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| 私の開業物語/2004年8月号 |
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| 延期はしたけれど…収穫は大きかった! - 私の開業物語(2) BY 鈴木紀美枝 | |
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連載にあたっては、十分「恥をしのんで」いた
つもりだったが、実際に活字になったものを見たら、 やはり恥を感じてしまった。その割には、 例の空き店舗の大家や友人たちに 見せまくっていたのだが・・・。 友人の一人が「自分の失敗談を人に話すことは、 とてもいいことなのよ。人は自慢話ばかりしたがる けど、みんな聞いていないものよ」と励ましてくれた。嬉しい限りである。 さて、話はすこしさかのぼり、昨年暮れのこと―。 |

| 投資家現る!? 私は3年ほど前に、名前だけ、ということで出身高校の同窓会の名簿部員というのを引き受けた。だが、会合のある土・日は仕事だから、終了後の飲み会に駆けつけるだけ。さらに、パソコンを持っていない私には、仕事らしい仕事はない。飲み会が盛り上がる?という理由で重宝がられていたフシがある。
そんな私の、パン屋での仕事振りを聞かされてきたある先輩が、忘年会で、唐突にこう言った。 「今、銀行に置いといても増えないじゃない。だから、百万ぐらい投資しようか?」 「?」(私) 「独立するなら応援するよ。」 仮にA氏としておく。A氏は私より4学年上の柔道部OBで、一説によるとボーナス1回分が2000万円(200万円?)ともいわれているセレブな?サラリーマンである。そして、他の先輩たちからも「一口10万円」とか「誰それさんは一口100万で」と冗談話が飛び交い、「じゃあ、事業計画書と資金計画書を持って来てよ。待ってるから」とA氏が話を締めくくった。 後日、その場にいた60代で、名簿部の「重鎮」と呼ばれている人に「Aさんが言ったことは冗談ですよね」と聞くと、「本気なんじゃないのォ。私は10万ね」と言うではないか。この投資人の出現が、開業計画の発端となったのは確かで、年が明けた半年後に、空き店舗の話が来たのだった。 出身高校と言えば、余談になるが、一年の夏休みのこと。卓球部の練習に、何故か(生まれて初めて作った)手作り菓子を持って行った。練習後体育館で、そばに居合わせた柔道部OBの1人に、そのフルーツタルトを食べてもらった。思えばその頃から、自らが作ったものを人に食べてもらう「快感」に酔いしれていたのかも!? 「おいしい」と言ってくれたその先輩が、実は投資人A氏だった、となれば話は感動的なのだが、残念ながらそうではない。この話をA氏にしたら、2人は同期生だったそうで、「ああいうのがタイプ?」と言われてしまった(「実はそうです・・・」)。 3年前の朝日新聞夕刊の記事から――『さらば銀行、自力で資金 中小企業が貸し渋りに対抗 ご近所で集めパンで配当』。この記事は、独自の資金調達の少人数私募債の例として、2社を紹介しているのだが、その一つがパン屋の「スピカ・麦の穂」だった(「スピカ・麦の穂」の場合は「擬似私募債」の例として紹介されていた)。記事によると、説明会を開いて、友人知人から一口10万円で、35人から500万円を集めた。「利回りを年5%として、パンで支給」「債権者も、店がつぶれないように『あそこのパンはおいしいわよ』と宣伝」。また、出資者は経営チェックもする。 このパン屋は有名なお店で2月に私が受講することになる、企業家セミナーの卒業生だった。 さて、この新聞の切り抜きは、現在の恋人(S氏)が当時持ってきてくれたものだ。彼は、私が働いている店にパンを買いにくるのはモチロンのこと、仕事先で見つけたベーカリーのパンで「試食会」を聞いてくれ、求人情報や新聞・雑誌のパンの記事をピックアップしてくれ、助言・激励してくれ・・・と陰に陽に私を支えてくれている。彼にも融資と保証人を頼むことになるが、その話は最終回に譲るとしよう。 |

| 相棒との相性やいかに 私の店で働いてくれるパートナーを探さなくてはならない。頭に浮かんでくるのは、元同僚たちの顔ばかり・・・。そういえば、近所の主婦で、独身時代にパン屋の製造スタッフだった人がいたっけ・・・。私はあるパン屋で一緒に働いた、26歳のBさんに電話をしてみた。
彼女はその店を辞めてから一年、飲食店で働いている。でも、本当はパン屋で働きたいのだと言う。彼女の経歴はというと――高校卒業後、大手チェーンベーカリーのパート社員になり、揚げ物と仕上げから。そして「やらせてください」と頼み続け、成形→窯→仕込みへと進んでいった。そして、私と一緒だったそのパン屋で4年間正社員として働いた。志のある彼女なら、責任を持って働いてくれるだろう。そして彼女曰く、「話を聞きに、お邪魔しまーす!」 数日後、2人で例の空き店舗の中を見せてもらってから、私の部屋で、あれこれと話し合った。まず、彼女の希望は2つ。(1)正社員として働きたい(2)勤務時間は夕方まで――それを聞き2つの希望はかなえたいと思った。お互いに気分よく働きたいから。 そして、店のイメージや商品などについて語り合い、資金の話もした。Bさんは、家庭の事情でお金がないので出資はできない、と言う。また私と一緒だった店での4年間がトラウマになっていて、責任を過度にかけられるのが耐えられないそうだ。 私の知る範囲では、その店には、レジの過不足金を、当日のスタッフで補填する制度があった。製造ロスを出して、そのパンの定価の倍の額で買い取らされたこともあった。成形を担当していた私は、窯・成形の連帯責任ということで、3日間で3万円を帰りに支払ったのだ。窯の子と2人で「破産する!」と泣いた。オーナーの気持が切実に感じられるとは思ったが、私は直後に辞めた。これらはお金が絡むこと、他は推して知るべし。しかし、この店には、すばらしいこともいっぱいあった。いい店だと思う。スタッフ教育、ポリシー、お客様へのサービス、etc・・・。私はいい意味で大きな影響を受けた。 Bさんと私は、日を改めて製パン機械の再生品を扱う会社を訪問することになった。 |

| 機械屋さんとオーブン 中古(再生)品業者、2社をハシゴした。それぞれ、工場を見せてもらった。オーブン、ドウコン、ミキサーがあった。社長さんからは色々なお話を伺った。機械の内部のことは分からないが、外装にはずい分手をかけて、きれいにしているなと思った。私たち2人とも再生の現場を見たのは初めてで、Bさんもとても喜んでいた。
私は整備中の古いタイプの電気3段窯に魅かれた。温度計とタイマーがダイヤル式で、スチーム1段。六取り天板4枚差し。お話では、タッチパネルの場合は、一つ故障すると「全取っ替え」なのに対して、ダイヤル式はそれぞれ交換できるそうだ。デジタルの方が分かりやすく便利だが、確かにアナログの方が長持ちする。気に入ったのは、私が古くてシンプルなものが好きなせいだろう。お値段は80万円。 開業後の一日の生産量は金額にして7〜10万円、と思っている。この量だったら2段窯で十分、3段だったらおつりがくるだろう。でも、焼きたて時間にこだわる場合は3段あると助かる。以前、3段で毎日10万円ぐらい焼いていた時は、「余ってる」感はなかった。段取りが悪かっただけか? 実をいうと例の空き店舗から30メートルという、目と鼻の先、商店街のメイン通りに、ベテランのベーカリーがある。その店では、菓子パン・調理パンを早朝に焼き、少し冷まして機械で袋詰めする。それらが店頭に出る前の早朝に訪れると、前日のパンがそのまま並んでいる。しかも定価で。しかし、看板には「焼きたて」と書いてある。この店と張り合うには、昼と夕方の焼きたて、であろうか? |

| 「焼きたて」について よく言われるように、パンがおいしいのは冷めてからである。フランスパン、菓子・調理パン、食パン、天然酵母のパン、それぞれ一番おいしい時間は違うと思うが。でも、お客様は「焼きたて」が好きだ。品出しする時に、お客様のトレイを見て「焼きたてとお取替えしますか?」と聞くと、「えっ、いいんですか!?」と驚かれ感謝されることもある。レジを済ませ帰りがけに「本当にありがとうございました」と再度おっしゃってもらったことすらある。こちらは嬉しいやら、恐縮するやら・・・。やはり、スーパー・コンビニのパンにはない「焼きたてのほやほや」(死語?)は、たとえ製造販売といえども常にあるわけではない。アツアツやパンの「ぬくもり」は気持的に心地よいのではないだろうか。
ただ、ある日、焼きたてをおすすめした時に「あとで水滴だらけになるから、冷めたパンでいいわ」と、お断りされたことがある。ビニール袋に入れたり、袋の口を閉じたりする場合だ。やはり、色んなサイズの紙袋も用意したい。また、知人からは、帰ってからパンを見たら、熱でベちょベちょになっていて、「焼きたてのパンとはこういうことか・・・」と思った、と聞かされた。お客様の満足は、家に帰って食べようとした時のパンの状態で決まる。自戒しようと思う。 そんなことで、どの包材を使おうかナ、と考えるのも楽しい。 話を中古機械に戻すと、ドウコンが40万円、50コートのミキサーが38万円。お話では、中古の窯を引き取る時に、スリップベルトがついていなかったら、新品を用意するとのこと。中古機械屋さん、儲かるのかなァ・・・と思ったのだった。 (つづく) |
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