パン作る喜び。すべてのパンに全力注ぐ - バック ストゥーべ ツォップ - ブランスリー電子版


ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
お店拝見/2001年5月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


パン作る喜び。すべてのパンに全力注ぐ - バック ストゥーべ ツォップ

やや暗い店内には、温かい光を浴びた数多くのパンが並ぶ。
Backstube Zopf―パン焼き小屋ツォップ―は、店長の伊原靖友さん(36)とりえ夫人が売場と製造スペースを全面改装し、昨年11月にリニューアルオープンした。
ベーカリーの店舗としては異例の、外部の光をかなり遮断した造り。やや暗めの店内に、ダウンライトなどに照らし出された数々のパンが並び、りえ夫人の明るく大きな声が響く。
伊原店長は商品開発に熱心で、品揃えはおよそ200品目。食パンだけでも16種類ある。
「すべてのパンがおいしい」と評判だ。

千葉県松戸市小金原2-14-3
電話047-343-3003
営業時間 午前6時30分〜午後6時
定休日 木曜、第3水曜



褐色の店内に、暖かい光を浴びたパンが並ぶ


ドアを開けると、年代を感じさせる褐色の壁や床をバックに、暖かな照明を浴びた数多くのパンがいっせいに目に飛び込んでくる。
リニューアルに伴ってパンの品揃えをおよそ50品目増やし、現在は約200品目のパンを製造、1日150アイテム程度が店頭に並ぶ。
揚げ色をかなり濃くつけたカレーパン(120円)は、自家製のカレーフィリングを包んで作る1日300個限定の商品。
表面の「パリパリ感」を出すために、カレーパン用のパン粉専用のパンを焼く。カレーフィリングを包んだ状態で低温で保存、およそ40個ずつホイロを出し、1回に6個くらいずつ揚げて店頭に出す。
「お昼時は、カレーパン専門店みたいな状態になります」と伊原店長は苦笑い。注文を受けてから揚げることもかなり多いという。
「フロッケンセサム」は、ライ麦粉をおよそ70%配合したパンだが、くるみとグリーンレーズンがたっぷりと入っていて、ライ麦パンを食べ慣れていない人でも比較的食べやすい。薄いスライス3枚入りも販売している。
あんパンは小ぶりで1個50円。品揃えは、こしあん、小倉あん、ゴマあんなど5品目。春は「さくらあんパン」が加わり6種類になる。1日1500個限定。
ベーグルもプレーン、ブルーベリー、チョコ、オレンジなど8アイテムと、種類が豊富だ。
こうした商品のひとつひとつに伊原店長の思いがこもっている。
「パン生地が『生きているもの』の力で膨らむところに底知れぬ魅力を感じます。微妙な条件の差でいろいろな反応を示します。同じ品質のパンを作ろうと思うと、毎日ちょっとずつ違うことしなければなりません」と伊原店長。



新商品の試作は、毎日の製造スケジュールの合間に行う

「ルヴァン・カンパーニュ」を商品化するにあたっては、使用する種を何から起こすかについて考え抜いた。いちじく、あんず、山芋、いちご、米、レーズンなど20種類の材料を試してみた。材料ごとに、出来上がったパンの酸味、甘みに違いが出た。
「結局、グリーンレーズンから起こした種を使うことにしました。比較的酸味が弱く、ウチのお客様が最も好む、と判断したんです。自分としては酸味が強い方が好きなんですけれど」と伊原店長はいう。
こうした商品開発のための試作を、伊原店長は、毎日の製造スケジュールの谷間にうまく組み込んでいく。
「パンは発酵する時間があるので、うまくやれば忙しい状態でも、新商品の試作は充分できますよ」(伊原店長)。
ライ麦パンのサワー種は、旅行に行く時も持っていく。
「蔵が変われば酵母も変わるといいます。粉を多めに加えて、ソボロ状にしておけば、かなりの期間もつのですが、違う場所にサワー種を持っていった時にどんな反応を示すかに興味があるんです」と伊原店長は目を輝かせる。



自分たちの感性が受け入れてもらえるか不安だった

店内はやや暗めで、独特の雰囲気


ベーカリーとしては一風変わった外観の
Backstube Zopf


入り口の左手に、パンを盛った籠が置いてある。外壁にはパンのイラストも。
Backstube Zopfの売場には大きな窓がない。床面と壁面、天井などは、褐色に塗った木材がはられ、「歴史」を感じさせる演出だ。ドアを開けると店内は「別空間」。
やや暗めの店内で、暖色系のダウンライトなどを多用し、所狭しと並ぶパンを照らし出す。同店のパンは、「舞台で演じる大勢の役者たち」のようだ。
内装は伊原夫人のりえさんが担当した。3種類の木材からすべて作り上げた完全オーダーメイド。業者に理解してもらうために紙製の模型も作った。4件目の業者がやっと引き受けてくれた。床と壁に使用する木材にはステイン剤を塗った。
「実は店舗の改装には、かなりの勇気が要ったんです」とりえ夫人は打ち明ける。
年配の馴染み客が、果たして受け入れてくれるかが心配だったという。案の定「入りづらい」「こんなのパン屋じゃない」などの声が上がった。
「自分たちの感性を理解してもらいたい」との思いから、りえ夫人は積極的に年配の馴染み客に話し掛けることに努めた。 
「若い人だったら、こういう雰囲気の店に親しんでいるでしょうし、好奇心もあるでしょうから、抵抗なく入れると思ったのですが、年配の人にはちょっと抵抗があるのでは、と最初はかなり不安でした」(りえ夫人)。
結果は吉と出た。改装後は、「来店者数が約3割増え、滞留時間も長くなった」(伊原店長)のだ。「改装後の内装に文句を言った人ほどよく来てくれるようになりました」(りえ夫人)。

パンのおいしい食べ方を提案したい。パンと料理とワインなどでパーティーも

オープンサンドイッチの具材の製造もりえ夫人が担当している。朝から作り始める様々な具材をピタパンなどに詰めたオープンサンドは、昼にいっせいに店頭に並ぶ。レジの脇に、サンドイッチ製造用のキッチンを設置。
具材の調理には、パンを焼くオーブンも使う。「匂いが残ることもあるので、主人はすこし嫌がりますが、とても便利ですよ」とりえ夫人。
オープンサンドの品揃えは、6種類のきのこが入った「キノコのピタ」(150円)、「ベーグルサンド」など常時7種類。
食材の調達に市場にも出向く。出入りの業者を通してだけでは、手に入らない材料も多いのだそうだ。 りえ夫人が「こはだのマリネ」など、様々な総菜を開発すると、それに合うパンを伊原店長が考える。
伊原店長は「パンの食べ方をもっと提案したいですね」と話す。月に1回の頻度で、定休日の前日の閉店後にパンと料理とワインなどを囲んでのパーティーも行っている。現在は、業者などを招いているが、近く顧客を招待して開く計画だ。
将来的にはパンのある食卓を提供する店も開きたいと、伊原夫妻は考えている。

毎月25日過ぎは売上が伸びる
Backstube Zopfは、JR北小金駅からバスでおよそ15分の距離。周りには、団地を含めて住宅街が広がる。同じ商圏にベーカリーが他に6件と、かなりの激戦区だ。1961年、伊原店長の父が東京で創業した。1976年に現在の場所に移転。伊原店長は1987年から父親とともにパン作りに励んでいる。
日商は、20〜25万円。売り場面積約6坪、製造スペースが約15坪。製造スタッフは、伊原店長、伊原店長の父親を含めて4人。販売は、平日が3人、土日が4人の体制だ。客単価は800~1000円と高い。多くの人の給料日である25日を過ぎた時期は、売上げが高くなるという。

黒ゴマの香ばしさともちもち感
ゴマの角(つの)パン
粉は内麦粉、酵母は自家製酵母を使用。黒ゴマの香ばしさと、もちもちとした食感が特徴。バックス トゥーベ ツォップの人気商品のひとつ。
【中種配合%】
内麦粉(紅=前田食品)……50
液種(自家製酵母)…………10
水…………………………15
【工程】ミキシングL3分、捏ね上げ温度28度C、発酵12時間
【本捏配合%】
内麦粉(紅)…………………50
中種………………………全量
塩(ゲランドの塩)……………2
砂糖(キビ糖)………………3
無塩バター………………0・5
水…………………………45
黒ゴマ………………………20
【工程】ミキシングL5分(バター投入)M5分(黒ゴマ投入)L1分、捏ね上げ温度28度C、発酵1時間30分、分割80グラム、ベンチタイム30分、成形→バターロールの要領で、しかし、バターロールよりもしっかりと生地をしめながら、巻く。ホイロ35度C85%45分、焼成上火230度C下火220度C17〜18分(スチーム注入、焼き上がり2分前にダンパーを開く)
※液種は、干しぶどう100グラム、お湯300cc、砂糖10グラムを混ぜ合わせ、室温で、1週間程度置く。1日1回かき混ぜる。ぶどうから泡が出て、指でつぶれるようになったらOK.
※ホイロは若めに。

内麦粉を配合したハードトースト
ハードトースト
【配合%】
フランスパン用粉(リスドオル)………80
内麦粉(紅)…………………20
塩(ゲランドの塩)……………………2
モルト(ユーロモルト)…………………1
ドライイースト………………………0・8
BBJ………………………………0・1
水……………………………………65
【工程】ミキシングL2分、捏ね上げ温度20度C、発酵4時間30分(3時間30分の時点でパンチ)、分割230グラム×2、ベンチタイム1時間、成形→軽く2つ折にして食型に入れる。ホイロ35度C80%30分、焼成上火210度C下火230度C35分(スチーム注入)
※ホイロ後、上面に溶かしバターの上澄みを塗る。

昼に出すオープンサンドが人気
キノコのピタ
ハーフカットのピタパンにキノコのオリーブ焼きを詰めたサンドイッチ。昼に出すオープンサンドの中で1番人気の商品。オープンサンドは、この他に30アイテムあり、基本的に朝から具材を作り始める。
キノコのオリーブ焼きの作り方は次の通り。
(1)▼しいたけ▼えのき茸▼ホワイトマッシュルーム▼しめじ▼マイタケ▼ブラウンマッシュルーム、の6種類のキノコをそれぞれ小切りに(スライス)し、鉄板に広げる(2)[1]に、にんにくスライスをのせる(3)[2]の上からオリーブオイル、塩、コショウをまんべんなくかけ(バターを少量のせてもいい)、250度Cのオーブンで15分間焼く(焼いている途中で1回よく混ぜ合わせる)(4)[3]を冷蔵庫で冷やす(一晩たったものがおいしい、冷蔵庫で1週間保存可。レモンをふってもおいしい)(5)半分にカットしたピタパンの内側に無塩バターを塗り、レタスを敷く(6)少量のレタスの千切りを底に敷き、キノコのオリーブ焼きを入れる(7)レモンスライスを添えて出来上がり。

店内各所に様々な工夫を凝らす


店内には、石臼が設置され、常に国産小麦を挽いている。できた全粒粉は、「ルヴァン・感パーニュに使用する。

残ったパンを、インテリアとして、壁面の棚に並べたり、特注の金属製フックにのせたりしている。これらのパンは、顧客が、自分がほしいパンを店員に伝える時の道具にもなる。ほしいパンが店頭にない時に「このパン」と言って指差せば、すぐにわかるというわけだ。

本格的ライ麦パン 3枚スライスセットが人気
フロッケンセサム
【前処理配合%】
グラハム粉………………………………………5
ライフレーク……………………………………20
塩……………………………………………0・3
熱湯…………………………………………25
【工程】ヘラで全材料を混ぜ合わせる
【本捏配合%】
フランパン用粉(リスドオル)……………………30
ライ麦粉(キリン細)………………………………20
前処理済み材料……………………………全量
サワー種………………………………………45
生イースト……………………………………0・2
塩……………………………………………1・8
水……………………………………………35
くるみ(ロースト)………………………………20
サルタナレーズン……………………………20
グリーンレーズン………………………………20
【工程】ミキシングL3分(前処理済み材料投入)L3分(くるみ、レーズン投入)L1分、捏ね上げ温度28度C、分割600グラム×2、成形→たわら型に成形して白ゴマをまぶした生地2つを、縦に並べて(直線上に)、長めのワンローフ型に入れて、ふたをする。ホイロ35度C85%1時間30分、焼成上火200度C下火200度C(スチーム注入)
※本捏ねで、前処理した材料は冷めてから投入する。
※捏ね上がった生地はダレた感じになる。
※焼成時の蒸気は、最初5秒間、30分後に再度5秒間注入する。
※焼き上がると上面にひび割れが入っているが、問題ない。
[サワー種の作り方](1)粗挽きのライ麦粉100グラムと30度Cのぬるま湯100グラムをよく混ぜ合わせ、穴のあいたラップをかぶせる(2)[1]を温かいところに1日置く(3)[2]を10グラムとって30度Cのぬるま湯80グラムとよく混ぜ合わせる(4)[3]に粗挽きのライ麦粉100グラムを加えて、暖かい場所に1日置く(5)[3][4]の工程を1週間繰り返す


2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら

読んでほしい記事

  1. コロナ禍を経て辿り着いた会話を楽しむ対面販売 - hnn
  2. 消費者はパン屋選びにSNSをどう使っているか? - 消費者アンケート
  3. ベーカリーの販促はSNSで決まり