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| 特集/2001年5月号 |
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| ベーカリーは新商品開発にどう取り組んでいるか!? - 商品開発に様々な思い、それぞれに工夫を凝らす 「新商品開発にどう取り組んでいるか」のテーマで、ベーカリーを取材した。
パートの「こんなパンが食べたい」という声を最大限に生かしたり、 顧客の声にアンテナをはって、アイデアを得たりと、 ベーカリーは様々な方法で、新商品開発に取り組んでいる。 |

| パートの主婦がやりがいを持って新商品を考え、試作する - Case 1 ベルアルプの場合
「新商品といっても生地の配合から考えて作る場合もあるし、フィリングやトッピングなどにアレンジを加えるだけの場合もあります。フィリングなどを変えて既存の生地から作るものも新商品と呼ぶなら、毎週1〜2品は必ず出していますね」
刺抜き地蔵で有名な東京・巣鴨の地蔵通り商店街にあるベーカリー、ベルアルプの地引弘道代長はこう話す。 同ベーカリーでは、1つの生地玉の重量を20グラムと小さめにした「3食パン」や、ブール型のレーズンパンに、ホイロ前にシナモンパウダーをふって焼成した製品、たまごサンドの卵フィリングに、細かく刻んだ海苔を混ぜ込んだ「のり玉サンド」など、「ちょっとしたアレンジ」を加えた新商品が、次々と発売される。 パートの「こんなパン食べたい」の声生かす 「こうしたアイデアは、主に同ベーカリーで働くパートの主婦たちから出てきます」と地引代長はいう。 同ベーカリーには製造を手伝うパートの主婦が複数いて、その多くが10年以上の経験を持つ。新商品のアイデアが毎日のように彼女たちから出てくるのだそうだ。 「パートさんたちは、『こんな商品が食べたい』という観点から提案してきます」(地引代長)。 地引代長は「それはダメだ」とは口が裂けても言わない。とにかく、アイデアを出した本人に試作してもらうのだ。 取材した4月10日は「ドーナツのフィリングにジャムを使ったらどうか」「キャロットパウダーを蒸しケーキに入れたら色鮮やかでいいのではないか」などという話で盛り上がったという。ジャムドーナツは、さっそく試してみたそうだ。地引代長は、こうしたアイデアの中から「ピンとくるもの」はすぐに商品化して店頭に並べる。 「パートさんが試作してみんなで味見をしたものについては、8割方商品化しますね」と地引代長はいう。 パートのアイデア元に徹底的に追及も パートの主婦から出たアイデアをもとに地引代長が考え抜いて商品化することもある。この場合は、既存の商品にアレンジを加える、というより、生地自体の配合から考える本格的なもの。 例えば、ゆずの季節だけに製造販売する「ゆずパン」。 細かく刻んだゆずの皮を「スポンジケーキみたいなソフトな生地」(地引代長)に練り込んだパンだ。食べるとゆずの香りが口一杯に広がる。ゆずパン専用の生地を、配合から検討し、徹底的に試作を重ねて作り上げた地引代長の自信作のひとつだ。 この製品が生まれる最初のきっかけとなったのは、「あんパンのこしあんにゆずを混ぜたらどうか」というパートの主婦のアイデアだった。地引代長はこれにピンときたのだ。ゆずパンは、今ではべルアルプの人気定番商品のひとつだ。 「ゆずパンのように、生地から新たに考えて商品を作ると、仕込む生地がひとつ増えることになるので、それなりに大変です」と地引代長はいう。 最近商品化した「パン・ド・ミ」の場合も同じだ。同ベーカリーは仕込む生地の数がもともと多いため、設備上これ以上増やすのはかなりきついのだという。 「お昼には、大体のパンが出揃うように努力しているのですが、最近は時間をずらして仕込み、夕方初めて焼き上がるパンもあっていいのでは、と思うようになりました」と地引代長。パン・ド・ミは夕方に初めて焼き上がるパンだ。地引代長はパン・ド・ミを『夕焼けパン』と称している。 「夕方に焼き上がってもほとんど売れ切れてしまいます。お客様にとって、いつ来店しても焼きたてのパンがあるというのは、いいことですから」と目を輝かせる。 |

| 「いつ来店しても、新しいパンがあるようにしたい」 - Case 2 ブランジェ・アプレの場合 埼玉県北葛飾郡のベーカリー、ブランジェ・アプレでも、1週間に1〜2品目程度の新商品を出す。
三石佳男オーナーは「ウチのお客様には若い女性が多いので、飽きさせないように努力しています。ウチの品揃えは、60〜70品目ですが、ひとりのお客様にとっての選択範囲は20〜30品目だと思います。その中から来店するごとに選んで買っているわけです。何回か買いに来ているうちに、もう買うパンがないと感じさせてはいけないんです」と話す。 三石オーナーが新商品を思いつくきっかけは様々だ。 顧客の声に応える余った材料を利用 ブランジェ・アプレでは、顧客の声に応える形で新しい商品を出すケースが多い。 「あるお客様からコッペパンを作ったら売れると思いますよ、と言われました。そのお客様自身が食べたい、ということなのだと思います」(三石オーナー)。近く商品化すべく、準備を進めているそうだ。 「こういうパンが食べたいと、他のパン屋さんで買った商品を持って来たお客様もいました」(同オーナー)。 余っている材料を早く使い切るために新商品を考えることもある。 ホールのシロップ漬けりんごが1パックにかなりの数が入っていて、1回封を開けるとなるべく早く使い切らなくてはならない、ということで考えたのが、「りんごの天然酵母」というパン。 ホールのりんごをスライスして、天然酵母の生地で巻いて焼成したもので、「なかなかの評判」だそうだ。 業者が持ち込んだ材料のサンプルから発想する新商品も多い。 あるフィリングメーカーの「マサラカレー」というカレーフィリングをサンプルにもらった時は、天然酵母の生地に包んで平らに延ばし、ナンのような形のカレーパンを作った。 「フィリングが辛すぎると感じたので、包む量を減らし、平らに延ばして焼いてみました」と三石オーナー。 顧客の表情をよく観察する 三石オーナーは、顧客がパンを買う時の表情をまめに観察する。同ベーカリーは製造スペースの作業台から売場の入り口が見えるようになっており、パンを製造している最中も常に店内の客に気を配っている。 「お客様が、商品を選んでいる時の表情を観察していると、いろいろなことがわかります」と三石オーナーはいう。 欲しくないからトレーにのせないのか、欲しいけれど我慢してトレーにのせないのか、などが表情を見ていると、手にとるようにわかるのだそうだ。三石オーナーはこうしたことを、新商品が的を得ているかどうかの判断材料のひとつにする。 売れない商品は削るが、再開することも 新商品を週に1〜2品目出していると、既存の商品を減らさない限り、品揃えが増える一方になる。 「基本的に動きのよくない商品の製造販売をストップすることになります。ただ、ストップした後も、お客様からの苦情はないかなどに注意を払い、場合によっては再び品揃えに加えることもあります」と三石オーナーは説明する。 製造日を限定する場合もある。こうすることで、1日の製造品目を減らせるのだ。 |

| 時間をかけて試作を重ね、納得のいく商品に仕上げる - Case 3 ラ・フーガスの場合
東京・世田谷区のベーカリー、ラ・フーガスの仁札正男社長も、「店に変化を与え、お客様を飽きさせないためにも、新商品開発は重要です」と話す。
しかし、同社長は、新商品を発想すると、時間をかけて試作を重ねる「じっくり派」だ。 ごまねぎパンはバージョンアップ商品 同店の人気商品のひとつである「ごまねぎパン」の開発は、「ハーブの食事パンを作りたい」というシンプルな思いから始まった。「ある講習会で西洋ねぎのチャイブを使ったパンに出会ったんです。パンにはねぎが合うな、と思いました」と仁札社長は振り返る。 同社長の思いは巡りめぐって「万能ねぎを使った和風パンにしよう」ということになった。 パン生地に万能ねぎとゴマを練り込み、しょう油を塗って焼き上げる「ごまねぎパン」が出来上がった。同製品は、ある程度日にちがたつと、あまり売れなくなったため、一時製造を中止した。しかし、仁札社長の頭の中に残り続けた。 およそ1年半後、「ごまねぎパン」はパワーアップされて再デビューすることになる。仕込み水には和風のだし汁を使用。焼成前に塗るタレも西京味噌、しょう油、さとう、みりんなどから作る「秘伝のタレ」に切り替えた。 パワーアップ版「ごまねぎパン」は現在も同店の人気定番商品だ。 レストランの料理や料理本などがヒント 休日に行くレストランで食べる料理や、お菓子や料理の本などから、新商品のヒントを得ることも多い。 「おいしいレストランがあると聞くと、よく出かけていきます。ただ単においしいものを食べたいというだけなんですが、料理に使っている食材などが知らず知らずのうちに頭に残り、新しいパンのヒントになっていることが多いですね」と仁札社長はいう。 旬の素材を使った新製品の開発にも熱心だ。ラ・フーガスでは、一口サイズのキッシュが人気を集めているが、トッピングには旬の野菜などを使うことが多い。「八百屋さんから貴重な情報を得ることも多いですよ」と仁札社長。 同社長は、流行の導入にも積極的。「時代の空気を肌で感じ、それをパンに取り入れることは大事だと思います」と話す。プチクロワッサンの量り売りなどは、今でも人気が高いという。 試行錯誤の結果商品に個性が出る! 仁札社長はこのように、様々な形で新商品を発想し、商品化する。しかし、発想から商品化までには、幾度となく試作を重ね、「大きな産みの苦しみ」を経るため、かなりの時間を要する。新商品を出す頻度も1年に10回くらいだ。 流行商品を導入する場合も、ラ・フーガス流の商品に仕立て直してから店に出す。 「例えば、エッグタルトにしても、雑誌や本を見ればレシピは載っています。それをみて同じレシピで作るのではなく、自分なりにアレンジを加え、オリジナリティーを打ち出す努力をしています」と話す。 |
| 季節ごとに新商品を出す「顧客に対して刺激的でありたい」 - Case 4 ナチュールの場合
長野県松本市のベーカリー、ナチュールでは、季節ごとに新商品を開発して店頭に並べる。
同ベーカリーの澤田友行代長は「お客様に四季を感じてもらいたいし、お客様に対して常に刺激的でありたいと思います」と新商品を出すことの意味について説明する。 「お客様は、来店するとよく買う馴染みの商品以外に、新しい商品も買いたいのだと思います。お客様にとって、『お決まりの定番商品』が8〜9割、新鮮味のある新商品が1〜2割というのが理想ではないかと思います」(同代長)。 春のシュトーレン、夏野菜のピザ 季節の変わり目になると、必ず複数の新商品を出す。「春には春らしい、夏には夏らしい商品を出します」と澤田代長。 「さくらシュトーレン」は、春の商品だ。レーズンの代わりにドライチェリーを練り込み、中心に入れるマジパンにさくらの塩漬けを混ぜ込む。包材にはピンク色をあしらって、春らしさを演出する。 夏野菜のピザは夏の商品。ナスやトマト、ズッキーニなどをトッピングした商品だ。この他、秋に出すきのこ入りのミートパイ、クリスマスのシュトーレンやパネトーネなどがある。 夫人が「OK」の商品は、よく売れる 澤田代長は、新商品を作ると必ず夫人に食べてもらう。夫人が「いける」と言った商品は、ほとんどがよく売れるという。「私にとって、女房の試食は、最大の関門です」と澤田代長はいう。 夫人が「NG」を出した新商品を店頭に並べることもある。この場合、まったくの不発に終わるか、爆発的なヒットになるかのいずれかだそうだ。 「私は、野球でいえばホームランバッターです。大きいあたりも飛ばしますが、三振する時も派手なんです」と澤田代長は笑う。 季節ごとに出す商品で、人気のあるものについては、翌年の同じ季節に再登場させる。 サンドイッチの商品開発にも熱心 ナチュールは、本店の近くに、サンドイッチを品揃えの中心に据えた店舗も開いている。サンドイッチのメニュー開発にも余念がない。 ゴールデンウィーク明けに発売予定の「コースサンド」は、前菜、メインディッシュ、デザートをサンドイッチで表現したユニークな商品だ。 具材に、野菜など(前菜)、カツやローストビーフなど(メインディッシュ)、フルーツや生クリームなど(デザート)をそれぞれ使用した三角サンド3つをパックした商品。 サンドイッチの店はJR松本駅前にあり、昼時に来店する若いOLがターゲットだ。 同製品を開発したきっかけは、顧客のひとりから、「3種類の違うサンドイッチを入れてほしい」と言われたことだった。 「コースサンド」にはこのほか、同じサンドイッチを2つパックした商品と、違う種類の2つのサンドイッチをパックした商品がある。 ナチュールで働くパートの主婦は夫の実家が農家の人が多く、同ベーカリーには「新鮮な野菜」が多く持ち込まれる。 近くに「おいしい燻製」を作る店もある。また、ナチュールのパン粉を使用して「おいしいカツ」を揚げる店もある。この3つの条件が揃ったことが、サンドイッチの店を出した理由だ。 |
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