顧客との戦い、フランス出身のディディエさん - レピ ドー - ブランスリー電子版

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お店拝見/2001年5月号

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顧客との戦い、フランス出身のディディエさん - レピ ドー

神奈川県平塚市にあるレピドーは、フランス人のシャユ・ディディエさんが経営するベーカリーだ。当然、フランスパンやヴィエノワズリーに力を入れているが、平塚の人たちに受け入れてもらうために、かなりの工夫をしている。
しかし、パン職人としての主張を持ち続け、顧客の声にただ単に迎合はしない。
顧客との真剣な戦いの中で、ディディエさんの個性は磨かれていく。

神奈川県平塚市徳延179-1
電話0463-34-5230
営業時間 午前9時〜午後7時 月曜定休



配合をまったく変えずにフランスパンをソフトに仕上げる

シャユ・ディディエさん
例えば、同ベーカリーの人気商品のひとつである「パン・ド・エピ」(ホール600円、ハーフカット300円)。生地重量が1050グラムとかなり大きなハースブレッドだ。配合は、バゲットとまったく同じ。しかし、食パンのようにやわらかい。
ディディエさんは「成形の仕方を工夫することと、生地の重量が大きいことが、ソフトな食感のパンに仕上がる最大の理由です」と説明する。
焼成温度をやや低めにして、じっくりと時間をかけて焼くと、バゲットなどに比べてかなりソフトなパンになるのだそうだ。
ディディエさんはおよそ12年前にパン職人として来日した。日本の複数の有名ベーカリーで働いたあと、4年前に独立、平塚に店を構えた。最初フランスパンの品揃えは、バゲットとバタールだけだった。ヴィエノワズリー類には、有名ベーカリーと同じ値段をつけた。
売れなかった。ディディエさんは「4月にオープンしたのですが、最初の年の12月までは、売上げが上がりませんでした。非常に苦しい状況でした」と当時を振り返る。
顧客との戦いが始まった。パン・ド・エピは、そんな戦いの中から生まれてきた商品なのだ。



顧客のことをわかろうとすれば、自分のことを顧客が理解してくれる

レピドーの外観


チュイールなどの焼き菓子類も充実している。
売上げ低迷を打破するために、ディディエさんは「どうしたら平塚の人たちに買ってもらえるか」と、考え続けた。
目立つ看板を取り付けた。店内のレイアウトを変更した。ヴィエノワズリー類の価格を下げた。外から店内の様子が見えるようにした。
「ウチは通りからすこしさがった場所にあるので、気づかない人も多かったのだと思います。店内のレイアウトもお客様がスムーズに動けるように、導線を考えて変更しました。初めてのお客さんが入りやすいように、中の様子がある程度わかるようにもしました」とディディエさんはいう。
商品についての顧客の要望にも積極的に応えた。カレーパンやあんパンも商品化した。
しかし、ディディエさんは、顧客の言いなりにはならない。自分の主張も顧客にぶつける。
あんパンは、ブリオッシュ生地で作った。カレーパンも生地の配合などに工夫を凝らし、「自分流」に仕上げた。
極めつけはメロンパンだ。「顧客からメロンパンをぜひ作ってほしい」と言われたが、「普通のメロンパンは作りたくない」と思った。
試行錯誤の結果、ディディエさんが考えたのは、「ブリオッシュパフ」(130円)という商品だった。ブール型のブリオッシュ生地の上にアーモンドクリームを絞って焼いた製品で、「メロンパン風のふわふわパン」として店に出している。
ディディエさんは「お客さんの声を聞くのは最も重要なことです。しかし、自分が作っていておもしろくないパンは、絶対に商品化してはいけないと思っています。自分が作る喜びを感じられなければ、絶対にいい商品はできません。お客さんの要望に応えた上で、私の主張もお客様に聞いてもらいたいんです」と話す。
現在のレピドーの品揃えは、ディディエさんと顧客との真剣なやり取りの中で、生まれてきたものなのだ。



納得のいくパンを作るためには、手間と時間を惜しまない

30%引きの日替わりサービス品が何かを顧客に知らせる黒板が入り口脇に掲げられている。


陳列棚は木製のものを使用。落ち着きと温かみを与えている。ディディエさんが試行錯誤の末に生み出した商品が並ぶ。
ディディエさんは、納得のいくパンを作るためには、手間を惜しまない。時間をかけてじっくりと発酵をとり、生地と対話しながらパンを作っていく。
同ベーカリーの人気商品のひとつである「パン・オ・ルヴァン」(350円)はルヴァン種から作るパンだ。
ルヴァン種は、最初の種起こしにおよそ2カ月を要した。小麦粉と水だけで作った「秘伝のルヴァン種」だ。毎日2回12時間おきに小麦粉と水を足して、種を継いでいく。
ハード系のパンはミキシングの途中で生地を休ませるオートリーズ製法を採用している。
イーストフードなどは一切使わず、小麦粉が発酵してできる本来の味と香りを、持てる技術を最大限に発揮して引き出す努力をしている。
ディディエさんの出勤時間は午前2時。おいしいパンを作るには、手間と時間がかかるのだ。

平塚の人たちと一生付き合っていく
レピドーは、JR平塚駅からバスでおよそ15分の距離。
通りをはさんだ向いには、青空市場がある。
レピドーは、売り場面積が約6・5坪。製造スペースは約14坪だ。製造スタッフは、ディディエさんを入れて3人。
昨年6月に、平塚駅前に、販売スペースだけの2号店をオープンした。製造は本店ですべて行う。
本店の日商はおよそ11万円、2号店では1日約14万円を売り上げる。
販売スタッフは、本店がディディエさんの夫人を含めて2人、2号店が3人の体制だ。
「2号店といっても、製造スペースがあるわけではないので、本店の延長と考えています。製造については、私の目の届かないところでは作りたくありません」とディディエさんはいう。
ディディエさんは、フランス・ロワール地方のシュミールという、人口7000人ほどの町に生まれた。
15歳の時にパンの道に入り、25歳の時に、同じく日本在住のフランス人で、兵庫県芦屋市でベーカリーを営むフィリップ・ビゴ氏の誘いで、日本に来た。
「フランスに帰るつもりはまったくありません。平塚の人たちと、パンを通して徹底的に付き合っていきたいと考えています」と、ディディエさんは目を輝かせた。



フランス人が作ったカレーパン
カレーパン
オーブンで焼くカレーパン。フクジン漬けをトッピングして焼く。顧客の「カレーパンもぜひ作ってほしい」という声に応えて商品化した。夕方仕込んで、次の日に焼成する。120円。
配合と工程は次の通り。
【配合%】▼強力粉100▼バター10▼塩2▼砂糖10▼水30▼牛乳30▼生イースト3
【工程】(1)L3分H3分(バター投入)L3分H3分(捏ね上げ温度20度C)(2)捏ね上がった生地を軽く延ばし、すぐに冷蔵庫に入れて冷やす(3)生地が冷たくなったら分割40グラム(4)分割した生地を冷蔵庫で30分程度冷やす(5)カレーフィリングを包んで、水をつけ、パン粉をまぶす(6)上面の中央に指で軽くくぼみをつけ、フクジン漬けをトッピングする(7)[6]を冷蔵庫に8時間程度入れる(8)[7]を冷蔵庫から出し、1時間程度常温に置く(9)ホイロ38度C70%1時間15分(10)焼成230度C10分

「固いパンが苦手な人にもフランスパンを食べてもらいたい!
パン・ド・エピ
店名がついた同店の看板商品のひとつ。350グラムに分割したフランスパン生地を三つ編みにする。総生地重量は1050グラムとかなり大型のパン。クラムはしっとりとソフトで、「やわらかいパンを好む顧客にも、フランスパンのおいしさを知ってもらいたい」と、ディディエさんが考えた。成形を工夫することと、生地重量が多いことが、フランスパンの生地でソフトなパンを作る秘訣」(ディディエさん)という。
ホールが620円。半分にカットしてスライスした製品と、半分にカットしただけの製品(いずれも価格は310円)も販売している。
配合と工程は次の通り。
【配合%】▼フランスパン用粉100▼水65▼塩2▼生イースト2▼インスタントドライイースト0・7
【工程】ミキシングL3分(オートリーズ15分)L5分、捏ね上げ温度24度C、発酵3時間、分割350グラム×3、ベンチタイム30分、成形→(1)バゲットの形にして三つ編みにする(2)ライ麦粉をふった大き目の発酵籠に入れる。ホイロ26度C1時間、焼成200度C40分(スチーム注入)

原価計算女王
原価計算女王
2カ月かけてルヴァン種起こす
パン・オ・ルヴァン
約2カ月かけて起こしたルヴァン種から作るパン。どっしりと重量感があるが、食べ口はよく、レピドーの人気商品のひとつになっている。350円。
【配合%】
フランスパン用粉……………………………………100
ルヴァン種……………………………………………80
塩………………………………………………………3
水……………………………………………………65
くるみ…………………………………………………20
レーズン………………………………………………20
【工程】ミキシングL5分、捏ね上げ温度23度C、発酵26度C2時間〜3時間、分割400グラム、成形ナマコ型、ホイロ26度C1時間15分、焼成210度C35分(スチーム注入)
※ホイロ後、横にクープを入れる。
※ルヴァン種の起こし方の概略は、次の通り。(1)粉と水を混ぜ合わせて約3週間置く(2)1日1回、粉と水を加えて混ぜ合わせる(これを約1カ月続ける)(3)12時間おきに粉と水を加え混ぜ合わせる(これを約10日間続ける)。

成形がおもしろいブリオッシュ
ブリオッシュ・アマンド
ブリオッシュ生地にアーモンドクリームを巻き込んで作る商品。成形がおもしろい。1個120円。
薄く延ばしたブリオッシュ生地に、アーモンドクリームを塗り広げ、両側から中央に向かってロールして、ロールした生地が2つ並んでいるような状態にする。
約2センチ幅にカットして(渦巻きが2つ並んでいるような状態になる)、ねじるようにして、ひとつの「渦巻き」の表と裏をひっくり返す。
アーモンドクリームは、フランスパン用粉、バター、卵、アーモンドパウダー、グラニュー糖などから作る自家製だ。

フランスの伝統菓子ガレット・デロアの小型商品
プチ・デロア
フランスのガレット・デロアのひとつであるアーモンドクリームとカスタードクリームが入った菓子を小さくした商品。1個130円。1日の販売個数は平均20。
▼フランスパン用粉100%▼塩2%▼水65%を練った生地に、無塩バター30%を折り込む(3つ折り5回)。パイローラーで2センチ厚に延ばし、10センチ×10センチの正方形にカット。1枚の上に縦にアーモンドクリームを1本絞り、もう一枚の生地をかぶせて、4辺をシールする。
上面に格子状に切り込みを入れ、冷凍保存。順次冷凍庫から出して、凍ったままオーブンへ。

プチクロワッサンも人気
プチクロワッサン
チーズとソーセージを入れたプチクロワッサン。1個50円。
【配合%】
フランスパン用粉……………………………………100
砂糖……………………………………………………6
塩……………………………………………………1・7
水……………………………………………………65
生イースト………………………………………………2
【工程】ミキシングL4分、捏ね上げ温度20度C、折込油脂対生地30%、3つ折り3回、分割15グラム、成形→チーズとクロワッサンを巻き込む。ホイロ38度C75%1時間、焼成230度C10分
※折込油脂は無塩バターを使用。
※折り込み前に生地を冷蔵庫で1~2時間冷やす。成形後にも生地を冷やす。ホイロに入れる前に常温で1時間置く。
※焼成前に卵を塗る。


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