずつ減らしたという。しかし現在でも220種類を維持している。
 「以前からパンが冷凍できるという利点を活かしたいと考えていました。それで約10年前、急速冷凍機を導入したんです。それがパンのアイテム数を維持できている一番の理由だと思います」(井上さん)
 急速冷凍が可能な商品は全体の6割ほど。マフィンやブリオッシュ、ビエノワなどの生地を使用した商品だけでなく、ソーセージをのせた総菜パンなども焼成後急速冷凍しているという。
 「今使っている冷凍機は性能上バゲットやクロワッサン、デニッシュには対応できないことになっています。購入してから10年は経っていますからね。最新のものならほとんどが冷凍可能になっていると思うので、買い替えも視野に入れています」(井上さん)
 冷凍不可のバゲットなどのフランスパン生地は長時間冷蔵で扱い、朝すぐに焼成して売り場に出せるようにしている。
 「開店時間の朝7時から焼きたてのバゲットが並ぶ店はなかなかないとお客様に喜んでいただいています」(井上さん)



ブリオッシュ生地をクロワッサン生地で包んだ「ディモンシュ」(税込172円)
発酵バター使用の「クロワッサン」(税込169円)
3月の新商品「ピーチザクザクコロネ」(税込195円)の断面。ザクザク食感のコロネ型のパンにピーチジャムを絞った
値上げせざるを得なくなった

 値ごろ感があることも魅力の一つとされている同店。それもそのはず、20年前の開業からこれまで、1、2度しか値上げをしたことはなかったという。しかし昨年10月、このところの原材料費高騰で値上げに踏み切った。全商品を10円ずつ値上げした。
 「根底には、パンは日常のものなので値段の高いものにはしたくないという思いがあります。他店と比べたら当店は低価格なんですが、今回の10円の値上げでも、値上げ後に店内をふと見ると高いなと思ってしまうんですよね。開業時の価格設定が低くてそれに慣れてきてしまったところがあるかもしれません」(井上さん)
 夏前までには、全商品あと10円ずつ値上げをする予定だ。
 「夏の売り上げが下がる前までには、上げておきたいです。人件費もどんどん上がっていますから、値上げせざるを得ませんね」(井上さん)
 コロナ禍に突入したとき、売り上げが前年比120%となり、それが半年間ほど続いた。製造が追いつかないほどで、午後7時閉店のところ3時頃には売り切れてしまっていたという。営業時間はその後感染対策の意味で6時閉店に繰り上げ、現在に至る。
 「営業時間はコロナ禍以前に戻そうとは思っていません。人手不足の状態で従業員の週休2日を維持していかなければなりませんから、むしろあと一時間繰り上げたいくらいです。ですが、閉店前の1時間は、会社帰りに立ち寄る人などの確かな需要があるので難しいですね。今は定休日なしで営業していますが、今後定休日を作ることも考えています」(井上さん)

SHOP DATA
店名:ブーランジュリー オーヴェルニュ
住所:〒124−0012 東京都葛飾区立石6‐5‐7
電話:03‐3691‐5102
営業時間:午前7時〜午後6時
定休日:なし
品揃え:220品目
スタッフ:製造兼販売常時8人
店舗面積:売り場4・5坪、厨房16・5坪、折り込み室7坪
月商:約1000万円



この記事の読みどころ

●ヨーロッパのパンと日本のパンの自然な共存のポイントは、品質が高いこと。
●急速冷凍を導入することで、人手不足の中でも、パンの品数を維持。
●値上げしないことを旨としてきたが、材料急騰で値上げに踏み切る。
●コロナ禍突入時には売り上げが20%伸びた。




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