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海外情報/2001年9月号

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独・伊のパン事情 手作りが主流。チェーンベーカリーも台頭。峠を越えれば同じパンはない。コンビニエンス求める傾向も

ドイツのハンブルグ鉄道駅構内に出店したベーカリー店舗。約40種ほどの売れ筋商品で勝負する


イタリア最大の商業都市ミラノで展開する新コンセプトのFF店「スピチコ」
文・高橋秀尚(�螢僖鵐錙璽襯病緝充萃�役、海外情報研究会主宰)

前回までは市場・商品開発を中心とした基礎的な理論を海外における実例をあげてお話してきたが、今月は最近の筆者の海外取材中に見聞したことから、主として欧州におけるお話をしよう。

●欧州は手作りパン
欧州のベーカリー業態の勢力分野、つまりお客はどのような形態のお店(つまり業態)でパンを買うかを調べてみると、それぞれの国の人々の生活様式(ライフスタイル)が窺い知れて興味深い。まずヨーロッパを代表するドイツでは「ハンドヴェルク」=英語では「ハンドワーク」、つまり手作りベーカリー(小規模リテールベーカリー)=が圧倒的に強くて、業界の売上げの約70%を占める。
また、イタリアは今最も話題になっているアルチザンの本家である。ちなみにイタリア語では同意語をアルティジアーノ(artigiano)と言い、すべての商品を手作りする事を意味する。例えばイタリア特産の皮製品や宝飾細工などであるが、もちろんパンや菓子類も含まれる。そして手作りの割合はおそらく80%を超えるということをイタリア製パン組合の幹部が語っている。

●手作りは減少傾向
しかしながら、どの国も大規模な食品販売店舗が台頭しつつあり、また若い世代が親の職業を継承したがらないという時代変化のために、小規模リテールベーカリーの件数は減少傾向にあるという。加えて、来年度から始まる欧州連合(EU)の貨幣統一を契機に主要国間の食品流通は従来の伝統(トラディション)を消滅させつつある。以前は決して食べなかったと思われるアメリカのハンバーガーもM社の欧州における店舗数は5000に達し、総売上額は93億ドル(約1兆2000億円)という巨大市場を占めつつある。ほとんどの国々には、厳しい「商店営業時間規制」があり小売業のネックになっているが、ファストフード業種は小売業ではなくレストランとして営業許可を得ているとのことである。現実にドイツのM社店舗は深夜になっても若者が集まり、繁盛していた。

●鉄道駅と空港
ついでながらドイツなど欧州諸国の小売業営業時間規制の例外として鉄道駅と空港がある。土曜日の午後や日曜日も通常営業しているから、日本から旅行中に土日曜日にあたっても市内では鉄道駅に行けば商店は営業しているし、お金の両替もできることを知っていると便利だ。商品は庶民的なものが多い。また立派なベーカリーもあり、品揃えや新商品を知るのに役立つ。さらに詳しく見ると、駅のベーカリーで買う商品とお客の購買目的がわかる。まずドイツ人の朝食アイテムであるブロイチェン(この発音が難しい)を買う人は、ほとんどが列車の中で食べるのではなく、家庭内消費。ところがブロイチェンを使ったサンドイッチ(belegtes=ベレクテという)は大部分が鉄道利用者か、近在の事務所や商店で働く人々の昼食用。椅子のない丸テーブルで食べる立食スタイルはお馴染みであるが、これをインビス(imbis)という。ちなみにドイツではこの丸テーブルの直径まで法律で決められている(標準サイズは94センチ)。

●フレッシュセンター
また、ドイツのサンドイッチの最新トレンドは健康志向を配慮したシーフードメニューで、NORDSEE(ノルドゼー=北海)というチェーンが伸びている。駅、空港はもちろん、市中の目抜き通りに出店している。この企業は日本にも上陸しそうな気配?
またドイツは最新のフードサービス業態開発を見ることができる国だと思う。その実例として、ベーカリーやデリを含む各種の生鮮食品を網羅する共同出店大型店舗「フレッシュセンター」がある。店舗内には立食を含む飲食スペースがあり、スナックや簡単な食事には充分なメニューが準備されている。ドイツ独特のソーセージは日本でフランクフルターとして知られているが、ドイツではヴルスト(wurst)という。ご存知のように白い物、黒い物、茹でたり焼いたりといろいろ。また地方ごとに名産品を競っているのは壮観。小さな紙にのせて、そのまま食べる。素朴であるがドイツ旅行の楽しみの一つである。日本でもベーカリーの販促イベントとして簡単ではあるが、おもしろいかも知れない。

●地方色映す鏡
ドイツといえば日本でもお馴染みの「キオスク」が駅構内に必ず見られる。ちなみに、「キヨスク」は正しい発音ではないと思う。原語はKIOSK。筆者が見る限りでは品揃えは簡単であるが、駅ホームにあるので簡単なスナックや飲みものを買うには便利。
いずれにしてもドイツでの勉強は鉄道駅のフード店舗を見るのが特に時間のない場合には最も有効な手段である。その都市の代表的なベーカリーが出店しているし、品揃えも標準的。現地の人々の食嗜好を知ることができる。例えば私たちはドイツ名物のブレッツェル(Bretzelと綴る。プレッツェルではない)は全土に見られると思うが、あれは南ドイツ、バイエルン地方の特産。ミュンヘンのビアホールで食べた経験をお持ちの方も多かろう。ちなみにあのスタイル、音楽を聞きながら1リッターグラスのビール一気飲みは南ドイツが主流。南ドイツのビールは北に比べてアルコール度が低いからできるのだそうだ。

●イタリアの菓子パン
次にイタリアにおける最新のフードマーケットを調べてみよう。この国は前述のように今もって小規模リテールベーカリーが主流を占めている。イタリアのパンは内麦を使う関係だと思うが、あっさりしていて個性がないように思われる。だが彼らにいわせれば食事の際に食べるパン類は、そうでないと食事そのものの味を殺してしまうのだそうだ。では何を食べたら一番イタリア的なのかというと、パネ・ドルチェ(pane dolce)だという。つまり日本の菓子パン類に相当するもので種類は「教会の数と同じほど」多いのだそうだ。イタリアには「峠を越えれば同じパンはない」という諺があるのだそうだ。

●巨大企業も存在
その一方でかっては国有であった巨大企業MOTTTA(モッタ)のような、市場を独占する巨大企業も存在する。この企業は今もって北イタリアを中心に食品販売の各種業態を開発しているが、商業都市ミラノにある同社開発のセルフサービス形式レストランと、切り売りピザ中心の「スピチコ」をご紹介する。店舗の場所は中心地ドウモ広場で、有名な大寺院をはさんで位置する。今までは「食こそ我が命」とばかり長時間をかけて食事をしていたイタリアーノも、最近はそうもいっていられなくなったようだ。そこで自分で好きなメニューを選び、レジで支払う形式の店舗を作ったという次第。筆者も何回か試食体験したが、お味の方はまずまず。何より時間の節約が有難かった。平均客単価は日本円で千円前後。

●コンビニエンス
続いて「スピチコ」は同社の系列会社が管理するもので、ピザを店頭で焼いてから切り売りするのが特徴。本来はピザは時間をかけて焼き、一枚をそのまま食べるのが建て前。ところが時間不足、少食傾向などで、このような新しいコンセプトの店ができたという。語源はイタリア語のspicchio(スピチコ)で、スライスの意味。
これらの店舗にはサンドイッチを含む各種メニューが準備されていて、モダンな店舗の雰囲気もあってか繁盛しているようだ。店長の話ではイタリア人も最近になってようやく時間観念が出てきたとのことで、自分たちが売るのは商品とコンビニエンス(便利なこと)だと語っていたのが印象的であった。つまり業態の交錯化がドイツ、イタリアのような生活変化を好まない国においても起こりつつあるということであろう。次号では今回ご紹介した「フレッシュセンター」について詳しくお話したい。そこにはベーカリー業種の今後の方向性を探るヒントがあるように思われる。









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