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特集/2004年5月号

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パン屋さんに取材 情報はどう集めているか?

「ベーカリー経営に必要な情報をどのようにして
集めているのか」をテーマに、パン職人5人に
取材をした。雑誌、本、インターネット、人、街・・・
さまざまな情報源をうまく活用し、
思い思いに情報をキャッチしていることがわかった。



料理や和菓子などパン以外の食の分野からのヒントが多い。

[PAIN D‘ARTISAN NICOLAS(茨城県水海道市)の杉山洋春さん]

流行の商品は自分流に作り変える

杉山さん談 いわゆるパンの流行というものはあえて追いかけません。
業者さんなんかが「今このクリームを使ったこういうパンが売れていますよ」などといって、よく売り込みに来たりするのですが、売り込みに来るということは、すでに流行っていて他でもやっているということですから。
パンの世界にもいろいろとブームがあって、一過性のものもあれば、だらだらと続くものもあります。だらだらと続くものについては、自分なりに形を変えて商品化することもあります。最近では、ずんだあんぱんを商品化しました。これは、ずんだあんのいいものが入手できることがわかったので、作りました。和菓子用のものです。それと形も、ちょっとした遊び心から、枝豆の形にしました。
流行についての情報を入手しなくてもいいということではありません。流行についての情報は、問屋さんが一番早いと思います。

インターネットもよく利用する
インターネットも情報源です。ネット上には、手作りのパンの好きな人たちや、大手さんの袋パンがいいという人たちなんかが集まってくるサイトがあります。
まめにチェックしています。そういうサイトの主催者には、かなり影響力がある人もいるようです。私としては、結構主観的な見方で、批判されたりすると、それが大方の見方という風にとられてしまう場合もあって、納得がいかないこともあります。

料理の本はわくわくする
料理の本を見ているとわくわくしてきます。私の場合は、「料理王国」と言う雑誌が気に入っています。
いろいろな料理から触発されて、それを自分のパンに活かすこともあります。あたためているアイデアはたくさんあります。実際にやってみたものとしては、ある料理の本に紹介されていたイタリアンのデザートからヒントを得て作ったいちごのデニッシュがあります。
シロップとバルサミコ酢を煮詰めたものに、カットした生のいちごをくぐらせて、トッピングした商品です。その料理の本には、イタリアンのデザートとしてフランボワーズとバルサミコ酢を使った一品が紹介されていました。バルサミコはベリー類にとってもよく合うんです。

パン専門の書物はあまり見ない

同業者である他のベーカリーにも休みを利用してなるべく行くようにしています。
パン専門の本については、それに大きなヒントを見出すということは、ある意味で「勉強不足」ともいえるわけで、私の場合は、料理とか、和菓子とか、食の分野でもパン以外からヒントをもらうことが多いと思います。



実際に見るか、写真でみれば、自分なりの製法で再現できる

[サンセリテ(埼玉県狭山市)の高田知明さん]

情報のポイントは「画像」
埼玉県狭山市のベーカリー、サンセリテの高田知明オーナーにとって情報のポイントは、「画像」だ。時間をやりくりしてベーカリーをまわり、肉眼に焼き付けたパンの「画像」、インターネットで見つけ出したパンの「画像」、本や雑誌から見つけ出したパンの「画像」などが、高田さんの新製品開発意欲を掻き立てる。
「子供を連れてよく外出する日曜日の午後に、ベーカリーに立ち寄り、気に入った商品を買ってきて味見をします。パンのサイトもよく見ますね。パン専門の本も参考になります」と高田さんは話す。
「実際に見たり、写真を見たりすれば、それから判断して自分なりの製法で再現できます。まったく同じにはもちろんなりませんが、そうする必要もないと思います。目で見たものから、自分の感性で何を汲み取るかが大事だと思うんです。自分なりの製法で再現すれば、個性も出ます」
高田さんはさらに「出入りの問屋さんには『こういう商品を作りたいのだけれど、こういう材料はないものか』と頼むといろいろと探してきてくれます」。
一方で、シンプルな商品の場合は、よりよい材料を使ったり、製法に工夫を凝らしたりして、他店のとの違いを出しているという。(サンセリテについては、8〜13ページを参照)



「ハムのムース」を何らかの形で商品にしたい。

[パン・ピジョン(埼玉県鳩ヶ谷市)の八村努さん]

雑誌から触発されることが多い
パン・ピジョンの八村努さんは、「パンやカフェの雑誌から触発されることが多いですね」と話す。今試しているのは、ある雑誌で見た「ハムのムース」を何らかの形でつかった商品だそうだ。「そのまま、具材として使おうか、パンと一緒に焼き込んで使おうか、といろいろ考えているところです。自分で食べてみてとてもおいしかったんです」
書店で売っているようないわゆる一般雑誌からヒントを得ることが多いという。パン関連の本だけではなく、食全般の様々な本を参考にするそうだ。

同業者の仲間と電話で情報交換
「以前、ベーカリーへ出張して製造を手伝う仕事をしていたので、同業者の仲間が多く、そういう人たちと定期的に電話で話したりもしています。例えば、朝、食パン出したいんだけれど、どんな方法がいいかな、とか主に技術的なことで情報交換しています」(八村さん)

人の振り見て我が振り直せ

ベーカリーめぐりもする。
「今はそれほど頻繁にはできていないのですが、以前は毎週のように妻と出かけていました。もちろんベーカリーにも行くし、おいしい食べ物屋さんなんかにもよく行っていました」と八村さん。
ベーカリーに入ると、やはりいろいろ気になることがある。参考になることもあれば、逆に反面教師になることもある。
「商品の陳列方法などで、工夫しているな、と思うことは多々あります。一方で、そんなに忙しい時間帯でもないのに、トレーが汚れていたり、使ったトレーがそのまま置いてあったり、店員の接客が悪かったりして、『ああ、今は責任者が不在なのかな』なんて思うこともあります。そんなときは、気をつけないとと、自らを戒めます」(八村さん)
恩師が時々、店に来てくれて、相談に乗ってくれることもあるという。「この間も、『最近フランスパンの上がりがよくないんですよ』と相談したのですが、いろいろアドバイスしてくれて、いい結果が出るようになりました」(八村さん)

生地自体を変えるには勇気が要る問屋から、情報を引き出す。

[ふるーる(大阪府岸和田市)の大嶋孝之さん]

「流行っているから」だけでは不充分
大嶋さん談 専門誌や一般の情報誌などでパンの写真を見て、おもしろいものがあると参考にします。その場合、形や、使っている具材に目がいきます。どうやったら、こういう形になるのか、といろいろ考えて、試してみます。具材もどんな材料を使っているのかが気になります。
おもしろいと思うパンを買ってきて食べたり、パートの女性が「これおもしろい」といって買ってきたパンを食べたりして、参考にすることもあります。
生地自体を増やしたり、変えたりすることは、かなり大変なことです。しかし、食パンなど基本中の基本の生地以外なら、自分が本当に変えた方がおいしいと思えば、変えることもありえると思います。
実際、日頃の製造作業の中で、例えば油脂類を、ベターと思われるものにかえて作ってみることもあります。少しでもいいものにしたいと考えています。
最近問屋さんといい感じになってきました。以前は、配達に来て、材料を納品して帰るだけだったのですが、いろいろとこちらから聞くようにしたら、いい情報を引き出せるようになりました。
材料の売れ具合から、流行の商品の情報はいち早くキャッチしているようです。また、自分で作りたい商品があって、それに必要な材料を伝えると、探してきてくれます。
流行の商品については、ただ流行っているからというだけの理由では取り入れません。自分で食べて、また、スタッフが食べて、おいしい、おもしろい、と思った場合だけ商品化します。
私の恩師のベーカリーオーナーの方からいただく情報は、最も貴重で、信用できます。商品や材料など様々な情報をいただいています。その人がどうやって情報を得ているのかに、とても興味があります。

情報のトライアングル。自分の舌で得た情報は貴重

[ベーカリーコンサルタントの橋本泰之さん]

流行は、メーカーの人たちが敏感
橋本さん談 私の場合は、情報源が3つあります。ひとつは材料メーカー、もうひとつはベーカリー、3つめは学生です。すべて、わたしが仕事を通して接する人たちです。こうした人たちとお付き合いさせていただく中で、貴重な情報を得ています。
流行については、メーカーの人たちが早いし、敏感です。ベーカリーで働いている人たちは、消費者と接しているし、自分の店のパンの売れ行きには敏感なので、実際に何が売れているか教えてくれます。学生は、消費者としての視点と、パンの作り手としての視点の両方を持っています。私は、情報のトライアングルという風に考えています。

3つの情報基地を縦横無尽に往来
メーカーさんで商品開発をさせていただくと、同じ商品でも、条件を変えていろいろな方法で作りますが、これが自分にとってとてもいい情報になります。例えば、あるものが流行りかけていて、その商品の開発の仕事をするとすると、いろいろと試してみて、自分なりに消化して、納得がいくものだけを提案します。その試行錯誤が私にとって貴重な情報になります。
また、学校の授業で例えば、メロンパンの実験をやったとすれば、メロン皮の配合をいろいろと変えたり、焼成時間を変えたりして学生たちとやり取りしながら、自分としてもいろいろと考えてみるわけです。そうするととてもいい情報が入ってきます。学生に教えるということは、同時に学生から教わるということでもあるわけです。
こうして得た情報は、メーカーさんでの仕事にも、ベーカリーでの仕事にも生きてきます。私の中では、材料メーカー、ベーカリー、学校という情報基地で得た情報が、どんどんと膨らみながら、まわっているという感じです。それが私にとっての情報のトライアングルです。
パンの世界にも、流行がありますよね。私の場合は、ある商品が流行ったとしたら、それを自分なりにアレンジしてみて、自分なりの物ができた場合だけ、商品化、というか、お客様に提案します。それ以外の場合は、その商品は提案しません。単に流行に追従しているだけというのは嫌ですから。

流行商品は季節商品と同じ
流行の商品は、ベーカリーにとって、季節商品の1種というぐらいに捉えればいいのではないかと思っています。ずっと続けるのではなく、季節商品が季節が終わったらやめて、また来年再開するように、ある一定期間販売して、いったんやめて、次にやるときは少し形を変えて出す、という方がいいと思っています。コンビニの販売戦略がまさしくそうだと思います。パン専門の本や雑誌、新聞は、熟読するわけではありませんが、全て一通り目を通しています。そんななかで、ピンときたものについては、コピーするなどして保存しておきます。
学生や若いパン職人などによく言うのは、「おいしいものをたくさん食べなさい」ということです。やはりいいものを自分の舌で味わっていないと、いいもがわからないですから。お金はかかると思いますが、自分のできる範囲で、常にいいものを味わってやろうという心構えを持っているかいないかで、大きく差が出てくると思います。自分の舌で得た情報は、ものすごい力になると思います。

原価計算女王
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