自家製の内麦全粒粉、駅前商店街立地 - アン・トゥ・タン - ブランスリー電子版

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お店拝見/2001年7月号

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自家製の内麦全粒粉、駅前商店街立地 - アン・トゥ・タン

東京・品川区にある「アン・トゥ・タン」は、駅前商店街にあるベーカリーだ。
大手リテールベーカリーチェーンで修業を積んだ磯部政利さんが、「フランスで食べたカンパーニュ」の味を、生まれ育った町の人たちにも味わってもらおうと、今年1月にオープン。
少しずつではあるが、「磯部さんのパン」が地元の人たちに浸透してきた。

東京都品川区東大井5‐2‐8
電話03‐5479‐1748
営業時間 午前7時〜午後7時 火曜定休



フランスで食べたパンが忘れられない。ハルユタカを店内で挽く

磯部代表がフランスで食べたパンを再現したブラン


エシレバターも販売


磯部政利代表
「フランスのオーガニック農場で食べたパンの味が忘れられません。私の生まれ育った町の人たちにも味わってほしい」
 今年1月にオープンしたベーカリー「アン・トゥ・タン」の磯部政利代表は、こう言って目を輝かせる。
磯部代表が食べたパンは、オーガニック栽培の小麦を挽いた粉と天然酵母などから作った素朴なカンパーニュだった。「薄くスライスして、無塩バターをつけて食べるんです。これがとにかくおいしかった」。
 このおいしさを磯部代表流に再現したのが、アン・トゥ・タン一押しの商品「石臼山形」(360円)と「ブラン」(ホール400円、ハーフカット200円)だ。
 両製品とも、内麦粉のハルユタカ、自家製粉のハルユタカ全粒粉、オーガニックレーズンからおこした自家製の種などを配合して生地を捏ねる。石臼山形は、1斤型で焼く。ブランは、ナマコ型に成形して焼成。
同ベーカリーでは、店頭に電動式の石臼を設置、内麦のハルユタカを挽いて、石臼山形、ブランのほか、黒ゴマを練り込んだ「トレコン」(270円)にも配合している。
「1週間に1回、石臼でハルユタカを挽いているんですが、『農場の香り』が店内に立ち込めるんです。お客様に小麦粉の本当の香りを感じ取ってもらえればと思っています」と磯部代表。
石臼山形やブランに塗って食べてもらおうと、エシレバターの販売もしている。「フランスのオーガニック農場で味わったパン」が磯部代表の原点なのだ。



友人との共同経営を経て独立。製パン材料の安定入手に苦心

自家製粒あんを包んだ「小倉アン」(120円=左)


内装は、ウッディなイメージで統一
磯部代表は、大手リテールチェーンで、パン職人として勤務したあと、学生時代の友人と共同出資で、東京・世田谷区用賀にベーカリーを出店した。その友人は、パリダカールのレーシングチームに関係する仕事をしていた。そのレーシングチームの拠点が仏ノルマンディー地方のオーガニック農場にあった。その友人の誘いで、磯部代表は、2週間ほどその農場に滞在する機会を得た。そこで食べたパンの味が強烈に印象に残った。
1年ほどその友人とベーカリーを共同経営したあと、生まれ育った東京・品川区に15坪ほどの店を単独で出した。JR京浜東北線・大井町駅前の商店街だ。
パン製造機械、売場と工場の内装、店舗物件の保証金などに1700万円を費やした。
製造機械は、オーブンや冷蔵庫などを除いて、すべて中古で揃えた。約800万円かかった。
売場の内装はすべて木調で統一した。大筋の設計は磯部代表が自ら行った。売場と製造スペースの内装には、およそ500万円をかけた。
「自分の作りたいパンを作るための材料を安定して入手する体制を築くのにかなり苦労しましたね」と磯部代表は振り返る。
ハルユタカがなかなか手に入らない。小さな材料問屋からやっと入手できることになった。現在は北海道の製粉会社から、「はるゆたかブレンド」という小麦粉を直接仕入れている。
オーガニックレーズンも安定的に供給してくれる業者がなかなか見つからなかった。ある小さな問屋が引き受けてくれた。アン・トゥ・タンには、出入りの材料問屋が多い。



菓子パン、調理パンが売れ筋。でも、食事パンも着実に浸透

コッペパンは、「コッペイチゴ」(180円)、「コッペピーナッツ」(同)、「コッペパン」(100円)の3品目を販売
オープンから2週間は寝る時間がなかった。「1日の仕事の終了時間が、毎日少しずつ遅くなって、ついに朝の作業開始の時間を過ぎるようになってしまったんです。ひとりで倒れているところに、たまたま業者の人が来て、助けてもらったこともあります」と磯部代表は打ち明ける。オープン後しばらくは無休で営業していたが、1カ月後、火曜定休に切り替えた。
アン・トゥ・タンの立地は、駅前の古い商店街。調理パンや菓子パンも品揃えに加えざるを得なかった。「いろんな人から、調理パンや菓子パンもやらないと絶対にダメだ、といわれました」と磯部代表は多少浮かぬ顔。
しかし、磯部代表流の菓子パンや調理パンに仕上げようと、試作を重ねた。
アン・トゥ・タンの人気商品のひとつである「小倉アン」(120円)は、北海道産の小豆を仕入れて炊いた自家製粒あんを使っている。砂糖は、黒砂糖を使用。パン生地にも黒砂糖を練り込む。
コッペパンも人気商品だが、「独特の柔らかさ」(磯部代表)を出すために試行錯誤を重ねた。「配合は」の質問に、磯部代表は「企業秘密です」ときっぱり。
売れ筋はやはり菓子パンや調理パン。しかし、「石臼山形やブランも固定客はついていますし、少しずつですが販売量も増えています」と磯部代表は自信をみせる。
日商は約9万円。ただ、夏に向けて若干は下がっているという。
同ベーカリーがある地域は、磯部代表がこれまでパン職人として働いてきた場所に比べて、パンの価格を低くしないと売りづらい場所なのだそうだ。磯部代表はそれをわかった上で店を出した。「自分の生まれ育った場所に根を張って、自分がおいしいと思うパンを伝えていきたいと考えたんです」。

売場に石臼を設置し、内麦のハルユタカを挽く
石臼
オーストリア製の電動式石臼。1時間に4キロ程度の製粉能力がある。磯部代表は「最初は目詰まりをおこして苦労しましたが、最近はだいぶ慣れてきて、割りとスムーズにいっています」と話す。
売場に設置し、1週間に1回程度の割合で、内麦のハルユタカを挽いている。できたハルユタカ全粒粉は、ブランや石臼山形などに配合している。
「小麦を挽き始めると、農場の香りが、店内に満たされます。お客様に本当の小麦粉の香りを知ってもらえれば、と考えて始めました」と磯部代表はいう。
ただ、同代表は「ちょっと説明不足かも知れません。石臼と気づいていないお客様も多いと思いますので、今後は積極的に説明していきたいと思います」と話す。
最近、ブランと石臼山形についてのリーフレットを作り、顧客に配布している。

店内の石臼で挽いたハルユタカ全粒粉を30%配合

石臼山形
店内に設置した石臼で挽いたハルユタカ全粒粉を30%配合。「自家製内麦粉は香りが違います」と磯部代表はいう。基本的に同じ生地から作る「ブラン」と並んで、磯部代表が最も気に入っているパンだ。
「固定客がしっかりとついているし、少しずつではありますが、新しい客も増えています」と磯部代表は口元をほころばせる。
【配合%】
ハルユタカ全粒粉(自家製粉)…………………………………30
内麦粉(ハルユタカ)…………40
種……………………………48
上白糖…………………………2
塩(伯方の塩)…………………2
バター…………………………2
水(蒸留水)…………………40
【工程】ミキシングL3分(油脂投入)L2分M3分、捏ね上げ温度26度C、発酵3時間(2時間の時点でパンチ)、分割250グラム×2、成形→軽く丸めて、1斤型に入れる。ホイロ30度C70%1時間30分、焼成上火200度C下火230度C30分
※種は、オーガニックレーズンからおこす。作り方の概略は次の通り。(1)オーガニックレーズンと水を混ぜ合わせたものを24時間置く(2)[1]を濾してエキス200グラムをとり、ハルユタカ全粒粉200グラムと混ぜ合わせ、26度Cの場所に24時間置く(1番種)(3)[2]にハルユタカ全粒粉400グラムと水400グラムを加えて混ぜ合わせ、26度Cの場所に24時間置く(2番種)(4)[3]にハルユタカ全粒粉800グラムと水240グラムを加えてを混ぜ合わせ、さらに26度Cの場所に24時間置く(3番種=これを生地に配合する)
※種は継がずに1回で使い切る。毎日レーズンエキス、1番種、2番種、3番種を仕込むことになる。

原価計算女王
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