移動販売と店舗販売を夫婦で - パン屋 りょう - ブランスリー電子版


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お店拝見/2021年1月号

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移動販売と店舗販売を夫婦で - パン屋 りょう
店主の岩佐遼太郎さんと妻の千香子さん
「パン屋 りょう」の外観。帽子を被った男の子のイラストの看板は、岩佐さんの父が製作した。イラストの原案は千香子さん
店内は白と木目が基調で明るい雰囲気。陳列台は、可動式木製ワゴンで掃除がしやすいようになっている
移動販売時のパンの陳列の様子
試食アンケートの結果から商品開発

 宮崎県北部に位置する東臼杵郡美郷町の「パン屋 りょう」は、10月3日にオープンしたばかりの新店だ。週4日は店舗販売、週2日は移動販売を行う。
 「周辺は温泉施設やダム湖、レジャー施設などがありますが、自然いっぱいの山の中です。鹿とよく遭遇するくらいなんですよ」
 こう話すのは店主の岩佐遼太郎さん。岩佐さんは隣の延岡市出身だが、社会人になって大阪や福岡で働いた。そして30代半ばで帰郷し、同店を開業した。
 製造はパン職人である妻の千香子さんと2人で行っているが、移動販売も2人だけでこなす。移動販売は現在、役場やカフェ、直売所など合計5カ所で行っている。店舗から30キロ圏内と、やや広範囲で、美郷町、延岡市、日向市と3つの市と町に亘る。これらは夫婦それぞれの出身地と、現在の居住地と関係のあるエリアだ。
 「私たちの仕事はパンを売るだけではないと思っているので、お客様と顔を合わせたり、話をしたりすることを大事にしています。妻は美郷町の出身なので、美郷町役場での販売時は妻が必ず販売に立つようにしています。妻はもちろん、町の方々も喜んでくださるようで、嬉しく思っています」(岩佐さん)
 「お客様に喜んでもらいたい」(岩佐さん)と、新製品は毎週のように作るようにしているが、地元産の豊富な食材があってこそだという。
 「食品業者に限らず農産物の生産者の方々とも、直接のつながりがあります。農家さんの好意で、旬の食材をいただくこともあります。食材が豊富かつ新鮮なので、食材ありきで新製品を作っていくことができ、行き詰まることがないですね」(岩佐さん)
 先日は食材加工業者からの金柑ペーストでタルトを作った。タルトのフィリングはその時々で変わるため、POPに「店主のきまぐれ」と記載。農家からはさつまいもをもらい、甘い系と総菜系の両方のパン作りに活用できたという。
 「地元の名産品を使ったパンを作りたい」(岩佐さん)という思いから開発した、同店の現在一押しのパンは、「鹿肉と椎茸のミートデニッシュ」(税抜230円)。鹿肉は町内で捕獲した鹿を加工したもので、椎茸は町内の乾椎茸専門の老舗のものを使用している。
 「朝色紅茶とリンゴのパン」(税抜170円)は、「美郷町の食材を使った、季節を問わず作れるものを」(岩佐さん)と開発。町内産の紅茶「朝色紅茶」を練り込んだ生地に、リンゴのワイン煮とホワイトチョコレートを入れて焼き上げた、紅茶の香り豊かなソフトな食感の菓子パンだ。
 地域の人の意見を取り入れた商品開発もしている。開業前、店舗周辺の人々に販売予定のパンの試食をしてもらい、アンケートを行った。
 「アンケートは、正直に書いてくれたと思われる内容が多くて、とても参考になりました。私たちは一パン職人として、皆さんのためのパンを作ることで、地域の方々のまだ満たされていない部分をを埋めていけたらと思っています。主力商品の食パンは、アンケートの意見が結集しています」(岩佐さん)
 食パンの試食は、食感や甘さなどがそれぞれ違う3〜4種類を用意。その中で好みのものを問うだけでなく、改善点などもヒアリングした。
 「もちもちしすぎる」「もう少し甘さ控えめがいい」などの意見があったという。こうしてアンケート結果をもとに誕生したのが、北海道産小麦使用の「やわらか食パン」(税抜320円)だ。



「鹿肉と椎茸のミートデニッシュ」(税抜230円)の断面。地元産の鹿肉と椎茸を使用している
「朝色紅茶とリンゴのパン」の断面
アンケート結果をもとに開発した「やわらか食パン」(税抜320円)
「ライ麦パン(ドライフルーツ)」(税抜700円)。ライ麦は粗挽きのものを使用しており、穀物の風味が豊か
コロナ禍に開業を決意する

 現在パンのラインナップは60種類ほどあり、その中から毎日40〜50種類を作って販売。店舗販売は土曜から火曜まで行っているが、土日は種類を多めに用意している。
 「移動販売のお客様が、店舗にも来てくださるようになってきました。ここは人ごみもないですし、特に土日はドライブついでの方が多いのかと思います」(岩佐さん)
 開業前の計画では、通販と移動販売をメインにするつもりだった。
 「店舗販売は、通販や移動販売用のパンを厨房で製造している間、その横にある売り場も開けておこうという位に思っていました。実際は、わざわざ来てくださるお客様の数が予想以上に多く、通販の方まで着手できていないのが現状です。ですが、今後社会の様々な変化に対応できるように、通販の方は予定通り進めていきたいと思っています」(岩佐さん)
 開業時期はコロナ禍の10月だが、そもそもの開業のきっかけも、コロナ禍における仕事の在り方を考えたからだ。第一波と言われた昨冬、それまで勤めていたピッツェリアのパン部門の責任者を、開業を決意して辞めた。そして、以前訪れた際「こんなところで店ができたら」と感銘した、憧れの場所に同店を構えたのだ。 
 「実は故郷に戻る前、もうパン屋はやらないつもりだったんです。心身ともに疲れてしまって。でも、1年静養してから働き始めたら、縁があってまたパンの仕事に誘ってもらいました。そしてコロナ禍で改めて将来のことを考え、開業に至りました」(岩佐さん)
 岩佐さんが20代前半の頃、初めてベーカリー業に就いたのは、福岡県の大手ベーカリーチェーンで、とにかく速く仕事をし、焼きたてをどんどん出すことを学んだ。その後、先輩に誘われて就いた専門学校の助手では、製パン理論の勉強不足を思い知った。また、特別授業ではフィリップ・ビゴ氏の横に立つこともあった。
 「今でも忘れることがありません。生徒の前で、ビゴさんから怒られました。当時助手として何も役に立てなかったので当然です。そのときの恥ずかしさや悔しさは、今に繋げることができていると思っています」(岩佐さん)
 その後、パンとビーフシチューの冷凍便商品で、マスコミで話題となる人気店など、個人店で働いた。
 「中には倒産してしまった会社もありました。チーフとして最後まで働いていたので色々と大変でしたが、今ではその経験は財産ですね」(岩佐さん)
 様々な経験をして一度はパンの道から逸れたが、故郷が再び岩佐さんをパンの道に戻した。経験を糧にしていくことで、今後地域に欠かせない店へと成長していくに違いない。

SHOP DATA
店名:パン屋 りょう
住所:〒883‐1101 宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代5812番地1
電話:0982‐60‐1724
営業時間:午前9時〜午後5時(売切れ次第終了)
定休日:水曜(木曜、金曜は移動販売のみ)
品揃え:約40〜50品目
スタッフ:製造常時1〜2人、販売常時1〜2人
店舗面積:売り場12坪、厨房17坪
月商:約100万円



この記事の読みどころ

●週4日は店舗販売、週2日は移動販売を行う
●開業前、店舗周辺の人々に販売予定のパンの試食をしてもらい、アンケートを行った。
●地元の特産物を使ったパンを主力商品として打ち出す。
●コロナ禍で改めて将来のことを考え、開業に至った。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。



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