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| 「ビーントゥバー」のコンセプトについて語る小田洋子社長 |
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| 「カカオポッド」と呼ばれるカカオの実 |
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| 発酵工程と乾燥工程を経て出来たカカオ豆の製品 |
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| カカオの実の部分を粉末にしたものは「カカオパルプパウダー」と呼ばれ、新たな可能性が注目されている |
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カカオ豆の栽培からチョコレートバーの製造までを一貫して行う「ビーントゥバー」(Bean to Bar)のコンセプトを取り入れたチョコレートが人気を博している。今回は、カカオ豆を中心に、輸入販売などを手掛け、「ビーントゥバー」の日本での普及に奮闘するカリフ・ジャポンの小田洋子社長に話を聞いた。
「ビーントゥバー」の価値を伝えていく―――「ビーントゥバー」とはどのような概念ですか。
小田 基本的には、カカオ豆からチョコレートの製造までの全工程を一貫して行う製造方法と、その結果得られるチョコレート製品のことを指します。この新しい領域に携わる人達は、困窮するカカオ豆農家を支援し、地域社会を豊かにする事を目的にSDGsに取り組み、可能な限り自然を重視した製品作りに挑んでいます。
カカオは、その実を収穫し、豆の部分を取り出して、発酵工程と乾燥工程を経たものがカカオ豆として出荷されます。さらに、カカオ豆を焙煎して粉砕し、外皮を取り除いたカカオニブとして出荷されるものもあります。これは、カカオ豆からカカオニブに加工する設備を持っていない中小の最終加工業者のためのものです。
カカオ豆やカカオニブなどの味や品質は、カカオ豆の種類、その産地の生育環境や発酵方法によって大きく変わります。ワインと同じです。チョコレートの最終加工業者は、こうした違いを見極め、他にはない特徴をもったチョコレート製品を作ろうとしのぎを削っています。
―――カカオニブの状態からどのような工程を経てチョコレート製品になるのでしょうか。
小田 カカオニブから作ったカカオマスに砂糖やミルクパウダーなどを加えて混ぜ、コンチングマシンで長時間練って滑らかな質感を持たせ、テンパリングを施したあと、型に流し込むなどして、冷やし固めます。
―――カカオ豆を取り出した後のカカオの実はどのように処理されますか?
小田 以前は廃棄したり、作物の肥料として使用していたのですが、カカオの実全体を有効利用する試みが進んでいます。カカオは果物で、カカオボッドと呼ばれる大きな実がカカオの木に実ります。
これまでは、中にたくさん入ったカカオ豆を取り出し、発酵・乾燥させたものだけを商品として出荷していましたが、外側の皮の部分やその下にある果肉の部分も商品化しようという取り組みが進んでいます。何故なら、抗菌作用があるポリフェノールなどの人間の体に良い効果をもたらす自然からの贈り物が、カカオ豆よりも多く含まれている事が分かってきたからです。
果肉の部分はパウダーにして、パンや菓子への練り込み用素材として使えます。皮の部分にも有用な栄養成分が数多く含まれていて、健康食品の素材として有望です。
日本でのカカオ栽培を視野に農家と交渉―――今年はカカオ豆が不作だと聞きました。
小田 今年は世界的にカカオ豆が不作で、日本に入ってくる量もかなり減ってしまいました。ガーナやコートジボワールなどが特に不作で、乾燥が進み熱帯雨林が少なくなっているとも言われています。今後、不安定な状況が続くのではないかと心配しています。
―――今後の見通しはどうですか。
小田 気候変動に対応できる新しい品種と栽培方法が開発され、新たな産地が台頭してくる希望が少し見えてきました。今までの産地と新規の産地が、全体としてバランスが取れればいいなと思っています。
また、私たちは現在、日本でのカカオ栽培の取り組みの準備をしています。沖縄や小笠原などで栽培することができないかと農家の方々と話をしているところです。先日、JAの方達にご協力をいただき、日本の「ビーントゥバー」のチョコレート専門家の方々を連れて、小笠原の農家を訪ね、カカオ栽培の可能性について色々な話し合いをしてきました。
日本での生産量がどれくらいまでになるかはまだ分かりませんが、当面は年間5トンのカカオ豆の生産を目指したいと思っています。「ビーントゥバー」のテーマで私たちと関わっている作り手の方々が使うカカオ豆の一部が賄えればいいなと思っています。世界に誇れる品質を目指して、挑戦していきたいですね。
さらには、こうした人たちが集まって、カカオ豆の生産からチョコレートの最終製品が出来るまでの工程における様々なことを勉強していけたらと思っています。カカオ豆は、発酵のコントロールが必要な発酵食品なのです。
実はチョコレート生産の世界では、製造の各工程で、製品の味や品質が決まっていくメカニズムが十分に解明されていません。こうしたことも皆で研究していけたらいいなと思っています。
―――「ビーントゥバー」の取り組みは今後どのように展開していきますか。
小田 日本で栽培したカカオ豆を私たちがすべて買い取るという形で、カカオ豆の生産農家の収入を保証していくことを考えています。
そして農家の人達やチョコレート加工業者の人達との関わりの中で得た「ビーントゥバー」のノウハウをフィードバックする形で、私が会長を務める系列会社のネクストが販売しているコンチングマシンなどのチョコレートの製造機械に改良を加えていけたらいいなと考えています。
ベーカリーにとっての「ビーントゥバー」―――ベーカリーで「ビーントゥバー」を取り入れるための提案は何かありますか。
小田 カカオの実をパウダーに加工した素材をパン生地や焼き菓子の生地に練り込めば、食物繊維を多く含んだ話題性のある新しい健康志向のパンや焼き菓子として売り出せるのではないかと思っています。
パンの革命は、それを主食とするヨーロッパなどの本場で起こっています。
コロナ禍後のフランスのパン屋さんを訪ねる機会がありました。フランスのパン屋さんの売り場構成は、「パン、焼き菓子、サンドイッチ」が基本になっています。
「ブーランジェリー」と呼ばれる、手づくりしたパンを常に焼きたてで提供することを目指している店舗では、多様な国外からの食文化が入ってくる中で、作る商品に工夫をこらしています。
使う素材にBIOを取り入れ、体に良い自然の物を提供するパン屋さんもあります。焼きたて、作りたてを心掛ける中で、一部スクラッチの製品を自家製のホイロ後冷凍生地から作るパンに置き替えたり、低温長時間発酵を取り入れたりもしています。そして、経営を支える売り上げの確保のために、ランチのサンドイッチやピザといった商品に力を入れていました。テイクアウトのこれらの商品に、その提供の仕方も含めて様々な工夫をこらして、利益確保に務めていました。
日本は、焼き菓子をやられるパン屋さんは少ないですし、サンドイッチも商品の一部として陳列されているケースが圧倒的に多いと思います。パンを買う楽しみを、そのライブ感のある提供の仕方を工夫することで、演出すると良いのではないかと思います。