ブランジェリー ケン/田崎健一郎/悔しさをばねに作り続けた

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お店拝見/2015年4月号

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悔しさをばねに作り続けた - ブランジェリー ケン
東武東上線・下赤塚駅から徒歩2分の場所にある「ブランジェリー ケン」。外からもたくさんのパンが陳列されている様子がわかる
オーナーシェフの田崎健一郎さん
6坪の売り場には、所狭しとパンが並ぶ。一つひとつにボリュームがあり、それらが積み重なるように陳列されているので迫力がある
人気のベーグルは毎週セールを開催

 東京・板橋区、東武東上線・下赤塚駅の駅前商店街の裏手に位置する「ブランジェリー ケン」。駅から歩いていくと、赤い日除けが目印だ。入り口横に大きな窓ガラスがあり、それに沿うようにパンが陳列されている。陳列されているパンの量は山のようで、外から店の中が見えないほどだ。
 売り場は6坪で、4段の陳列棚が、L字型に配置されている。その陳列棚の端から端まで、パンで埋め尽くされている。パン一つひとつが大きく、実際、「味噌ナッツ」(税抜200円)や「ベリークリームチーズ」(税抜200円)など1日に約40種類出るというベーグルは、1つあたり平均約200グラムもの重量がある。単体でもボリュームのあるベーグルは、さらに3段重ねに陳列されている。その光景は、まるで連なる山脈のようだ。
 同店の営業時間は、午前8時から売り切れまで。夕方7時〜8時頃には、ほとんどの商品が売り切れる。取材日は、税抜200円〜280円のベーグルを、全品150円で提供する「ベーグルセールの日」とあって、ベーグルをまとめ買いする客が大勢いた。山のように陳列していても、瞬く間になくなっていくのだ。
 セールは、毎週曜日ごとに開催している。月曜はベーグル全品、水曜は「バゲット」、木曜は「シリアルクロワッサン」、金曜は「玄米食パン」を、それぞれ特価で販売する。火曜日は定休日なので、土日以外は毎日の開催だ。
 「セールは、売上げよりも客数を増やすことを意識していて、たくさんの方に来店していただきたいと思っています。また、地域に還元するという目的もあります。商店街に近い立地ですし、セールをやることで、街にもっと溶け込んでいけたらいいなと思っています」(オーナーシェフの田崎健一郎さん)
 ベーグルのセールを開催したこの日、小麦粉ベースで200キロを仕込んだ。月曜は50万円近くを売り上げるときもあり、そのほとんどをベーグルが占めるという。



写真手前から「カスクルート ハムトマトモッツァレラ」(税抜320円)、「カスクルート リーフ」(税抜320円)、「カスクルート バンミン」(税抜320円)。重量が240グラム〜280グラムもあり、ボリューム満点
1番人気のベーグル「味噌ナッツ」(税抜200円=左)と2番人気のベーグル「ベリークリームチーズ」(税抜200円=右)。味噌ペーストやクリームチーズなどは、どこを食べても当たるように全体に万遍なく入っている
ドライフルーツやナッツを練り込んだハード系も種類が豊富。「チェリートマトとベリー」(税抜330円)や「ナチュレ オレンジ マンゴー クルミ」(税抜330円)など
ブルーの色が目を引く「クロワッサン キウイ」(税抜200円)。クロワッサン生地にブルーキュラソーを配合
「クロワッサン キウイ」の断面。層がみっちりと詰まっている。キウイとレモン風味のクリームチーズがサンドされている
取材した月曜日は、ベーグル全品をセール価格の税抜150円で提供とあって、まとめ買いの客が大勢いた
ずっしりと重めのパンを焼きたい

 田崎さんは、10年前に同店を開業した。格闘技や演劇の道から、飲食業へ転向。最初はイタリアンや多国籍料理などのレストランに勤務した。フォカッチャなどの食事用のパン作りを任されることが増えていくうちに、「これが自分の仕事なのかな」と思い、パン職人を志すようになった。
 現在販売している「カスクルートバンミン」(税抜320円)は、レストランに勤務していた当時、カンボジア料理を提供するレストランでヒントを得た製品だ。
 たっぷりの野菜や鶏肉などをフランスパンにサンドしたベトナムのバインミーは、今でこそ一般に知られるようになったが、田崎さんは、10数年前から作り続けている。開業するよりも前からだ。ベーグルに関しては20年ほど前から作り続けている。
 「作り始めた当初は、認知度が低く、卸先のカフェにもなかなか定着しませんでした。今までずっと作り続けてきたのは、そのときの悔しさもあるからでしょうか」(田崎さん)
 同店のベーグルは、重いものだと一つ300グラムもの重量がある。ずっしりと重みがあるのは、ベーグルだけではなく、すべての商品がそうだ。「ホワイト食パン」(税抜270円)などの食パンも、ふわふわというよりずっしりとしている。
 「日本のパンの常識からみたら異端ですが、手でつぶしたら、しゅわしゅわって小さくなってしまうのが嫌なんです。食パンは、欧米で売られている、薄くスライスされた食事パンをイメージして召し上がっていただけるといいのかなと思います」(田崎さん)
 また、常連客から「ある有名なベーカリーでフランスパンを買って食べたのだけど、軽くて物足りなかった」と言われたという。
 「いつも重くずっしりとしたものを食べていると、軽いものに戻れなくなるのかなと思います。それだから戦略的に重いパンを作っている、という訳ではありませんが」(田崎さん)

他店と比べると一回り大きいサイズ

 「空腹は不幸、その反対の満腹は、幸福です。そう考えると、ついボリュームを付けてしまいます」(田崎さん)
 価格は低めで、グラム単位で考えると、割安感がさらに際立つ。常連の年配客から「気風がいいね」とよく言われるそうだ。
 「カスクルート バンミン」など、具だくさんでボリュームたっぷりのカスクルートも、税抜320円〜380円と割安感のある価格設定だ。
 「個人的にカスクルートが好きで、もっと多くの人に食べてもらいたいと思っています。でも一般的に高価なイメージや特別感があって、敬遠されがちです。目指すのは、焼きそばパンのような存在です。普段から食べてもらえる商品となるように、特に低価格にこだわっています」(田崎さん)

客の反応を楽しみに商品開発

 「パン作りをしていて最も楽しいと思うことは、お客様の反応を見ることなんです。いい悪いにこだわらず、その反応見たさに、新商品や季節商品などは、ちょっと変わったものも作ってしまいます」(田崎さん)
 年明けに販売した福袋に、普段販売していない変わり種のベーグルを入れた。
 「正月を意識して作ったのですが、アンチョビとハーブを練り込んだクリームチーズを巻き込んで、ダッチ生地とおせち料理のゴマメをトッピングしたベーグルと、紅白の生地で作ったベーグルです。『ゴマメのトッピングには驚いた』という人が多かったですね。インターネットの書き込みでも、お客様同士で、商品について盛り上がってくださることもあります。当店の商品が話の種になってくれるのは、嬉しく思います」(田崎さん)
 マスコミで度々取り上げられるという「クロワッサン キウイ」(税抜200円)は、ブルーキュラソーを生地に練り込んで焼き上げた、珍しい青い色のクロワッサンだ。
 こうした豊富で絶えない話題性もあって、年々遠方からの客も増えてきている。平日より低かった土日の売上げが、ここ数年で10倍になった。遠方からの客が、土日の売上げを増やしたのだ。
 週末に迫ったバレンタインに向けてすでに4種類のパンと菓子が販売されていた。しかし田崎さんは、「お客様は、まだ満足していないんじゃないかな。まだまだ、ほかにももっと作っていきますよ」と意気込んでいた。

SHOP DATA
店名:ブランジェリー ケン
住所:〒175‐0092 東京都板橋区赤塚2‐2‐17
電話:03‐5383‐2216
営業時間:午前8時〜売り切れまで
定休日:火曜
品揃え:200品目
スタッフ:製造4人、販売1〜2人
店舗面積:厨房約10坪、売り場約6坪



この記事の読みどころ

●セールにははっきりとした目的が必要だ。
●食パンは、欧米のハード系のパンを薄くスライスしたものをイメージして作っている。
●客の反応を見るのが楽しくて、新商品は、すこし変わったものを出す。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。





原価計算女王
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