レーズン種と酒種、「くろうさぎ」のパン屋さん - ラパンノワール - ブランスリー電子版

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お店拝見/2001年8月号

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レーズン種と酒種、「くろうさぎ」のパン屋さん - ラパンノワール

「風見鶏」ならぬ「風見くろうさぎ」が楽しげにまわるラパンノワール
自家製のレーズン種と酒種でパン作りに励むベーカリーが、埼玉県秩父市にある。奄美大島の黒うさぎがそのまま店名になった「ラパンノワール」だ(ラパンノワールはフランス語で黒うさぎの意味)。 
新井孝男代表は、1991年からおよそ4年間、奄美大島で、自然食系の通販と卸し専門のベーカリーを営んだ経験を持つ。
丹誠込めて作った自分のパンを、顧客と接しながら販売したい思いが募り、生まれ故郷の秩父市に店舗を構えた。

埼玉県秩父市野坂町1‐18‐12
電話0494-25-7373
営業時間 午前10時〜午後7時
火、第1月曜定休



「身体によくておいしいパン作りたい」。石臼で農林61号を挽く

現在は使用していないが、「窯伸びが違う」(新井さん)という石窯


内麦の農林61号を挽くための石臼


ラパンノワール代表の新井孝男さん
ラパンノワールでは、外麦粉は一切使用しない。デニッシュ、菓子パン、食事パンなど合計50アイテムを、すべて内麦粉で作る。酵母は、自家製のレーズン種と自家製の酒種のみを使用。
「天然酵母のパンというと、『身体にはいいがおいしくない』というイメージがありましたが、身体によくて、おいしいものを作りたいんです」と新井孝男代表はいう。
レーズン種は、オーガニックレーズンからおこす。水と混ぜ合わせて、発酵させたエキスと、農林61号の全粒粉を混ぜ合わせて、熟成させる。
酒種も完全自家製。炊いた米と乾燥麹、水を混ぜ合わせて作る。パン生地に配合できるようになるまで5〜6日かかるという。
ラパンノワールのパン作りは、時間をかけてじっくりと発酵をとり、小麦粉本来の味を引き出すことが基本。ミキシングは、かなりアンダーで、新井さんは「ミキシングし過ぎると生地が酸化して、香りが損なわれるんです」と説明する。
小麦粉と酵母以外の材料も、「素性の知れた安全性の高いもの」(新井さん)を使用している。
同ベーカリーには、石臼があり、農林61号を挽いて全粒粉を作っている。これは自家製のレーズン種などに使用する。
現在は使っていないが、石窯もある。「窯伸びが違います。クラストの薄いパリッとしたパンが焼き上がります。ゆくゆくは1日1窯ぐらいは焼きたいですね」と新井さんは目を輝かせる。製造スケジュールにどう組み込むかを検討中だ。



奄美大島で通販のベーカリーを営む。「店頭で顧客と接したかった」

2階まで吹き抜けの売場は、ゆったりとした空間だ。


窓際の陳列棚には焼き菓子が並ぶ
新井さんは奄美大島で、自然食品店への卸しと通信販売のみのベーカリーを、ナオミ夫人と共に営んでいた。「農業か漁業に従事して暮らしたいと思っていたのですが、自分で何かを作りたいと考え、ベーカリーを始めました」と新井さんは振り返る。「自給自足の生活に興味がありました」ともいう。すももなどから酵母をおこし、国内産小麦粉でパンを作っていた。奄美大島では1991年からおよそ4年間パン作りに励んだ。
「店で顧客と接しながらパンを作りたい」と考えるようになり、修業のため青山アンデルセンにパン職人として就職した。1995年3月のことだ。
「それまでは外麦粉とイーストでパンを作ったことがなかったので、最初は戸惑いました。それと自己流で悪い癖がついていたことを痛感しました。菓子パンやデニッシュペストリーの作り方も覚えました」(新井さん)。
青山アンデルセンで3年6カ月働き、一通りの製パン作業を改めて習得した。



「くろうさぎ」がシンボルマーク。売場は吹き抜けで、ゆとりの空間

奄美の「くろうさぎ」の写真が飾られている


「くろうさぎ」のプレートをあしらったバゲット立て
1年間の準備期間ののち、生まれ故郷の埼玉県秩父市に、念願の「店頭販売のベーカリー」を建てた。
「くろうさぎ」がシンボルマークだ。リゾート地のペンション風の店舗の屋根には「風見鶏」ならぬ「風見くろうさぎ」が楽しげにまわる。入り口上には、「くろうさぎ」の絵柄が入った「ラパンノワール」のプレートを掲げる。店内にも、「くろうさぎ」のプレートがついたバゲット立てや、「くろうさぎ」の写真などがさり気なく飾られている。
「『くろうさぎ』は、最初にベーカリーを始めた奄美大島固有の動物です。進化の過程の早い段階の原始的なうさぎといわれ、自分がやろうとしていることと重なる部分があるんです」と新井さんはいう。
約10坪の売場は、2階部分まで吹き抜けになっており、かなりゆったりとした空間だ。パンは対面で販売。ショーケースはレジを挟んで2つある。
1つは冷蔵ショーケースで、サンドイッチを陳列する。
もうひとつには、デニッシュや菓子パンなどが並ぶ。販売スタッフが立つ後ろ側が食事系のパンの陳列棚になっている。窓際には焼き菓子が並ぶ陳列棚がある。
イートインのスペースもあり、スープとサラダがつく「パンの籠盛りセット」や料理1品がつく「パンのプレート」などを出す。
店舗は2階建てで、イートインスペースも含めた10坪の売場、約20坪の製造スペースのほか、休憩室、シャワールーム、宿泊のための部屋などもある。
新井さんは「ゆくゆくは、住み込みで働くスタッフも入れようと思っています。ここでしっかりと修業をさせてあげたいと思うんです」と話す。
ラパンノワールは、西武線・西武秩父駅から徒歩2分の距離。ただ、「地元の人でもあまり通らない場所」(新井さん)にあり、今後は観光客にも来店してもらえるように、店の認知度を高めたいという。
製造スタッフは新井さんを含めて2人。販売はナオミ夫人が担当する。

ラムレーズンと無農薬栽培のバナナをトッピング
バナナのデニッシュ
バナナとラムレーズンをトッピングしたデニッシュで、ラパンノワールの人気商品のひとつ。バナナは無農薬栽培のものを、レーズンはオーガニックのものを使用。あっさりとしていて上品な味。しかし、コクもある。価格は180円。
【配合%】
ハルユタカ 60
岩手産キタカミ 15
レーズン種 40
自然海塩 1
粗精糖 10
平飼い有精卵 10
無塩バター 8
ミネラルウォーター 25
低温殺菌牛乳 5

【工程】ミキシングL5分M3分(バター投入)M2分、捏ね上げ温度25度C、発酵28度C3時間、折り込みバター対生地45%、3つ折り3回、成形→厚さ4ミリにのばして8センチ四方にカットし、直径8センチの丸底型に入れる。ホイロ29度C75%1時間30分、焼成上火下火とも210度C15分
※3つ折り3回後、冷凍庫に30分入れる。
※ホイロ後、カスタードクリームを絞り、ダイスカットのバナナ、ラムレーズン、洗双糖を混ぜ合わせたものをトッピングする。

自家製の、なすの味噌炒めを包む
ナスのおやき
歯応えのあるパンと、なすの味噌炒めのトロッとした食感の対比がポイント。150円。
【配合%】
ハルユタカ 75
レーズン種 40
自然海塩 2
洗双糖 4
サラダ油 3・3
ミネラルウォーター 48

【工程】L5分M3分、捏ね上げ温度26度C、発酵30度C75%3時間、分割50グラム、ベンチタイム20分、成形→なすのフィリング40グラムを包む。ホイロ32度C75%1時間30分、焼成上火下火とも210度C14分(スチーム注入)
※焼成前に白ゴマをトッピングする。
▼なすのフィリングの作り方
(1)なすを適当な大きさにカットし、ゴマ油で炒める(2)[1]にみりんと味噌を加えてさらに炒める

原価計算女王
原価計算女王
自家製粒あんを包む。有機栽培の小豆を使用
つぶあんパン
自家製粒あんを包んだあんパン。価格は150円。
【配合%】
ハルユタカ 100
酒種 30
自然海塩 1
粗精糖 15
低温殺菌牛乳 5
水 25
平飼い有精卵 10
無塩バター 5

【工程】ミキシングL5分M3分(バター投入)M5分、捏ね上げ温度28度C、発酵32度C75%3時間、分割45グラム、ベンチタイム20分、成形→粒あん40グラムを包む、ホイロ35度C75%1時間30分、焼成上火下火とも210度C12〜13分
※焼成前に塗り卵をし、黒ゴマをトッピングする。

今年のレーズンコンテストで、審査員特別賞に輝く!
ルヴァンシュルプリーズレザン
ラパンノワールの製造スタッフの新井桂子さんが、今年6月23日に開かれたレーズンコンテストに出品して、審査員特別賞を獲得した商品。7月11日から16日までのレーズンフェアで売り出し好評を博している。1個230円。型にブラウンシュガーを塗って焼くので、パンの表面がカラメルコーティングされた状態になる。
【配合%】
ハルユタカ 45
農林61号(中力粉) 30
レーズン種 40
自然海塩 2
洗双糖 8
平飼い有精卵 5
低温殺菌牛乳 5
水 30
無塩バター 5

【工程】
ミキシングL5分(バター投入)M3分、捏ね上げ温度25度C、発酵29度C75%3時間、冷蔵保存1時間、折り込みバター対生地45%、3つ折り3回、成形→(1)厚さ3ミリにのばし、10センチ四方にカット(生地重量45グラム)(2)フィリング30グラムをだんご状に丸めて[1]の生地で包み、バターとブラウンシュガー(分量外)を塗った丸底型に入れる。ホイロ29度C75%2時間(1時間の時点で、トッピングをのせる)、焼成上火180度C下火210度C1時間
 ※折り込み作業が1回終了するごとに、生地を30分休ませる。
▼フィリング
[配合%]レーズン100、いよかんピール10、ココナッツロング50、チホク(薄力粉)25、アマンドプードル25、シナモンパウダー5、ラム酒50
[作り方](1)レーズンを蒸し器で10分程度蒸す(2)全材料を混ぜ合わせ、1日置く
▼トッピング
トッピングは、製品1個当たり、トッピング生地(1センチ角にカットしたもの)25グラム、ココナッツ細切り5グラム、ブラウンシュガー5グラムを混ぜ合わせたもの。
[トッピング生地配合]ハルユタカ45、チホク20、ライ麦粉5、全粒粉5、レーズン種40、自然海塩2・5、水40、無塩バター5
[工程](1)折り込み以前の工程は、本体の生地と同じ(2)3つ折り3回の際に、バター(対生地45%)のほかにブラウンシュガー(対生地20%)を折り込む(3)厚さ3ミリにのばし、1センチ角にカットする

すべてのパンは、レーズン種か酒種で作られる

最上段左が、オーガニックレーズンと水を合わせたレーズン種の最初の段階のもの。そのほかは、酒種。
レーズン種
オーガニックレーズンからおこす。作り方の概略は次の通り。
(1)オーガニックレーズンと水を混ぜ合わせたものを24時間置く(2)[1]を濾してエキス200グラムをとり、農林61号の全粒粉200グラムと混ぜ合わせ、26度Cの場所に24時間置く(1番種)(3)[2]に農林61号の全粒粉400グラムと水400グラムを加えて混ぜ合わせ、26度Cの場所に24時間置く(2番種)(4)[3]に農林61号の全粒粉800グラムと水240グラムを加えて混ぜ合わせ、さらに26度Cの場所に24時間置く(3番種=これを生地に配合する)
※種は継がずに1回で使い切る。毎日、レーズンエキス、1番種、2番種、3番種を仕込むことになる。

酒種
炊いた米と乾燥麹、水を混ぜ合わせて、1日発酵させたものからスタートする。これに、再び炊いた米、乾燥麹、水を加えて混ぜ合わせて1日発酵させる。これを5回程度繰り返して、パン生地に配合する。

パンの品揃えは、全部で50アイテム

ラパンノワールには、この他にも多くの人気商品がある。
「クリームチーズいちじく」(200円)は、いちじくとくるみを練り込んだ生地で、クリームチーズのフィリングを包んで焼き上げる製品。クリームチーズフィリングは、クリームチーズ、サワークリーム、洗双糖を混ぜ合わせたもので、「上品なおいしさ」と評判だ。
「ナッツフルーツ」(420円)は、カレンズ、くるみ、いよかんピールをたっぷりと練り込んだハースブレッド。レーズン種を使用する。
このほか、新井さんが1997年のレーズンコンテストに出品して、カリフォルニア・レーズン大賞を受賞した「ルヴァン・セサミ・レーズン」、いちじくとくるみを練り込んだ「パン・オ・フィッグ」(380円)、「クグロフ」(大680円、小160円)なども人気だ。


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