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| 連載／2022年11月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| パンの品質劣化について、常温の場合と冷凍の場合とを比較してみる。 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(65) | ||||
パンの品質維持の観点から考えると、消費者には、パンに限らず食品を冷凍することに対する根強い抵抗感があって、「常温＝フレッシュ」「冷凍＝品質劣化」という容易には拭えない既成概念があることが、「パンは冷凍するより常温で扱う方が品質を維持できる度合いが高い」という認識に繋がっていると考えられます。 ここで、通販のパンの注文を受けてパンを焼き上げて発送し、翌日に注文主に届いた時点を想定し、この状況において、常温でパンを扱った場合と、冷凍でパンを扱った場合について考えてみましょう。 仮に、翌日に注文主に届いた時点を、パンの焼き上がりから24時間が経った時点と仮定してみましょう。 常温発送で扱った場合は、時間の経過に比例して品質は緩やかに落ちていくでしょう（比例曲線の形状や傾きはパンの種類や常温で扱う際の様々な条件によって変わってくるのでここでは問題にしません）。ですので、24時間立った時点のパンの状態は、焼き上がりの時点から、おそらく正比例に近い形で、徐々に品質劣化が進んでいる経過点と捉えることができるでしょう。 一方、パンが焼き上がってから冷凍して、冷凍便を使って発送した場合、到着時の24時間経過時までの品質劣化曲線の形状は、常温便で発送した場合とは、まったく異なるでしょう。すなわち、パンを凍結させた際に一定程度品質劣化が進み、24時間後に解凍する際にも一定程度品質劣化が起こるものと考えられます。そして、凍結時と解凍時以外の部分の品質劣化曲線は、常温の場合と比べて、比較にならないほど緩やかであると考えられます。ひょっとしたらほとんど横ばいかも知れません。 今回の本誌のアンケートで、パンの常温発送に多くの支持が集まった最も大きな理由は、パンを凍結させる際の品質劣化幅とパンを解凍する際の品質劣化幅の合計が、常温発送で翌日届いた時点（パンの焼き上がりから24時間経った時点）までの品質劣化の幅より大きいと認識している人が多いからだとは言えないでしょうか。 ここは私の感覚的な判断ですが、おそらくパンの焼き上がりから３日程度経った時点で、この方法で比較した品質劣化の幅が、冷凍よりも常温の方が大きくなると認識している人が多数派になるのではないかと思います。ひょっとしたら２日経った時点かも知れません。 しかし、特にコロナ禍に入ってから、パン専門の通販モールや、独自にパンの通販を行うベーカリーに取材を進めてきた過程で、パン凍結時の品質劣化幅とパン解凍時の品質劣化幅は、以前に比べてはるかに小さくなっていることが見て取れました。 ある冷凍機器メーカーは、パンを粗熱を取らないまま、窯から出てすぐに凍結する技術を使えば、窯から出て粗熱を取った状態のパンより品質のいい状態を長期間維持できると主張しています。この主張に沿って考えれば、解凍が理想的な状態でできれば、窯から出て粗熱を取った状態と同等か、それ以上の品質のパンが、数カ月に及ぶ長い期間にわたって得られるということになります。 もともと家庭の主婦たちは、一回に食べ切れる以上の量のパンを購入して、家庭の冷蔵庫の冷凍室で冷凍保存する習慣があることも考え併せれば、通販のパンの冷凍便へのシフトは、今後さらに加速することが予想されます。（ＲＯ） | ||||
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