インターネットベーカリー、ネット限定商品 - ルセット - ブランスリー電子版

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お店拝見/2001年7月号

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インターネットベーカリー、ネット限定商品 - ルセット

ルセットのホームページのセカンド画面
インターネットによる注文販売額が、売上げの8割以上を占めるベーカリーが、東京・世田谷区三宿にあった。1999年12月にオープンした「ルセット(Recette)」だ。ネットで販売するのは「@(アット)シナモン」(2000円)と「@(アット)バニラ」(3000円)の2品目。ネットでの平均日商は9〜10万円とかなり健闘しているのだ。

http://www.recette.co.jp/
東京都世田谷区三宿1-19-16
電話03-5432-5308
営業時間 ネット 24時間年中無休
店舗 午後3時〜午後7時
(土、日のみ)



生地重量580グラムのパンが2000円。商品特徴をはっきりと打ち出す

ネット限定商品の@シナモン


ネット限定商品の@バニラ


店長の田中明子さん
ネットで販売する2品目は、それぞれ2000円、3000円と、パンの価格の常識からは考えられないほど高い。「おいしいパンを作りたい」との思いから原価を考えずに材料を選んだ結果の価格だ。
この既成概念にとらわれない画期的パンを開発したのは、ルセット店長の田中明子さん(25)。田中さんは、事実上のルセットの経営者で、商品開発、店舗のデザイン、ネット販売システムの構築などを、基本的にすべて自分で行った。
@シナモンは、1斤型で焼成したパンだ。「自然卵、ジャージー乳、ベトナム産高級シナモンなどを使用して、クリームチーズと3種類のレーズンを巻き込みました。ほんのりと甘い1斤サイズのジャンボなシナモンロールです」と田中さん。生地は、国産小麦粉、ホシノ酵母、自然海塩「海の精」などがベース。この他に、発酵バター、ジャージー乳自然卵などを配合する。580グラムに分割。25センチ×40センチ程度にのばして、手前の端に沿ってクリームチーズを絞り、一面にシナモンシュガーをふる。その上にレーズン、カレンズ、サルタナレーズンを散らして、クリームチーズが中心にくるようにロールする。1斤型に入れてホイロをとって焼成。
 @バニラも1斤型で焼成。生地は、国産小麦粉、ホシノ酵母をベースで、ジャージー乳、自然卵、ジャージークリーム、発酵バターなどを加える。620グラムに分割。30センチ×40センチ程度にのばして、マロン、オレンジピール、チョコチップなどを混ぜ合わせたものを一面にふる。三つ折りにして、1斤型に入れ、ホイロをとって焼成。「パン生地自体がまるでカスタードクリームのようなデザートパン」(田中さん)だ。
「ネットで販売する商品は、特徴がはっきりとわかるものでなくてはなりません」と田中さんはいう。



さりげない温かさを演出。店頭でよりも、ネットで語りかける

ネット限定商品は、丁寧にパッケージングして発送する。商品のリーフレットも添付。
田中さんは「今の若い人たちは、温かさを求める一方で、クールさ、さりげなさも求めています。実際に私がそうなんです。ですから、商品についてあまり情熱を持って店頭で語るよりは、クールにさりげなくお客様にアピールする方がいいんです」と話す。田中さんは店舗では客に対してクールにさりげなく振舞っているのだ。
しかし、ホームページでは、かなり詳しく商品について説明する。ネット限定の2アイテムについてはもちろん、店頭で販売する商品についても、使用する原材料をすべてホームページに書き出している。「素材紹介」のページも別に設けて、写真入りで詳しく説明。
「お客様が好きな時に時間をかけてゆっくりとお店のコンセプトを理解していただけます。店頭では時間の制約があるので、すべてを説明することができません」と田中さんはいう。
 ホームページ、商品のリーフレット、商品のパッケージなどのデザインも、若者のこうした気質を考慮して考えられている。「泥臭さ」は一切排除しようという姿勢が貫かれているのだ。
ホームページ、商品のリーフレットなどのデザインについては、すべて製作をプロに依頼し、センスアップを図っている。
商品のパッケージングについても、リボンのかけ方、ガムテープの貼り方などに細かな注意を払う。「ガムテープは、シャープにカットします。手で破いたりするとそこに泥臭さが出てしまいますから。発送伝票も手書きは避けます」と田中さん。



ネット商品はネットでしか販売しない。商品届ける過程でのトラブルが多い

使っている材料について写真入りで説明したページ。スクロールするとさらに材料の説明が続く。
ルセットでは、ネット専門の2商品については、ホームページを通してのメールでしか注文を受けない。
顧客が、ルセットのホームページに用意されたフォームに、注文内容を書き込み、送信ボタンをクリックすると、メールでルセットに届く仕組み。
注文のメールは田中さんがすべてチェックし、価格や出荷の時期などを確認する返信メールを出す。それに対して顧客から「OK」のメールを受けた時点で、売買契約が成立する。
支払い方法については、郵便振替、銀行振り込み、代引きのいずれかを注文主が選ぶ。
「パソコンが苦手な人から電話で注文が入ることもありますが、その場合は、『友達か家族のどなたかでパソコンができる方に注文してもらって下さい』と話します。それでもダメな場合は、『ネット限定商品なので』と丁重にお断りしています」と田中さん。
「メールだとやり取りの記録が残るので、トラブルの防止にもなりますし」とも。
トラブルが発生することもある。最も多いのは、配送についてだ。「運送会社は慎重に選ばないと大変なことになりますよ」と田中さんは苦笑い。運送会社の配達担当者が不在表を入れずに、「まだ届かない」と注文主から電話がかかってくることもあった。
結局注文主の手に届かずに、発送してからかなり日がたって、「変わり果てた商品」が返送されてきたこともあったそうだ。
しかし、運送会社を変えたところ、そうしたトラブルは、ほとんどなくなったという。

原価を考えずに材料を選ぶ。「まずは信用を確立しなくては」

ルセットの店舗外観


@シナモンのページ。使用している素材やおいしい食べ方などについて説明している。さらにスクロールすると、注文画面にス進むボタンがある。
田中さんは、中学、高校とベーカリーでアルバイトをした経験をもつ。使っている材料を目の当たりにして、「味より原価が優先されている」と思った。「パンの値段はこれくらいというのがあって、パン屋さんは、その価格で販売できるように材料選びをしていると感じました」(田中さん)。 
パンの価格の常識にとらわれずに、「おいしいパンを作る」ことだけを目的に材料を選びたいと思うようになった。
田中さんは、社会人になってもパンを趣味で作り続けた。周りから「おいしい」と言ってもらえるのが嬉しかった。
原価にとらわれないパンを作り、販売するにはインターネットが最も適していると考えるようになり、ネット専門ベーカリーの構想が田中さんの頭の中でどんどん具体化していった。
しかし、田中さんがまず着手したのは、リアル店オープンの準備だった。「まずは、客に対する信用を確立しなくては」と考えたのだ。1999年12月に、東京・世田谷区三宿に10坪ほどの店を構えた。
「『美味・高級・ヘルシー』の3つを同時に実現させた最高級天然酵母パン」(田中さん)の製造販売が始まった。パンドミやベーグル、クロワッサン、スイートブレッドなどおよそ20品目を揃えた。
3カ月後の2000年3月には、ホームページを開設。店頭に足を運んでくれる顧客への告知に努めた。2カ月後にホームページに掲示板も設置した。徐々にアクセス数が増え始めた。
7月、ネット上で販売することを想定した「@シナモン」がついに完成。試験的に店頭での予約販売を実施、相当な手応えを得る。
8月、万を持して「@シナモン」をインターネット限定商品として、デビューさせる。同時にホームページを大幅にボリュームアップ、ヤフーの検索エンジンにも登録した。また、「@シナモン」のリーフレットを作成。同製品のパッケージに添付して注文主に発送した。
マスメディアが飛びついた。テレビ、情報誌、女性誌、一般メジャー紙、大衆紙など様々な分野のメディアが、相次いでルセットを取り上げた。商品にスポットを当てたり、「起業家としての田中さん」を紹介したりと、様々な切り口でルセットの記事が掲載された。
2001年1月には、インターネット限定商品の第2弾「@バニラ」が完成、ホームページで紹介した。2つになったネット限定商品を説明するレターセットも同時に作った。
その1カ月後、「@バニラ」のネットでの予約受付を開始。「@バニラ」についても多くのメディアがページを割いた。
ただ、田中さんは、マスメディアの力よりも、口コミの効果が多きいことを強調する。「ネット商品に関しては、メディアの影響はほとんどないのが現状です。リアル店の常連客からギフトとしてもらった人が住んでいる地域から、注文が入ることが多いようです。実際に食べた人からの口コミは絶大です」(田中さん)。

店舗は土、日曜日のみの営業。顧客には若い女性が多い

店頭での販売は、オープン当初は毎日行っていたが、今年の2月から土、日曜日のみの営業に切り替えた。田中さんは、「店頭で販売する商品は、当然ネット限定商品とはコンセプトが違います」と説明する。
実際に店で買う場合、顧客はその時の気分で買うのだという。「見た目にかわいくて、買いやすい値段でないとダメだと思います。2〜3個は買いたいでしょうからね」(田中さん)。
ルセットへ足を運ぶ客は、20代から30代の女性や、「代官山にいそうな女のコ」(田中さん)が多いそうだ。「クリエーターっぽい人」(田中さん)もよく来るという。

原価計算女王
原価計算女王
商品名は「111w」「221jeco」など。対面で販売、イートインのスペースも

フルーツケーキ感覚のパン「241jeco」


売場と製造スペースを仕切るようにしてショーケースがあり、対面で販売する。


ルセットで最も人気が高いという「111w」。リーンな生地で作る食パン。


レーズン入りの特製クリーム包んだ「221jeco」


アーモンドクリームをたっぷりと絞って焼いた焼き菓子感覚の「2111weco」
店頭販売の商品は、名前のつけ方がユニーク。例えば、人気NO1の食パンは、「111w」という商品名。
ルセットの店売りの商品は、▼天然酵母クラシックブレッド▼天然酵母スイートブレッド▼天然酵母プレーンブレッド、など合計で6つのカテゴリーに分類されており、「111w」の最初の1は、このカテゴリーを表す。1は、「天然酵母クラシックブレッド」のカテゴリーに割り振られた数字なのだ。順番に2は天然酵母スイートブレッド、3は天然酵母プレーンブレッドといった具合い。
「111w」の2番目の1は、カテゴリー内での通し番号。「天然酵母クラシックブレッド」のカテゴリーには2つの商品があり、同カテゴリー内での1番目の商品であることを表す。
3番目の1は、使用している粉の種類を表す。1は「はるゆたかブレンド」、2は「はるゆたかブレンド」と「ドルチェ」、3は「Sドサンコ」といった具合いだ。
最後のアルファベット文字は、粉以外の材料を表す。wは榛名山自然水、jはジャージー乳、eは自然卵、cはカルピスバター、bはエシレバター、oはその他の材料など。
人気商品は、天然酵母クラシックブレッドのひとつである「111w」という商品。内麦粉の「はるゆたかブレンド」、ホシノ酵母、榛名山自然水、自然塩の「海の精」などを材料にしたリーンな配合の生地から作る食パン。2斤の大きさの3つ山の形で、価格は900円。3分の1カットが300円。
天然酵母スイートブレッドに分類されている「221jeco」の人気も高い。はるゆたかブレンド、ホシノ酵母、「海の精」のほか、ジャージー乳、自然卵、カルピスバターなどを配合したリッチな生地で、ルセット特製クリームを包んだ製品だ。セルクルに入れ、ホイロをとって焼成する。生地重量は68グラム。1個300円。
「2111weco」は、はるゆたかブレンド、ホシノ酵母、「海の精」、カルピスバター、自然卵などを配合した生地を、平たいセルクルに入れ、その上にアーモンドクリームを絞って焼いた製品。ホイロは15分と短くし、あまり膨らませない。焼き菓子感覚の製品だ。4分の1カットが320円。
このほか、5種類のベリーを練り込んだ「フルーツケーキ感覚」の「241jeco」、カマンベールチーズを包んで焼き上げた「311wjo」などがよく売れるという。

ルセットは、東急田園都市線・三軒茶屋駅から徒歩10分。店舗の営業は土、日の2日間のみで、両日とも午後3時から午後7時まで。製造スペースと売場を仕切る形でガラス製のショーケースを設置。対面で販売する。田中さんと、アルバイトの女性の2人で、製造と販売を行う。5席のイートインスペースもある。店舗での客単価はおよそ1500円。ネットでの平均日商は約9万円、店頭販売の平均日商はおよそ6万円。


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