パン製造の手間の掛けどころと効率化のしどころあなたの店の製造タイムテーブルは? - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る
特集/2001年9月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


パン製造の手間の掛けどころと効率化のしどころあなたの店の製造タイムテーブルは?

ベーカリー3軒に、日頃のパン製造作業について取材した。
手で行う作業と機械でこなす工程をどう振り分けているか、
手間の掛けどころはどこか、などについて聞いた。
各ベーカリーとも、手作りの温もりにこだわりながら、
いかに効率化していくかについて、真剣に考えている。



パン生地は人の手を恋しがる。道具として機械を使いこなす - ベルアルプ

職人の道具として機械を使う
東京・豊島区巣鴨のベーカリー、ベルアルプの地引弘道代表は「パン職人にとって道具は極めて大事だと思います。道具は職人の手と同じですから。道具として機能しない機械は使いません」と話す。
同ベーカリーは、毎日仕込む生地数がおよそ30とかなり多く、多品種少量生産の典型。
導入している機械は、ミキサー、パイローラー、冷蔵庫、冷凍庫、ホイロ、オーブンなど基本的なものだけだ。
前日仕込んで、低温で一晩発酵させる数種類の天然酵母の生地や、前日に成形して冷凍庫に保存しておく、デニッシュやバターロール生地以外は、すべて当日に仕込む。

一次発酵に最も気をつかう
「製パンの中で最も重要な工程は何ですか」との質問に対して、地引代表は、「一次発酵だと思います」と答える。
一次発酵については、室温で発酵させた時にパン生地が最もいい状態になる条件を生地ごとに把握し、発酵時間の調整などは一切しない。
捏ね上げ温度が意図した温度より高くなってしまった場合は、冷凍庫に入れて冷やしたりするが、それは、通常の発酵の条件に戻すために行うことだ。
季節によって、また、日々の条件によってイーストの配合量を微妙に変える。
捏ね上げ温度は、全般的に低くして一発酵をじっくりとるように心掛ける。
「夏場の暑い時で、食パンなど1回の仕込み量が多い場合は、冷水を使っても、捏ね上げ温度が上がってしまうので、仕込み水に氷を入れて、ミキサーボウルに入れることもあります。この場合は、最初に低速で氷が溶けるまでまわします」と地引代表。
こうしたことも、品目ごとの理想的な一次発酵を得るために行われることだ。

自分の手として機能するかどうか
ベルアルプは、狭い製造スペースで、多くの種類のパンを作る上、2段窯を使っているので、窯が混み合うこともしばしばだ。
少しでもスムーズに焼成作業が進むように、ホイロの時間を調整することはあるそうだ。
地引代表は「例えばフランスパンなどは、窯が混んでいる時は、成形後、布取りして、室温である程度置いてから、ホイロに入れることもあります」という。
この場合、生地表面が乾かないように、布をかぶせておく。また、クーラーなどの風が当たらないようにする。
ホイロに入れずに焼成すると、生地の表面が均一に湿り気を持たないので、室温で発酵させた後は必ずホイロに入れるようにしている。
「私は機械を使うか否かは、それが自分の手の延長として機能するかどうかで判断します。つまり、職人の道具となるかどうかなんです。パン生地は人の手を恋しがります」(地引代表)



手作業と機械をうまく組み合わせる。機械化には積極的 - デニッシュハウス

オーバーナイト発酵で作業をスムーズに
神奈川県横浜市瀬谷区にあるベーカリー、デニッシュハウスの野村忠雄社長は「機械化できるところはした方がいいと思います。浮いた人件費を材料費に使えば、その方が絶対にいいパンができます」と力説する。
同ベーカリーは、店頭販売のほか、自然食品店などへの卸販売も手掛けている。販売額は卸の方が多い。仕込み生地数およそ30のうち、8割程度を前日の夕方に仕込み、一晩かけて発酵させる。
朝一番で取り掛かる作業は、開店と同時に店に並べる菓子パン約15品目の分割や、同じく開店と同時に出す調理パン類の加工作業だ。
卸と店売りあわせて、製造する品目数は、約100。当日に仕込む食パンとバターロール生地以外は、すべて前日に仕込んで一晩かけて発酵させた生地から作る。

分割機やモルダーを積極的に活用
同ベーカリーは、卸販売が多いため、作る量が多い品目が多く、分割や成形作業は、分割機やモルダーを活用している。
野村社長は「普通の食パンなどは、モルダーを通して、すぐに型詰めしますが、モルダーで伸ばしただけの状態から、手作業で様々な材料を巻き込んだりして作る製品も多い。製品によって機械と手作業をうまく組み合わせています」と話す。
製造スタッフは10人。分業体制ができ上がっていて、作業の割り振りは、野村社長の子息の太一さんが、全体の進行具合をみながら、リアルタイムで指示を出す。
例えば、あるアイテムがホイロに入っていて、ホイロから出る時間にちょうど窯が他のパンで一杯になることがわかったら、その品目はホイロから出して室温で発酵させることで、窯入れの時間を遅らせる。仕込み、一次発酵、分割・成形、ホイロ、焼成の各部門の様子を常に考慮して、全体のパン作りが最もスムーズに進むように、太一さんが管理する。

機械化云々よりいい材料を使うべき
野村社長は「基本的な製造スケジュール表はありますが、『生きもの』が相手ですから、予定通りにいかないことも多い。リアルタイムで製造スケジュールの調整ができなくてはなりません」という。
同社長はさらに「リテールベーカリーの持ち味を損なわない範囲で、機械化は積極的にすべきです。私は、手作業云々より、よりいい材料を使うことの方がはるかに大事だと考えています」と話す。



機械化することで、少しでもパンの品質が落ちるなら、その機械は使わない - ラ・フーガス

条件付で機械化すべき
東京・世田谷区梅丘のベーカリー、ラ・フーガスの仁札正男社長は「機械を使いこなし、よりおいしいパンができて、仕事の効率が上がるなら、機械化するべきだと思います」と話す。
同ベーカリーは、1日約16〜18種類の生地を仕込み、およそ70アイテムの商品を焼き上げる。
導入している機械は、ミキサー、冷蔵庫、ドウコン、ホイロ、リバースシーター、オーブンなど。分割機とモルダーはない。

手捏ねで仕込むパンもある
ラ・フーガスには、「プロヴァンスエルブ」というハーブ入りのパンがあるが、この商品は手捏ねで仕込んでいる。
仁札社長は「手捏ねで仕込むようになったきっかけは、仕込む量が少ないので、ミキサーにかかりにくいということでした。今もこのパンだけは手捏ねで仕込んでいます。パン職人として、手捏ねの技を身に付けていたいということもあります」という。仁札社長によると、手捏ねの場合、アンダーミキシングと同じ状態になるので、ボリュームは出しづらいという。
同店では、窯が混み過ぎないように、綿密なスケジュールのもとで作業しているが、それでも窯が一杯になってしまうこともあるそうだ。そうした場合は、ホイロ時間を調整する。「すぐにホイロに入れずに、室温で一定時間置いてからホイロに入れて、調整することはあります」と仁札社長。

製法による効率化もある
「機械でというより、製法によって効率化する道はたくさんあるのでないかと考えています」と仁札社長はいう。
例えば、食パン。「ウチではまだ実践していませんが、朝一番で食パンを出したいと思ったら、低温でオーバーナイト発酵させる方法があります。この場合は、味や食感がむしろよくなると思うので、やりたいと思っているのですが、冷蔵庫のスペースの関係で現在はできません」(仁札社長)

機械化でさらに品質向上
同店には、モルダーがないので、食パンの成形は、リバースシーターにかけてから、手でたたみ込んでいる。
「モルダーは小型のものでいいのでほしいと思っています。食パンの場合、機械でガス抜きした方が、目の細かなきれいな内層になるので、手で伸ばすよりいいと思います」(仁札社長)
クロワッサンは前日に仕込んで成形し、マイナス7〜8度Cのドウコンに一晩入れておくが、ドウコンの中でホイロまでもっていかずに、マイナス7〜8度Cのドウコンから出して室温で放置して解凍してから、ホイロ専用機に入れている。仁札社長は「私が使いこなしていないということかも知れませんが、ドウコンでホイロまでもっていくと、納得のいく製品ができないんです」と話す。
仁札社長は「機械導入で、効率化するのは非常に大切です。しかし、そうすることで、パンの品質が少しでも落ちると判断したら、その機械は導入しません。機械を入れることでむしろパンの品質がよくならなくてはなりません」と言い切る。

原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら