安全、安心なパン - アルル - ブランスリー電子版


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お店拝見/2002年2月号

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安全、安心なパン - アルル

アルルの外観
東京・巣鴨のベーカリー、アルルは、「安全で安心なパン」を作ろうと努めてきた過程で、多くのユニークなパンを生み出した。
「疲労回復パン」「ストレス解消パン」「びっくりナッツ」など、数えればきりがない。
林代表の旺盛な好奇心は、アルルを巣鴨の名物ベーカリーに育て上げた。

東京都豊島区巣鴨1‐21‐11
03-3944-6804
営業時間 午前9時〜午後9時
定休日 木曜、第4日曜



「菓子パンで喧嘩しても勝てない」。食パンは20品目を製造販売

旬の果物を練り込んで作る「季節の果実入り食パン」


アルルの定番食パンのひとつ「ブドー食パン」


食パンの製造日程と20品目すべての食パンについての説明書きを掲げている
「洋菓子は、食べる人で月2回、食べない人は、クリスマスと誕生日だけ。その点パンは準主食なので、食べる人は毎日でも食べる」
アルル代表の林春二さんは、約15年前に、こんなアンケート結果を知った。「パンは安定している」と考え、それまで営んでいた洋菓子店でパンも作り始めた。
最初は、冷凍生地を仕入れて焼成し、店頭に並べた。しかし、特徴あるパンが作れず、売上が上がらなかった。林さんは粉から作るスクラッチ方式でのパン作りを決心した。
アルルがある東京・巣鴨は、ベーカリーが数多くある激戦区だ。林さんは、「ウチみたいな小さな店が生き残っていくには、個性を強く打ち出さなくてはなりません。菓子パンで喧嘩しても勝ち目はないと思ったので、食パンで勝負しようと決めました」と振り返る。
現在は、20種類の食パンを製造販売。「天然酵母パン」(1斤250円)、「直捏食パン」(1斤230円、レシピを15ページに掲載)、まろやかな食感の「ハイリッチ」(1斤230円)、「ブドー食パン」(1斤300円)の4品目は毎日製造、その他は製造日限定だ。販売量が多いのは、「天然酵母パン」と「直捏食パン」の2品目だという。


林代表(左)と長男の太郎さん。太郎さんはアルルの2代目



顧客の要望に応えていく過程で様々な食パンが生まれる

砂糖不使用の「ノンシュガークロワッサン」(200円)


スナック感覚で食べられるようにした「焼きいも風・木苺」(160円、長男の太郎さんが開発した商品)
製造日限定の食パンにはユニークな製品が多い。
林さんは有吉和佐子著の「複合汚染」を読んで、共感を覚えた。「食べものは体を作る材料。安全なものを作って提供したい」と考えるようになった。
「アレルギーに悩む人のために卵、牛乳が入っていないパンを作りました。材料も輸入ものより、国産がいいだろうということで、国産小麦を使うようになり、農薬を使用していない方がいいだろうということで、無農薬の小麦粉を使うようになりました」と林さんはいう。これは、顧客の要望に素直に応えてきた結果でもある。この過程で多くのユニークな食パンが生まれた。
「疲労回復パン」(1斤450円)は、漢方で疲労回復作用があるとされる「天門冬」(てんもんどう)を練り込んだ食パンだ。この他に、山芋、にんにく、くこの実などを入れる。「テレビや雑誌などで『疲労』や『疲れ』などの言葉が多く登場する」(林さん)ことに着目して、開発した製品だ。
はすの実やゆりの根、ミントの葉などを入れた「ストレス解消パン」(1斤450円)もある。「ストレスの多い時代です。少しでも発散してもらえればと思いました」林さん。
「季節の果実入り食パン」(1斤450円)はその名の通り、旬の果物を練り込んだ食パン。取材時は、ゆずが入った食パンが店頭に並んでいた。



菓子パンにもユニークな製品。日常性と話題性を常に追求

食パンの2次利用はラスク。ベーキングカップに入れて販売している


長男の太郎さんが開発した「2代目のカレーコッペ」(150円)
特徴ある製品は食パンにとどまらない。
たとえば「びっくりナッツ」(180円、レシピを15ページに掲載)。生地を楕円形にのばして上面に、アーモンドやカシューナッツ、ヘーゼルナッツなど5種類のナッツをびっしりとトッピングして焼き上げるパンだ。視覚的にかなりインパクトがある製品になっている。
花の形をした「花きなこ」(300円、レシピを14ページに掲載)もある。国内産無農薬小麦粉と全粒粉を使用。成形は意外と簡単。生地を棒状にして平らにのばし、短冊状にする。1つの長辺にカットを10箇所程度入れて、ロールし、カットを入れた面を上にしてホイロをとると、パン全体が大きな花のようになるのだ。
林さんは「売れるものと話題性があるものとは違います」ともいう。「専門書ばかりでは多くのお客様を呼べません。かといって漫画や週刊誌ばかりでは特徴が出せません。そのバランスに悩むことも多いですね」という林さんだが、「定番商品を大切にする一方で、話題性も常に追求する」というバランス感覚が絶妙だ。


「体にいい」様々な食品も販売している



オーダーメイドのパンも作る、顧客とともにパンを開発

林さんは「オーダーメイドブレッド」と称するパンも作っている。文字通り、顧客の「こんなパンを作ってほしい」という要望に100%応える製品だ。
ある顧客は「粉1キロを使って、白味噌とオレンジママレードをアレンジしたパンを作ってほしい」と頼んできた。
林さんはこうした注文に対して、「その注文だとこんなパンになります」と注文主に伝える。「その配合だとちょっと食感がぼそぼそになります」などと伝えることもある。注文主と林さんのやり取りの結果、話しがまとまった時点でパンを作り始める。
「お客様といっしょに新商品を開発しているという感覚です」と林さんは話す。
価格も顧客と相談して決める。基本的には、材料原価などに一定の利益をのせた額になる。
「例えば、ウチで使っていない材料を使う場合は、小ロットで注文しなければならず、どうしても高めになりますが、ウチが普段から使っている材料であれば、通常のパンとそれほど変わらない値段でできます」
オーダーメイドブレッドは、アレルギー体質の人のためにパンを提供したいという林さんの思いの延長線上にあるともいえる。実際、アレルギーの人が材料を細かく指定して頼んでくるケースも多いという。
この思いは、林さんのベーカリー経営の根幹に位置する事柄なのだ。
しかし林さんは「お客様の切実な願いに素直に応えてきただけです」とあくまで自然体。
林さんは、パンが食べられなかった子供がウチのパンを食べて喜んでくれていると思うと嬉しくて仕方ありません」と笑う。
林さんのこうした姿勢は、まずアレルギーの子供を持つ母親たちに口コミで広がった。
さらに、アレルギー体質の人以外の多くの顧客からも支持されるようになった。

インターネットでも顧客と交流。楽しませる企画が大切

アルルのホームページ
林さんは2年前に、ホームページを開いた。林さんの旺盛な好奇心はここでも遺憾なく発揮された。
パンの紹介、パンの通販などのページのほか、アクセスしてきた人を楽しませる企画が盛りだくさんだ。
パンが焼き上がって窯から出てきたときのパチパチという音などが聞けるページ、林さんのこれまでの経歴を赤裸々に綴ったページ、アルルがある東京・巣鴨の風物詩を紹介するページなどが用意され、楽しさを演出している。
また、「インターネット10%割引券」を用意。顧客はそれをプリントアウトして持ってくると、10%の割引きが受けられる仕組みになっている。同割引券には、住所やEメールアドレスなどをパソコン画面で入力してからプリントアウトするようになっており、「顧客名簿作りの一助にもなる」(林さん)という。インターネット10%割引券を利用する人は多いという。
自作のパンを投稿してもらう「見て!見て!私の作ったパン・ケーキ・クッキー」のページでは、様々な製品が紹介されている。「こんな製品を作ってほしい」という願いを込めて投稿してくる人も多いという。
林さんは「商品を買ってもらいたいという姿勢を前面に出さないで、楽しい情報を提供することに主眼を置いた方がより多くの人にみてもらえます」と話す。

原価計算女王
原価計算女王
見事に咲いたパンの花!
花きなこ
成形に工夫を凝らし、大きな花のように焼き上げたパン。レーズンとくるみを練り込み、味にコクを出している。きな粉や黒砂糖、コーンミールなども練り込んで独特の味に仕上げる。ひとつ300円。
【配合グラム(%)】
無農薬小麦粉……………………600(75)
全粒粉……………………………200(25)
脱脂粉乳…………………………30(3・75)
きな粉………180(22・5)
コーンミール…100(12・5)
黒砂糖………100(12・5)
自然塩………15(1・875)
アーモンドプードル…………………………100(12・5)
くるみ……………200(25)
レーズン……250(31・25)
ショートニング……60(7・5)
全卵……………120[15]
イースト……………40[5]
水…………550(68・75)
【工程】ミキシングL10分(レーズン、くるみ投入)L1〜2分、捏ね上げ温度28度C、発酵30分、分割150グラム、ベンチタイム15分、成形→(1)ひも状にのばす(2)[1]を長い短冊状にさらにのばす(3)[2]の片側の長辺に沿って、長辺に垂直な方向にカットを約1センチ間隔で入れる(4)[3]を長辺の方向にロールして、カットを入れた面を上にして天板に並べる(ホイロをとると、上面が盛り上がり生地全体が大きな花のような形になる)、ホイロ32〜33度C40分、焼成190度C12〜13分
※ホイロ後塗り卵をして、白ゴマをトッピングする。

小豆の甘煮を包む。上品な甘さが印象的
あずき桜あんぱん
小豆を甜菜糖で煮込んだフィリングを包んで焼き上げるあんパン。アルルの人気商品のひとつだ。1つ130円。
【配合グラム(%)】
国産小麦粉……………………1000(100)
甜菜糖……………………………180(18)
自然塩………………………………10[1]
オリーブオイル………………………60[6]
イースト………………………………30[3]
水…………………………………500(50)
【工程】ミキシングL10分、捏ね上げ温度26〜27度C、発酵40分、分割40グラム、ベンチタイム30分、成形→(1)▼小豆の甘煮を45グラム包む(2)周りに5箇所切り込みを、中心に向かって入れる(3)上面の中心部に桜の花の塩付けをトッピングする。ホイロ32〜33度C30〜40分、焼成200度C10分
▼小豆の甘煮は、小豆を甜菜糖で煮たもの。小豆はつぶしておらず、あんこというより小豆の甘煮といった方が正しい。自家製。

5種類のナッツをびっしりとトッピング!
びっくりナッツ
アーモンド、カシューナッツ、へーゼルナッツなど5種類のナッツをトッピングした製品。1個180円。
【配合グラム(%)】
国産小麦粉………1000(100)
脱脂粉乳…………………50[5]
三温糖………………100[10]
自然塩…………………15(1・5)
ショートニング…………160(16)
全卵…………………150[15]
イースト……………………30[3]
水……………………400(40)
【工程】ミキシングL10分、捏ね上げ温度26〜27度C、発酵10分、分割120グラム、ベンチタイム10分、成形→麺棒で楕円形にのばし、アーモンド、カシューナッツ、へーゼルナッツ、くるみ、かぼちゃの種の5種類のナッツなどを合計で30グラムトッピングする(くるみとへーゼルナッツは他のナッツなどの2倍の重量)。ホイロ32〜33度C30〜40分、焼成200度C12〜13分
※ホイロ後、上面に(ナッツ類の上から)糖蜜を塗る。焼成するとカラメル化し、独特の食感になる。

食パンで勝負するアルルの定番の食パン
直捏食パン
食パンで勝負するアルルの定番の食パンで、価格も1斤230円とリーズナブル。
【配合グラム(%)】
強力粉……………1000(100)
脱脂粉乳………………20[2]
三温糖…………………50[5]
自然塩………………15(1・5)
全卵……………………50[5]
ショートニング……………60[6]
イースト…………………20[2]
水……………………600(60)
【工程】ミキシングL2分ML3分(ショートニング投入)L2分ML6分、捏ね上げ温度28度C、発酵30度C1時間、分割300グラム×4、ベンチタイム15〜20分、成形→モルダーに通して棒状にし、U字型にして3斤棒の食型に4つ並べて入れる。ホイロ33〜35度C40分、焼成200度C45分


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